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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
見慣れた遊戯世界編

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18/115

襲撃者

ゲルドアルドは内蔵とか重要器官が存在しないので何処にダメージを与えようがクリティカルにはなりません。

◆アイゼルフ王国・王都近辺・鉛の錆林(ブラレッドフォレスト)




なんと趣味の悪いギンギラギンなのでしょう。


召喚したハニービーワーカーの視界を経由して、むやみやたらにギラギラと黄金に輝くフォーリナーを確認したゲルドアルドはそんな感想を胸中に抱き絶句していた。


その絶句するゲルドアルドも趣味の悪い厭らしい黄金色になってしまったフォーリナーと同じくギラギラと輝いている。

原因は第二王女ティータが使用したレガクロス装甲塗装用マジックアイテム【呪染装甲スプレーガン:ギラギラゴールドカラー】のせいだ。


2Dアニメで描画されるアニメートアドベンチャーの世界で彼だけが質の悪い3Dアニメみたいになってしまっている。


「うぬー何もかもがギラギラと輝いて眼が痛いのじゃー」


「目にダメージを負う人が多いな……」とゲルドアルドはどうでもいい感想を考えつつ、金銀財宝が押し込まれた宝箱の中のように欲望にたぎる輝きに満ちているフォーリナーの操縦席を見回す。

ティータは目を押さえているが、ゲルドアルドの目は他の人とは構造が違うので眩しいが痛みは覚えない。


マジックアイテム【呪染装甲スプレーガン】レガクロスの装甲塗装用に開発されたアイテムだ。その効果はレガクロスの装甲を呪って指定の色に変えるというもの。色を変質させる呪道具なので塗装皮膜は存在せず、装甲が傷ついても決して塗装は禿げることはない。なので間接や金属眼球等、塗装皮膜を作ってもはいけない場所に拭きかけても機能を損なわない。


誰でも簡単にレガクロスを好みの色に綺麗に染められます。


装甲を呪う為に作成されたので本来なら生物に拭きかけても染めることはできない。しかしゲルドアルドの蜂の巣の身体を持つ魔人だ。例外的に染めることが可能だった。そしてその例外故に悲劇が起こった。


フォーリナーもその根幹はゲルドアルドが作成した蜂の巣である。そしてフォーリナーパーツの多くはゲルドアルドが作成したもので巣の素材に非常に近い上にゲルドアルドのMPが染み付いている。

その結果、ゲルドアルドとフォーリナーを纏めて一つの物体と判断した【呪染装甲スプレーガン】はそれらを纏めて趣味の悪い厭らしい輝きの黄金色に呪いで染めてしまった。


日の光を浴びてフォーリナーが輝いている。自己主張の激しい黄金の輝きは上空から遥か地上まで届き隠密性に多いに支障が出ていた。

隠蔽系の魔法を発動する魔法装置を発動しているがフォーリナー自体は隠蔽されていても厭らしい黄金の輝きが隠蔽を跳ね退けて輝いている。


「謎のPK集団が占拠する狩り場に着いたけど、こればれてるよね」


「んぬーなんだ御主は、噂のぴーけーを狩りにいくつもりだったのか?」


ゲルドアルドはまだ目を押さえている第二王女ティータと愉快なやり取りしながらフォーリナーを王都近くの初心者向け狩り場……鉛の錆林に到着していた。


奇っ怪に螺曲がる黒錆の木々、疎らに生えたそれらが暗く沈んだ色に染める林。


あまり太く育たない木はその多くが途中で折れ曲がり、また上を目指して伸びるを繰り返して不気味な形を形成している。そのせいか以外と視界は開けており、重い柔らかい鉛に身を包んだモンスターは鈍重。アイゼルフ国内モンスターとしては比較的柔らかい。


鉛毒にさえ気を付ければ、モンスターは倒しやすく。鉛で作成されるスライムは重い身体で壁役として優れ、この林で手に入る素材で作った毒物は、モンスター避けとしても重宝されている。


謎のPKが暴れたせいなのか木が自重で自然に折れたのではなく、外圧で曲がった木が何本もあり、熱で熔けたような跡も飛行するフォーリナーの金属眼球を通して確認できた。

鉛毒を嫌って大型モンスターはここには寄り付かないのでPKの仕業だろうゲルドアルドは考える。


彼は操縦席で【呪染装甲スプレーガン】の呪いの侵色に伴った不快感でもがき苦しんでいたが、障害物も無く強い飛行型モンスターも出ない場所だったので内部の混乱とは裏腹に何事もなくフォーリナーは目的地上空へとたどり着いた。


とりあえずゲルドアルドはフォーリナーをその場で静止させる。


厭らしい黄金の輝きが初心者向け狩り場である王都に近い場所にある鉛の錆林(ブラレッドフォレスト)の黒錆びに覆われた黒い森に降り注いだ。

突然、天から降り注ぐ趣味の悪い厭らしい黄金の輝きに驚いたのか、重く錆びた黒い鉛を纏う鉛蜥蜴ブラレッドリザード鉛甲虫ブラレッドビートルがゴソゴソと重たい身体に鞭を打って逃げて行った。


「空からギラギラ光る正体不明の何かがやってきたのじゃ。高度な隠密能力を駆使してわざわざ弱者を狩るような愚かな臆病者など、とっくに逃げておるだろう」 


趣味の悪い赤い淵の金色のミラーシェードで眼を保護したティータがもっともなことを言う。折角空から一方的に蹂躙してやろうと思ったのに相手がいないのでは意味が無い。


隠蔽の魔法装置のMPコストを払いつづけるのも馬鹿らしくなったので解除してしまった。


「……適当に<メテオキャノン>ぶっ放そうかなー?」


ゲルドアルドはPK狩りをティータに台なしされた怒りの行き場をこのフィールドに求めたくなった。環境破壊万歳な気分だ。


「そんなことよりも妾と共に城に帰り、母上の生誕の宴を大いに盛り上げる打ち合わせをするのじゃ。あと、むやみやたらに狩り場を荒らすのは王族として止めさせてもらう」


「わかっておりますよ第二王女でん……!?」


ガギン!と金属同士がぶつかる激しい音と衝撃、突然フォーリナーの正面から襲った攻撃に機体が浮き上がり傾く。ゲルドアルドは反射的にハニービーガードとハニービーサーチャー達を複数機体の外に召喚した。ゲームで身についた奇襲された時の対応策だ。


「おぉ、ゆーれーるーのーじゃー」


「何処から!?攻撃!?」


召喚された無数のハニービーガード達はフォーリナーを守る為に機体の全周囲を囲み警戒する。しかし敵が見当たらない。


「何処にもいない……?」


ガギンと再び衝撃がフォーリナー襲う。機体の背後を守っていたモンスターの一部が死に一部がダメージを負った。姿は見えないが音から判断すると様子から判断するとかなり大きな物がフォーリナーと衝突して素早く離れているようだ。


「姿の見えない襲撃者……これは噂のぴーけーなのではないか?」


「嘘でしょ……!」


ゲルドアルドは戦慄した。彼はPKの行動から隠蔽のみに特化しただけのプレイヤーだと考えていた。


全長五十五メートルの今もかなりの高度を維持して浮遊している、厭らしい黄金色に輝く怪しい巨大レガクロスに怯まずに攻撃を仕掛ける性格だとも、ダメージは殆ど無いが重量のある巨体を揺るがす力があるとは微塵も思っていなかった。


怯えるゲルドアルドをさらに追い詰めるようにかなりの重量を伴った攻撃が連続してフォーリナーを襲う。


ガキンガキンガキンと連続で全くの別方向から飛来する攻撃に機体の周囲に展開するハニービーガード達が蹴散らされていく。


空中からフォーリナーの武装でPKを吹っ飛ばそうと気軽に考えていたゲルドアルドだったが、その覚悟の甘さが仇になった。

恐怖で思考が真っ白になる。激しい衝突音の度に巨大なフォーリナーが揺さぶられ彼は「ひぃ!?」と情けない悲鳴を口から漏らす。


間髪入れずに全く別方向から来る見えない攻撃に「この高度な隠蔽を維持したまま攻撃できる存在が複数いる!?」と今だ死んでも復活するとは信じ切れていない彼の心が恐怖に染まりかけ……。


「落ち着かぬか」


恐怖で錯乱しかけるゲルドアルドの無防備な後頭部をティータが無造作に取り出した豪華な装飾の短剣が襲う。


「いったぁぁぁぁぁぁぁぁい!?」


なんの躊躇もなく後頭部に根本まで短剣を突き立てられたゲルドアルドが叫ぶ。


普通ならHPがあっても即死だが、頭部に重要器官が存在しない蜂の巣の魔人である彼だからこそ痛いだけで済んでいる。

反射的に痛みの元である後頭部に刺さった短剣抜いたゲルドアルドを二度目の鋭い痛みが襲い、彼は悶絶した。


傷口から蜂蜜が噴き出したがすぐに傷は塞がる。


「むう、もったいない」


「もったいないじゃないよ!?いきなりなにをするんですか!

しかもこの短剣凄い性能……というかデミゴッズ!!!ボクを殺す気ですか!?」


「それは王族の尊厳を守るの短剣じゃ、真の力は王族自らが自分に短剣を使うことで発動する。

巣の中に居る御主相手では妾が何千何万回とその身体にこの短剣を突き立てようとも御主に致命傷を与えるなど不可能だぞ?」


「それよりも、入れ物が欲しいのじゃ」と可愛らしい両手で受け止めた蜂蜜をの入れるものを要求されたゲルドアルドはその愛くるしい姿に怒る気が失せた。苦々しく心の中の表情を歪めて、CPを消費して<アイテム作成>で適当な蜂蜜結晶の子瓶を作成して差し出す。ティータは細心の注意を払いながら蜂蜜を受け取った子瓶に注ぐ。

真珠色のティータの手袋は蜂蜜を弾くニトロハニービーの体毛を編んだ手袋なので、綺麗に蜂蜜を子瓶に移すことが出来た。


子瓶の蓋を閉めるのを確認したゲルドアルドはティータに短剣を返す。


「こ、この非常事態によくそんな悠長な態度でいられます……ねっ!?」


「御主こそ、何故不必要に怯えておるのじゃ?御主のレガクロスは、先程から攻撃を受けつづけているがなんの痛痒も感じておらぬようだぞ?」


ティータは不思議に思っていた。痛みや攻撃を恐れるのは理解できるが、先の戦争で真っ先に死んで脱落した不死身のディセニアンがなぜそこまで命の危機を感じているのかと。


言われてゲルドアルド始めて気付いた。確かに浮遊しているため敵の攻撃で激しく揺れはするが、機体のダメージは全くない。そして心なしか攻撃が弱くなり回数も減って来ている気がした。


ゴギャン!!


そう思った瞬間、フォーリナー正面から一際大きな衝突音がなり、機体が大きく傾く衝突音には何かが砕ける音も重なっている。

「あわわわわ」と慌てた声をゲルドアルドは上げるがフォーリナーに損傷はなかった。


「へへ平気だ……」


今の事実と、ゲームであろうが現実であろうが死ねばそれで終わりである住人のティータに冷静に諭されたお陰でゲルドアルドは落ち着きを取り戻していく。頭に短剣を刺されて死ななかったのも大きい。

冷静になれば例え復活せずに死ぬという状況であってもフォーリナーの中にいるなら何も問題は無いという自信が生まれる。


ゲルドアルドはティータに僅かに感謝した。僅かなのは今までの行いがアレだったので素直に感謝できないからだ。先ほども短剣で頭刺されたのをゲルドアルドは根に持っている。


ゲルドアルドは暫定異世界でゲームでは色んな理由で作成不可能なサイズの巨大蜂の巣を作成した。そのため彼が操縦するサンダーフォーリナーは彼が異世界転移を経験する前とは桁違いの力を秘めている。

それに加えて今はティータが呪染装甲スプレーガンを使用したせいで厭らしい輝きだが金色だ。スーパーグレートサンダーフォーリナーと言って良いくらいには見た目も秘める力も差があった。


使えるMPは億を軽く越え、今も身を守るために機体の構造強化の魔法を大出力で発動しているが自然回復で賄えている。


「あー負ける要素がない……かな?」


「その粋じゃぞーあむ」


子瓶に詰めた蜂蜜でハニーフォンデュをしながらのティータからやる気の無い声援を受け、やっとゲルドアルドの意識が戦闘と本格的に向かい会う。敵は相変わらず見えない。ハニービーガードが倒されたので敵対者にマーキングするスキルが発動してフェロモンが敵に付着しているはずだが、全く居場所がわからない。とんでもない隠蔽能力だが肝心の攻撃は対したことが無い。

少なくともフォーリナーの中に居る限りいくらでも耐えられる程度だ。相手の攻撃力をフォーリナーの防御力が完全に勝っていることがわかる。そして、攻撃回数と威力が攻撃する度に減っていることから考えられるのは。


「おわっと替えの効く魔法現象や召喚による攻撃ではなく、咄嗟に替えの効かない事前に用意してある何かしら実体がある攻撃……じゃあ見えないというのもこの場合はおぉっとと!大した脅威じゃない」


攻撃にもはや最初ほどの力強さは感じられない。僅かに揺れるフォーリナーの体勢を戻し、ゲルドアルドの意思と操作に応じてフォーリナーの醜く膨れ上がった背面の巨大な瘤。武装スキル<マグネットチェンバー>が起動する。

瘤内部の無数のMPモーターが高速で回転し始め外に不気味な反響音を響かせながら、ゲルドアルドの保有するMPを吸収して電気エネルギーに変換し電圧を高めていく。


「<マグネットベクターフィールドN>展開」


脳裏に浮かぶ、操縦者であるゲルドアルドがスキルとして認識できるフォーリナーの武器名を唱えたその瞬間。装置で生成された莫大な電気エネルギーが磁力に変換されて解き放たれた。


放出された磁力は同時に発動した魔法によってフォーリナーを中心に球体の磁力フィールド形成しながら爆発的に広がっていった。

監督セバスチャン・コルデロ

映画【エウロパ】

木星の第二衛星エウロパに生物探索向かった調査チームが予想よりも遥かにデカイ生物と機械トラブルに襲われる映画。氷に閉ざされたエウロパ美しいPOVスタイル。モンスターパニックですが怪物を最後まで出し惜しむタイプですので静かに話が進みます。調査で野外作業を始めた科学者が微生物を発見して「人類は孤独じゃない……!」調査の結果を噛み締めているところに謎の巨大生物が現れるのが個人的に最高です。

巨大生物は最後までカメラ身体の一部とかしか映りません。全身が出ても水棲生物なので水の中、更に青い光を全身から出してて今一姿がよくわかりません。かろうじで触手があるタコかイカっぽい生物かな?という感じです。

最後の襲撃シーンは決死の科学者と宇宙船の外壁を破壊して水とともに渦巻ながら流れ込む巨大生物の美しさに惚れます。良く見えませんが。

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