地球SOS
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ゲルドアルドは未知の強大な敵に対抗するため同じく強大な武器を求めた。
当然、側にあった自分の思い通りにできる怪獣のような蜂の巣は素体として使われる事になる。
それが自分が地球に置いてきた本当の肉体だと知れば多少はゲルドアルドも躊躇しただろうが、そんなことは全く知らない彼は、容赦なく竜種化して巨大となった身体に機械を組み込みレガクロスに改造してしまった。
彼はこの期に及んで、自分が一体どれほど奇怪な道程を歩んでいるのか全く理解していない。
肉体を改造している間は彼の全身が激痛に苛まれた。麻酔無しで機械のインプラント手術をしているので当然である。
だが、とても正気とは言いがたい精神状態の彼は、同じく巣を脅かす強敵を前にして興奮状態の大蜜蜂達に後押しされ、アイアンメイデンに放り込まれた者が体感するような痛みを乗り越えてやり遂げてしまう。
それは、ゲルドアルドが暫定異世界で対ダークネスホーリーマスターを想定して建造していた機神ゲシュタル・ゲル・ボロス越える超々弩級決戦レガクロス【ジャイアントサンダーフォーリナー】のパーツを武器として組み込み。
新たに開眼した彼の能力を使用し蜂蜜精霊を金属装甲化し、ファーストジョブを失ったのが原因だと分かっていないが弱体化した巣の建材を補強している。
仕上げに趣味の悪いギラギラとした黄金の輝きにスキルで染め上げることで、全高九千メートルの直立型決戦用蜂の巣にして宇宙最大のレガクロスが完成した。
その名は【ジャイアントサンダーフォーリナーⅡ】である。
完成したGTFⅡは、非常に短絡的になっているゲルドアルドの意思を反映して、背中に移植された巨大な電磁投射砲により、木星を吸収して呪詛を研ぎ澄ませている俺は永遠を許さないに向かって攻撃を開始する。
GTFⅡとなったゲルドアルドの肉体後方から伸びるのは機体全高よりも長い尻尾。その内部では彼のスキルでは生み出せない電気や磁力を生む大量のMPモーターが配置されている。
ゲルドアルドから供給されたMPによって高速回転し始めたそれらは電気を生成。GTFⅡの背中に移植された五千メートルもある三本の大型電磁投射砲へとMPと共に供給して稼働させる。
本来は魔法により磁化された液体金属を放出する筈の三つの巨砲から、磁化された大量の蜂蜜が砲門より噴出された。
巨大装置により光速を得た蜂蜜は、砲門前方に魔法で展開されている光輝く収束加速リングによって、この世の物理法則ごと敵を貫く、光速を超えて宇宙を直進する長大な蜂蜜の槍となって俺は永遠を許さないに迫る。
キラキラと輝く六角系の蜂蜜精霊達も内包し、地球重力を物ともせず宇宙へと飛び出した蜂蜜が、俺は永遠を許さないに到達すると同時にそれは起こる。
単純な破壊力ならば機神も凌駕するレガクロスが、突如、爆炎に包まれたのだ。
GTFⅡより放たれた攻撃に反応した俺は永遠を許さないによる反撃である。
恐るべき破壊力を伴う電磁投射された蜂蜜の槍を耐えきった相手より苛烈な応報がゲルドアルドを襲ったのだ。
任意の空間座標を竜種への恨みに満ちた爆炎で粉砕する俺は永遠を許さないの呪怨攻撃は、GTFⅡを中心にMPの乏しい新世界では本来発現する筈がない規模と威力の魔法現象によって大気と大地。
更に空間までも爆砕した。
MPが薄い地球では、形の無い気体でさえも魔法に耐えられず破壊される。
GTFⅡの周囲の物質は、状態や質量を無視して素粒子へと分解され、直径一万メートルの空間すら砕かれた虚無へと変貌する。
凄まじい勢いで大気と空間が世界に生まれた虚無を埋めようと爆縮のような現象が、足場の大地を失ってバランスを崩したGTFⅡに押し寄せる。
爆縮に巻き込まれた、攻撃の範囲外だった建造物や草木。飛んでいた鳥類が哀れにも吸い込まれて磨り潰されていく。
「あっつぅ!?」
落下しながら、GTFⅡの内部でサンダーフォーリナーと同じ操縦システムを移植し、機体を操っていたゲルドアルドが全身襲った熱に声を上げた。
その周囲では大蜜蜂達の苛立たしげ顎が打ち鳴らされる。
しかし、ダメージはそれだけだ。
ゲルドアルドは戦闘が得意ではないが、敵の攻撃が竜種特効だとは気づかなくても、自分用に調節された呪いだと察していた。
金属化した蜂蜜精霊と蜂蜜の層を幾重にも重ねた装甲はその対策である。
呪いも含んだ魔法全般に強固な防御力を発揮する下級精霊と、その精霊が持つ強力な蜂蜜浄化能力を一番発揮できる蜂蜜に包まれているGTFは、旧世界の邪神の怨念も寄せ付けない。
本来は蜂蜜精霊にそこまでの力はないが、呆れるほどの数の暴力が旧き神話の敵と拮抗……いや、凌駕していた。
木星を取り込み力を蓄える俺は永遠を許さないは、竜種特効の呪怨を容易く退けるゲルドアルド達に、冷たい宇宙で灼熱の怒りで猛り狂っているだろう。
爆炎により焼かれて砕かれたギラギラと輝く金色のGTFⅡの装甲が無数に剥離していく。砕かれた装甲からは血のように蜂蜜が流れ出し、数千メートルの落下の衝撃で更に機体から蜂蜜を勢いよく噴射させて着地した。
GTFⅡの全高と比べると対した高さではないが、九千メートルの金色の怪獣と化している機体の落下はクレーターの底を更に陥没させる。
落下の衝撃は押し寄せる大気と大地を再びを吹き飛ばして周囲に破壊を広げていく。
オゾン層の代わりに現在地球を覆っている蜂蜜の海から地球を観測していた大和級万能戦艦、一番艦大和と二番艦武蔵の塔乗員達は、GTFⅡ着地の瞬間に、地球の自転速度が七パーセントも低下し、地軸がずれるのを観測して戦慄していた。
周囲は恐ろしい災禍に見舞われたがGTFⅡは爆発など無かったかのように流れ出て湖となった蜂蜜の中に立っていた。
大きなダメージを受けていたように見えた機体の損傷は、蜂蜜と一緒に流れ出た蜂蜜精霊が埋めることで瞬く間に修復されている。
有効打にならなかった蜂蜜の槍が発射されたのと同じ速度で背中の巨砲へと、蛇のようにのたうちながら引き戻される。
蜂蜜は、地球全土に奇妙な曲線模様を地上に描きながら収納された。
「……今のどっから来た!?」
(座標攻撃。回避不能。損傷。修復。完了。)
「相手は!」
(損傷軽微。)
「これで攻撃力足りないの!」
呪術を介して敵への照準、誘導、着弾とダメージ観測を行うディラック達。罠蜜蜂達の報告に痛む頭を抱えてゲルドアルドが叫ぶ。
彼は今の攻撃で仕留める気だったのだ。
三本の電磁投射砲より放たれた蜂蜜の槍は、ゲシュタル・ゲル・ボロスでもまともに当たれば破壊可能な威力が出ていた。ダメージを与えただけで終わるのは予想外である。
宇宙を隔てたクロスカウンターは、ただ地球を痛め付け、旧世界目録を慌てさせただけに終わる。
このゲルドアルドとの攻防により呪怨リアクターが活性化した俺は永遠を許さないは、木星の質量を取り込み弾丸と化した機体の発射可能までの日数を残り二日へと縮めた。
次回更新は未定。できるだけ早く更新したい気持ちはあります。
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