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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
スーパーレガクロス内戦編

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機神VS邪神・3


『あぁ!?腕を捕ったとでも思ってるのかぁぁぁぁっ!!』


竜巻を産み出している〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉が先端で回転する腕が、天に向かって邪神ごと掲げられた。

機神の三倍はある邪神が、機神の圧倒的な膂力で持ち上がり、次の瞬間にはギラギラと趣味の悪い黄金の大地に叩き付けられ、大地を砕きギラギラとした大地の破片を舞い上がらせ、轟音が鳴り響く。


叩き付けられた邪神はその衝撃を耐え抜き、機神の腕を咥えて離さない。

口内の削ぎ歯がびっしり生えた回転ローラーで、機神の腕に圧力をかけ、装甲と接触した装甲ローラーが激しく火花を上げさせる。

ローラーは口内へと引き込む向きで回転しており機神でなければ、あっという間に削ぎ壊されながら、口内に引き込まれてスクラップになっているだろう威力だ。


しかし、機神の装甲は超大型MP増殖炉で十万倍に増殖されたゲルドアルドのMP(マナ)が流れ、循環することで構造が強化され、更に様々な魔法系スキルによって常時守護されている。


火花を生み出しているのは邪神の回転ローラーだった。


邪神は機神の腕を咥えたまま自ら大地に対して逆さまになり、その巨体の重量と推進力で機神を押し潰そうと大地に向かって前進。機械の尾鰭、左右六対の胸鰭が紫電を放出し、大気を紫電で絡みとって上空へと猛烈な勢いで投げ捨て、その勢いで機神に強烈な圧力をかける。

更に邪神の機体から、四方に黒曜の鱗が極太の柱を形成、大地に勢いよく伸びて突き刺さったそれは、邪神自らの巨体を大地に向かって押し付けた。


『うぜぇっ!』


邪神の圧力で機神の足元が大地に沈む。オゾフロが対格差もあり引き離せないことに悪態をつくのと、邪神の顔面、四つの巨大な眼窩が光輝いたのは同時だった。

眼窩を模したプラズマ砲から、赤く輝く機神を丸々呑み込む、巨大なプラズマ弾が機神に叩きつけられる。

一撃では終わらず、四つの眼窩から順番に次々と灼熱のプラズマが放たれる。


『効かねーよっ!』


「いや、割りと効いてますよ」

「このまま、この攻撃喰らい続けるとゲシュタル・ゲル・ボロスの熱処理が追い付かないです!」

「なんだとぉぉぉぉぉ!?」


啖呵を切ったオゾフロに、次々と操縦室に乗り合わせているギルメンから予想外の言葉が飛んでくる。実際、機神にはほぼダメージはなかったが、急激に周囲の熱量が上昇し機神の排熱効率が急降下して居ることが各種機能管制を担当しているギルメンが確認した。


「これ、四方に伸びた柱が拡散するプラズマの熱量を内部に閉じ込めてますね……」

「うわぁ、空間が隔離されてるせいで拡散したプラズマが再プラズマ化した!」

「ゲシュタル・ゲル・ボロス周囲の質量が急上昇!すんごい圧力かかってる!」

「これ、幾らゲシュタル・ゲル・ボロスでも高密度プラズマ間接押さえられて動けなくなるぞ!」

「ギルマス!ドリルヴォルテックスグランドクラッシャー止めて!ドリル本体はともかくMPモーターが焼き切れる!」


邪神の行動は、その巨体と質量で機神を押し潰すでもなく、プラズマによる爆砕でもなかった。

機体から四方に伸びた黒曜の鱗柱で作り出した閉鎖空間に機神を閉じ込め、内部を高密度プラズマで満たして拘束、更にプラズマ熱量で機神のオーバーヒート狙っていたのだ。

四方に伸びた黒曜の鱗柱の内側で密度を増すプラズマが輝く、それは瞬く間に目も開けられないほどの眩さで内部に閉じ込められた機神を光の中へと呑み込んでいく。


顔面を機神と同じく自らのプラズマの熱量に曝されている邪神は、プラズマの灼熱を全身の鱗から熱線に変えて空中に放出することで自身を冷却し、圧力には堅牢な装甲で耐えている。

ゲルドアルドと超大型MP増殖炉で強化されている機神と互角の強靭さを、邪神の顔面は備えていた。


『ギュリィィィィィィィィィ!』

『うるせぇぇぇぇ!そんな量産品の鱗でコイツが止められるかよ!!』


プラズマで満たされ結界の内側、機神を押し潰そう高まる圧力を物ともせず、機神が背負う背部パーツからMPモーターの甲高い音が響いて、背部の全長三百メートル超巨大電磁加速投射砲〈アルマゲドンキャノン〉が動き出す。

角度を変えた〈アルマゲドンキャノン〉の砲口が邪神に向けられる。


「いや!ギルマスこれ使用禁止兵装ですよ!」

「わかってるつーの!」


オゾフロとしては非常に残念なことに機神の武器の中でも最大威力を誇る〈アルマゲドンキャノン〉は、威力が高過ぎるため今回は使用禁止となっていた。起動できないように厳重に封印され、起動するためには上空待機しているゲルドアルドの許可が必要である。

当然、ゲルドアルドに許可を求めてもダイ・オキシンに買収されているだろう、ゲルドアルドが首を縦に降ることはない。

使用するのは〈アルマゲドンキャノン〉の左右に備え付けられた、別の武装であった。


『〈ビックパニッシャーバベル〉!発射ぁぁぁぁ!』


〈アルマゲドンキャノン〉と同じ電磁加速投射砲である〈ビックパニッシャーバベル〉。

この武装は破壊力という点では太さ三十メートル、長さ二百メートルのマキシマムヘビィアダマンタイト製弾頭の、巨大質量体を発射する〈アルマゲドンキャノン〉の足元にも及ばないが、対象を貫通するという点では同格の武装である。


機神の装甲下で幾つもの発電用MPモーターが狂ったように高速で回転し莫大な電気を作り出す。

電気は〈アルマゲドンキャノン〉左右の圧縮タンクに充填された液体金属と〈ビックパニッシャーバベル〉本体に流れ込んでいく。

膨大な量の液体金属は流れ込んだ電気を触媒に魔法で磁化、そして長大な杭状に高質化。


成型高質化された液体金属は爆発的電磁誘導で、砲口から全長二十キロメートル、太さ五メートルの貫通破砕杭となり、瞬きよりも短い時間で天に向かって押し切られる。


『ギュリィィィィ……ギュリィィ』


天と機神の間にいた邪神は、目の前で解き放たれた超高速の貫通破砕杭を視認することも抗うことも出来ず、二本の杭によって串刺しになった。


杭の先端は雲よりも高く位置まで届き、朝日の陽光を浴びてギラリと凶悪に輝いている。


『はっ馬鹿め!離れていれば発射の隙が大きいこれも避けられただろうになぁ!』


オゾフロが吼える。握りしめられた操縦桿より彼女の意志が機神へと伝わり、機神が駆動するための、全身のMPモーターが全力で稼働する。

致命傷ではなかったのかまだ維持されているが、出力が不安定になったプラズマと機神を閉じ込めている黒曜の鱗の結界を、機神が容易く膂力で引き千切る。

解放されたプラズマの熱と質量が大爆発を引き起こし、黄金の大地を砕いて趣味の悪いギラギラとした黄金の粒子が舞い散る。


同時に〈ビックパニッシャーバベル〉が発射と同様の速さで引き戻された。


串刺しになっていた邪神が解放される。辛うじて機神の腕に噛み付く力を残していたが、結界を引き千切った機神によって大地に叩きつけられ、同時にガッチリと咥え込んでいた機神の腕が解き放たれる。


『〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉全力稼働!!』


再び回転を始めた〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉を機神が天に掲げる。

マキシマムヘビィアダマンタイト製の巨大ドリルの質量と回転力が、天へと昇る竜巻を生み出し、ギラギラとした趣味の悪い黄金の大地の破片を巻き上げ、輝く黄金の竜巻となって、周囲に渦巻く烈風の音を轟かせた。


『砕け散れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


深海へと沈む死んだ鯨の如く黄金の大地に横たわる邪神に向かって全力稼働、膂力全開の機神の腕が、超回転と超質量ドリル〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉の先端が邪神に叩き付けられた。



次回更新は未定です。


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