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婚約者さん

   

 夕食の席での事です。

 昨日と同じようにミアちゃんのご家族と同じ食卓に着き、いざ食事をば、というところで見慣れぬ人物が食堂にやって来ました。


 年齢は十代の後半から二十代の前半。ややクセのある長い赤髪を後ろで結わえ、動きやすそうな軍服風の衣装を着た女性。動きがキビキビとして、いかにも体育会系といった雰囲気の美人さんです。


 他の皆さんがさも当然のように自然にしているので、この家の関係者に間違いはなさそうですが。はて、もしやこの家にはお姉さんもいたのでしょうか?


 失礼にならぬよう、小声で隣のミアちゃんに尋ねました。


 

 「あの人はリーズさんって言って、私のお姉様になる予定の人、かな」


 「ほほう、つまりお兄さんの婚約者ですか」



 あんな美人をモノにするとは、お兄さんもなかなかやりますな。

 そういえば、昨日私がミアちゃんの部屋に泊まったのも、元を正せば客間に先客がいたからなんでしたっけ。あのリーズ嬢がその先客なのでしょう。


 向こうも見慣れぬ私の姿に気付いて、隣の席のお兄さんにこっそり尋ねている様子です。ここは、一つこちらから挨拶をして仲良くなっておくべきでしょう。



 「どうも、はじめまして。私、ミアちゃんの友人のリコと申します。縁あって昨日からこちらに滞在しているので、よろしくお願いします」


 「そうか、ミア君の友人だったか。私はリーズ、階級は曹長だ。すでに聞き及んでいるかもしれないが、このロビンの……婚約者だ。その、こちらこそよろしく頼む」



 外見同様、性格のほうもキビキビした人ですね。

 そして予想した通りに軍属。


 家名がないという事は平民のようです。

 この世界では貴族と平民の婚姻は一般的なのでしょうか?

 この家の人々はおおらかな性格の方々なので、これが例外的な事例だという考え方もできます。緊急性はありませんし、この件に関しての判断は保留しておきましょう。


 堂々としているように見えますが、初対面の私にいきなり軍での階級まで含めて名乗るとなると、内心では緊張しているのかもしれません。婚約者の家族、しかも貴族に囲まれているのですから、己をしっかり見せようと気を張っているのだと推測されます。


 「婚約者」と言った時に、一瞬照れの感情が混じって言い淀んだ事を考えると、ただの堅物というわけでもなさそうです。



 そして、なんというか……いえ、これは確たる根拠もありませんし、流石に失礼なので忘れておきましょう。 



 あと何気にお兄さんの名前がロビンさんだと初めて知りました。今まで「マッチョさん」だの「お兄さん」だのと呼んでいたので。





 今のやり取りで分かる情報はそんなところでしょうか。

 とりあえず頭を切り替えてプロファイリングの事は忘れ、今は食事に集中するとしましょう。


 食卓の上には、香ばしく焼かれたお肉のロースト、茹でたブロッコリー、具沢山のスープ料理、茹でたブロッコリー、新鮮な野菜サラダ、それと茹でたブロッコリーが所狭しと並んでいます。昨日も同じような具合でしたし、ブロッコリーがやけに多いのはこの家の仕様のようです。なんでも筋肉を造るのに良いのだとか。



 ちなみにこれらの料理を作ったのは、この家のメイドさん達です。

 メイドとはいっても住み込みではなく、近所のオバさん達がシフト制で通って家事をしているという、ちょっとしたパートみたいな雇用形態だそうですが。


 この家のメイドは仕事内容の割に給金が良いので、この近所では競争率が高い人気の職場だそうです。そうなると熟練の家事スキルを持つ歴戦のオバちゃん達に、若くて可愛いだけの娘さん達が勝てるはずもありません。メイドの平均年齢が上がってしまうのは、自然の成り行きだったようです。


 この様相では、誠に残念ながら、いわゆるメイド萌えの方々の期待には応えられないかと存じます。彼女達の衣装がメイド服ではなく、普通の私服の上からエプロンを着けただけなのは、この際まだしもの救いかもしれません。




 「そうだロビン、明日の任務が終わったら、ようやくまとまった休みがもらえそうだよ」


 「そうか、じゃあこっちも準備を進めておくよ」



 ブロッコリーを口に運んでいたら、ロビンさんとリーズさんの会話が耳に入りました。私の視線に気付いたリーズさんが、こちらが疑問を発する前に言いました。



 「その、まとまった休みが取れたら式を挙げようという話になっていてね、明日の仕事が終わったらようやく仕事に区切りが付きそうなんだ」



 ほう、それはおめでたい。



 「次の戦いが終わったら結婚するんだ」



 なんで、死亡フラグ風に言い直しますかね?


 それに「戦い」?

 軍属ならば戦闘行為が仕事というのは分かりますが、もしも人間相手の戦争ならばこんなに悠長にはしていられないでしょうし、街の様子にも不審な点はありませんでした。



 「つかぬ事をお聞きしますが、明日のお仕事の内容を伺っても?」


 「ああ、小鬼ゴブリンの巣を潰すんだよ。以前から巣の位置を探していたんだが、最近になってようやく正確な場所が分かったんだ」



 ……これは。



 「大丈夫、魔法は使えないが、こう見えて剣には自信があるんだ。小鬼ごときに遅れは取らないよ」



 なんで、こう露骨なまでにフラグを重ねますかね。


 先程のリーズさんに関しての推察。

 あまりに失礼なので、流石の私も途中で考える事を自重したのですが、その内容が再び頭をよぎりました。


 この人、性格といい外見といい、なんだか敵に捕まって「くっ殺せ!」とか言いながらエロい事されるのが似合いそうだなぁ、と。



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