Gハイブ・1
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本日一話目。
◆雹庫県。ガハラ市跡地。荒谷高次元素材研究所。
一般には、アニメートアドベンチャーとして公開されている。
かつて地球に本当に存在した神秘と魔法の残滓である【大陸】。
その大陸に存在する国。アイゼルフ王国に所属する凄まじき力を手にした蜂の巣の魔人とその配下達が、数に任せた恐るべき呪術儀式の末に発見し、敵と見定めた施設。
そこは現実のガハラ市跡地に運営が建造した巨大施設【荒谷高次元素材研究所】だった。
大陸を管理する運営が振るった強権により隔離され、ガハラ市一つが巨大なドームに覆われた秘密の研究所。
秘密とは一体なんなのだろうか?と疑問を投げ掛ける、大いに存在を主張して目立つこの新設の巨大研究所。
その所長の座を勝ち取ったのは、今も膨大な蜂蜜とMPを噴き出し続けるプレイヤーネーム【ゲルドアルド】、本名【木陰蜜八】の黄金の蜂の巣と化した死体を偶然にも獲得し、手中に納めることに成功した荒谷班の主任研究員、荒谷主任あらため。
荒谷所長だった。
実力はあっても、天才と呼べる頭脳を持っていても、運営が重視しない、流行らない研究テーマに拘る荒谷は出世とは無縁だった。
しかし、ゲルドアルドの死体から無尽蔵に噴出する蜂蜜とMP……地球上のあらゆる物質を高濃度のMPで破壊してしまう危険物を隔離し、利用するのに荒谷班が研究テーマである【MPが失われた環境下で作成できる高濃度MPに耐えられる素材作成】は、非常に有用だった。
ガハラ市壊滅から三ヶ月程度でこの巨大施設が完成したのもMPのお陰。豊富なMPで稼働する、荒谷式高性能ゴーレム28号改高濃度MP環境下対応型の力だ。
MPが失われた地球に、突如出現したゲルドアルドの蜂の巣となった死体から生み出される蜂蜜は、核燃料がゴミに思えるスーパーエネルギー。
この蜂蜜一リットルでも燃料として活用すれば、科学的なロボットとして偽装されている地球上で作成されたゴーレムやレガクロスが千年単位で無補給で稼働することが可能になり。
その出力は、大陸で言えば、下級ジョブカンスト未満だったモノが、それだけで中級戦闘ジョブカンストまで上昇する。
中級戦闘ジョブカンストとは、現在地球の約二分の一をそれぞれが統治している【連盟】や【連邦】の軍隊の全戦力を、たった一体で対等に戦える恐るべき力だ。
蜂蜜としては、環境のせいで劣化し、数多の大蜜蜂を虜にする、至高の蜂蜜ではなくなっている。今の劣化した状態でも口にすれば、MPが希薄な環境下で育った感覚器官しか持たない地球人では、口にすることが出来ない劇物なので関係がない。
もしも口にすれば、味覚を通じて駆け巡る高次元の蜂蜜の味に、脳や魂を破壊されてしまうだろう。
それだけに扱いには慎重を要する。
扱いを間違えれば、対処できなければ、無尽蔵に噴出し続ける蜂蜜から発散されている高濃度MPが、地球を容易く破壊してしまう。
荒谷班が長年研究し、更にガハラ市の惨状の現場で改良した【アラダイト樹脂】によって、早期にゲルドアルドと蜂蜜を隔離できなければ、少なくとも日本中の生物は遠からず死滅していた。
何れは大蜜蜂達が気付き、地球に進出した彼女達によって、蜂の巣が建造されて隔離されるなどの対処が行われただろうが、それは荒谷班が対処するより、かなり遅くなる。
その頃には地球は見るも無惨な状態になっていただろう。
もしかすると、地球は大蜜蜂だけしか存在しない星へと変わり果てていたかも知れない。
大陸のMPが大量に存在する環境で育ったモンスターにとって、MPが失われた現実の物理法則で成り立つ物質や現象など、容易く砕けるウェハースのようなモノなのだ。
その場合は遅れてやって来たゲルドアルドによって、花と緑に溢れた大地になるが。
荒谷所長とアラダイト樹脂は、地球の救世主と言えた。
元荒谷班の研究員と、運営が集めた研究員達が鼻息荒く、神秘を寄って集って解明しようとしている黄金の蜂の巣。
この神秘の物体は、ゲルドアルドの死体だと思われている。
実際に大蜜劣蜂の苛烈な妨害を乗り越えて採取した黄金の蜂の巣の一部を解析すると、種類が不明の木質や蜂蝋と思われる物質に混じって、運営が密かに保有していた木陰蜜八……ゲルドアルドのDNA情報と、ほぼ同一のモノが発見された。
故にそれが、何らかの現象により、今回ガハラ市を壊滅させ、大陸で活動するディセニアンに多大な被害をもたらした、大災害の元凶であり、ゲルドアルド本人が変異した悲劇。
そして、神秘と奇跡の産物だと誰もが思った。
破壊の中心近くに黄金の蜂の巣に変わり果てた彼の姿があり、間違いないと様々な運営所属する研究者や、荒谷は力強く、その神秘に興奮しながら断言した。
関わった運営の関係者達は、当然ながら、ゲルドアルドの魂だけが最後の魔人族達のMPで作られ生まれた大陸から、彼が暫定異世界と呼ぶ場所へと落ち、大陸へと舞い戻っていた彼の脱け殻だとも思わなかった。
ゲルドアルドの肉体は大陸に最後にログインした状態で、一年近く放置されていたのだ。
ゲルドアルドの近くにいた人物達でさえ、見当違いの推測を真実だと思うしかなく。
市が丸々一つ無くなり、幾多の意識不明者、現場に存在した人以外の動植物を根こそぎ死滅させた大災害が。
今より起きる、恐怖と奇跡が蜜蜂達と大合唱を始める前の、ただの咳払いだとは誰も思っていなかったのだ。
その事を元凶が全く把握していないのだから、当然なのかもしれない。
今日は18時にもう一話更新します。
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