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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
スーパーレガクロス内戦編

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37/115

ゴリラ舞う・3

ゲシュタルト内で行われているレガクロス操縦ランキング。ゲーム時間で一年間トップ3に入っていたランカーにはギルドからフルカスタムレガクロスを贈られます。


ブックマーク登録ありがとうございます。


ゲルドアルドが望む展開だが状況はシビアだ。


味方の数は多いが、ゲルドアルドが見た限りではメカゴリラの装甲は粗悪品で防御力が低い。動きは悪そうに見えなかったが性能の詳細は知らないので不安だ。なんとか性能を想像できるゴリラ型ゴーレムは三体しか居ない、回電大猿(モーターコング)ベースのキメラに関しては一体だけ。


とりあえずやることは皆に伝えようと、ゲルドアルドは自分を中心に円形範囲に居るギルメンに向けてギルドチャットを開く。


ギルドチャットはプレイヤー同士でも、同じギルドのメンバーにしか聞こえない。範囲も指定しているので聞こえるのはドーム内に居るギルメンだけだ。


同時にシャークムートが、自身の専用武装〈ホオジロマグネット(戦闘子機)〉を起動させた。

ホオジロサメを象った頭部装甲を挟むように、胴体上部に据え付けられた二対の鮫型親機の目がギラリと光る。それぞれの右と左、一列に横腹を接続して並んでいた鮫型戦闘子機。親機から切り離され、空中を二メートルの機械の鮫が泳ぎだす。

磁力を介した通信で連携する戦闘子機が、一斉に機械仕掛けの鮫の口を開いて口腔を攻撃的に光らせた。光の数は全部で二十。ゲルドアルドの記憶が確かなら、あれは粒子ビーム。戦闘子機の鮫口の口腔奥、拡張空間に内に納められたメタルスライムを身体の一部を魔法で過熱、収束して加速投射する武装だ。


(こちら、ゲルドアルド。

ドームに居る皆さーん、迫ってる三機はボクが無力化するので、レガクロスに乗ってる人は、上空の弾込め中の八機を対処お願いします)

(……無理だな)

(俺ちゃんのシャークムートになにする気!?)

(ゲルさん、ゴリブラは有効距離二十くらいしかないですよ?)

(助けてー!)

(ウッホー!)

(ウッホー!)


ゴリブラ?あぁ、ゴリラブラスターかな?と範囲指定の広域チャットから聞こえた、見知らぬ単語を推測しながら、ゲルドアルドに向かってくるシャークムートと二機の黒いレガクロスに向けて魔法を使った。


「〈ハニーメタルバインド〉!」


ゲルドアルドの魔法が発動するまでの僅かな時間。その隙を突いて鮫型子機から粒子ビームが放たれる。

口腔に溜め込まれた金属粒子が放つ二十の光が解き放たれ、修復出来ずに開いたままの疲弊した蜂蜜と蜂蜜結晶の盾の穴を潜り抜ける。障害を素通りした粒子ビームが、ゲルドアルドが隠れる半壊した蜂の巣を命中。

最大出力で、更に一点に集中して放たれた粒子ビームは半壊しているとは言え軽々とスキル生み出された頑丈な蜂の巣を貫通した。


耐久値を越えた蜂の巣の実体が光の粒子となって砕けて消滅する。


蜂の巣の背後にまで到達した粒子ビームがゲルドアルドを守る大蜜蜂(ハニービー)の毛玉を襲う。爆発が発生して大蜜蜂(ハニービー)の毛玉を激しい噴煙が呑み込んでしまう。


(ゲルさん死んだニャ!?)

(おぉ……死んでしまうとは情けなーい)

(生きてまーす)

(サブマス、ダイ・オキシンからのお知らせです。現在ゲシュタルトは第三王子に手勢の襲撃を受けています。ジャベリンによってバルディッシュⅣが全機奪われました。戦える人は各自侵入者の排除をお願いします。)

(うそん)

(ギルマスと私はゲシュタル・ゲル・ボロス地下格納庫。ブラウさんはキメラ大牧場。ゲルさんはドーム型多目的試験場でそれぞれ戦闘中、判断に迷ったギルメンは最寄りの幹部の指示を仰いでください。)

(しゃ、しゃーくむーとぉぉぉぉぉ!?)

(サブマスの全域チャットだ)

(レガクロスに乗ってる人、機体に飛行付与するので空の叩き潰してください)

(……大事だな。あぁ任せろ、飛べるなら問題ない)

(え、ゲルさん飛行付与なんてできたの)

(ウッホホ)

(まっかせちょー、だから俺ちゃんのシャークちゃんを虐めないで!)

(ゲルさんが魔法支援使えるんだ……)

(それ以前に普通に魔法で戦えるのが驚き)

(ゴーレムはー?)

(ウホ)

(ハニービーのヒモじゃなかったのか)

(ボクのゴーレムと協力して後キメラの人も、転んでる奴の背中を引き剥がしますよ。家のっぽいので。)

(レガクロス第四格納庫でデーモンとアーティザンがオートで敵と戦闘中。近くに居る人はダッシュで逃げてください)

(親方がブチギレニャ!?)

(ウホホー!)

(皆さん、ボクは元々ソロで、食い扶持は自分で稼ぐ人ですよ)


第一格納庫に格納されていた筈のバルディッシュⅣ百機が全て奪われたという中々ショッキングな情報が飛来した気がするが、ゲルドアルドは今は忘れることにした。


爆発は粒子ビームのせいではない。粒子ビームが届く前にゲルドアルドの前に飛び出た、爆蜜盾蜂ニトロハニービーボンバーの身体を覆うハニカム型蜂蝋パネルが爆発して、粒子ビームの威力を相殺したのだ。

ボンバーの防御スキル〈リアクティブワックスアーマー〉である。


そしてゲルドアルドが爆発にびびりながら、結果的にカウンターで発動した魔法〈ハニーメタルバインド〉が、シャークムートと二機の黒いレガクロスを襲う。

新たに蜂蜜結晶の盾にヒビを作りながら着地した、シャークムートと黒いレガクロスが突然足場を失って空中でバランスを崩した。蜂蜜と蜂蜜結晶の盾を〈ハニーメタルバインド〉に再利用したのだ。

ゲルドアルドの魔法で盾となっていた蜂蜜と蜂蜜結晶が全て元の蜂蜜に戻りシャークムートに殺到。一部は二機の黒いレガクロスの両手足翼に襲いかかる。


バランスを崩され上下左右前後。全てを蜂蜜に囲まれたシャークムートが為す術もなく蜂蜜に飲み込まれ、蜂蜜色の球体に閉じ込められる。蜂蜜というのは少量なら簡単に流れ落ちるが、大量ならば刺した物が自立するほど粘度が高い。

十二メートルはある機械と魔法の巨人シャークムートなら腕一本、脚一本ならば簡単引き抜いたが、機体を丸々呑み込まれたら、動きに多いに支障が出る。MPが込められ、魔法で操られている蜂蜜ならばなおのこと。この状態では指一本動かすのは難しい。

球体になってシャークムートを閉じ込めた蜂蜜は、ゲルドアルドの発動した魔法に従って高質化。やがて球体表面が研かれた金属のような光沢を放ち始める。

必死に動こうとしていたシャークムートは、その蜂蜜の変化に伴い僅かな抵抗も許されず、完全に動きを止めた。


同時に派手な音をドーム内で響かせ、二機の黒いレガクロスが横転した。二機の黒いレガクロスは、必死に立ち上がろうと、あるいは再び飛ぼうともがくが、何一つ上手くいかない。何故ならば、背部の翼と尻尾の推進機を蜂蜜金属で塞がれ、更に腕と脚の先を蜂蜜金属の球体に覆われているからだ。両肩の機関砲も蜂蜜金属で覆われている。


脚の先が突然球体になってしまっては、まともにバランスを取ることも出来ず、立つことままならない。派手な音を打ち鳴らして黒いレガクロスは再び無様に倒れた。


爆蜜盾蜂ニトロハニービーボンバーの爆発で産み出した噴煙を纏い、ゲルドアルドと毛玉を守っていた二体のバルディッシュⅣ型ゴーレム走り出す。目標は無様に床の上でもがく二機の黒いレガクロス。

空中からの爆撃から吸収した炎や熱で、爆撃で欠けた身体を修復して余るMPを蓄え、能力を強化した炎熱吸収素材の身体が力強く床を蹴る。

三体のギルメンが召喚したゴリラ型ゴーレム。ギルメンを乗せた回電大猿(モーターコング)ベースのキメラも黒いレガクロスに止めを刺すために走る。


空中で巨大な琥珀の中に太古の虫のように蜂蜜金属に閉じ込められたシャークムートの姿は、ロボットのフィギュアをレジンに閉じ込めたアート作品のようだ。蜂蜜金属が宝石のように輝いている。

閉じ込められているだけで操縦者は、もしくは動力されているモンスターは生きている。蜂蜜金属からはみ出しているジャベリンの翼と尾がゲルアルドに向けられた。魔法で空中に固定され、翼と尾が根元から半分以上固められているため自由に動かない。回避ではなくシャークムートは、プラズマ弾による反撃をしようとしている。


ゲルドアルドは初めから蜂蜜不足ではみ出す事を想定していた。たぶん攻撃を選ぶだろうと曖昧に予測していたゲルドアルドは、特に慌てることは無かったが、想定外にMPを大量に消費する感覚が気持ち悪い。変な声で唸りながらMPをひねり出して追撃の魔法を放つ。


「〈なんと美しい蜂蜜琥珀なのでしょう〉んにぃぃん」


蜂蜜金属の球体から聞こえていた、シャークムートのくぐもったMP増殖炉の騒音がピタリと止んだ。ホオジロサメを模した頭部装甲バイザー下の金属眼球も、MP供給が断たれたことで魔法による集光が停止。シャークムートの目から光が失われる。




ゲルドアルドのジョブの一つ【至高の蜂蜜】。


このジョブは無理矢理分類するなら回復、呪術、召喚魔法に強い森司祭系に分類される。戦闘も出来るが生産系だ。シャークムートの操縦者を仕留めるのに使ったスキル〈なんと美しい蜂蜜琥珀なのでしょう〉は呪術系魔法に分類される攻撃魔法。


〈なんと美しい蜂蜜琥珀なのでしょう〉はレジストに失敗した者を一瞬で蜂蜜琥珀へと変化させてしまう。


通常、蜂蜜は琥珀になることはないが、相手を蜂蜜で固めることで琥珀に見立て、事実をねじ曲げて琥珀になったことにするという呪いだ。

琥珀の内部にいる生物は、太古に生きていた生物として事実をねじ曲げられ、生命も動くものも数百万年前に活動を止めたことになる。


所謂、即死攻撃。


至高の蜂蜜というゲルドアルドが生み出し、MPをたっぷり含んだ特別な蜂蜜の内部という、限られた範囲だからゲルドアルドにも可能な強力な魔法である。


レガクロス等のアイテムには殆ど効果がないので、ジャベリンの操縦者、あるいは動力原として取り込まれているモンスターだけを始末してシャークムートを無傷で確保できる。

もう一つ、レジストを失敗した対象を至高の蜂蜜に変える魔法スキルがあるが、そちらはより条件が厳しく、レジストもされやすい。万が一成功してしまうと、操縦者、あるいは動力にされているモンスターごと、機体を蜂蜜に変えてしまうので使わなかった。


カスタムバルディッシュ・シャークムートは、コストの関係でバルディッシュⅣに使用しなかった部品や素材が使われ、操縦者のメックマンに合わせて調整もされている。更に一品物の専用武装や装甲まで装備している。お陰でシャークムートは高性能と引き換えにバルディッシュⅣの四倍という驚きの御値段になっているのだ。


ゲルドアルドは小心者。レディパール達のように敵だからと、派手にぶっ壊すという思いきった行動は出来なかった。


「〈蜂のように舞い〉〈蜂のように刺す〉」


ゲルドアルドが呼び出せる蜂モンスターの飛行能力と攻撃に毒と刺突の追加攻撃を付与する魔法を使用する。付与魔法の対象のメカゴリラ達にMPの光が集まる。二種の魔法が付与された証拠に二回機体が短く発光。


「んにぃぃ」


ギルメンを守る巨大な蜂蜜の盾。二十三のレガクロス付与魔法。大量のMPが無くなる感覚を久しぶりに何度も味わう。巣に頼らず大規模な魔法を何度も使い、大量の蜂蜜を身体から抜き取られるような感覚に、動かない顔をしかめ、思わず呻き声がゲルドアルド口から漏れる。


(ゲルさんのハニービーは?)

(ウッホ)

(ウホホ)

(付与配布しましたー。レガクロスの人受け取れましたかー?

ハニービーは完全自動に切り替わってボクに付きまとってる戦闘子機の回収と保護したギルメンの守りに専念します)

(ウッホー!)

(……受け取った)

(俺ちゃんのシャークちゃんに、今即死攻撃叩き込まなかった!?)

(受け取った)

(受信)

(敵、まだモンスレ温存してね?どうすんの)

(とったぞー)

(勢い凄いなので目測誤らないでくださいね)

(ウホッ)

(流石ゲルさん、俺たちに翼を授けるー!)

(受け取りました)

(ウホウホ)

(ポランミサイルで支援するのでその間に突撃してください)

(バナーナ)

(はいはーい)

(あいあーい)

(お猿さーんだよー!)

(ウホホ)


さっきから野生化したギルメンがウザいなーと、内心考えながら、ギルドチャットから意識を切り替える。親機を装備したシャークムートの完全沈黙で、半自動から完全自動に切り替わり、爆蜜盾蜂ニトロハニービーボンバーのスキルで発生した噴煙に隠れた、ゲルドアルドの周囲を漂うホオジロマグネットに彼は注意を向ける。


(……モヒカンコング試験部隊行くぞ!)

(((((((((((((ウッホー!)))))))))))))


『『『『『『『『『ウッホー!』』』』』』』』』


「ぶふっ」


広域ギルドチャットと完全シンクロした、メカゴリラの拡声器から聞こえるゴリラの鳴き真似に思わず吹き出すゲルドアルド。というかなんだモヒカンコング部隊って、ハンモウさんそれがそのゴリラの名前なの。


ゲルドアルドが吹き出したのが切っ掛けなのかはわからないが、周囲を囲んで飛ぶ戦闘子機が一斉に攻撃してきた。大蜜蜂(ハニービー)の毛玉に向かって四方八方から粒子ビームを浴びせかける。

親機からの支援がなくなり、メタルスライムの体積が回復してないのか、最初の一撃よりもビームは細い。しかし純粋な炎や熱ではない粒子ビームは、粒子金属の質量が熱と共に高速で投射される。次々と噴煙を切り裂きながら突き刺さる粒子ビーム。


灼蜜衛蜂レッドハニービーガーディアンの〈炎熱操作〉スキルで、ある程度逸らすことが出来たが、〈炎熱操作〉は炎と熱を操るスキル。投射された鉄の質量に押負け、毛玉が崩され大蜜蜂(ハニービー)達が四方八方に吹き飛ばされる。


毛玉の守りが崩されると同時に、中から三色の巨大な大蜜蜂(ハニービー)が飛び出した。

三色の巨大な大蜜蜂(ハニービー)の一人、レディパールの背にはゲルドアルド。ディエロとディレッドの背には、悲鳴を上げる数人のギルメン。彼らは振り落とされないように、自身の身体を召喚したスライムでディエロとディレッドの背に固定している。


彼らの周囲を守るように爆蜜盾蜂ニトロハニービーボンバーが追従する。


「〈ポランミサイル〉〈蜂のように舞い〉〈蜂のように刺す〉によぉぉぉ!」


スキルが宣言され、ゲルドアルドの太股のハッチが開き、生成された花粉の炸裂弾が発射される。同時にポランミサイルに魔法を付与。かなり厳しくなってきたMPを消費して彼は変な声で悲鳴を上げる。


MPの使いすぎによる苦痛は、現在装備しているアイテムでは防げないらしい。MPを消費するほど鮮烈になっていく。

四方八方から複数のポンプで蜂蜜を吸いだされているようだ。


ゲルドアルドから発射されたミサイルは、レディパールの背上のゲルドアルドや、ディエロとディレッドを追いかける機械仕掛けの鮫ではなく、ギルドチャットでギルメンに宣言した通り上空の黒いレガクロスに向けて。


彼の身体、蜂の巣の外殻太股部分が開き、次々と生成される花粉の塊が、後部から魔法の火を噴いて飛ぶ。途中魔法によって爆蜜蜂(ニトロハニービー)の推進力を付与。飛行スピードを強化されグンッ!と加速する花粉の誘導炸裂弾が黒いレガクロスに迫る。

次回は明日の12時更新予定です。


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