異邦人・4
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長い蜂蜜色が三本。大河のように流れて揺れ動く。地球まで延びているそれが俺は永遠を許さないに突き刺さっていた。
編み上げていた呪詛の障壁は鋭く尖った蜂蜜の先端に集まる蜂蜜精霊の浄化能力と、木星と月の質量を併せ持つ機体を動かすほどの勢いと量で無理矢理に突破されていた。
俺は永遠を許さないはこれ自体は問題にはしていない。圧縮されてはいるが木星と月を取り込んだ機体は、その殆んどが防御用の強固な外殻であり、本体は月よりも小さい。
放置すると問題だがこの攻撃は本体までは届かない。
その巨大な外殻の中で身を縮こまらせていたが為に呪怨リアクターの一部を切り離して一時的に出力が不安定となった状態と重なり無様に突破されてしまったが。
俺は永遠を許さないが注視していたのは、今回の竜種の攻撃の種類が機体の破壊ではなく楔を打ち込むように潜り込む姿だった。
枝分かれして広がっていく植物のごとき蜂蜜からの侵食を装甲に受けていた。
『ぐあぁぁぁぁぁぁ!?』
全く予想外の衝撃。俺は永遠を許さないが竜種の意図を図りかねていた時、偽サンダーフォーリナーはその脚部を砕く勢いで迫ってきた足場に撥ね飛ばされていた。
精霊達の働きで積極的に蜂蜜から放逐された偽サンダーフォーリナーは、星を旅立つロケットのように加速し真空へと放り出される。
『くお……の、何をしてる!俺は永遠を許さない!!何故俺の墓が邪魔をする!』
優勢に水をさされて我慢ならないと吠える銀色の機体。ひしゃげた長い足を再生し、体勢を立て直す彼が睨む。こんな大質量が外部の力で容易く動くわけ無いと考えたソレは信じられない思いで己の墓に問いかける。
創造主の怒りを買った俺は永遠を許さないが親の怒号を怖れる幼子のように一回り機体を縮めた。
『なんだそれは!?』
その光景に銀色が驚愕する。なぜ縮んだのか分からなかった。生前傲慢だった彼は、他人が自身を畏れ敬い。それ故に身体をすくませて震える様子を当然と受け取っていたが、目の前の光景をそうとは受け取れなかった。
『更に縮む。なんだ攻撃され……重力に異常!潰されているのか、俺の墓が!潰そうと言うのか俺の素晴らしい墓を……そんな蜂蜜で!』
俺は永遠を許さないが攻撃を受けている。しかも月と土星を取り込む機体が一回。見ている間にも更に一回り縮むほどの力で蜂蜜が潰そうとしている。
堪らず圧力に対抗するために全体をブルブルと震わせて、弾丸状に成型していた機体を最も効率良く圧に耐えられる球体へと変形させる。
『震えるな!怯えているように見えるだろう!情けない姿を見せるなぁぁぁぁぁ!!』
偽サンダーフォーリナー頭部の眼が、レガクロスの金属眼球の複製である筈の六つの機械が、ハッキリと感じる憎悪の眼差しを向ける。
『さっきの衝撃か!それは地球まで伸びてあの虫ケラに繋がっているのか!』
機体を押し潰そうとする蜂蜜。大気のように機体を覆い尽くしているそれと、キラキラと星のように瞬き蠢く無数の蜂蜜精霊達は、地球のゲルドアルドと蜂蜜の有線で繋がることで直接操作されていた。
膨大なMPの暴力で俺は永遠を許さないを圧壊させようと中心に向かって縮小しているのだ。
内側から対抗していなければブラックホールが生まれるほどの力の鍔迫り合いが起きていた。光を歪める重力の余波が銀色の機体を引き寄せる。
『自分の墓の失態を見るとは情けない!なんと惨めな気分だ!竜種めぜったい殺してやる、跡形も無く消してやる!』
その憎悪が力となる。呪怨リアクターの欠片が変形した存在である偽サンダーフォーリナーは漲る力を迸らせて加速する。蜂蜜に押し潰されようとしている自分の墓へと真空を突き進んだ。
『甘いのは嫌いだ!人生を甘く過ごせるようなおまえらは特に!』
ソレの生前に甘いことなどなかった。短く突きつけられた人生には、事切れる寸前まで、全てを犠牲にした必死のみが詰め込まれていた。故に視野が狭く短気。タダで永遠が許される竜種に墓を汚されるのは我慢ならなかった。
天が憐れんだのか才能の豊かさが短慮と視野狭窄を補っていたが、突如放り込まれた旧世界の怪物達の戦場ではその才でも庇い切れなかった。
『あっはっはっはっはっは!第二ラウンドォォォ!』
『ぐえあ!?金色おぉぉぉ!』
俺は永遠を許さないに向かっていた偽サンダーフォーリナーが更に加速する。背後から、お色直しを終えて様変わりしたサンダーフォーリナーを操るタイタニスに蹴り飛ばされたのだ。
『があっこんな無様な!?』
蜂蜜と衝突した銀色が砕ける。
今や俺は永遠を許さないを押し潰さんと縮小を続ける蜂蜜は圧縮されてアダマンタイト並みに硬い。
砕けた偽サンダーフォーリナーは背後から直撃を許した恥辱。相手への憎しみを力に変えて見掛けは何事もなく再生。蜂蜜の上に立ち上がるが傷ついたプライドは治っていない。
『ケアッ!』
『何度もっ……強い!?形が変わっただけじゃないのか!』
嫌らしくギラギラと輝く黄金の突きが鋭く放たれ、それを片手で受け止めて見せた銀色の腕が容易くへし折れて胸部へ迫り背中へと剛腕が突き抜ける。その腕は卓越したギミックで威力を紡ぎ出すサンダーフォーリナーの本来の腕とは随分と違っていた。
『呪いが削られっ』
『ケァァァァァァッ!』
異様に末端が肥大化した見た目。拳が大きく本当の持ち主の腕に近い形状へと変化したそれは、形も中身も単純になっておりタイタニスとってはそっちの方が都合が良かった。
繊細な兵器だった元の手足よりも力強く殴れる。
『さっきより力が伝わるさね!殴りやすい』
『ぐぅぅ精霊っ精霊で編んだ腕!金属!?なんだこれはっ!』
精霊の浄化の力も纏う巨大な金色の拳が銀色を再び襲う。
サンダーフォーリナーは細く不気味な外観を捨てた。
蜂蜜精霊のハニカム状の身体をパズルのように組み立て金属化した両腕両足は太く逞しく強力だった。新たなその部位の操作には大量の大蜜蜂とキメラの補助が必要だったが、数に任せる戦法はゲルドアルドにとっては片手間に済ませられることだった。
『強くなった……まさか手加減してたというのか!金色ぉぉぉぉ!?』
『あっはぁ!恨み節なのは理解できるがねっ!さっきからそれは何処の方言だい!聞き取れやしないさねぇ!』
『ゴチャゴチャ喚くな!俺の話を無視するな!』
旧世界に近い文明を保持する大陸に住まうダイアレスであるタイタニスだったが旧世界の滅亡から長い時を経ている彼女の言語と、旧世界の言語をそのまま扱う邪神には、お互いに何を言っているのか理解できないほどの隔たりがあった。
金と銀のレガクロスが争うのを他所に、遠隔で攻撃し合うまどろっこしい関係の破壊が行われようとしている。
次回更新は未定。
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