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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
見慣れた遊戯世界編

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14/115

これでも常識人

ゲルドアルドは疑い深いですが、思い込みも激しい。

映画感想がちょっと長すぎたので次からは半分くらいにします。



 ◆ゲシュタルトシティ・大工房街中央工房・ギルドマスタールーム



 やたらと複雑な機構がふんだんに詰め込まれた、これぞ機会仕掛けのファンタジーという重厚な扉に取り付けられている開閉レバーをゲルドアルドが操作する。


 剥き出しに見えるが、非常に透明度の高いクリスルタルのカバーで覆われ、キチンと安全性にも気を使った何の働きをしているのかサッパリわからない複雑な機構が、その複雑さに見合った複雑な動き見せてギルドマスターの部屋と通じる重厚な扉が開かれていく。


 凝りに凝った素晴らしい開閉ギミックだ。


 しかもちゃんと飛ばしたくならないようにギミックの稼動と開閉にかかる時間が計算されているので非常に気持ち良く開いてくれる。


 映画の映像ソフト等のメニュー画面で、何かを選択する度に毎度やたら凝ったアニメーションを挟んで、イライラさせる物がある。ゲルドアルドはそれが嫌いだった。

 この扉にはその辺に非常に気を使って作成されているので、ゲルドアルドも素直に無駄としか思えない複雑な開閉ギミックを楽しめる。


 勝手知ったるギルドマスターオゾフロの自室へと遠慮なくゲルドアルドは入っていくが……。


「に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ー!?」


 そこには断末魔の悲鳴を上げ、光の粒子になって消えていく頭髪が異様に多いトンガリ帽子の少女……ゲシュタルトのギルドマスターのオゾフロの姿があった。

 鉱人の少女の姿をしたオゾフロが、目の前で悲鳴を上げながら消滅するのを見たゲルドアルドは「やはり、デスゲームなのか!?」消え去った筈の疑惑の炎に新たな火種と燃料がタップリ投下されて燃え上がっている。


「は!?このままではボクが犯人にされてしまう……!」


 オゾフロに呼び出されたゲルドアルド。

 しかし、そこにはオゾフロの無残な死体……は無いが、この時間この場所にオゾフロが居たことを知るプレイヤーは少なくないだろう。

 アイゼルフで最大のプレイヤーズギルドの名は伊達じゃない。ゲシュタルトに所属するプレイヤーはとても多い。急いでこの部屋に向かっている時にも何人もプレイヤーと挨拶したし、オゾフロに呼ばれたと自ら宣伝もしてしまった。


 この場から急いで逃げ出せば何人ものプレイヤーその姿を見られてしまう。


「嵌められた……!」


「待って、さっきから何を意味のわからないこと言ってるのゲルさん?」


 横合いから声をかけられた。ゲルドアルドは自分以外にも部屋にプレイヤーが居たことに初めて気付いた。見知った男だった。


 状況から察するにオゾフロを殺したのはこの男だろう。まさかこの男がオゾフロを裏切るなんて!信じられない!そんな表情……は動かないが、驚愕に蜂蜜色のレモン型の瞳を彩ったゲルドアルドが思わず目から光線を発射する。

 突如、痛みを伴う程のハイビームライトを至近距離で浴びせられたゲシュタルトの幹部。ギルドマスターオゾフロの右腕。緑人【ダイ・オキシン】が「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ目がぁぁぁぁぁ!?」と痛みに目を押さえて悲鳴を上げる。


 ダイ・オキシンの目に軽い盲目の状態異常が発生した。


(まずい、ここは蜂の巣の効果範囲外。巣のステータス補正が受けられない……!)

 暫定異世界転移した直後とは違い、今のゲルドアルドには立派な蜂の巣がゲシュタルトの敷地内と異世界に存在しているため豊富な攻撃手段と防御手段が揃っている。しかしそれは巣の中にいればの話だ。


 ゲシュタルトのギルドホームの敷地は広大で、この場所は巣から大分離れている。蜂の巣の規模、蜂蜜と花粉の貯蔵量に応じてHPとMPとCPが増加するスキルは巣から離れすぎたので既に範囲外だ。更にゲルドアルドが取得している攻撃用のスキルは準備が必要で後手に回るのが常。対するダイ・オキシンは生産に偏っているが、魔法職でスキル名を叫べば即座に発動する攻撃用の魔法スキルもかなり豊富だ。


 分が悪いと悟ったゲルドアルドの心が絶望に覆われる。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?殺されるぅぅぅぅぅぅ!!!」


 自分の不利を悟り、恐怖と絶望のあまり恥も外聞も忘れてゲルドアルドは悲鳴を上げた。


 実はフィジカル面では体格も合わせれば大きく勝っている。盲目の状態異常が消える前に殴り掛かれば高確率でゲルドアルドが勝利できるのだが、それを思いつく前に恐怖に屈してしまったゲルドアルドは叫ぶしかなかった。大声を出す、護身の基本ではある。

 残念ながら扉が閉まったこの部屋の防音は完璧で、威嚇と助けを呼ぶ効果は半分しか発揮しない。デスゲームというのは完全にゲルドアルドの思い込みなので外に漏れないほうが良いことかもしれないが。


「ちょっとゲルさん!?本当にどうしたの!?

 貴方はこのギルドの常識人寄りでしょう!これ以上このギルドに正気じゃない人を増やさないで!!」


 痛む目をおさえながら取り乱したゲルドアルドをダイ・オキシンは取り押さえようとするが、ゲルドアルドの方が彼よりも大柄でフィジカル面で優れている。盲目の状態異常もまだ治っていない。

 生産ギルドのゲシュタルトの幹部らしく、魔法職で生産技能に偏っているダイ・オキシンでは中々うまくいかない。


 ゲルドアルドが正気に戻るまでタップリ三十分は必要だった。


 オゾフロが消えたのは、徹夜による睡眠不足と飲食を忘れた長時間プレイで、ゲームプレイするために必要な機械、ダイブギアの健康管理システムによって強制ログアウト処理が実行されたからだと、必死にダイ・オキシンに説得されてゲルドアルド正気を取り戻した。


 冷静になってかなり醜態晒してしまった事に気づいたゲルドアルドは「突然決まった言葉もわからない国への海外出張で忙しくてゲームも出来ずストレス溜まってたのです」と間違いでは無いが正確でもない奇行の言い訳をでっちあげてしまう。


 心底苦労したという実感のたっぷり篭ったゲルドアルドの語り口でダイ・オキシンは「それは、大変だったねぇ……」納得するのだった。





監督ポール・ジラー

映画【フィアー・フロム・デプス】

港町が深海からやって来た恐怖のハイスペック半魚人に襲われるモンスターパニックです。

OPのCGの船のクオリティは低目ですが、そのあとに出てくる半魚人っぽい怪物は驚きのハイクオリティ。動きもデザインも良くとても凶悪な面構えがキモく素敵。

深海からやって来た癖に陸上でも全く損なわれない高い運動能力に自在に伸びる力強い舌、皮膚に触れただけで痺れて動けなくなる麻痺毒に光学迷彩まで備えた凄い怪物。

いつもどおり繁殖能力も高くて通常個体の大きなサイズのモンスターと、猫サイズのモンスターが襲ってきます。

猫サイズの半魚人可愛いです。人をバリバリ食いますが可愛いです。使えないのか使わなかったのか不明ですが、麻痺毒も光学迷彩も使わず飛び跳ねるように移動して複数で人間を襲い、舌で手足を拘束しながら攻めるスタイルが中々強力。

バイオハザードダムネーションのリッカーを思い出させる動きです。出来栄えもそれくらい普通にあります。

大きなサイズのモンスターは透明になっての奇襲が主な攻撃手段。これがかなり強力。近くにいると輪郭とか結構ハッキリ見えてしまいますが、動いてる時は全く見えません。銃の狙いがつけられない上に拳銃程度では当たってもケロッとしています。

それ以上に口から吐く麻痺毒が本当に強力で、皮膚に触れるだけで数秒で人間は身動き取れなくなります。えぐい事に毒の被害者は意識はハッキリしているらしく、悲鳴を上げる、目をつぶる事も出来ずに生きたまま食われます。瞬きせずに「うーうー」唸り、目を見開いたまま死んでいく様が悲惨。良いぞぉ。お話は分かりやすい、いつもの怪物退治です。

過去にこの半魚人に仲間を殺されたこの手の映画に良く出てくるハンター的なキャラも登場。怪物に決闘挑みますが、無駄に悲惨なシチュエーションに追い込まれて無念窮まりない死を迎えます。

泣きながら放たれる銛の一撃がとても悲しい。脇腹あたりプスっと刺さりますが怪物は驚きのノーリアクション。銛に狩猟用のGPSが取り付けられていたので怪物の巣突き止め、主人公達を勝利の爆破ポイントに導くことになるんですが、前世で大罪でも侵したのかと思うくらい酷い死に方です。良いぞぉ。


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― 新着の感想 ―
なんかオマケ読んでたらモンスター映画見たくなってきた……。
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