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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
スーパーレガクロス内戦編

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事後処理・1


糞蜂蜜野郎(ゲルドアルド)がぁぁぁぁぁぁぁ!!』


ゲルドアルドの耳に非常に聞き覚えの有る罵声が聞こえた瞬間、罵声の掻き消す凄まじい轟音が鳴り響いた。


サンダーフォーリナーが展開する〈マグネットベクターフィールドN〉が大きく歪む。飛来したのはゲルドアルドがジャベリンだと勘違いしていた良く似たフォルムの、フォーリナー程ではないが巨大な黒いレガクロス。

それは磁力付与フィールドごと、フォーリナーの胸を正面から猛烈に打ち据えて、六十五メートルの機体を大きく後退させる。


「ケァァァァァァァッ!!」


王妃と呼ばれる者の口から出たとは思えない鋭い掛け声を上げて、タイタニスが蜂蜜結晶で作成された土台を蹴り黒いレガクロスに殴りかかった。土台は蹴られた衝撃で粉々に粉砕される。

黒いレガクロスに比べれば豆粒以下の小さな拳が装甲に叩き付けられた。見た目よりも遥かに重いマキシマムヘビィアダマンタイト製の拳は装甲の一部を砕き、鏃のような頭部で飛び込んできた黒い機体をフォーリナーから吹き飛ばす。


『ぐぅぅぅぅぅ!?アバズレがぁぁぁぁ!何故お前がここに居る!?邪魔をするなぁぁぁぁ!?』

「ははっ!生きていたとは嬉しいねぇぇぇぇぇぇ!アタシが殺してやるよぉ!」


黒いレガクロス……それは、邪神の機能により再生されるが機神との戦闘の余波で吹き飛んでいた、グナロークが乗るイリシウムジャベリンだった。

本人に死んだ記憶は無い。ただ、自身の力の象徴だった邪神オブシディウスを破壊された事に怒り、その矛先を常日頃から憎悪と侮蔑の対象だった、ゲルドアルドが乗る彼にとっては忌々しい趣味の悪い黄金の輝きに包まれたサンダーフォーリナーに向けている。


『糞!糞!糞!糞ぉぉぉぉぉぉ!!』

「糞糞煩いねぇ!カスが糞に憧れるじゃないよ!土に撒いても肥料にもならないあんたがね!」


片や王妃(タイタニス)、片や王族(グナローク)という高貴な身分でありながら口から品の無い罵倒が飛び交う。


タイタニスはイリシウムに殴り付けた反動でフォーリナーへと戻り、機体の撫で肩に着地。それと同時にフォーリナー頭部から、イリシウムに向かって眩い電撃が放たれる。

球場の頭部顔面、中心の金属眼球を除いた周囲を囲む六つの球状電撃砲台〈ボルトバスター〉から迸った電撃が、魔法で生成した電磁誘導線に沿って空中を走り、グナロークが癇癪を起こし操縦に集中できていない為、鈍い動きのイリシウムに命中した。


『ギピィッ!?』

「蜂蜜坊や!コイツはアタシの獲物だよ!!」

『ギュリィィィィィ!!』


炸裂した電撃がフォーリナー程ではないが、巨大な黒い機体をスパークで白く染め、衝撃がくの字に機体を曲げさせた。

機体内部でグナロークが奇妙な悲鳴を上げるが、イリシウムのダメージはそれほどでもなかった。


理由は二つ。


一つは、タイタニスがイリシウムに〈ボルトバスター〉が直撃する瞬間、腕力でフォーリナーの頭部を明後日の方向に無理矢利曲げたせいだ。

もう一つが、イリシウムの蛇のような長い下半身の尾の先で再生しつつある存在が、あっさりとフォーリナーに破壊されそうだったため、必死にイリシウムを下方向に引っ張ったせいである。


『ギュリィ……』


それは形容するなら四つ眼の黒いデメキン。


本体である機械仕掛けの黒曜の怪魚を、機神ゲシュタル・ゲル・ボロスに粉砕された邪神(オブシディウス)の成の果てだった。




「アンタは逃がさないように結界でも張ってな!」


ゲルドアルドにそう言い捨てると、タイタニスはフォーリナーの肩を足場にしてイリシウムに向かって跳躍、その衝撃でフォーリナーの肩には亀裂が刻まれた。

フォーリナーの頭部が亀裂の入った肩へと向けられる、その視線にはゲルドアルドの悲しみが宿っていたが、本人よりも表情の変化が皆無なフォーリナーの頭部では外部に伝わらない。


「右腕貰ったぁっ!」


フォーリナーの肩を破壊する勢いで跳躍してきたタイタニスの一撃が、イリシウムの右腕付け根を打ち貫く。量産機であるジャベリンではないイリシウムの装甲は、軽量でありながらアダマンタイトにも匹敵する耐久性を持つが、マキシマムヘビィアダマンタイト製の……おまけに金色に才色されることで彼女の異能で強化されている拳にとっては、容易く砕けるその辺の岩と変わり無い。


『ぐぅぅぅぅっ!空中で避けてみろ!』


機体右腕の破損が、機体を循環するMP(マナ)を介してグナロークに伝わってくる。伝わる破損の感覚で呻きながらグナロークはイリシウムを操作、素早く機体を回転させた。その勢いと腕のプラズマ推進機による加速で無事な左腕の鋭利な金属爪が、足場の無い空中で無防備に存在しているタイタニスに猛烈な勢いで襲いかかる。


「そんなの簡単すぎてねぇ……欠伸が出るんだよ!」

『なぁっ!?』


器用に空中で身を捻ったタイタニスは、迫るイリシウムの人よりも大きな爪を苦もなく回避、無駄に緻密な金色のドレスのロングスカートが丸く広がる。

紙一重で回避した通りすぎる爪にタイタニスは自身の指を引っ掻けた、火花を散らし金属を傷つける嫌な音が響く。爪に指を引っ掻けた反動を利用してイリシウムの腕へと着地、同時に腕を伝って胴体に向かって走り出した。


「ケァァァァァッ!」

『!?』


瞬時に頭部まで迫るタイタニス。グナロークは多数の常時発動スキルにより、凄まじい身体能力を持つタイタニスの戦闘スピードに全く対応できない。


「〈鋼腕砕打〉!」


振り抜かれたマキシマムヘビィアダマンタイト製の左ストレートに、更に発動した攻撃スキルの威力が重せられる。回避行動すらとる暇もなく、イリシウムの人であれば左頬にあたる装甲を強烈に拳が殴打した。

イリシウムの頭部は、機体全体を使った頭突き攻撃を繰り出すために鏃のように鋭く、装甲も厚い。直接殴られた部分はタイタニスの拳に大きく抉られたが、右腕のように一撃で破損することはなかった。殴打された衝撃で頭部の向きが無理矢理に反対方向へと向きを矯正されたが、装甲の厚さと同じ理由で頑丈な首間接はなんとか破損を免れている。


「シャアッ!」


破損を免れていられたのは、続いて振り抜かれた殴打の勢いを利用した、タイタニスの後ろ回し蹴りが炸裂するまでの短い間だった。

人の頚部にあたる部分がタイタニスの猛烈な蹴りが命中、イリシウムの頭部と比べると、小さすぎるタイタニスの足は装甲に容易く抉り、機体頚部の一部を蹴り飛ばした。すでに多大なダメージ受けていた首間接も、頚部を抉り飛ばした衝撃に粉砕されて、イリシウムの頭部自体が宙を舞った。


戦闘やレガクロスに関する才能が致命的に欠如しているグナロークには、最早、自分が操る機体がどういう状況なのかもわかっていない。イリシウムの上で暴れるタイタニスを振り落としたい一心で、機体を滅茶苦茶に振り回して対応するしかなかった。


それはただの悪足掻きにしかならない。その行動には事態を好転させる力など、グナロークの才能のように存在しなかった。蹴り飛ばした首があった破損箇所からタイタニスは機体内部へと潜り込む。イリシウムの内部機構を潰し、引き裂きながら操縦席で混乱し、まともに操縦すらできなくなっているグナロークへと直接迫る。


「無駄にデカイ自尊心だけが取り柄の!」


操縦席の天井を突き破り、現れたタイタニスの機械仕掛けの腕がグナロークの手入れの行き届いた赤い長髪を掴んだ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

機体の拡声器越しではないグナロークの生の悲鳴。身体を座席に固定している固定具を引きちぎるほどの力で、グナロークの頭皮が引っ張られる。


「特権を生かす妥協も出来ない役立たずが!」


通常のレガクロス全長の倍以上はあるパンツァーブルーダーを持ち上げるタイタニスの膂力はグナロークの貧相な身体を軽々と引き上げる。タイタニスの膂力とグナロークの体重に耐えきれず、ブチブチと頭髪が千切れる音が鳴るが、それはグナロークの悲鳴で両者の耳には聞こえない。


「アタシの可愛いティータに対するストーカー行為!好いていると言いながらティータの外見以外を否定する気色悪い言動!」


イリシウムの内部で攻撃スキルを使用した蹴りが機体の胸部装甲を内側から吹き飛ばす。


「何よりゴルドアサイラムにまで手を出しやがって!」

「ぎぃぃぃぃぃ!?は、離せアバズレぇえぇぇ!?」


イリシウムを足場にして跳躍したタイタニスが、痛みに悲鳴と喚き声を上げるグナロークと共にフォーリナーの頭頂部に着地する。ギョロリと動いた頭部の金属眼球が迷惑そうな視線を送っている。




「だから死ね」


グチャリと湿った音が鈍く鳴る。


流血が迷惑そうな視線を送り続けていたフォーリナーの頭部を濡らした。


血に濡れながらギョロリと動いた金属眼球が、主を失い落ちていくイリシウム・ジャベリンに焦点を合わせ、じっと見ていた。

次回更新は、明日の昼十二時の予定したいですが怪しいです。


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