……ロリっていうなぁ!
…小学生?
何故小学生が高校にいる?
しかも、来るタイミングから生徒より先生の様である。
間違えて入ってきてしまったのか。
そう考えていると、
「こんにちは。間違えて入ってきちゃったのかな?」
と話しかけて見ることにした。
すると、
「失礼なぁ!私はここの担任だ!」
頬を膨らまし、その小学生は叫んだ。
涼介は固まった。
「え、えーっと?担任の先生のお子さんかな?」
涼介は諦めず、小学生に話しかける。
きっと、勘違いしているのだろう。ちょっと頭を打っちゃって、自分が高校の担任になった夢でも見て、それで来ちゃったとかではないだろうか。
先生の娘さんとか。
そんな期待は、意外とすぐぶっ壊された。
「だからっ!わ・た・しが!ここの担任の秋雨 紅葉!机の上のプリントに書いてあるじゃん! 」
机の上のプリントを見る。
サラッと見ただけだったので、担任の所迄見ていなかった。
見ると、そこには本当に目の前の小学生の写真が貼られてあった。
……先生とは思えない。
『始めはそーだよなぁ…』
『あったあった〜紅葉ちゃん先生とは思えなかったな』
同じ事考えていた奴もいた様だ。
「分かった?私はここの担任なの!後!私は大人!免許もあるの!断じて小学生なんかじゃないのぉ! 」
それを聞き、何となく把握は出来た。
でも、気になる事もある。
「すいません、質問なんですが、小学生先生。」
「小学生言うなぁ!まぁ、いいや。なに?えーっと……はねや……君? 」
「はや、です。先生、授業なんかできるんですか」
そう、これだ。
こんな見た目小学生ロリが勉強、ましてや高校の授業なんか出来るのだろうか。
……実は天才だったりして。大人だっていうし。
「……あー、それはねぇ、勉強は私担当じゃなくて、他の先生がやってくれるから」
そうですよね。じゃあ、
「なんで先生いるんですか? 」
1番気になることだ。
「まぁ……それはねぇ、私は体育、もとい、挟醒の訓練担当だからねぇ」
「では、あの二年生から始まる、挟醒の訓練は、先生がやるんですか? 」
「そーそー。私の訓練は少しキツいけどねぇ。」
何となく把握は出来た。
しかし、こんな見た目小学生が、挟醒なんて出来るのだろうか。
挟醒。ここ十数年で発見された、人類の新たな力であり、スポーツの一種。
この世界の裏の世界、《幽界》を開き、魂を送る。
そこでは、人間の秘められた力を開放する事が出来る。
まるでゲームの様である。
凄い力を見つけたな、としみじみ思う。アニメやマンガの様な世界を作り出せるとは。
但し、少し違う所もある。
まず、HP、MPなんて物など無い。
勝ち負けは相手が死ぬまで。
次に、魂を送っているため、現実世界では心肺停止状態になる。
よく見る、ゲーム系アニメでは、意識をゲームに送り、肉体は残り、眠っている状態、と言うが、
ぜんっぜん違う。
肉体の機能を全て幽界へ持っていく為、全機能が停止する。
まぁ、戻ってくれば、全てが稼働しなおす。
これに反発する者もいた。
『危険だ』『本当に死ぬんじゃないのか』などなど。
だが、そんな事故は一回も起きた事は無い。
どうやら、幽界で死んでも、肉体には何一つ危害は無いらしい。
科学者達が何年もの時間をかけて、その安全性を確認した。
「と、言うことでね、安全なんだよ。」
そんな説明を、長々と30分程聞かされた。
かなり端的に纏めた物がさっきの説明である。
あれでもかなり纏まっている。
「さぁて!次に!自己紹介でもやるかな?一応一年いるし、なんとなく顔は知ってるかもだけど、名前は知らない人の方が多いと思うよ。それじゃ!まずは、右端から順に行こうか!立って話してね!」
気付いたら、つっ伏していた者が皆起きている。
そして、強制的に自己紹介が始まった。
右端の男子が立ち上がり、話し出す。
……一通り済んで、名前と顔を覚えた。
緑野 俊、西野 星楽、神崎 侑介、夏原 鈴蘭、葛木 木葉、唐木 当夜、薊 心、此峯 柚華、涼介の9名。どうやら、1人分の席が空いている事から、転校生か休みだろう。
それにしても、何故ここまで少ないのだろうか。お陰で覚えやすいが。
実は、俺はとんでもない力を持っているのかも。
と期待を浮かべる。
「あ、そーいえば、ここにこんな人少ない理由なんだけどねー、他の人とは違う力がある……」
「本当ですか?秋雨先生ちゃん」
「だからぁ!ちゃんとか付けないでって!……ゴホン、力はあるんだけど、まだ秘めている、ってだけ。しかも、その状態だとねぇ…リアルでは、普通の人間よりも弱いのさ。」
予想の大きく斜め上に進んでしまった。
普通の人間より弱いって……
あ、でも、
「と、言うことは、俺らは鍛えられる為にここにいる訳であって、強くなればかなりの力を持つって事ですよね?」
「あー、そーそー。そゆこと。」
ふむ。ならまぁ、強くなるのなら問題は無い。
「他にやる事あるかな?……うーんっと、良し、無い!帰って良し!」
「「ええっ!? 」」
唐突過ぎる。さっきまで話していたのに。
「あ、明日から羽屋君の訓練始めるから、ジャージ、持ってきてね。」
「「……はーい」」
そして、今日の学校は終了した。