ゲシュタルト強襲・3
◆ゲシュタルト・キメラライダー部隊
イリシウムジャベリンが、ダイノ襲撃を受けた時、既に空でもゲシュタルトのキメラライダー部隊と、ジャベリン軍団の戦いが始まっていた。
両腕と蛇のような長い下半身からプラズマを噴射し、暗い夜空をジャベリンが自在に飛ぶ。
満月が今にも泣き出しそうな雨雲に隠れ、闇に包まれても、その動きは全く衰えず。黒曜の装甲が保護色となって相手の視認しづらくしている。
更にジャベリンの一部が今まで、数やオヴシディウスの力で圧倒するのが目的だったため、使用していなかった、高度なステルス機能も使用し始めている。
一部だけなのは、視認できない機体と、僅かに視認できる機体を相手に見せることで、ステルス発動中の機体から意識を外しやすくしている。
空中で三百は存在するジャベリン軍団と相対する、五十頭のキメラに騎乗した、ゲシュタルトのキメラライダー部隊には、厄介極まる状況だった。
「「「〈ギラゴルドオーバーレイ〉発射!!」」」
ゲシュタルト機械と生体を融合した量産キメラサイボーグ。ブレイン・トマホークⅥに、この日の為に用意されていた特殊武装がなければ。
ゲシュタルトのキメラライダー達が騎乗する、エクレアを思い出させる特徴的な、キメラの金属製頭部の前方。直径二メートル、趣味の悪いギラギラとした金色の球体が形成された。
それはライダー達の唱和と共に球体は弾け飛び、無数の金色の光線となって、前方に照射される。
『『『『『?』』』』』
ブレインと相対していたジャベリンは達は回避しようとするが、金色の光線は早く避けきれない。しかし、機体に命中した金色光は、装甲を素通りして後ろに抜けていく。ダメージは何もなかった。
ジャベリンに搭載されている思考機能が、ダメージの無い奇妙な攻撃に思考能力を一部割り振るが、続いて、ブレインに備え付けられたポッドから小型ミサイルが一斉射されためにそれは中断される。
ブレイン一頭につき三十機の、爆雷青銅の弾頭を搭載したミサイルが稲妻と灼熱を纏って加速する。
『『『『『?』』』』』
ここでやっと、ジャベリンが先程の金色光の意味を知った。
ゲシュタルトの最新鋭技術でも、捉えられなかった筈のステルスを発揮している筈の装甲が、趣味の悪い金色に輝いていた。
金色光が通過した部分が、趣味の悪い金色に染まり厭らしい金色に輝いているのだ。
それは見透しの悪い夜闇の中、キメラの特殊な装備を使用しなくても、ステルス機能で姿を隠蔽し、闇に紛れた黒曜の装甲を纏うジャベリンを、ライダー達が視認できるほどの輝きを放っている。
趣味の悪い厭らしい金色の光を目標に、空間を埋め尽くすようにポッドから放たれたミサイルの群れが、ジャベリン軍団に殺到した。
ジャベリンが次々と爆散していく。
ミサイルは小型だがその威力は数発でジャベリンを粉砕する威力がある。軍団の三割が黒曜と金色の残骸に変わり果てて落下していく。
激しい雨でミサイルの弾頭である、爆雷青銅の内包する魔法効果が落ちていなければ、六割は今ので吹き飛んでいた。
黒曜と、厭らしい金色のジャベリンの残骸が舞散る戦場に、ついに耐えきれなくなった空が決壊し、雨が降り始めた。
激しい雨にさらされようとも、形すら浮き上がらず認識もできない筈の、強力なステルス機能は、タイタニス王妃や、曰く付きの金細工に宿る金の執着を元にしたレガクロス装甲塗装用呪いのアイテム【呪染装甲スプレーガン・ギラギラゴールドカラー】を浴びたことでゲルドアルドに発生したスキル、〈ギラギラゴールド〉をマジックアイテム化した武装の前に破れ去った。
ステルスの優位性が消失した。
この状態では激しい雨はジャベリンに不利に働く。
水のカーテンのような豪雨中ではジャベリンの〈ブラスター〉も〈プラズマ弾〉もまともに直進しない。
ジャベリンに残るのは、機体そのものを武器にした突撃である。
ジャベリンの長い下半身の間接が固定され真っ直ぐなり間接が固定される。
プラズマ推進機を備えた蝙蝠の翼を思わせる骨格のような両腕が畳まれ、ジャベリンはその名の通り、邪神の投擲槍となった。
「突撃来るぞ!接近戦用意!!」
ゲシュタルトの最新鋭キメラ、コープス・タバールに騎乗するプレイヤーペルソナがキメラライダー部隊のリーダーとして号令を飛ばす。
ブレインの翼に装備されていたミサイル内尽くしたポッドが次々と破棄されていく。
ペルソナの騎乗する先端に光球を埋没させた、肉色の芋虫のような巨大キメラのコープスが大きく身を震わせる。先端の光球からは、球体と同じ光を放つ無数の触手が姿を見せる。
ブレインはそれぞれ騎乗するライダーが選んだ、様々なモンスターのスキルを発動して迎撃体勢を整える。
ブレインはその特徴的な金属製頭部の内部にパッケージング化したモンスターの頭部を組み込むことで、簡単にスキルと、頭部と翼以外の生体部の外見のカスタマイズが可能。この機能のお陰で量産型でありながら、ブレインは独自性と汎用性を両立している。
最大六つ組み込める、頭部パッケージの組み合わせに何時間も悩むのが、ゲシュタルト所属のキメラライダーの日常である。
「叩き潰せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
咆哮するペルソナ率いるキメラライダー部隊。
ペルソナは号令と共にコープスが展開する触手を、光球を中心に花のように広げて加速させる。
岩、金属、結晶の鎧をスキルで纏ったブレインが、重そうな見た目を反してコープスを追い抜く驚異の加速を見せる。その後ろを雷や、雨が触れる傍から蒸発する火の塊等、スキルの発動で様々な状態になったブレインが加速して向かってくるジャベリンを迎え撃つ。
硬い鉱石を纏い加速力で先走る十数体のブレインが、豪雨を弾き飛ばしながら、投擲槍形態のジャベリン軍団と正面衝突。軍配はブレイン達に上がった。ジャベリンの突撃の威力に、纏った鎧を破壊されながらも、衝突したジャベリンを激しい衝突音を響かせて真っ正面から再起不能にする。
衝突の衝撃は凄まじく、激突の瞬間、衝撃波が雨を吹き飛ばして水の無い球状の空間が、一瞬生まれるほどだ。
ジャベリンは魔法現象を削ぎ壊す〈マジックイレイザー〉を纏っていたが、事前情報をしっかり集めているキメラライダー達は、魔法で鉱石を産み出すスキルではなく、MPを消費して鉱石を生成して魔法で鎧のように成型するスキルを使用しているため、〈マジックイレイザー〉の影響は無い。
〈マジックイレイザー〉は魔法現象と直接接触しなければ無害だ。
次に接敵したのはペルソナのコープス。コープスはゲシュタルトの最新鋭キメラという肩書きに恥じないその性能をジャベリンに味会わせた。光球を中心に花のように展開された触手は、突撃してきたジャベリンを次々と光の粒子に変えて破壊していく。
光球と触手は極限まで高められた〈補食融合〉スキルで発生している。
ゲルドアルドが提供した、出所不明のキメラを材料に作られたコープスは、光球とそこから発生している光の触手で触れた物体を、MPに還元してしまうのだ。
コープスは広げた触手で面積を拡大して次々とジャベリンを粉砕。
臨界状態で輝くMPの光へと変えていく。
完全に吸収できるわけではなく、二、三割りは取り逃しがあるが、数が多いので些細な問題だ。
先行した一部のブレインとコープスの取り逃しを後続のブレインが、魔法が主体ではないスキルによって擦れ違い様に攻撃を加え、両陣営が完全にすれ違った後、ジャベリンの数は更に四割が破壊されていた。
キメラライダー部隊の損害は軽微。
一部、運悪く炎熱系スキルに特化した、頭部パッケージの組み合わせにしていた、キメラがダメージを負ったが、戦闘は継続可能。この世界ではスライムをベースにして作成されるキメラには再生能力が備わっている。
更にブレインには、金属の頭部と翼を繋ぐ脊髄型の魔法装置に生体再生促進用に回復薬が、拡張された空間にタップリと備わっていた。
キメラライダー部隊は大きく回り込むように反転。同じく反転しようとしているジャベリン軍団に再度突撃を仕掛けようとするが。
「後方!?回避運動、散らばれ!!」
コープスの優れたステータス由来の鋭敏な感覚器が、後方から高速で接近する無数の物体を感知。騎乗系スキルで、コープスとステータスヲ共通しているペルソナが慌てて号令を飛ばした。
空中で反転時の隙を狙った、無数のジャベリンではない。
人がその手で投擲した投げ槍が音速でライダー達に飛来する。
高速で反転していたしようとしていた、横向きの遠心力に加え、キメラの身体を回転させて、鋭利な斬撃武器にもなる金属の翼での回避と防御を行うバレルロールでキメラライダー達が、それまでの行動を放棄して、慌ててその場から離脱していく。
ゲシュタルトのキメラの性能が高く、ライダーの騎乗スキルの高さが、キメラとライダーが空中分解しかねない、無茶苦茶な回避運動を成功させた。
それが音速で飛来する常識はずれの投げ槍の被害を最小限に抑える。
無傷だったのはその能力で投げ槍を迎撃、完全に無効化したペルソナのコープスだけだ。
次回更新は未定です。
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