その1
「お昼一緒に食べよ♪」
冷たかった風が少しずつ温かさ取戻し始めたある日の昼休み。真新しいセーラー服に身を包んだ少女が入り口に立っていた。ウェーブのかかった長い髪、大きな瞳、透き通った綺麗な肌、美少女と呼ぶに相応しい女の子だった。
始業式の翌日にやって来る彼女の蛮勇と目を引き寄せる容姿にクラス全員に驚きと沈黙を与えた。
彼女はゆっくりと視線を動かし、誰かを探し始めた。ある一点で動きを止め嬉しそうに手を振り始めた。何人かの男子生徒は驚きながら彼女に手を振り替えした。にっこりと微笑んだ彼女は、教室の中を歩き始めた。微風が彼女の細く黒い髪を静かに揺らすと、日の光を浴びてキラキラと光り出す。春の小川のきらめきを連想させた。行く先々の生徒は、自然に彼女に道を譲った。その度に小さく会釈をして通り過ぎて行く。
教室の真ん中で歩みを止めすと、そこに座って弁当を食べている男子生徒に話しかけた。
「あー、私が来るまで食べちゃ駄目って言ったよね。」
膨らませた頬は、サクラの花びらのように綺麗なピンク色をしてる。
「約束したかな?」
彼は、答えながらハンバーグを箸で掴んで口に入れる。
「お弁当渡した時に言ったよね。」
「眠くて覚えてない。」
彼は卵焼きに手を伸ばす。彼女は、すばやく弁当箱を取上げてそれを阻止した。
「ちゃんと聞きなさい明桜。」
「聞いているよ。愛桜ねーちゃん。」
これは、明桜と愛桜の二人の物語。
終わりを迎える為に始まった高校生活。
もうボクには見守る事しか出来ないのだろうか?
この悲しい物語を・・・