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第二稿 神将ゼロ

お久しぶりです。

一話投稿からだいぶたってしまったので今回は長めにしました。

 歴戦の戦士がこの少年と出会ったのはほんの数分前のことだった。

 敵の戦士に深手を負わされ、窮地に追い込まれてしまった。また呪いに生き返らされると思うと憂鬱な気持ちになっていた。死を覚悟して目を瞑ったが何も起きない。それどころか、先程まで飛び交っていた怒号や悲鳴が全く聞こえない。どうしたのかと目を開けると、いつの間にか、目の前に黄金の光を放つ柱が立っていた。そして、その中心にたっていたのがこの少年だった。

 その少年に身元を尋ねたが、どうやら記憶を失っているようでこの《不死戦争》やその他の常識のようなものがほとんど欠けていた。

 そんな理由から、歴戦の戦士は少年に《不死戦争》の始まりについて語っていたのであった。


 「さっきからぼーっと俺のこと見てるけど、ちゃんと伝わってんのか?」

 「…一応は…わかった…かも…。」

 「ならいい、じゃあ今度は俺から質問だ。」

 「…?」

 「なーに、簡単なことだ。その刀、どこで手に入れた?」


 少年が両手で支えている刀について言及した。少年は少し考え込むと、思い出したかのようにこう言った。


 「お兄ちゃんがくれたの。お前の力になるって言って。」

 「お兄ちゃんって、お前の兄弟か何かか?」

 「…わからない…」


 戦士が刀について尋ねたのには理由がある。

 この世界において刀とは神が使っていた神話の武具であり、現存しているとされるものは残り数本となっている。

 しかし、その現存している刀は全て、少年を保護した戦士が所属するガリウス派と戦争の相手であるナリウス派に、それぞれ四本ずつ保存されている。

 つまり、もしその八本の内の一本だとしたら、この少年は問答無用で死刑だろう。出会って間もない間柄ではあるが、まだ育ち盛りの少年が死を経験するというのは、想像するだけで気分が悪い。

 だからこうして確認を取ったのだ。もし新たな刀剣であるのなら本部に報告しなければならない。


 「なぁ、その刀、俺に貸してくれねぇか?お前が持ってると危ねぇだろ。」


 少年に刀を渡すよう話すと、まるで人格が変わったかのように鋭い目つきになり、睨みつけるようにしながら、少年はこう言った。


 「ダメだよ。この刀は持つ者を選ぶ刀だ。多分今おじさんに譲渡すれば、きっと二度と立って歩いたり、戦ったりはできなくなる。」

 「な、なにが起こるってんだ?」

 「心がこの刀に取り込まれれて、永遠に目を覚まさなくなる。」

 「つまり…」

 

 少年の言うことには、つまり刀を受け取った瞬間意識を奪われ、魂がその刀の檻に一生とらわれてしまうというイメージだろう。零のかなりの豹変ぶりに、戦士はかなり焦ってしまったが、どうやら嘘は付いていないようなので刀に関してはこれ以上触れないことにした。

 

 「…ねぇおじさん。名前…なんていうの…?」


 いつの間にか先ほどと同じ雰囲気に戻っていた。少し安心した戦士は少年にこう名乗った。


 「ああ、俺はゲンダっていうんだ。まぁよろしくな。」


 思えば会話の順序を間違えていたのだろう。ゲンダと名乗ったその戦士は、思い出したこのように続けた。

 

 「お前は?名前とか、覚えてるか?」

 「たぶん…神薙零(かんなぎれい)。お兄ちゃんに言われたんだ。」

 「神薙?うーんどこかで聞いたような…」


 突然、背後から凄まじい爆発音がした。

 二人が爆発した方へ振り返ると、そこには、今までゲンダが戦ってきた戦士の中でも1、2を争うほどの気迫を持った戦士が3人、こちらを見ていた。


 「なんだお前ら。俺らは今休憩中なんだが?」

 

 少し間をおいて3人の中で真ん中に立っている女が口を開いた。


 「私はナリウス派ゼビウス軍将軍、リグレットである。その稚児(ちご )を渡せ。さすれば命までは取らん。」


 突然の襲撃に加え、零を渡せという要求にとっさの反応ができず状況を把握しようと思考を巡らせていると、零から思いもよらない言葉が飛び出した。


 「我の身柄を寄越せと?笑わせる。貴様らに渡すものなどミジンコ程もないわ。」

 「ほう。我らなど取るに足らぬ、退けるなど雑作もないと?」

 「敵の力量も図れぬひよっ子に負けるほど腐ってはおらぬよ。将軍殿。」

 

 不敵に笑いながら零は言う。訳も分からずゲンダは茫然と二人を眺めていた。

 

 「ごめんねおじさん。巻き込んじゃったみたい。でもすぐに終わらせるから。」


 零の子供らしからぬ言動や将軍と呼ばれた女。とにかく頭に入れることが精一杯で今の零の言葉にすら反応できなかった。

 リグレットもそうだがもっと得体のしれないのは零の方だ。

 明らかにその容姿から想像される話し方、言動とは程遠い。そして(・・ )の零から放たれる威圧感、もとい覇気は、明らかに先ほどまでの零とは別物であった。


 「ふむ、来ないのならばこちらからゆくぞ。」


 零がそう言った瞬間、リグレットの左右に立っていた二人の護衛の首が吹き飛んだ。

 残った体の首から大量の血が噴き出す。その場にいた誰もが、零が刀を抜いたところを誰も見たものはいなかった。厳密にいえば見なかったのではなく見ることができなかったのだ。

 かまいたちのような衝撃波を発生させたのではない。確かに物理的に二人の首を飛ばしたのだ。

 現に零の刀には二人のものであろう血液が付着していた。


 「なっ…!」

 「遅い…貴様ら本当にその実力で我を捕まえようと?」

 「くっ…私は引けぬのだ…たった今貴様に殺された部下のために!!!!!」

 「ほう…」


 零は刀を一振りして血を落とすと、それを鞘に収めた。


 「ならば見せてくれ。貴様の全力を。我も全身全霊で答えよう。」


 そう言うと、零は自分を中心に白い衣を出現させ、やがて体全体を覆った。


 「何を…しているのだ…。」


 白い衣は零が放つ殺気を増幅させ、まるで阿修羅がそこに立っているかのような恐怖を、零を見つめる二人に与えている。

 そしてその衣が大きく膨れ上がり、破裂すると、そこには先程いた少年とは全くの別人が立っていた。


"顕現 神将ゼロ"


 先程まで零が立っていた場所、そこには白と灰色を基調とし、所々に黄金の装飾が施された和風の装束を身に纏った青年がいた。


 「久々の顕現だ、そう長くは持たん。なので早々に決めさせてもらおう。」

 「くっ…舐めた口を!!!」


 リグレットが零だと思われる青年に斬りかかる。そして近距離で魔法を発動する。


 "火炎魔法 マクロフレイム"


 大きさに驚いたのか、それとも不意をつかれたのに驚いたのかは分からないが、零は少し目を見開いた。しかしリグレットが放った魔法は瞬く間にかき消されてしまった。

 それを見てさらに激昂したリグレットは連続で火炎魔法を繰り出した。しかしやはり零に届く前にかき消されてしまう。魔法は当たらないと諦めたのか、リグレットは身体強化の魔法をかけ零に斬りかかる。


 "身体強化参式 アグレッション"


 零は、強化された斬撃を敢えてギリギリまで引きつけてからかわしている。まるで相手を弄ぶかのようだ。


 「ふっ…そうカッカするでない。当たる攻撃も当たらんぞ。」

 「煩い!!!貴様を殺して!!もう戻れないあの2人の仇を討つのだ!!!」


 2人の闘いを後ろから見守るゲンダは、女将軍の言葉に違和感を覚えた。もう戻れないとは、意味合いとしては死という事だろうが、死が訪れることの無いこの戦争において何故そのような言葉が出てくるのか、ゲンダには理解できなかった。

 少し後ろに後退し、零はリグレットに提案する。


 「将軍殿。次で最後にしよう。俺とお前の全力を、次の一手に込めるんだ。」

 「…いいだろう。もう軍の目的などどうでもよい。今は貴様を殺したいという気持ちで胸がはち切れそうだ。」


 零は半身になって足を開き、腰を深く落とした。刀を後ろに構え、居合のような体制に入る。

 リグレットも剣を後ろに構え、刃先を零に向ける。その足は瞬間的に踏み出せるように力が込められている。


 風が吹き、そしてその風が止んだのを合図に、リグレットが零に向かって走り出した。


"ゼビウス軍禁忌剣第一式 閃光"


 放たれたリグレットの突きは白い光を帯びて零へ襲いかかる。


「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 目にも留まらぬ速さで襲いかかる刃を零はすんでのところでかわした。

 それと同時に、リグレットの腹部を切り裂いた。


"神薙流剣術二式 紅喰い"


 「…バカ…な…」


 紅の波動を帯びた零の刀にリグレットの血が付着し、一層禍々しい雰囲気を漂わせる。


 「貴様の気迫、剣捌き、立ち回り、どれを取っても一流の武人のそれであった。貴様と戦えた事、俺は誇りに思おう。」


 気がつくと空は暗くなり、大粒の雨が、まるでリグレットの血を洗い流す為のシャワーのように降り注いでいた。






                         to be continued

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