メテオキャノン
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ありがたやーありがたやー。
◆アイゼルフ王国・回電群草原
ギルドの所属プレイヤーの多くから、ゲルさんと呼ばれるゲルドアルドは大変怯えていた。
「たぶん死んでも死なないという」根拠無き確信。
彼の蜂の巣の魔人の身体は信じていたが、ゲームで遊んでいただけの一般人の精神しか持たない彼の心の方は全く信じていない。
気晴らしにモンスター狩りにでも行けとダイ・オキシンに進められたが、フィールドに出られる気がしなかった。ギルドに所属するプレイヤーを誘おうにも、ギルドは休戦中の隣国を仕留めるための国からの仕事や、ギルドで使う消耗品増産等、戦争の準備に忙しい。気軽に誘うには気が引ける雰囲気だ。
蜂の巣に居るもしくは召喚、作成したモンスターを護衛として召喚することは出来るが、蜂の巣の強化の恩恵が受けられない状態では戦闘能力に難がある。
そもそも大手生産ギルドなので、戦争が無くてもギルドに所属するプレイヤーは滅多に外に出たがらない。優れた生産能力で生み出したアイテムやゴーレム等で武装しているので弱くはないが、安心できる強さでもないからだ。
ゲルドアルドも生産能力を持ったギルドの幹部なので、ログインしたならやることは一杯あるのだが、仕事の多くは作成するのが面倒な中間素材を大量に用意する事だ。蜂の巣に大量に存在しているハニービーアルケミストやハニービーワーカー系のモンスターに一言命令するだけで終了する。
幹部のブラウリヒト率いるキメラやレガクロスに騎乗、操縦することに長けた戦闘を好むプレイヤーのグループもギルドに存在しているが、素材集めを兼ねた戦闘訓練で既に集団で高難度フィールドに旅立っていると悲しい情報を入手した。
困ったゲルドアルドが自分の安全を確保しながら狩りに行く方法として捻り出したのが、ゲルドアルド専用レガクロス、サンダーフォーリナーでフィールドに繰り出す事だった。
フォーリナーは非常に燃費が悪い。
浮遊して移動する。激しく手足を動かさない軽作業ならそれほどでもないが、戦闘となるとジョブ【蜂巣要塞】の効果で莫大なMPを保有出来るゲルドアルドでもMPが三十分程で枯渇してしまう機体だ。
そのため戦闘時間延長のために胴体の七割を占有する通常のレガクロスには大きさ等、様々な問題があって積めない大型MP増殖炉を搭載している。
起動すれば静穏性が喪失する代わりに長時間の戦闘も可能だが、動きの鈍い巨体と威力を重視し過ぎて使い勝手の悪い武装が脚を引っ張る。
破壊能力は高くとも戦闘力は高いとは言えない。
だが暫定異世界に作成した前代未聞の巨大蜂の巣のお陰で、フォーリナーの戦闘状態で消費するMPを大型MP増殖炉使わなくても余裕で賄えるようになった。
強力過ぎる武装を満載した機動兵器であり、蜂の巣であるフォーリナーはいざとなれば別の蜂の巣へとゲルドアルドは転移して脱出する事も容易。
何よりも生身を晒さずに外に出て戦闘を行えるのが素晴らしい。心が安心できる。
更に護衛のモンスターのハニービー種が蜂の巣の強化スキルの恩恵を受けられる。これ程ゲルドアルドにとって頼もしい狩りのお供として有能なアイテムは存在しない。
素材の殆どはゲルドアルドが提供したとはいえ、その辺のフィールドにギルドの生産職が技術の粋を集めて製作した、機密の塊のフォーリナーを置いて転移して帰還するのはかなり問題があるが命には替えられない。その時が来た時は大量にニトロハニービー種を召喚して機体守らせながら回収してもらおう。
「どう考えても過剰戦力過ぎるけど、心に余裕がないとゲームが楽しめないので仕方がない……ん?」
金、銀、赤、紫、色とりどりの酸化皮膜を纏った銅の体毛のモンスターの集団を見つけたゲルドアルド。
フォーリナーの眼下で走るのは回電銅狼というMPを流すことで高速で回転し、発電と蓄電を行うドリルのようなMPモーターの角が額から生えた狼のようなモンスターだ。
回電群草原で最も数が多く、高低差の激しいこの平原を往き来する彼らは神出鬼没で平原の何処にでも現れる。
赤熱しながら親から産まれる彼らは、出産時の外気温で銅の体毛に纏う纏酸化皮膜の色が代わり、更にその色を一生保持する性質がある。その色は非常に美しく国土の多くを鉄の赤錆で覆われるアイゼルフでは、回電銅狼の毛皮は宝飾品のように扱われ、高値で取引される。
走る群れの真上。群れのやや前方にフォーリナーを移動させたゲルドアルドが、機体の浮いている事を前提にした先が丸くすぼまった形状の足先から、両脚に内蔵された巨大電磁加速砲を起動する。
機体に搭載された大量のMPモーターにゲルドアルドのMPが流れ込み、電気エネルギーを生み出して電圧として高められていく。
「<メテオキャノン>発射!」
ゲルドアルドの号令。MP通じてフォーリナーの機械装置や魔法装置に命令が伝わる。
高められた電圧が一気に両脚の巨大電磁加速砲に流れ込む。両脚に装填されていた十メートルの巨大弾頭がフォーリナーの脚から地面に向かって発射された。
衝撃でフォーリナーの近くを漂っていた、金属の微粒子を含んで浮かぶ重い雲が機体両脚を中心に丸く消し飛ぶ。
<メテオキャノン>によって発射された弾は普通の弾ではない。
ゲルドアルドの取得しているジョブ【超蜂錬金術士】の力で炎熱を吸収してMPに変換するニトロハニービーが作成できる特殊な体毛集めて金属化したものだ。
この素材で作成された専用の弾丸は大気との圧縮熱と電磁加速際に発生した熱を吸収してMPに変換。変換されたMPは弾に付与されている魔法を起動して重量を増加させる。
弾を炙る熱を重量に変換した弾は、仄かに金属の光沢を放つ青錆草に覆われた草原に到達する頃には、その重量を数十倍にまで膨れ上がらせていた。
遥か天空から放たれた超重量弾丸は、運良く弾着地点にいた数匹の回電銅狼を破片も残さず粉砕。痛み感じる間もなく消え去ったので、少なくとも苦しみはなかっただろう。
弾着の衝撃で大地が激震。運悪く直撃を免れた回電銅狼達が空中へと放り出された。遅れて地面に到達した弾丸の通過により発生した衝撃波が空中に放り出された回電銅狼達を大地に叩き付け、紙細工のように押し潰す。そのまま大地までも陥没させる。
弾着のあまりの威力に陥没した大地が水のように波打ち、弾着の反動で間欠泉のように勢いよく真上に土の柱を生み出した爆ぜ飛ぶ。
飛び散った金属を含んだ鋭い草の破片、色とりどりの回電銅狼の美しい体毛が飛び散る。
岩塊や土塊が弾着地の端にいたお陰で辛うじて生きていた回電銅狼も大地の破片とともに吹き飛んで残らず絶命した。
大地を深く穿つクレーターの真ん中に降り立ったフォーリナーの中でゲルドアルドは流石にちょっとかわいそうだったと僅かに罪悪感が芽生えた。
MP増殖炉や魔法銃の材料になる、今の衝撃でも幾らかは原型を留めている頑丈な角を配下のモンスターに回収させながら、回電銅狼の群れに追われていたプレイヤーのパーティーに話しかけた。毛皮や肉や骨は無理だった。
気まぐれに雑魚を消し飛ばしたのではなくモンスターを大量に引き連れた、所謂トレイン状態のパーティーを助けるのが一応目的だった。
見かけたときは既にニトロハニービーシャトルによる加速をやめて、フォーリナーに装備された光学迷彩を発動させる魔法装置を使用中だったので無視しても良かったのだが、ゲシュタルトで販売している初心者向けのマジックアイテム【ボールゴーレム・ビギナーズクリエイトキット】を使用して作成したと思われるボールゴーレム使役しているプレイヤーが居たので、販売元としては助けて置くべきかなと思っての行動だ。
ゲルドアルドはクレーターの中でフォーリナーを跪かせ、魔法を利用したフォーリナーの拡声器を起動してパーティーに話しかける。凄い必死な様子だったので助けたが、マナー違反の横取りをしたかも知れないので確認も兼ねて。
『こんにちは、危なそうだったので助けたけど良かったかな?あと吹っ飛ばしてゴメン』
ゲルドアルドは力加減を間違えて吹っ飛ばしてしまい、潰れた草の汁と土まみれのパーティーに謝罪する。この辺の草や土は金属が多量に含まれているので、普通より重量があり更に青臭さに濃い金属臭が混じる。それが辺りに充満しているだろう。申し訳ない。
あと、相手が瀕死だった巻き添えで死んでいた。召喚したハニービーワーカーに人数分の回復薬を持たせてパーティーに届ける。
「いいいいいいいいえ、だ、大丈夫です!生きるか死ぬかの瀬戸際でしたので!!あ、可愛い……え、回復薬?貰っていいの……?ありがとうございます!!」
深くえぐれたクレーター中で跪いても、フォーリナーは見上げるほど大きい。おまけに脚が膝から下が長ぎるアンバランスな脚のせいで、膝躓いてもあまり低くなっていなかった。
パーティーはモンスターの群れを消し飛ばし、空から降りてきた全長五十五メートルの巨大ロボットに話し掛けられて怯えた様子だったが、黄色いフワフワの体毛に包まれた人の頭部サイズの丸い蜜蜂のハニービーワーカーが回復薬をパーティーに運んできたことで一気に和んだ。
彼女達の声は拡声器と類似した原理の集音機で拾っている。範囲を指定して音を拾うことができるので彼女達の声を雑音無く聴くことが可能だ。
暫定異世界では実写だったので間近で見るとちょっと怖かったハニービー達だが、アニメートアドベンチャーの2Dアニメの見た目なら、間近で見てもヌイグルミのようなので非常にハニービー種は可愛い。
「わぁハチミツレモン味!美味しい!」と喜ぶパーティーの様子を眺めながらゲルドアルドは疑問に思ったことを聞いてみた。
この辺りはアイゼルフをスタート地点に選択したプレイヤーが最初に降り立つ首都から近く、幾つかある初心者向けと攻略サイトで紹介されるフィールドと同レベルのモンスターが出る。
しかしここに生息するモンスターは常に二十匹以上の群れで徘徊しているので、彼女達のパーティーでは装備からして自力が足りていないようにゲルドアルドには見えた。
監督ケネス・クラン
映画【モンスターズ・フォレスト】
千年に一度目覚めて暴れる謎の怪獣に襲われる映画です。
ミレニアムを祝うためにキャンプにやって来た一般家族。楽しくカウントダウンとかやっていたら殺人一家に襲撃されて拉致されます。突然始まる善良な家族を襲う濃厚な胸糞展開に違うディスクでも入っていたのかと思ってしまいますね。
近親相姦を繰り返し奇形だらけな殺人一家に必死に立ち向かう一般父親ですがあえなく銃殺。一般母と娘レイプ危機!
そこへ颯爽と現れる怪獣ミレニアムバグ!!
目を疑う展開です。気合いの入ったスリラー映画だったのに突然の怪獣映画。最高です。
怪獣の襲撃を受けて殺人一家のボロ屋敷が吹き飛ぶのが痛快過ぎます。そこからクオリティの高いいつものモンスターパニックです。めっちゃ面白いです。珍しいことにちょっと小さめですがCG無しのキグルミ特撮なのも良いです。




