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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
見慣れた遊戯世界編

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プロローグ・愉快なギルドの仲間達

第二章投稿開始です。

今日は零時に予約投稿していますが、次話からは昼の十二時に投稿です。


何度も変えてややこしいですが、ゲルドアルドが召喚するモンスターを【ビー】から【ハニービー】に変更しました。

 何かが高速で回る音が響く。


 甲高く力が高まるような聞いていると心が高揚する音だ。


 しかし、すぐに別の音が混ざりはじめた。周囲を威嚇し逃げろと必死に訴えかけるその音は異常を知らせる警告音だ。音が鳴るのに連動して視覚的に緊急事態を知らせる赤いランプが回転して周囲を赤く染める。

 にわかに慌ただしくなった広い実験室の一角。一見何をするのかわからない機械を操作していた鉱人や緑人達が慌て始める。


「まずいぞ!止まらない!?」「MPケーブルを抜くんだ!」「抜いたのに止まらないぞ!??」「謎だ」「逃げろ!たぶん爆発する!」


 次と次と緊急事態だと告げる言葉を発する。慌ててその場から逃げようと駆け出した新型MP増殖炉の実験をしていたプレイヤー達の目の前で、上から安全性を完全に無視した隔壁がギロチンをも凌ぐ野蛮性を発揮して叩きつけるように下ろされる。


 人事のように眺めていた彼女の視界から無謀な実験を繰り返していたプレイヤー達は消え去った。


 タイミング悪く隔壁に挟まれ、身体が切断されたプレイヤーが「早すぎるだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」と血の変わりに光の粒子を吐きながら叫び、HPが尽きて光の粒子となって消えた。彼女はそういう凄惨な描写のフィルタリングでマイルドになっている光景を平然と眺めていたが、興味を失い自分がやっていた作業に戻った。

 彼女のようなプレイヤーはこの部屋には幾人も存在し、視線を向けずに完全に無視して己の作業に没頭しているプレイヤーすらいる。


「ヤキブタさん最近見ないですねぇ、あんなに楽しみにしていた戦争だったのに不参加でしたし。」


 ヤキブタはギルドで有数の人型有人特殊車両レガクロスの操縦者であり、専用機を与えられた廃人プレイヤーだった。

 ヤキブタの見せ場である国対国の大規模な戦争イベント。彼なら親が死のうと会社を首になろうとやってくるだろうと思われた。しかしヤキブタはイベントでは不在だった。


 隔壁の中から僅かに聞こえた野太い悲鳴と爆発音を聞き流し、彼女は隣で作業をしている鉱人のプレイヤーに話しかける。爆発や切断はこのギルドでは日常茶飯事だ。気にするような事ではない。こういうのがなんかそれっぽいという子供染みた理由でこうして危険な実験も大部屋で一緒くたにしているのだから。


「ヤキブタさん……あの人なぁー。

 不健康な生活してるみたいだからなぁ……もしかすると今頃……」


 話し掛けられた男性プレイヤーがヤキブタと話す過程でわかったダメ過ぎる私生活の末路を想像する。してしまう。

 不健康で寝食を忘れやすいオタク達が多数在籍するこのギルドの中でも、取り分け不健康なプレイヤーがヤキブタだ。ついつい最悪を想定してしまう。


 ギルドで一、二を争うログイン時間を誇る彼が、リアル時間で半年以上ログインしていないので結構説得力がある末路だ。彼と同じく最悪を想像してしまった彼女が軽く憤りながら鉱人のプレイヤーに文句を付ける。


「ちょ、不吉なこと言わないでくださいよ!?

 汚部屋で朽ち果てる豚の丸焼きを想像しちゃたじゃないですか!」


「いや、ヤキブタさんは豚のマスク被ってるだけで、ここでもリアルでも普人だからな?というか汚部屋は決まりなのか?」


「まぁ、俺も汚部屋だと思うけど」続ける鉱人男性プレイヤー。

 肯定する彼の頭には、足の踏み場が殆ど無いほどゴミと、架空の巨大ロボットの模型や組み立て前の模型の箱やらが積み上げられた汚部屋の真ん中で、ダイブギア付けてアニメートアドベンチャーをプレイしているヤキブタの姿が思い浮かんでいた。

 その姿はいつもの美味しそうな焼き色をした豚型のモンスターのマスク付けた普人族ではなく、美味しそうな豚の丸焼きだった。彼女に影響されてしまったようだ。


「そういえば!ゲルさんも見ませんね!?」


 彼女が誰にも知られず、孤独に朽ち果てる豚の丸焼きの想像を振り払うため、変わりに一ヶ月ほど姿を見ていないギルドの幹部の一人の愛称を言って強引に話題を変える。彼も廃人なのでヤキブタと似たような末路が考えられるが豚の丸焼きより遥かにましだ。

 蜂がたかっているかもしれないが、このギルドに所属するメンバーにとって彼が蜜蜂にたかられているのはいつもの光景なので見なれたものだ。

 モフモフとした体毛に包まれている蜜蜂型モンスターのハニービー種は、アニメートアドベンチャーの2Dアニメシステムの描写との相乗効果で非常に可愛いのでギルドに女性メンバーにも人気。浮かぶ映像がとても愛らしい。


「ゲルさん、休戦からしばらくして見なくなったな。

 もうすぐ戦争再開するかも知れないのに高級素材の供給源のゲルさんが居ないから、高級MP回復薬の在庫が危ない。あと、第三王子が煩いんだよ」


「なんでここでクレイジーシスコンが出て来るんですか?」


 彼女は首を傾げる。このギルドはアイゼルフ王国でトップだ。先の戦争にも積極的に戦力を国に生産して提供している。

 アイゼルフのテックマウンテンから産出する特産品を元に作成されたレガクロスの改良、量産化等を始めとした国勢を左右する事業にも幾つも関わっている。

 しかし、ゲルさん個人はギルドの幹部に名を連ねているが、先の戦争で活躍しても国との係わり合いは薄い方だったはず。

 第二王女と色気の無い交流は存在しているが、第二王女に尋常じゃない執着しているクレイジーシスコンなら、ゲルさんの不在を国を上げて祝福し、パレードでもして喜びかねない。


 アレにそんな権力は存在していないが。


 第二王女みたいにゲルさんの頭でハニーフォンデュをやってみたいと彼女は思った


「クレイジーシスコンって、おい。間違っちゃいないのが恐ろしいが、あれでもギルドの大口スポンサーの一人だぞ。

 王妃の誕生日のために第二王女がゲルさんの至高の蜂蜜を求めてると知ってな、よこせ!って煩いんだよ」


「大口といっても一番は第二王女殿下じゃないですか。

 もしかして、ハニービー種がやたら殺気だってたのクレイジーシスコン絡みなんですか?」


「そういや、調度ログインしてなかったな、アレに巻き込まれなかったのが羨ましいぜ。

 信じられるか?至高の蜂蜜を大量に手に入れるためにコッチが止めるの無視して自分とこの近衛兵をゲルさんの巣に突撃させて全滅させたんだぜ?」


「ジャベリンまで投入しようとしたんだぞアレは」と続ける鉱人に、その時たまたまログインしておらず知らなかった彼女は大声上げて驚く。


「えー!?バフスキル山盛りのハニービー種が無数に居る難攻不落のゲルさんの巣にですか!

 なんか、ただでさえクレイジーシスコンを余計に拗らせてヤバいのに、その上、四六時中邪神兵モドキのことばっか考えてて本格的に正気じゃないですね。」


 この国には他の国には無いレガクロスと呼ばれる人型の巨大兵器が存在している。


 国の科学の基礎、古代の人型巨大重機【オリジン】。

 国の始まり機械仕掛けの王権玉座【レガリア】

 才能ある王族のみが操れる【ロード】。

 国を支える量産兵器【バルディッシュⅣ】。

 近年発見された異形のオリジン【オブシディウス】。

 オブシディウスの量産機【ジャベリン】


 天才的な魔法技術を持っていた緑人族の高祖と鉱人の希少部族がオリジンを元に開発したレガリアとロードは戦闘を想定して作成されたので武器を持つ。

 しかしオリジンはロードに匹敵する性能と模倣不可能の未明の技術の塊の永久機関を持っていても、その設計は力と安定動作とが重視されている。

 一緒に発掘される追加装備も武器に転用できるが、本質は重機としての性能を拡張する道具しか発掘されなかった。


 そのオリジンとは異質なのが、多数の強力な内蔵兵器を持つ突然出現した黒いテックマウンテンから発掘された半人半蛇の異形のレガクロス。オブシディウスとその量産機ジャベリンだ。


 第三王子が新たに発見した黒いテックマウンテンから発掘された未知のレガクロス……オブシディウスは黒曜の装甲を纏い、上半身が人で下半身が蛇。巨大な両腕には蝙蝠の翼を思わせる推進機構がある。


 シルエットは多少違うが某OVAのヤバいロボットに酷似した姿を彼女は思い浮かべる。発掘以来それに異様に熱を上げる第三王子の姿も一緒に。

 シチュエーションがあからさまに酷似しているので、そういう方面に詳しいギルドメンバーからは邪神と呼ばれ、ドキドキハラハラしながら不自然に魅了されている第三王子を警戒と好奇心が入り混じった感情で見守っている。皆イベントが楽しみだ。


 そしてそれを発掘して以来、元々言動があれだった第三王子が本格的に正気を疑う言動、行動を繰り返すようになった。王族の中でも能力が低く、劣等感の塊のような第三王子と邪悪なフォルムと雰囲気をこれでもかと醸し出すオブシディウス。

 様々な創作物語に親しんでいるプレイヤーが多数いるこのギルドは、不快感を我慢しながらイベントのフラグと思われてる第三王子を見守っている。


「なんかデッケーイベントのフラグだよな。プレイヤーはなんともねぇが、邪神に関わった第三王子関係の住人がだんだんおかしくなってるし。

 それ以外の王族と関係者は一切かかわってねぇけど。」


 現在オブシディウスは黒いテックマウンテンを囲うように作られた砦に封じられるように存在しているが、表向きはオブシディウスから獲得できる未知の技術の研究施設の砦内部は、第三王子と王子の支持者の関係者によって未知の様式の装飾が数多く施された神殿の如く内装に変わっており、御神体のようにオブシディウスが熱烈に奉られている。


 第三王子以外の王族やその支持者は簡単に量産と運用ができるジャベリンの兵器としての有用性を認めてはいるが、第三王子を中心にしてカルトのように信仰されているオブシディウスが不穏過ぎるので、機会があれば第三王子はあっさり切り捨てられてしまうだろう。


「イベント始まったらプレイヤーもヤバいんじゃ無いですか?

 邪神を詳細に調べたりするだけで手に入る強力なステータスアップ付きの生産スキル経由で。

 アレを持ってるだけでジャベリンを簡単に量産できますし、騎乗、操縦スキルなくてもジャベリンの操縦できるようになるって絶対罠ですよアレ。イベントは美味しいのですけど、勝利を目前にして戦争前に内側から国が吹っ飛ぶとか勘弁してほしいですねぇ」


「だからギルマスが……俺も参加してる、もしもの対抗策としてのウロボロスだったんだけどなぁ。

 ゲルさんが居ることが前提だったから、ゲルさん居ないと計画がすすまねぇ。折角巣の増築許可下りたのによぉ」


「仕方ないですよ、どんなに素晴らしくてもここはゲームなんですし」


 アニメートアドベンチャーはゲームだ。


 当然プレイヤーにはゲームワールドとは違うリアルワールドでの生活が存在する。


 リアルで時間が取れない。飽きた。トラブル等でゲームに突然ログイン出来なくなるのは当たり前だ。邪神兵モドキにもしもの時に対抗するために開発されているウロボロスは、たまたま完全に個人に依存した計画だったので彼が言う通り滞ってしまったが、あくまで対策の一つ。あまり深刻な問題ではない。


 ギルドが改良、量産した特産品、バルディッシュⅣを中心にした計画は順調だ。


「しょうがねぇか、確度を上げるための計画だったし、バルディッシュⅣの量産は順調だから、邪神達が暴れ出してもたぶんどうとでもなるだろう。」


 喋っている間も手元の作業を止めなかった二人は、そこで話を切り上げると自分達の作業に集中しはじめた。


 隔壁に挟まれたプレイヤーとシャッターの内側で爆死したプレイヤー達がギルドのセーブポイントからリスポーンしたのか戻ってくる。先程の実験の失敗の原因を激しく議論しながら部屋に入ってきたが、この部屋では似たような事がアチコチで行われており、彼らの激しい議論が取っ組み合いのケンカに発展しても誰も作業を中止しなかったし、気にもしなかった。多くは気づいてすらいない。

 なのでギルドに現実時間で一ヶ月ぶりに現れたゲルドアルドが、蜂蜜色のレモン型の瞳を光らせて部屋を覗き込んだことも誰も気付かなかった。話題に出していた二人ですら気付かず自分の作業を続けている。


 ゲルドアルドはただ覗いただけで、特に用事は無かったのか部屋に入ることもなく誰にも声かけずに早足で部屋を去って行った。




監督マイク・メンデス

【ラバランチュラ】


昔一世を風靡した主人公の映画俳優が突然火山噴火と共に出現した溶岩を吹き出す巨大蜘蛛ラバランチュラと戦うという映画です。


ラバランチュラの見た目がとてもカッコイイ!主人公のコルトンを始めとした愉快な登場人物達もとても魅力的です。特に事件に巻き込まれた主人公のファンの映画オタクが良いキャラしてます。

「映画のようにやっつけてよ!」と言われたコルトンが「映画と現実は違う!」と言い返したら「一緒だよ!!」力強く発破掛けてくれる。掛け合いがとても良い。


モンスターパニック定番の巨大な女王個体も完備。

これを倒せばハッピーエンドなシナリオです。


NASAに頼んで作ってもらったというコルトンが主演したロケットマンという架空の映画のヒーロースーツを着て超巨大ラバランチュラのママランチュラに戦いを挑むクライマックスが最高ですよ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第二王子なのか第三王子なのか。 読んでいて混乱を……。
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