試射会・前編
ゲルドアルド以外のゲシュタルト所属の魔人族と、幹部専用レガクロスの登場です。
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超大型MP増殖炉の爆発事故によって、ゲルドアルドが死ぬほど辛い目にあってから一週間が経過した。
死にたくない。
一度死んでゲームのシステム通りに甦ったゲルドアルドだったが、死に方があまりにも酷かったためにその思いは一段と強くなっていた。
もう死のショックで幼児退行するのはまっぴら御免である。
洒落にならない精神疾患を患ったゲルドアルドだったが、今は回復している。蜂の巣の中にいる限り彼の身体は過剰に元気である。精神も身体もそれにに引きずられて勝手に元気になってしまうのだ。
未来に不安を覚える現象だったがゲルドアルドは今は気にしないことにした。
実験によって爆発四散した実験用の蜂の巣は既に再建されている。
自ら生み出す振動に耐えきれなかった超大型MP増殖炉も、より強固な素材に材質が変更されて増殖させたMPの一部を炉の構造強化に利用することで爆発前よりも遥かに頑丈になった。
代わりに生産コストが桁一つ増えてしまったが量産することは考えていないのでそれは置いておかれた。
再度実行される事になった超大型MP増殖炉の起動実験に恐怖したゲルドアルド。
スキル<ギラギラゴールド>を利用したとある方法でなんとか精神的にも死なずに起動実験は無事に終えた。
強化された超大型MP増殖炉は十分実用に耐えられると証明され、超巨大レガクロスことウロボロス(仮)の動力源としてゲルドアルドの提案した、ある方法と共に無事に正式採用された。
MP増殖炉が採用されたことで予定されていたレガクロスオリジンの永久機関を摘出し、無理矢理使えるようにした巨大な装置よりも、小型で短い時間で大量のMPを選られる超大型MP増殖炉が採用されたので実弾が中心だったウロボロス(仮)の武装が一新されることになった。
レガクロスオリジンの永久機関は無限にMPを生み出すが一度に得られるエネルギーは少ないため第一回では実弾を中心に選ばれていた。
「第二回!ウロボロス(仮)武装試射会の開催だオラー!!」
左手にマイク、右手に沢山のスイッチが表面にある長方形の板状の機械を持った、オゾフロの開催を告げる叫びが会場にこだまする。
彼女の髪の毛が、感情の高ぶりでブワリと膨らみシルエットが大きくなる。その姿はまるで威嚇する小熊である。
彼女がその可憐な容姿とは相反する熊を頭からバリバリと食い散らかす熊型のモンスターを苦も無く殴り殺せる事実を頭の片隅に追いやる事ができれば、非常に愛らしく感じる姿だ。
オゾフロの逆鱗にうっかり触れて、ぶん殴られた事があるギルメンの一部が彼女の小熊の威嚇ポーズを見て震えている。
拳を振り上げて盛り上げる武装開発者と観覧に来たギルメン達。
ここは爆発四散して再建された実験用の蜂の巣とは別の蜂の巣。
レガクロス、キメラ、ゴーレム、その他戦闘車輌の試作武器の試射をする為の場所である。
超大型MP増殖炉の起動実験を行った蜂の巣は、中空構造の円柱の壁に囲まれた煙突のような形で大蜜蜂は常駐していないが、ここは半円の円柱を横倒しにした中空の壁に囲まれており、的の制作や片付けを行うために大蜜働蜂、大蜜錬蜂、大蜜送蜂が常駐している。
空間の拡張が行われており、奥行きは当然ながら横にもかなり広く、通常のレガクロスなら横一列に三十機が余裕を持って並べる程だ。
「司会は俺様オゾフロ!審査員はサブマスのダイ・オキシン!」
「やぁー皆さん、本日はお日柄も良く……」
「同じくサブマス兼武器へのMP供給係のゲルドアルド!そして蜂蜜を採取に来ていたティータ姫殿下だ!」
いつもの胡散臭い笑み浮かべながら挨拶をしようとしていた、ダイ・オキシンを無視してゲルドアルドと、ゲルドアルドの頭からベールか長髪のように流れでる蜂蜜で、一人ティータイムを楽しむティータ姫が紹介される。挨拶を遮られてダイ・オキシンは切ない笑みを静かに顔に浮かべた。
「むぅ!?蜂蜜がまた昨日より美味しくなっているのじゃ!」
昨日もゲルドアルドをお茶会の為に拉致したティータの舌は、蜂の巣の魔人ゼークハーブの因子を与えられたゲルドアルドの至高の蜂蜜が、ただでさえ極上の味が更なる高みへと昇っていくのを敏感に察していた。
「何度でも言いますけど理由は知らないですよ姫殿下」
精霊王との接触は幼児退行した際に完全にゲルドアルドの記憶から消えていた。【Unlimited】のレベルが上がった訳でも無く、日に日に美味しくなる蜂蜜に首を傾げ、レディパールを初めとしたハニービー達に纏わり付かれる毎日だ。
一見すると、可愛い女の子とイチャイチャしているようにしか見えないゲルドアルドに、嫉妬混じりの野次が浴びせられる。
ゲルドアルドはいつものことなので、イチャイチャしているつもりなど微塵も無く、的外れな野次をするっと無視した。
現在、ゲルドアルドにはMPケーブルが繋がれている。
オゾフロの言う通り、今回多数お披露目される、MPを大量に使用する武装のMP供給を担当するためだ。
「同じくサブマス、更に今回も武器の試写を担当するブラウリヒト!審査員も兼ねるぞぉ。そして、ブラウリヒト専用機、キメラとレガクロスの融合したキメラレガクロス【パンツァーブルーダー】だ!」
試射場にMP増殖炉の騒音が響き始める。
オゾフロの指差す方向には、青色の光を纏う不気味な機体が、強靭な四つの足で横幅なら、レガクロスとして現状最大サイズのサンダーフォーリナーに匹敵する巨体を支えて存在していた。
まず目に付くのは、平たく長い四つ足を持つ巨大な下半身。
それは二体のタコ型のモンスター左右でつなぎ合わせている。
錬金術関連のスキルである<生体造形>によって生体を歪曲され、レガクロスの下半身として整えられたその姿は圧巻だ。
それと比べる細く、印象も小さく見えるが、通常のレガクロスの倍はある美しい造形の女性型レガクロスの上半身が次に目に付く。
地球の北欧系の神話に出てくるような鎧を纏う戦乙女と言った姿だ。
それが蛸の顔と顔の間から、不快に盛り上がる肉の塊に背中を埋没させるように生え、もしくは内側から突き破ったように存在している。
蛸のキメラの下半身と女性型レガクロスの上半身の対比が、酷く不気味で嫌悪感すら抱かせる。
通常のMP増殖炉よりも甲高い音を吐き出す高出力MP増殖炉の音がその不気味な存在感をより一層引き立てている。
ブラウリヒト専用レガクロス【パンツァーブルーダー】は片手を上げてアピールする。その腕は流麗な美しさを保ちながらも太く強靭で、一目で女性のとわかるデザインの、華奢に見える頭部と胴体に比べるとかなり大きい。
「そして審査員兼的役!ゲシュタルトレガクロス操縦ランキング三位のハンモウだ!」
高出力MP増殖炉に負けない声でオゾフロはマイクに向けて叫ぶ。
全体が青く光るパンツァーの隣に佇む、全体が緑色に染まっている苔岩の魔人【ハンモウ】の操るバルディッシュⅣが、片手に持った機体全体を隠せる大きさの大盾で床を叩き、高出力MP増殖炉に負け時とMP増殖炉の音を響かせ、アピールしている。
機体をよく見るとただ緑に染まっている訳じゃなく、磨き抜かれた滑らかな金属装甲を纏っている筈の機体は、表面が凸凹しており水分を含んでいるように水々しい。
この機体は苔岩の魔人のハンモウのスキルによって苔に覆われているのだ。
彼は普段はバルディッシュⅣ重装甲装備のカスタム機を使用しているが、今回は的として武器の評価を担当するので通常のバルディッシュⅣと、機体と同じくハンモウのスキルで、苔に覆われた大盾を使用している。
「そして特別枠で偶然目に付いたので適当に拉致してきた素材開発部のウミネコだ!」
「親方、俺ってここに必要かニャ?」
一見すると猫背で審査員席に座る人より大きな黒猫。近くで見ると磯の香りを漂わせる、大小様々な雲丹で身体を形成する、異様な姿をした人物。雲丹猫の魔人の【ウミネコ】は、審査員席に座りながら何故自分がここに居るのか全くわからないと言った表情……端から見たら顔を形成する雲丹の棘がうごめいてるだけ……美しい朱珊瑚の三泊眼を瞬かせる。
雲丹で隠れているがその下は朱珊瑚で出来た猫の骨格と骨格の内側に海水が漂っている。わかりづらいが手足の先は猫足の形をした海星だ。
彼は鍛治士であり、ギルドの鍛治士の頂点であるオゾフロの部下だ。普段は珊瑚を鋳造、鍛造できる【超合珊瑚鍛治士】という彼のオンリージョブでレガクロスが水中で使う装甲等を開発している。
「最初の武器はー……強化型電撃誘導攻撃装置グレートボルトバスターEX。開発はレガクロス武器開発部一班だ、ゲルドアルドー!」
オゾフロの呼びかけで工事現場の削岩機を思わせる激しい羽音を響かせ、ゲルドアルドに召喚されたハニービータンカーが牛並の大きさの自身よりも大きい四角い金属の箱を、脚で保持しながらパンツァーの真上にやって来た。
ハニービータンカー運んできた金属の箱は、一辺が六メートル近くあり、球体が埋め込まれている。
金属の箱から半球の砲を覗かせるグレートボルトバスターEX。
この武装は、ゲルドアルド専用機サンダーフォーリナーの頭部に装備されている、電磁パルスで発射した電撃を誘導して攻撃するボルトバスターの強化版だ。
箱には急造の取ってとトリガーが設置されている。
パンツァーは両腕を伸ばし、大蜜蔵蜂からグレートボルトバスターEXを受け取った。巨大なグレートボルトバスターEXを、女性模しているデザインとは裏腹に軽々と片手で保持し、今度はハニービーワーカーが運んできたゲルドアルド繋がるMPケーブルを、もう片方の手でグレートボルトバスターEXに繋いだ。
その間にハンモウが乗る苔色のバルディッシュⅣは移動する。
背中の推進機が起動すると苔色のバルディッシュⅣは、まるでスケートのように滑らかに移動してオゾフロ達がいる場所から素早く距離を取った。
その動きは異様に統べらかで速い。十メートルの金属塊なのに風切り音や、擦過音の一つもしない。
距離は百メートル、普段は的を置いている場所に機体を立たせて大盾に隠れるように構える。
「距離拡張はー……十くらいで良いだろう」
オゾフロが手にしていた幻影魔法を利用した試射場の空間拡張してる魔法装置を仮装コントローラーを操作する。実態は無いが触れて感触がある幻影の試射場の操作機械だ。
パンツァーと苔色バルディッシュⅣとの距離が発動した空間操作の魔法で三十メートルの距離が伸ばされ十キロに変化した。
十キロも離れると十メートルの金属の巨人であるレガクロスでも小さく見える。しかしこれでは結果が見えづらい。そのため幻影を台の上に投影する魔法装置が観客に見やすい位置に設置されている。
「幻影投影装置も問題なし。」
観客のギルメンからも見え易い位置に十キロ先に居る苔色のバルディッシュⅣが投影されるの確認したオゾフロが呟く。
ブラウリヒトが操るパンツァーの巨大で強靭な腕を持つ女性型の上半身がグレートボルトバスターEXを構えた。
二匹の巨大蛸の合わせて十六の蛸足を、四本で一本に纏めた強靭な四足。その内の前方の二本が右、左と順番に凄まじい速さで伸びた。
四本の極太の蛸足が並ぶ、先端だけは指のように別れる四連槍と化した前足が、頑丈に作られた試射用の床を容易く貫いた。
パンツァーの下半身はキメラである。一見すると蛸が二匹繋がれているだけにしか見えないが、それ以外にも様々なモンスターの素材が使われている。
地面に突き刺さった足先に近い部分から、金属の光沢を持つ奇妙な液体が滲み出てた。これは蛸の身体に体液の替わりに充填されている、錬金術士がスキルで作成する錬金モンスターのスライムだ。
ゲシュタルト謹製の水との親和性の高い特殊合金スライムが、蛸足から染み出し身体を幾本の触手状変型し伸ばすと、次の瞬間、鋭い爪と硬い毛に覆われた肉食獣の足に変身した。
束ねられた蛸足から滲み出た肉食獣の足爪は、深々と、やはり頑丈な床に容易くカギ爪を突き刺さし、強固に前足を固定する。
パンツァーは固定した前足を機体を支えるアンカーとして使い、後ろに体重をかける。機体後方をを支える後ろ足は肉が弾けるような音と共にミチミチと膨張。衝撃に備えている。
「ギルマス、いつでも良いぞ」
ブラウリヒトの凛々しい声が準備完了を告げる。
声はパンツァーの外部スピーカーの役割を果たす魔法装置から出力され、それを聴いたオゾフロが頷き「三、二、一で行くぞー」と言葉を返した。
それを聞いたブラウリヒトがパンツァーの女性型部分で頷き返し、グレートボルトバスターEXを起動させる。
ゲルドアルドからMPケーブルを通じてMPが供給され、グレートボルトバスターEX内部のMPモーターが高速で回転し電力を高めていく。
「よーし、てめらぁサングラスつけろぉ!耳栓も忘れるなぁ!色々吹っ飛んでも知らないからな!特に姫殿下忘れずに!……着けたな!?カウントダウン行くぞぉ!」
観覧席を見回しギルメンと審査員役の幹部達と+αが視界保護用のサングラスと耳栓装着したのを確認したオゾフロが、カウントダウンを始める。
「「「「三、二、一、撃てぇぇぇ!」」」」
既に仕込みが済んでいる、サングラスと耳栓を装備したギルメン達の声がオゾフロのカウントダウンと唱和する。
最後の合図と共にグレートボルトバスターEXが、大盾を構えたハンモウが乗る苔色のバルディッシュⅣになんの躊躇もなく発射された。
グレートボルトバスターEXから直進する雷が飛び出した。
目の前で特大の雷が落ち、空気を目茶苦茶に引き裂くよう轟音が発生。一瞬、試射場全体が青白く染まる。
発射から数舜の遅延なく、ブラウリヒトは十キロの距離を初めて使う武器に関わらず見事に苔色のバルディッシュⅣが構える大盾に雷を命中させた。
幻影投影装置に投影されている苔色バルディッシュⅣは、大盾で耐える事に成功していた。
大盾の表面を雷が流れ、後ろに逸れていく。苔に守られていない床や背後の壁を雷が打ち砕かれて破片を発生した熱で融解していく。それでも確かに苔に覆われた大盾はグレートボルトバスターEXと拮抗していたが、それは一瞬だけだった。
雷撃の威力を逸らし切れなくなった苔に覆われた大盾は、表面の苔を焼滅させながら溶解して砕けちり、勢い収まらない雷がそのまま機体に直撃する。
オゾフロが<アイテム召喚>で用意した大盾は大きく破損したため、実体を維持できず光の粒子となって消えていく。
機体正面の苔の殆どが吹き飛び、機体自体が凄まじい勢いで後方に吹き飛ばされる。
「「「「おぉー!」」」」
上がる感嘆の声。ハンモウの高い防御能力とオゾフロが作成した大盾の頑丈さを知るギルメンの驚きの声だ。
<アイテム召喚>は文字通りMP消費してアイテムを召喚するスキルだ。しかし召喚するには、そのスキルを使う本人がそのアイテムを作成経験がないといけない。
オゾフロの種族は、文字通り金属を鍛えあげて性能を上げる固有技能を持つ鉱人。そして鍛治に特化したジョブ構成。更にレベル制限が解放される第六の特殊ジョブ【Unlimited】取得者。
廃人であり、ジョブや種族補正抜きにしても、高いプレイヤースキルを磨き上げている、オゾフロの作成したレガクロス用の大盾は、生半可攻撃ではびくともしない。
今回召喚した大盾はレガクロス用の量産を前提にした物なので、それほど高価な素材ではないが、それでもオゾフロの能力で破格の性能を持っている。
それがギルメンの目の前で木っ端微塵に吹き飛ぶのは驚きである。
「オーイ、ハンモー!生きてるかー!?」
オゾフロが拡声器で倒れたままの苔色じゃなくなったバルディッシュⅣに呼びかける。やや間があった後に倒れている機体が右手を上げた。
バルディッシュⅣが立ち上がると露出した装甲が再び苔の覆われる。
「では、審査に移るぞー!まずは思いっきり食らったハンモー!」
拡張された距離が戻され、百メートルに戻った距離からバルディッシュの拡声器でハンモーが喋る。
「辛うじて防げたが、盾が無かったら死んでいた」
ハンモウに続いて実際にブラウリヒトが的確だが辛口の評価を言い、ダイ・オキシンが長々と見た目からでも得られる技術的な面まで語りはじめてオゾフロに言葉遮られ、再び切なげな微笑を浮かべる。
「蜂蜜卿よ、見た目の派手さの割に幻影を見る限り機体には殆どダメージは無かったようじゃが、あれが噂の<防御蘚苔>なのか?」
ティータ姫の小さな手でペチペチと頬を叩かれ振り向くとゲルドアルドはそんな疑問を問われた。
「ハンモウさんも戦争にも出ていましたけど、ティータ姫は見たことなかったのですか?まぁ、防御力を上げるスキルなので見てもわかりづらかったと思いますが……」
苔岩の魔人ハンモウのジョブの一つ、【超防蘚苔】には物体に苔を生やし、苔が生えてる土台を強化するスキル<繁殖強化>と苔を利用した防御スキル<防御蘚苔>という物がある。
<繁殖強化>で生やしたは苔は<蘚苔防御>使用することで、衝撃や魔法で発生した現象を滑らせる事が出来るという非常に強力で応用の効くスキルだ。
レガクロスの足裏に生やした苔で地面滑って移動する事にも使える。水の上や、長時間は無理だが空気の上を滑るという事も可能で、重力、空気抵抗等を滑らして高速で移動する事もできる。
今回パンツァーから距離を取るのにも使用している。
「素材にもよりますが、防御力が二百パーセントくらいアップ。電撃もスキルで受け流しているので、ハンモウさんが乗って無かったらあのバルディッシュⅣは大盾があっても跡形も残ってないですね」
「それだけ強化されてあの威力、恐ろしいのじゃ」
「サンダーフォーリナーにも付けてほしい」
「ところでなぜ蜂蜜を引っ込めるのじゃ?」
「なんとなく」
理由無くあらがいたくなる。そんな日がゲルドアルドにもあった。
ゲルドアルドとティータは争い始めた。中睦まじい様子にし見えないじゃれ合いに、それを見たギルメンから舌打ちが飛ぶ。
「ハンモー!機体に異常はあるかー!あるなら新しいの召喚するから言えよー!」
「問題無い」と再びバルディッシュⅣに苔を纏わせるハンモウの簡潔な返事を確認したオゾフロは、新しいレガクロス用の大盾を召喚した。
ドスンと傍らに出現して地面に突き立った大盾を、削岩機のような激しい音を発てて飛んできた大蜜蔵蜂が脚で掴み持ち上げた。
そのままハンモウの苔色のバルディッシュⅣに大盾を届けるために飛んでいく。
その間にパンツァーは大盾を届けに行った大蜜蔵蜂とは別のハニービーから次の武器を受けとっていた。
ブラウリヒトは前足の固定が緩んでいないか確認して新しく受けとった武器をパンツァーに構えさせる。
ハンモウも受け取った大盾に苔を生やし、苔色のバルディッシュⅣに構えさせた。
「次の武器はマグネティックサイクロンバンカー!開発はレガクロス武器開発部二班……ゲルドアルド!パンツァーとバルディッシュの間に花粉だ!」
「?……りょーかーい?」
「もっと寄越すのじゃー」
ティータの同年代と比べても、小さい身体くらいなら身体の半分以上覆えてしまう大きな手で、蜂蜜を求めるティータを抑えつつ、ゲルドアルドは意味はわからないが取り合えずスキル<ポランミサイル>を発動した。
ゲルドアルドの太股正面が膝を基点に開き、内部から生えた雄花型花粉ランチャーから、ミサイル状に成型された花粉の塊が三機現れた。
花粉の塊炸裂弾は後部から火を噴きながら飛んでいく。
アーチ状の軌跡を描いて花粉の炸裂弾はパンツァーと苔色のバルディッシュⅣの間に着弾して黄色い花粉が両機の間にばらまかれた。
お読みいただき、ありがとうございました。
次回更新は、明日の昼の12時の予定です。
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