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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
スーパーレガクロス内戦編

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終演を告げる雷槌

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ゲシュタルトの最終兵器ゲシュタル・ゲル・ボロス。


体高三百メートルの機体はオゾフロお気に入りのオレンジと、悪趣味に輝くギラギラゴールドカラーで装甲を縁取り彩られている。


ゲルドアルド専用機以外の幹部専用レガクロスに使われている高出力MP増殖炉が合計で二十六機稼働させて現在その巨体は動いていた。

荒れ続けている天候の中を機動要塞モードでゆっくり降下し、戦場に現れたゲシュタル・ゲル・ボロスと、先行するサンダーフォーリナーに気付いている者は少ない。


その殆どが連絡を受け、必死に戦場から逃げ出したゲシュタルトのギルメンだ。




「なんだアレは……!」


数少ない存在は邪神オブシディウス、ザイブロン大将軍と竜巻人参兎竜だ。


「色は違うがあれは……雷槌(サンダーフォーリナー)!!おのれ!後ろの大物もゲシュタルトの玩具か!?」


ザイブロンが驚愕に怒り混ぜて叫ぶ。

城を吹き飛ばし、幾多の戦士に屈辱的な死を与えたゲルドアルドに対する怒りと、相対しているオブシディウスよりも小さいが、戦争から一年も経っていないのにゲシュタルトがあれほどの巨大な兵器を出してくる驚愕。


ゲシュタルトが何をしてくるのか全くわからない不安が、奥の手の竜まで連れ出しているザイブロンを苛む。




「ラビ!奴等を戦場から締め出せ!!」


「ギャロォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


ラビという愛称で呼ばれた竜巻人参兎竜の渦巻く風と人参の一対の翼が一つになる。それは戦場を覆い尽くす程の巨大竜巻へと爆発的な勢いで拡大していく。

〈ドラゴンエンチャント〉を付与されたビースウォート軍には何の影響もないが、オブシディウスの機体が揺れ、ジャベリンが突然の強風の威力に吹き散らされる。


吹き荒れる巨大竜巻は雨雲付近にいるフォーリナーの数十メートル先まで迫る。そしてその姿を大気と雨水を巻き込んで巨大な戦場を覆うドームに変異させた。

戦場を触れるものを風で切り裂き、衝突すればアダマンタイトも貫く竜のMP(マナ)から発生した竜人参(ドラゴンキャロット)が流れる結界だ。


結界の形成に巻き込まれたジャベリンの一部や戦樹が竜人参に貫かれミキサーにでも放り込まれたように砕かれて、渦の一部となって流されている。


体裁としては救援という名目でゲシュタルトはやって来ているが、実際には悪辣な侵略行為だ。

これ以上国土と戦場を荒らされたくないザイブロンは、空から降りてくる機械仕掛けの悪魔達の援軍を増やさない決断を下した。




『ゲルドアルドォォォォォォォォ!糞蜂蜜野郎がぁぁぁぁぁっ!!』


突然、オブシディウスの額から猛烈な勢いで何かが、怨念籠る金切り声を発しながら伸びる。それは竜巻人参兎竜の結界越しに更に輝きを増す、ギラギラとした趣味の悪い黄金の輝きへと、天に放たれた鏃のように天へと突き進んだ。


グナロークを乗せたイリシウムジャベリンは憎き宿敵(ゲルドアルド)へと憎悪を滾らせ身を焦がし、死んだことも知らずに向かっていく。


「ええぃっ!次から次へと!誰だおまえは!?」







「何か向かってくる?」


光も歪ませる圧縮された大気の渦と、その内部を流れる無数の巨大な人参が邪魔でゲルドアルドには良く見えないが、黒い何かが心なしか自分に向かって凄い速さで飛んできているように見える。


しかも自分に対して粘着質な怨嗟の気配がする。


そこまで感じ取れたゲルドアルドだったが、それがグナロークとまで考えに至らない。何故なら既に死んだとダイ・オキシン経由でグナロークに止めを指したとギルメンから連絡があったのだ。

自分が暫定異世界に行っている間に我が家である巣に不法侵入しようとしたと聞いていたので、消し炭にしてやりたかったとゲルドアルドが残念に思っていた。




「来ない方が良いと思うよー」


そう誰に聞かせるでもなくフォーリナーの機体内部で呟くゲルドアルド。向かって来ているのがグナロークとは知らないため相手を気遣う言葉も自然と出る。グナロークと知っていたらなにも言わないかっただろう。今からやることを止めることはなかっただろうが。


彼は数回。檸檬型で蜜色の結晶の目を瞬かせると、フォーリナーの無数のMPモーターにMPを供給し始める。ハニークリスタルポータルが存在する己の愛すべき我が家の一部。家と言うには物騒すぎる内臓武装……脚部大型電磁投射砲〈メテオキャノン〉を起動させる。


機体背部。病的に突き出た瘤状突起内部のMPモーターが甲高い音を立てて回転し発電を行う。産み出された電気は脚部に流れ、科学と魔法の装置で高効率で磁力に変換。爆発的な電磁誘導が事前に装填されていた特殊弾〈ギラゴルドペイント弾〉が脚部先端の砲口から飛び出した。

磁力で投射された特殊弾は刹那の間に音速を越える。発射の衝撃がフォーリナー周囲の雨が衝撃で消し飛ばす余波を生み出した。


フォーリナーの周囲には魔法で生み出した発射演出のための蒸気が無意味に脚部から吹き出して脚から生えた翼のように広がった。




発射と着弾の時間差は本当に僅だった。


竜がゲルドアルド達を戦場から締め出すために展開した渦巻く大気の結界。それはとても広く高度もあり、フォーリナーのほぼ真下だった。着弾の衝撃が機体に帰ってくる距離での炸裂。フォーリナーの機体を揺さぶった。


「おお?おおおおおお!?」と発射した本人が機体内部で、ゲルドアルドが思わず声を上げて驚く。何度も撃ってきた武装だが、ゲルドアルド本人がこれを食らったこともなく。こんな近距離の目標に命中させたこともなかったので予想外の衝撃だ。

ゲルドアルドは真下で大規模な結界が築かれたことに気付いていなかった。破壊力はあるが、攻撃のつもりなど微塵もなく。上下から降り、昇る雨で視界が悪かったのだ。




そいて結界は〈メテオキャノン〉を直撃に耐えきっていた。


戦樹系の素材と呪いで編み込んだザイブロン大将軍の城塞を一撃で粉砕した〈メテオキャノン〉の威力はプレイヤーや住人問わずに知れ渡る。警戒されるほどの威力だ。

しかし、それは大きく結界を変形させてはいるが、渦巻く大気の結界は〈メテオキャノン〉の威力を完全に受け止めていた。


かつて城を一撃で粉砕。〈重花粉症〉で苦しむビースウォートの戦士達に恐怖を振り撒いた〈メテオキャノン〉防いだ事実。


そのことに戦場は沸き上がるかと思われた。


次回更新は、明日の昼十二時の予定です。


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