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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
見慣れた遊戯世界編

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デスゲーム疑惑

プロローグのゲルドアルドはギルマスの部屋に行く途中のゲルドアルドです。



 ゲルドアルドはアニメートアドベンチャーの世界で激しい戦いにそこそこ関わってきた。それら全ての戦いは所詮ゲーム中の話だった。


 目を貫かれるという痛みは、暫定異世界に転移して引きこもっていただけの戦いの素人で、ただの一般人であるゲルドアルドには耐えがたい痛みだ。


 その精神は完全に打ちのめされていた。


 癒しが欲しいと心の底からゲルドアルドは願っている。


「あ、あぁぁぁぁぁぁー」


 そんな願いを叶えようとしているのか、ピチャピチャピチャピチャとレディパールがゲルドアルドを慰めるように割れた右目から溢れた血の代わりの蜂蜜を舐めとる音が自室に響く。


 蜂の巣で出来た人型。巨大な真珠色の体毛の蜂ということを除けば、恋人同士の深い接吻にも見える光景だが、先に述べた通り蜜蜂のレディパールが舌を潜り込ませ厭らしい水音を鳴らしているのは穴が空いたゲルドアルドの右目であり、舌は人間であれば脳が存在する位置まで届いていた。


 ゲルドアルドの思考を司る臓器はそこに存在せず。蜂の巣のようなハニカム構造とそこに満たされた至高の蜂蜜しかない。なので何も問題ないが、人間であれば脳を生きたまま掻き混ぜられているに等しい。

 目と違って明確な器官は頭部の中に存在していないのでゲルドアルドに痛みなどは無い。むしろどことなく性的な感じがするので心の中の男の子に妙な緊張が走って妙なテンションで踊り出しそうだとゲルドアルドは人事のように考えている。実際に踊り出したりはしないが。


 魔人族の身体は無性なので下のコントロールも必要ないので。


 舌を突っ込まれているせいで自動回復が疎外されている。ログアウトボタンが刺さって割れた目の穴がジクジクと鈍い痛みに襲われているのも微妙に抑制になっている。


「ところでレディパール?そろそろ舌を抜いてほし……あ、あーハニカムが!ハニカムを崩さなあ、あ、あ、傷を舐めてくれてると思ってたのだけどあ、あ、あ、実は君ボクの蜂蜜味わってるだけだね!!?」


 決して痛くはないが、感覚はある。思わず声が出てしまう。


 思考がぐるぐると纏まらなくなってきたような気がするので無理矢理レディパールを腕力で引きはがす。ジュポン!と抜けた長い舌を収納するレディパールがスキルの効果で瞬時に再生されていくゲルドアルドの目を名残惜しそうな目で見つめて来る。ゲルドアルドはNOと言える男である。


 時間経過で自然に閉じられていたコマンドメニューを再び開くと、ログアウトボタンを中心にメニューに丸い穴が空いてしまっていた。

 物理的に無くなってしまったログアウトボタンはゲルドアルドの右目と違って元に戻る気配は無い。それは非常に困る。これではゲルドアルドはログアウトして地球に帰ることが出来ない。


 死の危険を感じない自動で復活するゲームの世界にこれた今になって必要かどうかはともかく。


「いや、待てよ?本当にボクは復活するのか?」


 ゲームでは当たり前だが死んでもゲームのマイキャラクターは復活する。ペナルティがあったり復活しないゲームもあるが、アニメートアドベンチャーはキャラがロストするタイプのゲームではない。


 それに根拠も何も無いが暫定異世界で「ここで死んだら本当に死ぬ」と理解したのと同じ感覚で「ここで死んでも復活する」と自然に思える。


 思えるのだが。


「あーだめだー心配になってきた」


 その感覚を完全に信じられるかどうかは別の問題だ。そしてゲルドアルドはそういうものを信じられない人である。完全に誇大妄想な思考だが、爆発するログアウトボタンという今まで見たことも聞いたこともない謎の挙動を見た後だと、ゲルドアルドの脳裏に別の問題が発生している可能性を閃かせてしまう。


「もしや、今のアニメートアドベンチャーはログアウト不可のデスゲーム中ではなかろうか?」


 技術的に可能かどうかはともかく、ゲームのキャラクターで異世界転移というファンタジーを経験したゲルドアルドは「ありえる」と思えてしまった。


 これは非常にダメな思考だ。ここでも引きこもるのは色々駄目だ。


 なのでゲルドアルドは手っ取り早く人に聞くことにした。


 耳……はゲルドアルドには存在していないが、人なら耳が生えているであろう場所に電話をするように手を当てる。チャット機能をコマンドメニューを開かずに発動するためのショートカットである。


 念じるだけでも可能だが設定されているショートカット使用する方が楽だ。


 フレンドリストがログアウトボタン爆発事件に巻き込まれて開けず、ログイン状況が不明だったが目的のプレイヤーとチャットはちゃんと繋がった。


『あ゛ぁ゛?』


 ゲルドアルドは安堵したが「今はもしかしてデスゲーム中ですか?」と頭のおかしい質問を直球でしてしまった彼は、鈴のような澄んだ少女の声の筈の所属するギルドのギルドマスター【オゾフロ】に酷く濁った声で返事をされていた。


『ゲルドアルド……てめぇ、一ヶ月以上音沙汰無しだと思ったら突然ログインして来て「今、デスゲーム中ですか」だと?頭沸いてんのか?』


 チャット越しに長ーいため息がきこえてくる。これは失敗したとゲルドアルドが後悔するが遅すぎた。バッドコミュニケーションな上に徹夜明けのテンションもプラスされていて彼が弁明する暇はなかった。


『ゲェェェェルドォアルドォォォォォォォォー!!

 てめぇ!現実とゲームの区別つかなくなったのなら、もっと真面目に戦争しやがれ!!今は国が滅びるかどうかの瀬戸際なんだぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?』


 無論ゲームの話である。


 そして滅びるのはゲルドアルドの所属国家アイゼルフでは無く、隣国の話だ。


 ゲルドアルドが暫定異世界に転移する数日前にアイゼルフは戦争で隣国を滅亡寸前まで追い込んでいた。


 ゲルドアルドが所属する生産ギルド【ゲシュタルト】は構成メンバーの殆どが生産職。直接戦場に行ったメンバーは二十人程度。ゲシュタルトに所属するプレイヤーの人数を考えると余りにも少ない。

 しかし、ゲシュタルトが開発した人型特殊車両バルディッシュⅣが大量生産されて実戦に投入された。それは戦場で華々しく活躍したのでその貢献度は非常に高かった。


 ギルドの中で数少ない直接戦場に赴いたプレイヤーのゲルドアルドは、オゾフロに言われて隣国がまだ滅んでないことを知って驚いた。


 開幕に派手な破壊活動をしたため、敵の集中攻撃を受けて早々に脱落して戦争イベント終了までログイン制限を喰らったゲルドアルドだったが、その時点でも隣国の城が物理的に傾くくらいの戦火だったので心底以外だった。


 ちなみに城を物理的に傾かせた原因はゲルドアルドがギルドで作成した専用レガクロスで空から隣国の城を砲撃したせいだ。あれは大変気持ちが良かったと現実逃避気味に当時を思い出すゲルドアルドだった。


『俺の部屋まで来い!てめぇには話すことが山程ある!!駆け足ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』


 受話器をたたき付ける幻聴が聞こえる勢いでチャットは切れた。

 どうやら、タイミングが悪すぎたらしい。


 突然異世界転移してログイン出来なくなるという不測過ぎる自体はゲルドアルドになんの責任も無い。しかし転移前にゲルドアルドが深く携わっていた大きな計画【プロジェクト・ウロボロス】が滞っているのは想像に難くない。


 計画立案は彼ではないが、彼が居ないと成り立たない計画で、ギルドと国家予算で個人的なパワーアップやってもらっているのと代わり無い計画なので非常に申し訳ない気持ちになる。

 ギルドやアイゼルフにとても貢献する計画だが、【プロジェクト・ウロボロス】国からの出資も受けている計画がゲルドアルドが不在で全く進んでいないというのはギルドの信用的にもマズイ。


 どうやらデスゲーム中という訳でもなさそうだと理解したゲルドアルドは、レディパールに出かけると言い残し、不満全開の交信フェロモンを背中に大量に浴びながら駆け足でギルドマスターの自室へと向かった。






監督デビッド・ジャクソン

映画【D.D.T】


遺伝子操作されたバッタのモンスターパニック。

ちょっとマッドな博士が国防省の援助で、通常の十倍の速さで繁殖し、様々な殺虫剤や農薬に耐性を持った一国を滅ぼせる改造トビバッタ開発してしまってまー大変!という感じです。


なんやかんやで軍事利用しようと密かに研究所から改造トビバッタが軍に盗まれますが、研究所から持ち出す際に二匹が流しから下水に。研究所から離れた軍の基地でケースが破壊されてバッタに逃げられるという凡ミス連発。

それぞれ別々の場所で大繁殖した二つの改造トビバッタの群れにアメリカが挟み撃ちに会うという最悪の自体に。


地味な作品ですが、程よく頭のおかしさと良心を併せ持った人達と改造トビバッタの大群との戦いがとても良いです。地味ですが。

一日五百キロ移動しながら数を増やし。農作物、家畜、人間を食い荒らす農薬と殺虫剤が効かないトビバッタには、派手さありませんが地味に対抗しにくい性能なのでその恐ろしさが良く伝わってきます。


バードストライクならぬバッタストライクで旅客機墜落。「ここには入ってこれないさ!」と傲慢さでビルや車内に立て篭もる人類にありとあらゆる隙間から、時には数の暴力でガラス破壊して侵入。暴虐の限り尽くす改造トビバッタは恐ろしい。

人側は基本手も足もでないのですが、それゆえに終盤に良い感じの撃退方法が発見され、大量の群れが一気に殲滅されるシーンが非常に気持ち良い。


収穫物を収納する農場のサイロに立て篭もった主要人物達が、ちょっとマッドな改造トビバッタを作った博士の命と引き換えに発動した「サイロ全体に電気を流して巨大な電撃殺虫機にしてしまおう」作戦でサイロに取り付いていた数えきれない改造トビバッタが一斉に死ぬシーンが実に爽快。

それを利用したトビバッタ殲滅作戦では、怪獣映画でよく実行されるがほぼ役に立たない送電塔を改造して、アメリカを横断する巨大電気柵化作戦が実行されます。

実に作戦通りに巨大電気柵に次々と突撃して焼け死んでいく非常に地味な見た目のクライマックスは全く盛り上がりませんが、人の完全勝利を強く印象付ける味わい深いクライマックスです。


群れはCG素材、近写用の本物バッタ素材の使い分けが巧。いかにも安っぽいTV映画というクオリティですが、映像素材の組み合わせというか各素材の使い方がとての良い感じで全体的にクオリティ高く見えます。


タイトルのDDTは、使用禁止になった殺虫剤や農薬として使われていた劇薬のことらしいです。映画の中では一切そのことに触れません。

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