表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
領主の娘と魔女  作者:
3/6

手記 2

薬草の知識があったお母様は、医者と共に、なんとかお父様の病気の進行を止めようとしていた。だが、お父様は、徐々に病に侵され、弱っていった。


そして、私が14歳になった年、お父様は眠るように息を引き取った。




慕われていたお父様の死を、誰もが嘆いた。私も、酷く泣いた覚えがある。


お父様の葬式から数日後、私はお父様の部屋で佇むお母様を見付けた。


お父様の死によって混乱していた家臣をまとめ、立派な葬式を執り行ったお母様は、とても疲れた顔をしていた。


「お母様、顔色が悪いです。少しは休んでください」


「ありがとう、サーラ。でも、大丈夫よ」


微笑んだお母様は、お父様が大事にしていた指輪を持っていた。


それを見た私は、はたと気付く。


お母様は、お父様の死後、一度も泣いていない。――違う。泣けなかったのだ。私を含めた誰もがお母様を頼ったから、彼女は泣く暇すらなかったのだ!


「お母様!」


堪らず、私は彼女に抱き着いた。


「ごめんなさい。私、お母様に甘えてばかりでした。お母様だって、悲しいはずなのに!」


「いいのよ。わたくしは、あの人が大事にしていた人達を支えると決めていたのだから」


「だったら、私がお母様と一緒にこの領地を守ります。だから、1人で我慢しないで…」


そう言った私の頭に、雫が落ちてきた。見上げると、お母様の目から涙が零れている。


私を抱き締め、静かに涙を流すお母様にしがみついて、私は心の中でお父様に話し掛けた。


安らかに眠ってください。私達は大丈夫です、と。




それから数年の間、私達は家臣に支えられながら、領地を運営した。相変わらず、それほど丈夫でない私は、城に引き籠もってばかりだったが、それでもできる限りのことをした。


時折寝込みながらも大病に罹ることはなく、無事に17歳になった年のこと。私に、婿取りの話が持ち上がる。


いつかはその話が来ると思っていた私は、淡々と婿取りを受け入れた。その年は不作だったので、結婚によって、領地を支えるつもりだった。


いくつかの縁談があったが、最有力と言われていたのは、隣の領地を治めていた若き領主。彼と結婚して、領地を1つにするという話だったが、お母様はあまり乗り気ではなかった。その領主には、良くない噂が付き纏っている、というのが理由だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ