機神VS邪神・2
邪神に召喚された無数のジャベリンが一斉に機神に向かって投槍形態で突撃してくる。
機神相手ではまともな戦力にならないジャベリンは使い捨てのミサイルとして扱われている。
『頭部〈グレートボルトバスターEX〉発射!!』
機神内部の広い操縦室。頭部の火気管制担当のギルメンの一人が叫び、同時に機神頭部に設置された半球状の電撃砲から眩い極太の雷が放たれた。配置的に正面の対象を狙えない電撃砲も電撃を曲げて正面のジャベリンの群れに電撃を放っている。
合計十機の電撃砲が、迫るジャベリンの群れに突き刺さり、ギルメンの操作で黒い群れを縦横無尽に焼いて引き裂いていく。
この武装の原型であるサンダーフォーリナーの〈ボルトバスター〉の時点でジャベリンやバルディッシュⅣを一撃で破壊できると言うのに、電撃砲〈グレートボルトバスターEX〉は、一機の威力がフォーリナーに装備された六機の電撃砲を併せた威力の三倍の威力があった。
運悪く真っ正面から食らったジャベリンが機体を跡形もなく極太の電撃で蒸発する。
放たれた電撃は群れを突き抜けた後、十機の電撃砲が左右に上下にそれぞれが動かされ動きに追従した電撃が迫るジャベリン達を電撃で焼き払い次々と爆散。
ジャベリン突き抜けてきた極太の電撃が猛烈な勢いで迫る邪神の装甲にも届き、装甲覆っている黒曜の鱗を吹き飛ばし、その下の装甲を赤熱させて邪神の怪魚面に幾筋もの線を描く。
機神の全身に配置された〈グレートボルトバスターEX〉は対空迎撃用兵器として、火気管制担当のギルメン達によって操作されている。
電磁パルスレーザーで電撃を誘導するこの兵器は精密な攻撃が可能で射程も自由自在。
強力だが射程の短い〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉と同じく、今回使用を制限されなかった兵器の一つだ。
機神内部のMPモーターで発電した電気を放つ兵器なのでジャベリンの〈マジックイレイザー〉はなんの意味もなさない。
電撃の誘導に使われる電磁パルスは魔法で生み出され制御されている物だが、継続的に照射されている電撃のガイドレールとして使われているだけであるため〈マジックイレイザー〉で消されても何も支障はない。
邪神は破壊されるのは想定内なのか行動変わらず。破壊されても次々とジャベリンを召喚して機神に特攻させ、自信もそのまま機神に向かって行く。
機神は更に胸部や両肩に配置された〈グレートボルトバスターEX〉を起動させて四十もの極太の電撃の嵐が、機神の眼前を埋め尽くす黒い風と化した無数のジャベリン達を切り裂き焼き払い、邪神の装甲を激しい電撃で打ちのめす。
しかし、ジャベリンの数は膨大。幾ら機神が焼き払おうともそれ以上の召喚速度で補充され機神に迫る。
恐ろしい破壊力を持つ〈グレートボルトバスターEX〉が、まるで尽きぬ夜闇を払おうとするか細い懐中電灯の光のようだった。
ゴガンッ!ガゴンッ!ゴゴンッ!
ついに、数に任せて電撃を掻い潜り、投げ槍形態のジャベリンの鏃のような頭部が次々と機神の装甲へと到達。激しい衝突音を機神の装甲でジャベリンが奏でる。
ゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
ジャベリンは仲間が砕けても無人兵器であるため恐れも躊躇いもない。
完全に処理しきれなくなった無数のジャベリンの衝突音が幾つも連なって響き、機神の三百メートルという巨大な機体が、ジャベリンの残骸と爆散四散した臨界状態の輝くMPに埋もれて見えなくなる。
『鬱陶しいっ!』
オゾフロの操作で右腕で回転し続けている〈ヴォルテックスグランドクラッシャー〉が横凪ぎに振るわれた。
高速回転する超重量ドリルが纏う竜巻が鞭のようにしなりながら黒い風のようなジャベリンの群れに叩き付けられる。
音速で迫りしなる渦巻く空気が、夜闇のようなジャベリンの群れを横から叩き潰して引き裂いていく。
際限が無いかのように思われたジャベリンが一瞬で消し飛び、装甲に焦げ目一つ、引っ掻き傷一つ無い新品同様の機神が露になる。
機神の装甲はゲルドアルドが錬金スキルで金属化した至高の蜂蜜を、オゾフロを始めとしたゲシュタルト所属の優秀な鉱人の鍛冶士達が鍛え直し、表面をアダマンタイトでコーティングした装甲だ。
大量に用意できて非常に頑丈なのだが、全身マキシマムヘビーアダマンタイトで覆ったオゾフロ専用機タイラントアーティザン程の防御力はない。
本来なら破壊までは行かないが今のような状況を無傷で突破するのは不可能だ。
それを可能にしているのが超大型MP増殖炉である。
一のMPを十万倍にする超大型MP増殖炉から供給され、機体を巡っている高純度MPが装甲を強化。機体各所の魔法装置を起動させて更に装甲に防御魔法を重ねることで、使われた素材を遥かに越えた防御力を機神に与えているのだ。
ゲルドアルドはそれを自力で行うことが可能ではあるが、MPは足りてもMPの供給速度が足りない。
莫大なMPを高速かつ自動で機械的に送り続けることが出来るMP増殖炉でないと、体高だけで三百メートルはある機神ゲシュタル・ゲル・ボロスの装甲を均一に強化し続けるのはゲルドアルドのステータスやスキル構成では難しい。
『うぉ!?』
一撃でジャベリンという闇を、超重量ドリルで切り裂き打ち払った機神操るオゾフロの目に、いつの間にか大口を開けて機神の目と鼻の先まで肉薄していた邪神が映り驚愕する。ジャベリンに視界を遮られている間に邪神は更に加速していた。
オゾフロが可憐な容姿に似合わない驚きの声を漏らす。
右腕を横に向けていた状態から一気に振り切った為、機神は右肩を前に突き出し超重量ドリルの遠心力で体勢が左に傾いていた。
百メートル近いマキシマムヘビーアダマンタイト製ドリルを振るった勢いの慣性は、機神でも容易には殺しきれない。
邪神は機神の右肩と肘を呑み込むようにその大口を閉じる。
同時に閉じた邪神の口内で無数の削ぎ刃を備えた高速回転するローラーが上下から競り出し、装甲に圧力を掛けながら押し付けて虚栄ではない火花を撒き散らし機神の右腕を咥え込んだ。
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