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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
決戦兵器編

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デスクロス

異世界のレガクロスは【デウス・エクス・ダークネス・ホーリー・マキナ編】で登場予定です。

 


「ゲルさん、丸い頭がアルファベットのDみたいな形になってますけど、色々大丈夫ですか?」


 凹んだゲルドアルドの頭を修理するため、召喚された指先サイズのモンスター、大蜜劣蜂プチハニービーワーカーに顔の半分を覆われているゲルドアルドにダイ・オキシンは話しかける。階段を降りながら後ろを振り向いて、ゲルドアルドに話しかけるダイ・オキシンの顔には、相手を気遣う表情がわかりやすく出ていた。


 ゲルドアルドが妙に情緒不安定なのが気になっている。


 彼はゲルドアルドが現実で体調不良になってないか心配だ。


 何かを企んで居そうな胡散臭い美形であるダイ・オキシンだったが、その見た目に反してゲルドアルドの「突然の出張が決まって言葉もわからないところで一ヶ月働いていた」という嘘を普通に信じてる。


 その気持ちはGMとしての利益が半分以上を占めているが、残りは普通にギルドの幹部同士、そして友人としての心配だ。


「大丈夫じゃないです、凄い痛いです」


 ゲルドアルドは鈍痛が酷い。

 そういうダイ・オキシンの気持ちも察する余裕が現在不足している。

 ゲルドアルドは頭の痛みを普通に訴えた。


 アニメートアドベンチャーの痛覚の仕様は「痛くはないが、痛いような気がする」というもので痛くはないがついつい「痛い」と言ってしまう。実際に痛みを訴えても、それを聞いたダイ・オキシンが不思議に思うことは無かった。


 装備したマジックアイテムの御蔭でマシになっているはずだが、頭に重りを無理矢理に捩込まれた。そんな痛みにゲルドアルドは耐えていた。

 身体が蜂の巣と蜂蜜で構成されているゲルドアルドにはHP回復薬もHP回復スキルも効果が薄い。

 魔人族の多くは、独特な回復手段をオンリージョブやオンリースキルで保有している。そういうタイプの魔人族は、即効性のある通常の回復手段が効き目が悪い人が多い。


 蜂の巣の中に入れば直ぐに治る傷。しかし蜂の巣に直ぐに戻れない状況だと、大蜜蜂(ハニービー)に外殻や内部のハニカム構造を修理してもらう必要があった。


 大蜜蜂(ハニービー)達はせっせと、手足や口から蜂蝋を分泌して凹んで割れているゲルドアルドの頭部を修復している。


 唯一、下級精霊の蜂蜜精霊(ハニーエレメンタル)の蜂蜜に関係するモノに対して回復効果がある回復スキルは、ゲルドアルドにも即効性があり効果的な回復手段なのだが、そのモンスターは周囲に大量の高品質な蜂蜜がある状態じゃないと召喚、作成しても直ぐにも消えてしまう。

 下級精霊と分類されている蜂蜜精霊(ハニーエレメンタル)は、精霊の中では下級というだけでモンスターの中では上級の力がある強力なモンスター。


 精霊全般がそうだが、能力が強力な変わりに色々と制約があるのだ。


「妾は謝らんぞぉー」


 御立腹のティータは小さな手袋嵌めた手で、ギラギラと光り輝くゲルドアルドの頭を擦り、キュキュキュキュー!と愉快な音を鳴らしていた。

 半分放置されているとは言え、王族という国の要人を突然近くで叫んで驚かすのは、普通に処刑されてもおかしくはない。

 全面的に非を認め、ゲルドアルドはキュキュキュキュー!と愉快な音を鳴らされる行為を甘んじて受け入れている。


 キュキュキュキュー!と愉快な音が螺旋階段に反響する。

 三人はダイ・オキシンのラボ、その地下スペースへと続く階段を降りている。


 妙にダークネスホーリーマスターの事を知りたがるゲルドアルドにダイ・オキシンは、ダークネスホーリーマスター由来のとある一品を見せることにした。

 カツカツと足音が響く階段を下りていくダイオキシの背をティータの美し繊細な足でハイキックを受け、丸い頭の形がDになってしまったゲルドアルドと、今だプリプリとご立腹なティータの二人は付いていく。

 付いていくと言っても、ティータはゲルドアルドの肩に乗っているので歩いていないが。


 階段を降りるとそこには光の届かない、奥まで見通せぬ暗い空間が広がっていた。


 足元を照らしていた魔法の照明装置は階段の終わりの踊り場までしかない。正面には広がる空間は闇に満たされ、広いのか狭いのか全く見通せない。

 闇の奥からは、ギチギチと幾重にも重なる金属が強く擦られる音が響いて来る。

 この闇の奥には何かが居るようだ……と、大分マシになったがまだ鈍痛に苦しむゲルドアルドは思った。音から考えると、何かが鎖にでも繋がれているのだろうと彼は安直に想像する。


 かなりのホラーなシチュエーションだが、この部屋の主であるダイ・オキシンは勿論。幼い少女だがタイタニス王妃という国一番であろう住人の戦士鍛えられ、王族としての教育を受けているティータも何も恐れていない。この中で一番小心者なゲルドアルドでも同じだ。


 ゲルドアルドの死にたくないという恐怖は、死んでも復活出来ると知った今でもあまり変わらない。寧ろ精霊王との出会い忘却しているせいで、よくわからない未知の恐怖も抱えてしまっている。

 それでも死んでも復活できるという確信を実体験経て得られたのはかなり大きい。


 更に彼の感覚は、揃えたマジックアイテムの御蔭で、痛覚に関する感覚はゲームとしてアニメートアドベンチャーをプレイしていた頃に近づいている。

 痛みや死といった、生存本能にダイレクトに訴えかける要素が排除されれば、そこはゲルドアルドも経験豊富な高レベルプレイヤーの一員。

 例え目の前の闇の中から、突然ボーンズドラゴンが飛び出してもゲルドアルドの恐怖を煽るには少々不足だ。


 先ほど取り乱してしまったのは、死んでも復活するコチラではなく、死んだら終わりの向こうの話しだったせいである。

 死に怯え、蜂の巣の中に引きこもっていたのが地味にトラウマになっている。


 ダイ・オキシンが魔法を使い手の平の上に生み出した光球を、闇の中に投げ込んだ。


 手の平サイズの、魔法で作成された光球。それは床を照らしながら真っすぐ飛んで行く。壁も天井にも光は届いていない。

 この闇に包まれた部屋が、かなりの大きさで有ることを闇に浮かぶ光球が飛行距離で示している。


 地上にあるレガクロス用のコロシアム位はありそうだと、ゲルドアルドは思った。


 真っすぐ飛んでいく光球は、ついに床以外のモノを三人の目の前に照らし出した。見えたのは直立する二本の足の先端。ゲルドアルド距離感が正しければ、通常のレガクロスよりもかなりの大きく見える。


 ダイ・オキシンから死霊(アンデッド)術士だと聞かされた、暫定異世界に居る宿敵ダークネスホーリーマスター。

 死霊(アンデッド)術士が使役出来る死霊(アンデッド)で強力なモノと言えば無数の骨で身体が構成されているボーンズクリーチャーだ。

 ダークネスホーリーマスター由来で、鎖で封印しておかなければならない存在と聞いて、無意識にそういった強力な死霊(アンデッド)を想定していたゲルドアルド。

 しかし足の先端に素材が骨と思われる鋭い爪こそ備えているが、明らかに人の工芸品であろう洗練されたデザインの鎧を纏う、レガクロスの如き両脚の出現に少し困惑している。


 ダイ・オキシンが操り、徐々に上昇していく光球が足先以外を照らしはじめると、更にゲルドアルドの困惑が深まった。

 鎧を纏った死霊(アンデッド)なら存在するので驚くべき事ではない。その程度でゲルドアルドも困惑したりはしない。


 錬金術士と死霊(アンデッド)術士は互換性があり、錬金術も死霊(アンデッド)術士作成できるクリッターを元に、頭にレッサーはついてしまうが生骨(リビングボーン)エント(樹霊)等の死霊(アンデッド)を作成するスキルを取得できる。

 大蜜蜂(ハニービー)でだいたい事足りるので、ゲルドアルドはそのスキル取得しているが存在を忘れてしまっているが。


 ついにダイ・オキシンが操る光球が、竜種の如き鋭い爪をレガクロスのような両脚の先に備えるモノの全容が照らし出す。


 それはやはり、金属の鎧を身に纏うレガクロスを想わせる巨人だった。


「あれがとある場所でぶn……んん!入手したレガクロス由来の技術が使われている特殊な死霊(アンデッド)です」


 物騒な事を言いかけて、言い直したダイ・オキシンの言う通り、目の前の巨人は死霊(アンデッド)だった。


 全身を洗練された、悪く言えば言えば飾り気の少ない鎧で身包む巨人。太い柱に頑丈な鎖によって封印されている死霊(アンデッド)は、時折身をよじり、鎖がギチギチと不快な、幾重にも重なる金属音を掻き鳴らす。鎧兜から覗く血の色をした一対の目の光が、ティータとダイ・オキシンを交互に睨んでいた。

 死霊(アンデッド)の性が、若い命が宿る肉を持つ者に引き付けられているのだろう。


 肉を持っていないゲルドアルドは死霊(アンデッド)の興味の対象外だ。


 纏う鎧は金属製。だが鎧の隙間や露出している部分から見えているのは骨だ。それを見て「なるほど」とゲルドアルドは納得する。

 いったい目の前の死霊(アンデッド)の何処にレガクロスの要素があるのかゲルドアルドは最初はわからなかったが、露出している間接部の骨が、レガクロスの可動部を想わせる機械的な作りになっていた。


 死霊(アンデッド)とそんな機械的な可動機構を組み合わせる意味をゲルドアルは理解出来ないが、動死体(リビングボーン)系魔物の小さな骨の集まりや、MPが凝固した擬似軟骨でもない。


 その大きさはアイゼルフの象徴にもなっている、ゲシュタルト開発のバルディッシュⅣよりも二回りは大きい。流石にゲシュタルト幹部専用機程ではない。

 規格外の全長のサンダーフォーリナーと、規格外の全容のパンツァーブルーダーを抜きにしても、残る幹部専用機グレートキングデーモンとタイラントアーティザン程ではない。


 それでもかなりの巨体だ。


「鑑定でわかった名前は【デスクロス】。

 試作品らしくあまり完成度は良くないのですが、面白い物が色々あって参考になりましたよ。グレートキングデーモンにも【ペインフレーム】を始めとしたデスクロスに使われている技術を流用してます」


「え、ペインフレームがこれ由来……というかダークネスホーリーマスター由来なんですか?」


 ペインフレームとは、重量などの負荷が増す程、強度が増していく特殊呪術が仕込まれたレガクロス用の骨格である。


 骨格にかかる重量で強度が増すため、安価で軽量だが強度の関係でレガクロスの骨格に不適切な素材を使用可能。素材の量も減らす事が出来る。

 ペインフレームはレガクロスのコスト削減や更なる強度向上等に役立つ素晴らしい技術である。


生骨巨人ジャイアントリビングボーン死体巨人(ジャイアントゾンビ)が、脆い骨や腐肉だけで、ガス欠もせずにあの巨体を支えている原理を解明、利用したものだと判明してます。デスクロスは高度なレガクロスの知識と死霊(アンデッド)術士の知識が無いと作れない代物です」


 生骨巨人ジャイアントリビングボーン死体巨人(ジャイアントゾンビ)は通常のレガクロス。もしくはそれ以上の巨体を持った巨大死霊(アンデッド)だ。

 この死霊(アンデッド)達の身体はかなり脆い。なのにあの巨体で鈍いながらも、しっかりと両足で大地を踏み締めて歩くことが出来る。足や腕がちぎれかけているという状態でも彼等は外部から攻撃しない限りちぎれかけの腕等が脱落すること無いのだ。


 ダイ・オキシンの説明に寄れば、その原因は彼等が保有している特殊な能力から来ている。

 彼等は脆い身体に掛かる自重で発生した、痛みや苦しみをエネルギーに変え、その巨体を支える力に変換できるのだ。

 なので彼等の身体は長時間ゆっくりとかけられる圧力には強いが、外部から加えられる瞬間的な圧力だと、変換が間に合わずあっさりと破壊されてしまう。


 これが巨大な死霊(アンデッド)が脆い身体で自重を支えられるカラクリである。


「グレートキングデーモンで試験運用して十分実践に耐えられると判明しましたので、ゲシュタル・ゲル・ボロスにも採用されました」


「「げしゅたるげるぼろす?」」


 ゲルドアルドとティータ声が見事に重なった。

 ゲシュタル・ゲル・ボロスとはなんだろう?と聞き覚えの無い名前に二人して首を傾げる。


「完成の目処が立ちましたのでオゾさんが決めた、ウロボロス(仮)の正式名称ですよ」


 ゲルドアルドの記憶が確かなら、先程行われていた第二回武装試射会ではオゾフロはウロボロス(仮)と呼んでいた筈である。


「ボク、全く聞いてないのですけど……?」


「妾もなのじゃ」


「カタストロフキャノンで、ティータ姫殿下以外の皆さんが吹っ飛んだ後に決まりましたので、ゲルさんは気絶してましたね」


 カタストロフキャノンをうっかりゲルドアルドが起動させてしまったあの時、模擬弾発射の衝撃によって、凄い勢いで吹っ飛ばされたオゾフロと衝突してゲルドアルドは粉砕された。

 彼は気絶し、会場の隅にかき集められていたゲルドアルドは、ウロボロス(仮)名前が決まった事を把握していなかった。


 ゲシュタルトからゲシュタル。ウロボロスからボロス。更に動力担当のゲルドアルドからゲルをとって、あの超巨大決戦巨人兵器は【ゲシュタル・ゲル・ボロス】名付けられた。


 ゲルドアルドは勝手に名前が使われることになって気恥ずかしい。


「うー……まぁ、それはさて置いて」


 取り合えず気恥ずかしさは、頭の隅に追いやる。

 ゲルドアルドは装備している前垂れ付きの腰巻きを、その巨大な手でまさぐると、大玉西瓜以上の自身の頭を包める手の中に赤黒い色の様々なマジックアイテムの数々を鷲掴みして取り出した。


 血のよう紅い長剣。肋骨で作ったような紅い兜。肉で成型したような気味の悪い十字架等々。

 それはゲルドアルドが暫定異世界で煉獄の炎から奪い取ったマジックアイテムだった。


「ダイ・オキシンさん、ダークネスホーリーマスター作成のマジックアイテムと交換でペインフレームの<レシピ>を下さい」




 ◆




 ボヤボヤと揺らめく筒のような物を手に取り、まるで目の前にいるゲルドアルドを突き刺そうと構えているダイ・オキシン。

 実際ダイ・オキシンは手にしたスキル<レシピ作成>で生成したレシピ情報を突き刺すつもりだ。


「ゲルさーん、いきますよー覚悟はいいですかー?」


「い、いつでもこーいっ!!」


「蜂蜜卿よ、腰が情けない事になっているのじゃ」


 ゲルドアルドの腰は限界まで後退しており、両膝はガクガクと震えている。ティータ揶揄に言い返す余裕は今の彼には無い。

 ゲルドアルドは異様にびびっているが、ゲルドアルドとダイ・オキシンがやろうとしているのはただのペインフレームのレシピの受け渡しだ。


「はい、グサーっと」


 ダイ・オキシンが手に持ったレシピ情報をゲルドアルドの大きな額に向かって軽く振り下ろす。ブスリとペインフレームのレシピがゲルドアルドの大きな額に突き立った。

 額に深々と突き刺さったレシピ情報からダイ・オキシンが手は離した。

 すると光り輝く細長い見た目のレシピ情報は、グニグニとその身を捩って揺らし始める。更にその身を大きく振り回す猛然と額へと潜り始めた。

 まるで肉をドリルで掘り進むような水々しい音がゲルドアルドの額から鳴り響く。


 ゲルドアルドの身体にレシピ情報が潜り込んでいく!


「BGEEEEEEEEEEEEEEE!?」


 かつて、精霊王ゼークハーブ因子を無理矢理捩込まれた時と同じくゲルドアルドの喉から出たとは思えない。悪魔の断末魔のような絶叫が上がる。絶叫をしながら真後ろに大きくのけ反るゲルドアルドの頭部は、床に重々しい音を立てて衝突した。

 ブリッジ状態のゲルドアルドの額には、まだその身をよじって額に潜り込もうとするレシピ情報がうごめいている。


「レシピ受け渡しの苦しみは知ってますけど、それにしてもゲルさん最近リアクションが激し過ぎません?」


 逆さまに床に着地している巨大な頭部を支点にして、ゲルドアルドのサイズからすると異様に幼児体型の短い足でバタバタと目茶苦茶に足を動かし、頭中心にグルグルとその場で回転しながら絶叫し続ける。そんなゲルドアルドを呆れた目でダイ・オキシンは見ていた。


 ティータは完全に興味が無いのか、ダイ・オキシンのラボに乱雑に詰まれているマジックアイテムを繊細な指先でツンツンしている。


 アニメートアドベンチャーのレシピの受け渡しは苦しい。


 五感が制限されているアニメートアドベンチャーの中で、唯一<レシピ作成>で作成されたレシピ情報という特殊オブジェクトは、受け渡す際には受けとる側に凄まじい苦痛が生じる。

 受け渡すレシピ情報の位階が高いほど苦痛は大きくなり、受ける側のレシピに見合ったスキルやステータスを持っていない場合は、HPが減って最悪死ぬこともある。


 死んだ場合は勿論受け渡しは失敗だ。プレイヤーでも変わらない。


 始めてレシピの受け渡しを体験したプレイヤー達は、運営に凄まじい数の苦情や改善メールを送ったが、この仕様は一切変わることは無かった。魔法やマジックアイテムでもこの苦痛は軽減できず。体験したプレイヤーは口を揃えて「糞運営!殺す!!」と罵った。


(うんぎゃぁぁぁぁ!?おのれ糞運営ぃぃぃ!!いつか殺すぅぅぅぅぅ!!!)


 逆さまのゲルドアルドの硬質な蜂蜜色の結晶の目から光が放たれる。

 殺意を帯びたハイビームが、ゲルドアルドの回転に合わせてダイ・オキシンのラボをグルグルと照らしだした。


 普通にアニメートアドベンチャーをゲームとしてプレイしていたゲルドアルドは、ゲーム内の住人をかなりの人数を死に至らしめている。

 そこには殺意は無く淡々しているか「強い人を撃破したぞー」という軽い喜びしかない。

 暫定異世界で本物の人だと理解した上で煉獄の炎を殺した時も同じだ。

 現実でのレシピ情報の受け取りは、そんなゲルドアルドの殺意を抱かせる程に想像を超えた苦痛を伴っていた。


 今始めてゲルドアルドは明確な殺意を抱いている。

 これは様々な痛みを実際に体験して、苦痛に慣れてきたために精神的に余裕が出来てきたせいでもある。


「……!?」


 ダイ・オキシンは突然わけのわからない悪寒に襲われて身を震わした。

 彼は運営やGMと言える立場だが、別にこの仕様考えて実装したのは彼ではない。とばっちりである。


<レシピ作成>で作成されたレシピ情報を受けとると、かなり精度や品質は悪くなるが収得していないスキルが必要なアイテムでも作成可能になる。苦しいのはわかりきっていたが、ゲルドアルドはダイ・オキシンからレシピを受けとる必要があった。


 全ては異世界蜂の巣防衛のため。手放しがたい無限に近い自分だけのエネルギー資源を守るためである。


 帰ったらレディパールの体毛をモフモフしようとゲルドアルドは決心した。


明日も12時に更新です


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