異邦人・1
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◆元木星軌道付近。
ゲルドアルドからの先制攻撃を受けた、俺は永遠を許さない内部では、ある変化が起きていた。
荒れ狂う呪怨リアクターが生み出す呪詛をMPへと変換した制御システムが機体の制御を取り戻したのだ。
依然として呪怨リアクターは竜種と認定したゲルドアルドを殺そうと、今すぐにでも機体を地球に向けて全力で飛ばそうと狂乱していたが、それを完全に抑え込んでいる。
(エネルギー充填完了まで四十六時間……攻撃感知、呪詛シールド展開。)
僅かなタイムラグで木星位置まで届く、恐ろしき三本の蜂蜜の槍が、俺は永遠を許さないが展開したシールドに突き刺さり機体の走行表面を抉りながらのたうつ。
地球からゲルドアルドが放った第二撃である。
数多の蜂蜜精霊と共に打ち出される蜂蜜の槍は強力だ。目標が地球、それもMP満ちた旧世界の地球であっても貫く威力を誇っている。
残念なことに所詮は蜂蜜であるため、同じ土俵で戦えて蜂蜜以上に攻防に適した素材の塊。月に大量にあった隕鉄をアダマンタイトに変換し、それを触媒に強固な兵器と装甲を形成している機体には攻撃力が足りない。
シールドで威力を殺され、木星の質量を圧縮した頑強な機体は装甲表面を抉るだけで終わってしまう。
両者とも扱えるエネルギーが無尽蔵であり、この程度の損傷は互いに掠り傷になってしまう。
呪怨リアクターの狂乱を抑え、機械の冷静さを取り戻した機体は攻撃を冷静に観察と分析を行い。
ゲルドアルドを滅ぼす一撃を練り上げている。
再び去っていく蜂蜜の槍の先端をシールド越しに眺めていた俺は永遠を許さないは、先程とは違い、何かが残されているのを確認した。
そして、最大限まで警戒を強める。
残されていたのは木質と蝋が主成分の球状質量体。直系百メートルはある三つの巨大な蜂の巣が目の前の宇宙空間を漂っていた。
怨念に突き動かされるままに、蜂の巣を迂闊に破壊して、溢れだした蜂蜜でここまで吹き飛ばされたのを機体は忘れていない。
俺は永遠を許さないは戦っている竜種が持つ性質をこれまでの戦闘で理解しつつある。
今回の滅ぼすべき竜種の性質は蜂の巣。体内に尋常ならざる量の蜂蜜を蓄える容量があり、こちらの呪術を元にした攻撃に対抗できるほどの数多くの呪詛を生み出せる蜜蜂と共生している。
不死身の竜種の有り余る生命力。
蜜蜂という群体を納めた蜂の巣の身体。
それらを併せ持つ太陽のような生命体である。
機体に搭載されている呪怨リアクターの元になった人物が最も毛嫌いするタイプだ。
かつて旧世界時代に、無尽蔵に再生する山と木々の属性を持つ竜種を殺し尽くした時のように、輝く生命に嫉妬と殺意が無限に高まるのを制御システムが無感動に観測している。
あれほどの質量をこの短時間で用意できるとは俺は永遠を許さないは考えていなかったが、万が一同じ攻撃をされれば、機体が太陽系外に放り出されてしまう可能性があった。
そうなれば呪術の応用で遠く離れていても、目標を見失うことは無いが攻撃に精確さが欠けてしまう。
現在でも射程がギリギリ。撃ち出された砲弾の如く真っ直ぐに吹き飛ぶなら一瞬だが、この機体はただの移動だとあまり速くは動けないのだ。
これ以上の距離があると、主砲や現在行おうとしている攻撃は大幅にずれて、目標を貫けずに明後日の方向へと吹き飛んでしまう確率が高くなる。
そうなれば環境MPが不足している現状では、機体の破壊まで行かなくても、ここに戻ってくるのに途方もない時間がかかってしまう。
そのように思考を重ねる、機械が主体となり慎重になった俺は永遠を許さないは、ゲルドアルドの次なる手の発動を悠長に許してしまった。
三つの置き去りにされた蜂の巣の周囲にMPの光が輝く。その数は百を越え、千を越え、万を越えて増殖していった。
(空間転移を確認、妨害魔法……失敗)
新世界の宇宙空間にMPは僅かもない。希釈され本来は成立しない転移の魔法がそれを無視できる膨大なゲルドアルドのMPに押しきられて完成していく。
(敵、機動兵器レガクロス、多数確認)
レガクロス。旧世界にも存在した機動兵器。
長い研鑽の末に手に入る力と技を機械に詰め込んで人が乗り込む人造の巨人。
MPの輝きから、スパークフォーリナー達が次々と出現する。
(近距離三次元防御、パターンC、展開)
巨大な目玉を思わせる球体の頭部から雷を迸らせる。
ギラギラと輝く趣味の悪い金色の装甲を纏うレガクロスが一斉に敵に向かって進軍を開始する。
俺は永遠を許さないも、装甲表面に無数の砲を形成。外敵を包み込んで熱殺する蜜蜂のように包囲しようと、次々と戦場に転移して向かってくる機械仕掛けの金色の害虫達の迎撃を開始した。
暗き宇宙で色とりどりの輝く閃光弾ける。
幻想的な戦場へと変わっていく。
俺は永遠を許さないは迫る金色の群れを確認して呪いやレーザーではなく、実弾で迎え撃った。
呪術でMPを歪めて実体ある塊に編み込んだ質量体を投射するカタパルトだ。
それが生き物の毛穴のように敷き詰められた砲門から、一斉に飛び出す。
呪怨リアクターから呪詛を変換して供給されるMPにより弾は無尽蔵。鋼鉄よりも遥かに硬く重いアダマンタイトに近い強度と質量を持たせた鋭い礫は、スパークフォーリナーの先頭集団を次々と突き刺さる。
スパークフォーリナーは俺は永遠を許さないから見れば取るに足らないように技術で作られた機械達だったが、油断無く一体も近付けないと弾幕が重ねられる。
転移の基点になっているだろう、迫る敵の背後の蜂の巣も傷付けないと、精密で苛烈な攻撃を加える。
その為、俺は永遠を許さないは、スパークフォーリナー破壊と同時に溢れる蜂蜜に再び包まれることになってしまった。
恐れを知らず、愚直に突撃してくる機体が限界を迎えて弾け飛ぶ。
同時に全長三十メートル程度の機体に収まる筈がない質量の液体が爆発的に広がった。
月の質量に匹敵する蜂蜜の爆発が、俺は永遠を許さないに至近で次々と弾けて襲う。
(敵、レガクロスの質量増大、攻撃中止、シールド展開)
俺は永遠を許さないはシールドを展開して防御に徹する。
蜂蜜の勢いは、恐れていた太陽系外まで吹き飛ばされる勢いは無かったがシールドを軋ませる。
その圧力に機体の制御システムは己のミスを認識した。
迫るレガクロス達も蜂の巣なのだと。
蜂の巣であれば大小などは些細なことで関係無いのだと、敵竜種の性質を改めデータを修正する。
その間にも先頭集団を犠牲にして後続のスパークフォーリナー達が、蜂蜜の爆発を無視して、俺は永遠を許さないを包むように広がった琥珀色の海を泳いでシールドへと次々と到達。
シールドを破ろうと攻撃を開始する。
俺は永遠を許さないの制御システムは、互いに膠着状態に陥ったと考える。恐らくはゲルドアルドの時間稼ぎ。
防御に徹することを強いる恐るべき生産能力は驚異だが、膨大な量の蜂蜜にも、無駄にギラリと輝く金色のレガクロスにもコチラのシールドを破壊する攻撃力は確認できない。
俺は永遠を許さないは、現状確認できる敵竜種のゲルドアルドの勝ち筋を演算し、コチラの負けはないと結果を出した。
蜂蜜と共に溢れだし、機体を包囲している六角形の濃い琥珀色の小さな無数の下級精霊の姿に俺は永遠を許さないは気付いていたが。
それが戦場で活躍した記録など、旧世界にも全くなかったので、見逃してしまった。
【蜂蜜精霊】
養蜂家と蜜蜂の親しい隣人。時に両者から崇拝される彼らの最も頼りにされる能力は蜂蜜に入り込んだ異物や穢れを排除する。
蜂蜜の浄化能力である。
呪詛で形成されているため蜂蜜を汚染していた俺は永遠を許さないのシールドが。
蜂蜜精霊の浄化能力で溶けるように消え去った。
シールドを失い呪詛を浄化する蜂蜜が直接接触。精霊の浄化能力が呪術で機体を構築する俺は永遠を許さないを蝕み始める。
同時に浄化で脆くなった装甲をレガクロス達が表層とは言え破壊し始める。
そして、俺は永遠を許さないこれらに対処する前に雑兵に紛れ込んだ本命が動く。
(緊急ぎゃあああ態あああ呪!!アクター損しょぎいいいいい!)
この世で最も重く頑丈なアダマンタイト。
それをゲシュタルトのギルドマスターである最強の鍛冶士。
オゾフロによって更に圧縮鍛造されたヘビィアダマンタイト製の十メートルの槍。
それが、大出力の電磁加速投射砲により放たれ呪怨リアクターの一部を破壊した。
槍はそのまま木星の質量を月サイズにまで圧縮した機体を貫通して宇宙の彼方へと飛んでいく。
ダメージにより制御システムの統制が再び乱れる。
呪怨リアクターがシステムを振り切って動き、呪術により感知した先には、装甲に両足を突き立て、仁王立ちする群がるレガクロスよりも大きな機体。
ギラギラと輝く趣味の悪い金色の装甲は同じでも、他とは形状も内蔵している技術も大きく違う。
それはゲシュタル・ゲル・ボロスを除けば、ギルド最強の破壊力を持つゲシュタルト幹部専用機。
電磁加速投射兵器を搭載した異様に長い手足と電撃を放つ七眼の頭部を持つ巨人。
侵略者をイメージした全長五十五メートルの空飛ぶ人型蜂の巣。
ゲルドアルド専用機【電撃の異邦人】。
密かに対旧世界の怪物の複製用兵器としてダイ・オキシンが設計した機体が、その思惑と世界を飛び越えた。
電撃の異邦人は、現実の世界で、本物の旧世界の怪物を相手に本来の想定以上の目的を果たすために戦いを開始する。
『あっははははは!良いねぇ!良いねぇ!心地好い殺意!殴りがいがありそうじゃないかっ!』
持ち主である|竜種となった蜂の巣の魔人の代わりに、たまたま今回の戦いに巻き込まれた第三者。
『前は途中参加で不完全燃焼だったが、今回は楽しめそうさね!』
アイゼルフ第三王妃タイタニスを乗せて。
次回更新は未定です。
今月か来月も更新したい気持ちはあります。
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