神話に挑む木の葉
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地球の大気を守る蜂蜜の空に穴が開いた。
地球が悲鳴を上げるように、大気がゴォゴォと音を立て、星が瞬く剥き出しになった宇宙へと吹き出して。
有り得ない高濃度のMPで破壊されて膨大な塵となった、街とそこに住んでいた者達の成の果てが渦巻いて宇宙へと連れ出されていく。
大き過ぎるその穴は、直ぐに塞いでしまわなければ地球に住まう全ての生命の危機となるが。
それを塞ぐ力を持つ者はそれどころではなかった。
彼が操る、趣味の悪いギラギラと輝く黄金色を纏う蜂巣と機械の黄金巨竜が、舞い上がる塵を己の色で染める。
周囲で金色の塵が空へと渦巻き旅立つGTFⅡの眼前には、文字通り天を貫いて現れた長大な白銀の構造物。
遮る物の無い地上で、降り注ぐ宇宙線のエネルギーを浴びて全体に雷を走らせ白銀に輝くその姿も、周囲の塵を己の色で染めていた。
両者とも、その本質とはかけ離れた美しい姿だった。
その美しさは両者には全く伝わらない。
互いにとって今一番重要なことは、目の前にいる相手をどうやってこの世から跡形も無く消すかだけだった。
先攻するのはGTFⅡ。
彼は、数々の膨大な蜂蜜を乗り越える過程で外殻として取り込んでいた月と木星の質量を失い疲弊しているように見える俺は永遠を許さないにゲルドアルドはマウントをとろうとした。
GTFⅡ内部では魂が大陸のアバターを外殻として纏うゲルドアルド一号と大蜜蜂達が気炎を上げながら自ら仕込んだ破壊兵器を起動させる。
同時に動き出すのはゲルドアルド一号に呼び戻された木星軌道に展開していたスパークフォーリナー部隊だった。
機体を操縦する大蜜蜂の頭部を幾つも融合された専用キメラ達は、ボール状に並べられた頭の顎を打ちならして外敵を滅ぼすための闘争で興奮状態にある。
その様子を幾分かは冷静に、ゲルドアルド二号が檸檬型の結晶の目で眺めていたが、俺は永遠を許さないを睨むGTFⅡの視界の端に近付いてくる小さな飛行物体を見付けて、隣のティータと共に不思議に思った。
「……この状況で突っ込んでくるとはなんという命知らず」
「うむ?」
最も、ただのお客様である彼女には外の様子などわからないため、胸に黄色いモフモフ抱えながらゲルドアルド二号を真似て首を傾げているだけだったが。
近付いてくる命知らず達も、別にしたくて突っ込んできている訳じゃなかった。
仕方がないのである。
彼らには残された時間は僅かとしか思えず、大陸で使える技術と比べると玩具のような最新鋭の秘匿レガクロスで現場に駆けつけるしか方法を思いつかなかったのだ。
この玩具……人と大型輸送機を混ぜたような姿をした地球製レガクロスの大天狗は、地球上に一機しかない旧世界目録の秘蔵の機動兵器だったが、今の状況では荒波に落とされた木の葉のように頼りない。
木の葉に乗ることになったのは大陸の名前で羅列すると、ダイ・オキシン、オゾフロ、ブラウリヒト、ハンモウ、ウミネコだ。
急ぎ富士山の旧世界目録秘密基地より飛び立った彼らの前で、頭の負傷で短気になったゲルドアルドが操るGTFⅡが攻撃を開始した。
それを見た彼等は怪獣のような頭の口内電撃砲から極太電撃が放たれる様子に完全に顔がひきつっていた。
脆い地球の上で放っては行けないモノだとは一目でわかる規模と破壊の輝き。
俺は永遠を許さないの姿が、空気をぶち抜き爆発させながら突き進む輝く電撃の奔流に呑み込まれて消える。
しかし、剣か十字架に見える白銀の機体が、その長大な姿の全長に関わらず勢いよく電撃から飛び出しすぐさま軽快に翻る。
剣に見える先端。本来は対竜種用呪術砲である切っ先を向けて、白銀が黄金を串刺しにしようと突撃していく。
互いにジャブを繰り出したに過ぎない攻防で明確に死を感じる。
大天狗との距離は、まだかなり離れているというのに、それらの余波が到達しただけで機内の計器が火を噴いた。
大気の震えが地震にでも襲われたかのように大天狗を揺らしてくる。
鳴りやまない異常を告げるレッドアラートで機内が赤く染まり、この状況で楽しそうに笑うオゾフロとアラームが喧しくデュエットを歌っていた。
「ち、地球でやっていい戦いじゃなぁい!?」
「ぎゃははははははっ!」
「到着もしてないのに機体がバラバラになるニャー!」
「……今日が俺の命日か」
「とんでもないグレートミッションだな、ちょっと私の愛機にに乗り換えて良いか?」
ゲシュタルトの最高のレガクロス操縦者として、この場を任されてしまったブラウリヒトは、十人ほど乗り込める拡張された操縦席で、現状を突破するには余りにも頼りない地球最高峰のレガクロスに、大陸で手足のように毎日使い倒していた愛機を思い出さずには居られなかった。
「ぎゃははははっ!すっげすっげ!」
「それはゲルさんに言ってください!?」
「当たり前の物が、喉から手が出るほど欲しい時には手元にないって本当なんだなっ!」
ブラウリヒトは、突然回避行動を取った。機体が高速で横回転。座席に固定されたオゾフロ以外のメンバーが発生した横殴りのGに呻くが。
機体のすぐそばを大天狗の装甲など一瞬で蒸発させる熱量が通り過ぎていったのでその行動に誰も文句を言わない。
大天狗には地球ではかなり高度な魔法を操る機体で、防御の為のバリアなども張れたが、気休めにしかならないとブラウリヒトはそれを見て諦めた。
「あぶニャー!」
「……今の光はプラズマか……?」
電撃の余波が生んだプラズマの破片が周囲に飛散し雨のように降り注ぐ。
MPモーターが生み出した物理現象の雷であるため、魔法由来の物よりはMPの薄い地球には優しい代物だったが、それでも桁違いのエネルギーの残滓であるため、直撃すれば機体に穴が空くし、それが大きければ跡形もなくなってしまう。
「神経は使うが避けられるっ」
激しい回避運動がレガクロスを軋ませる。随分と繊細だな!と内心で毒づく。
「これがMPの影響って奴か?何となく勘が冴える気がする……なっ!」
「ニャー!」
彼女の言う通り、オゾフロの大陸比べたら貧相な筈の肉体が強化されたようにブラウリヒトもMPに影響を受けていた。
「見えるっ」
ゲシュタルトの戦闘班の頭として培った未来予知のような戦闘勘が、彼女の目にこの状況を切り抜けてゲルドアルドに近付く道筋の幻影が朧気に示していた。
「目を瞑って針穴に糸を通す方が楽だなこれは」
揺らめくオーロラのように不規則に安全に通れる場所と死ぬ場所が入れ替わるその道程に冷や汗が顔を伝う。
「もっと速度出そうぜ!」
「オゾさんなんでそんな楽しそうなの!」
次回更新は未定。
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