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第1話 ギルド加入??

「あのぅ、一体どこまで…」


 謎の少女レナーテは黙ったまま、俺の袖を引っ張り森の木々をかき分けていく。


「もしかして俺、魔術の実験台にされるとか…?」

「大丈夫ですから!そのままついてきてください!」


 …これで新手の強盗だったら笑うなぁ。

 もしそうだった場合、俺は成すすべなく装備やアイテム類を置いていくことになるだろう。

 まぁ、命が助かればの話だが。


 そうこう考えているうちに、森を抜けた先に一つの大きな屋敷が見えた。

 こんな森の奥地にあるなんて…。この森は以前ギルドに入っていた際に見回りに数回出たが、このような場所があるとの報告は聞いたことがなかった。


「さぁ、つきましたよ!賢者様!」

「け、賢者ぁ!?それにここは一体…。」

「詳しくは中で話します。大丈夫です、最大のおもてなしをさせていただく予定ですから。」


 お、おもてなしだって…!確かに胃がくっつきそうなくらい腹が減っている。

 それにこんな大きなお屋敷だ。少し、話を聞くくらいならいいじゃないか。


「よくわからないけど、まぁ少しだけなら行ってもいいかな。」

「本当ですか!? きっとみんなが喜びます!」

「みんなってことは、他にもここに?」

「はい、私たちのギルドの本拠地なんです。」


 ギ、ギルドの本拠地だって!?

 俺は少し躊躇ったが、行くと返答した以上ここで引き返すわけにはいかなかった。

 でも、何のギルドなんだろう。見た感じ、傭兵集団のギルドってわけではなさそうだ。


 俺はレナーテに背中を押されるように屋敷の門をくぐっていった。


「それにしても大きな門だなぁ。外には見張りがいるけど、やっぱりこれだけデカいギルドの屋敷だと強盗とかやって来るのかい?」

「いえ、最近は見なくなりましたね。それに、いつも衛兵がやりすぎてしまうのも原因だと思います。」

「やりすぎてしまうってのは、まさか…。」

「あ!別に命を取ったりっていうわけではないんです。ただ、その…ちょっと見張りは血の気が多くて…。」


 ああ、そういうことか。

 強盗が相手ならやはり手加減はしない、ということだろう。

 何となくで襲撃について聞いていたがそれなりの規模ということは把握した。


 レナーテは屋敷の大きな扉の前に立つと「私よ。」と一言声をかけた。

 ドアの向こうに誰かがいるのか、扉にかけられていた紋章鍵が音を立てて解かれた。

 そしてギギッという古びた音を立てながら扉を向こうから開けたのは、銀髪の長い髪をした今度は身長のやや高い少女が俺を迎え入れた。


「話には聞いているよ、賢者エル様だね。さぁ上がって。」

「あっ、はい。」


 先ほどのレナーテとはほぼ真逆のおしとやかでクールな女性だ。

 彼女は俺を大広間のような入口へ通すと、レナーテへ指示を出した。


「レナーテ、彼を客室へ案内して。」

「はいっ、ルーナ様。」


 指示を出すとすぐさま奥の部屋へと消えてしまった。

 ルーナさん、かぁ。きれいな人だなぁ…。


「あっ、今綺麗な人だなって思いました?」

「はぁっ!?人の心を読むなぁ!」

「あはは、冗談ですよ! さぁ、客室へ案内します。」


 とても冗談とは思えないが…。そんなに表情に出てしまっていたのだろうか。

 なるべく怪しい顔を見せないように俺は彼女のあとへ続き、客室へと入った。


「じゃあ、今お父様とルーナ様をお呼びしますので待っていてくださいね。あ、今お茶入れますから。」

「わ、分かったよ。」


 妙に小綺麗な部屋で緊張する。

 こんな屋敷生まれてから来たことがない…。

 テーブルには今にも触れたら崩れてしまいそうな見たこともない花が花瓶に飾られ、壁には高そうな肖像画、おそらくだが骨とう品のコレクションもある。


 落ち着かない小部屋でそわそわしていると、コンコンコン、という3回のノックと共に老人と先ほどのルーナという女性が部屋へ入り、俺の前の席へ座った。


「おやおや、これはまた若い賢者様じゃのう。」

「け、賢者…まぁ一応…。」


 …まずい、引けなくなってきた。

 だが、ここでいきなり「私はただのギルド追放された無能一般クソニートです。」とは言えない。

 続くようにルーナが口を開いた。


「その首飾りの月の紋章。スライムたちからSランクのアイテム。 どうやら情報は確かなようだね。」

「はいっ!この目で見ましたっ!」


 レナーテは自信満々に答える。

 一体どこから見られてたっていうんだ。…普通に恥ずかしすぎる。


 俺は少し赤面すると、気になっていることを質問した。


「あ、あの、俺なんかに一体何の用ですか。 俺はただ、それだけを知りたいんです。」

「まぁまぁ、そう焦らなくても大丈夫じゃよ。」


 と、気品のある老人はテーブルに置かれた紅茶をすすった。

 高い茶葉なのだろうか。俺の前にもおかれている紅茶の良い香りが漂っている。


「…紹介が遅れたね。私は『ルーナ』。こちらはうちのギルド10代目のマスター、『アヌマス・ランドルフ』様だよ」

「ほっほ、これからよろしく頼むの。」

「…で、こっちはもう紹介済みかもしれないけど、このギルドマスターのご令嬢、レナーテだよ。」

「改めてよろしくお願いします!」

「ご令嬢…てことはギルドマスターの娘さん?」

「ふふふ、そうですよ。」


 少し恥ずかしそうに返事をするレナーテ。

 俺は少し無礼な態度をとっていたことを後悔した。


「ご、ごめん!まさか君がギルドマスターの娘さんだったなんて。」

「謝らなくても大丈夫です!まだまだ半人前ですから!」


 と、明るい笑顔で返事を返してきた。

 なんていい娘なのだろうか…。


「さて、本題に入ろうか。」とルーナが言うと、今までなごんでいた空気が一気に張り詰めた。

 やや真剣みのあるピリピリした空気の中、ルーナがギルドマスターに視線をおくる。


 うむ、とうなずくとギルドマスターは静かに口を開いた。


「率直に申し上げよう。 賢者エル殿、そなたを11代目ギルドマスターに迎えたいだ。」

「えっええっ!? 俺がこのギルドマスターに!?」

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