あんばーすでい
このわたしには責任がある。
天使たちの羽をひとつひとつむしり取って地べたに落とした。以来きらきらと光る鱗粉をいつまでもねぶって生きている。
この行列につきたければ色づいた羽は、開いた花弁は丁寧にむしるのがルール。
膝を付いた老兵には歯を剥き出して、手を打って、大声で囃し立てるのがルール。
死んだ者には丁寧に、二百回の鞭打ちを手向けるのがルール。
そんなのはわたしが決めたことじゃないけど。
付いてくるこの長い長い行列に対して、わたしには責任があるのです。
時々膝をついて、この世界の底を覗きこむ。
まだまだ奥にいっぱい沈んでいて、掬い切れない。
この世界がこんな風なのは全てわたしの責任だから、わたしは今日も、石の付いた白金の指輪を着けたまま、水洗便器の奥に肘まで突っ込む。
誰のものとも知れない汚物の詰まり溢れ。その責任はわたしにある。
愚かだなあ。惨めだなあ。浅ましいなあ。
そんなわたしの民たちを許し、今日もわたしは祈る。
彼らがゆるされますように。
この世界がちっともすくわれないのは、全てわたしに責任があるのだから。
この道をすれ違うあなた。
せめてあなたの行き先には、死骸に集る虫たちよりも、花たちの咲くのを多く見られますように。
そう、よぶんに祈る。




