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チート問題児の異世界旅行  作者: 早見壮
第零章:そうだ異世界に行こう
7/26

散歩と問題児 その一

お待たせしました。


これからは、大体このくらいの長さで

書いていきたいと思います。

 正義たちの合宿の件も終わり、異世界に行く準備もいよいよ大詰めというところまできたころ、俺は海を漂っていた。


「さて、今回はどこまでいけるかな?」


 俺は現在小舟に乗っており、他のメンバーはいない。というか、今日は平日それも昼頃なので桜たちどころか正義たちも学校に行っている時間だ。

 現在俺が行っているのは、ちょっとした散歩でこの小舟で外国へ行こうとしているのである。ちなみに、過去に七回ほど行っており、日本のほかの場所に着いたのが二回、途中で船が沈み泳いでほかの国に行ったのが四回、ほかの国に行けたことは一回である。

 それもそのはずで、俺は舟を漕ぐわけでもなくただ波に揺られているだけなのだから、海を渡って外国に行けるはずもない。

だが、俺はあてもなく海を漂うこの時間が好きだった。大抵沈むんだけどな。


「ん?あれは島かな、どこの国の島だろ?寝てたからわかんないや」


 暫く漂っていると島が見えたが、実際にその島にたどり着けるかは運次第だ。なんせ、オールなんて持っていないし、仮に持っていたとしても漕ぐ気などないからだ。

 だが、どうやら今回は運が良かったようでうまい具合に無人島らしき島に漂着できた。


「さて、じゃあいつも通り、拠点探すか」


 小舟を陸まで上げて拠点探しに向かう。今回はちょっと異世界を意識して森の中に拠点を作ることにした。

 ちなみに、今回の散歩の目的は気晴らしである。今、俺の頭を悩ませている原因はあともう少しというところまできている異世界転移のことである。


「このあたりでいいかな。後は釣り具と雨風をしのげるもの造らなきゃな」


 異世界に行くための準備が残すところ時空間魔法だけになったが、肝心の時空間魔法の魔法陣がいまだにできていないのだった。

 さらに、俺たちの行く世界がある程度絞り込まれていないといけないのだが、その絞り込む方法をまだ考え付かずにいた。


「とりあえず、木材集めと水の確保に行くか」


 なぜ、絞り込まなければいけないのかだが、俺たちは魔術のほかにも霊術、妖術、結界術といった様々な能力が使える。しかし、もしこの世界と同じような世界や化学だけが発展している世界などに行ってしまうと俺たちは自分の力を抑えて過ごさなくてはならない。それでは、わざわざ異世界に行く意味がない。

 そのために、所謂ファンタジーな世界で尚且つ霊術や妖術が存在している世界を探そうとしているのだが、探し方の検討が付いていないのだ。


「おっ、なかなかいい感じの石じゃねぇか。何個か拾っていくか。ん?これは木の実か?これも採っていくか」


 それで、気晴らしのためにこの散歩を実施したのである。


「よし!とりあえず、拠点はこんなもんでいいか。そろそろ、日が傾いてきたな。薪でも集めて焚き火でもするかね」


 次の目的を決めて、さっそく森の中に入っていく。俺の後ろには、数時間程度で建てられた立派なログハウスが建っていた。


「そうだ、今のうちに森の中と川と海に仕掛け造っとこう」


 移動する傍ら、手早く森のあちこちと川や海に薪を拾いに行ったついでに仕掛けを造り、拠点に帰ってきた。拠点に帰ってきて早々枯葉を集め原始的な方法で火種を作り、三十分ほどで焚き火が完成した。


「さて、石で武器でも造るか。といっても槍と短剣もどきが精一杯だけど」


 拾ってきた石と石を叩きつけて手ごろな大きさにしてそのあとは石の擦り付けて切れるように刺せるように形を整えていく。

 普通なら、途中で折れてしまったりするのだが、すでに数十回以上作っているためそんな失敗はしない。


「あ~、こりゃあ正義たちにも一週間くらい無人島で生活してもらった方がいいかな?」


 俺が手早く作業できるのは慣れているからであり、一日半ほどしかサバイバル生活をしていない正義たちには今日俺が作り出したものを一日で用意するのは不可能だろう。


「少なくとも、武器も水も何もない状態から一人で街にたどり着けるくらいの技術は必要だよな。いくら時空間魔法に水や食料を入れることができてもあって困る技術じゃないだろう」


 そういいながらも手を休ませることはなく、一時間ほどで二本の槍と三本短剣(?)を造り上げる。すでに日も暮れてきているので、俺は作った武器を持ち昼過ぎに作った仕掛けに向かう。


 森に仕掛けた罠には兎が二羽、川の罠には二匹の魚が掛かっていた。残念ながら、海の方には掛かっていなかったがあり合わせの仕掛けでこの成果は上々といったところだろう。

 兎は一羽はその場でとどめを刺して血抜きをして残りの一羽は木のつるで首輪を作り連れて帰る。魚はログハウスを造った時の余った木材で生け簀を造って生きたまま持ち帰った。

 毎日食料が手に入るわけでもなく、保存するところもないので食べるときに食べる分だけ殺すようにしないと腐ってしまうのだ。それに、兎はこの森で取れる食材に毒があるかなどを調べるのに使うことができる。


「正義たちの無人島には俺たちも付き合うかな。その方が早く済むしな」


 俺は捕まえた兎を焼きながら、すっかり暗くなった夜空を眺めていた。


「おぉー、星綺麗だなー。ん?星?星の魔法陣・・・木、樹形図・・・・・・」


 星空を見ているうちにふと魔法陣の形をひらめき、思考の海に潜り出す。

 それから数分が経ち俺は顔を勢いよくあげた。


「そうか、星だ!それに地球(ほし)を合わせて・・・・・・いや、だめだ。結局行先が分かってないんじゃ創りようがない」


 名案かと思ったが、結局最大の難関である行先の決定ができないので、そこから先を魔法陣に書き込むかとができない。どうにかして行き先を特定しないとな。


「まぁいい、とりあえず飯を食おう。今考えてもいい案は出てこないだろう」


 一先ず魔法陣のことは置いといて、焼けた兎の肉に持ってきていた塩を振って食べる。俺は、このひと時が結構気に入っている。それは、自分が生きているということを実感できるからだ。

 この世界は生きるということが簡単すぎる。だからこそ人は、魔力という存在を忘れ去ってしまった。必要ない物は忘れ去られるのが運命だ。


 楓は、この世界の生き物が極端に魔力が少ない原因をそう考えていた。実際、この考えはほぼ正解なのだがそれを教えてくれる存在はここにはいなかった。


「さて、飯も食ったし寝るか」


 本当は火の番などをしなければいけないのだが、火は消してしまうし寝るのは野外ではなくログハウスの中なので問題ない。


「ふわぁ~、明日は少しこの島探検してから帰るか」


 そういうと楓は眠りについた。













 翌朝、俺は手早く魚を捌き火を起こして焼き、朝食を済ませる。


「さて、島を探検するといっても帰り道がわからなくなると困るからな。いつもは毛皮を木に巻き付けたり、木に傷つけて道標にするんだけど、どうしたもんかな」


 まぁ、俺は方向音痴でもないので普通に帰ってこれるのだが、異世界に行くのに方向感覚はあてにならないからな。別の方法を考える方がいいだろう。

 そういいながら、昨日拾った石を拾い上げその石に自分の魔力を込める。その石を数個用意して昨日剥ぎ取った兎の毛皮に包み木の蔓で縛る。

 そのあと、大きめの石に先ほどより多く魔力を込め拠点においておく。


「さて準備は完了だ。それじゃあ、島の探検と実験(・・)スタートだ。とりあえず、来た方向とは逆に行ってみるか」


 森の中に入っていき、途中で魔力を込めた石を落していく。一時間ほど歩き続けていると拓けた場所に出た。どうやら、ここがこの島の中心地らしい。ここにも石を一つ置いていく。

 俺は少しここで休憩を取ってから再び歩き出した。

 しばらく歩き続けると海についた。どうやら、島を横断したらしい。


「さて、海岸沿いに行くとして右か左か、どちらに行くか」


 少しの間思案した後、近くにあった木の枝を拾い棒倒しの要領でどちらに転ぶかで進む方向を決めることにした。


「よし、右か」


 良かった。上とか下に倒れなくて。

 海沿いを右側に進みながら、拾った木の枝や蔓などで仕掛けを作っていく。それを海の少し深くなっているところまで行き仕掛けていく。そして陸まで上がり、仕掛けの直線状の位置に石を置いていく。それを計四つ作り再び歩き始める。

 途中で、果物が生っていたので数個もいでいく。


 しばらく歩いていると、俺がこの島に入ってきたところまでたどり着いた。そこには、俺が乗ってきた小舟が置いてあり、昨日仕掛けておいた仕掛けがそのまま置いてあった。


「やっぱり仕掛けには何も掛かってなかったか」


 そういって仕掛けを回収し、小舟の近くに石を置いていく。


「さて、残り半分パパッと周っちまうか」


 あまり時間もないしな。途中、道の所々に石を置いていくことも忘れない。


「あれだなぁ、帰ったら猪とか熊とか連れてくるか。正義たちが来るときに良い訓練になるかも」


 途中、木を何本か切って空間魔法で亜空間にしまったり、昼時に先ほどもいでおいた果物をいくつか食べながら残り半分を歩いていく。結局着いたのは夕方になってからだった。


「亜空間のことはこれからアイテムボックスと名付けよう。うん、そうしよう!さて、そろそろ拠点に帰るか。石の魔力をたどって・・・・・・転移!」


 魔法を発動した瞬間、視点が切り替わり拠点についた。俺が行っていた実験とは、自分の魔力をたどってその場所に転移する方法である。

 まぁ俺なら、一度行ったことのある場所ならどこにでもいけるので問題はないのだが、この方法を使えば石を投げた先に行ったことがなくても転移することができる。

 さらに、石を通して周囲の気配や魔力なんかも探ることができるので、俺は今回のことを実験してみたのである。


「よし、場所の特定も周囲の環境や気配、魔力なんかも問題なく感知できるな。実験成功だ!」


 実験結果に満足して、夕食の準備に取り掛かる。今日は魚の塩焼きだ。

 手早く集めた木の枝に火をつけて魚を焼いていく。


「さて、この石は他にどんな使い方があるかな?あぁ、索敵なんかにも使えそうだな。呪力を注ぎ込んで結界術を付与したら即席の結界とかもできるかも」


 魚を焼きながら先程の石の使い道を考え始める。魔力ではなく呪力、霊力、妖力を注ぎ込んでみればどうかなどと思考の海に浸んでいく。


「っといけね、魚が焦げちまう」


 慌てて、魚を火からおろし食べ始める。今日一日中歩き回っていたのでかなり空腹になっていたようで数分で平らげてしまった。


「ふー、食った食った。さて、石に今度は呪力でも込めてみるかな?」


 そういって取り出した石に呪力を込めていく。が、途中で石が壊れてしまった。楓は少し考えてすぐ原因に気づく。


「しまった、これ魔力込めてた石じゃん。これじゃあ、結界石は作れないな。・・・・・・ん?魔力に呪力、霊力、それに妖力や他のあらゆる力を混ぜたらどうなるんだ?」


 面白そうだな。やってみるか。魔力の籠っている石に少しずつ呪力を込めていく。しかし、やはり途中で壊れてしまった。


「やっぱりだめか。うーん、面白い考えだと思ったんだけどな。もっと、込める力を少しずつにするか、魔力と同程度は入らないのか、それとも込める順番があるのか。まっ、いろいろやってみるしかないよな」


 方針を決めた俺は、試行錯誤を繰り返す。まず、何も込めていない石を拾い、それを複製魔法で数十個に増やす。

 そして、一つずつに魔力や呪力などあらゆる力を込めて、石に入るそれぞれの力の量を測っていく。


「ふむ、石に入る力の量はどれも同じか」


 次に、また石を数十個用意して、今度は石に込める力の量を十分の一にする。そのあと、魔力を込めた石以外に先ほどと同じ十分の一の魔力を込めていく。

 だが、全ての石がもう少しで十分の一込めることができる、というところで石が壊れてしまった。


「うーん、込める順番は関係ないのか。それに、同程度の力を込めることはできないのか。そうなると使い道がなぁ。込めた力の一番強い力しか使うことができないからな。どうにかして、同じ力を込めたいな」


 諦められずに俺は、次の案を試してみる。それが失敗したら次の案を、というように次々と案を出しては結果を観て他の考えを探るという行為を延々と繰り返していた。

 ついには寝ることさえせず、夜が明け始めたがまだ、複数の力を同じ量石に込めることはできないでいた。

 楓もついに自棄になり始めていた。


「あ~もう、なんでできないんだよ!もう夜が明けちゃったじゃん。時空間魔法の魔法陣も完成してないしさ~。もういい!全部いっぺんに混ぜちゃえ!」


 そういって、あらゆる力を石に込めていく。すると、あれほど苦労してたのが嘘のように見る見る石に力が注ぎ込まれていき、数秒で満杯になった。

 もちろん石は割れていない。


「・・・・・・なんで、込められるんだよ」


 俺の今までの苦労は一体・・・・・・。まぁ、できたんだから結果オーライということにしておこう。


「まぁいいや。これは、ここに置いておこう。そんなことより、朝飯だ!捕まえてた兎とこの島の山菜でも煮込んで鍋にしよう!そのあとで、昨日見つけた島の中心部まで行ってみるか」


 ちなみに、水は初日に見つけた川の水を浄水しアイテムボックスの中に何十リットルも入れてあるので水に困る心配はない。

 そもそも、魔法や魔術で水を作り出すことができるのでどこにいようと水に困ることも火を点けることも簡単にできるのだが、今回は敢えて自力で火や水を確保しているのである。

 まぁ、保管場所がアイテムボックスなのはいちいち水を運ぶのが面倒臭くなったからだが・・・・・・


 持ってきていた調味料や島で取れた山菜で下味をつけて一口サイズに切って焼いた兎などを鍋に入れて十五分ほど煮込み、その間に昨日切っておいた木を丸太にして丸太のの皮を剥いで魔術で水分を飛ばす。


「さて、山賊鍋(?)の完成だ!」


 木で作った器に木で作ったお玉で鍋の具材を入れる。ちなみに、この器やお玉、箸は樹液を薄く塗って艶を出している。まぁ、実際は汚れが付かないように塗ったのだが・・・・・・


 鍋を食べながら、俺はこの後の予定を考える。


(とりあえず、中心部にこのログハウス置いて、あと仕掛けを見に行かなきゃな。なんか掛かってたら桜たちへのお土産にしよう)


 俺は鍋を食べ終えてログハウスをアイテムボックスに閉まったあと、島の中心部に向かった。

 島の中心部に着いた後、開けた場所を中心に作っておいた結界石を埋め中心部に結界を張る。それから、アイテムボックスから丸太を取り出し壁のない柱だけの大きめの屋根を造る。

 その屋根の隣にアイテムボックスからログハウスを取りだし、屋根伝いにログハウスに入れるようにしておく。


「さて、次は机と椅子だ」


 追加で丸太を取り出し、切ったり嵌め込んだりしながら長机を作っていく。そして、その机に合うように椅子を十三脚用意する。

 ちなみに、この机と椅子にも樹液が塗ってある。これは、湿気対策のためだ。

 その机と椅子を屋根の下に置いたら完成だ。


「よし、これで正義たちと次に来た時の報告会に使えるな。次は仕掛けだ」


 そういうと、昨日罠を仕掛けた場所に行く。


「ありゃ、なんも掛かってないな」


 残念ながら、罠には魚は掛かってなかったが次に来た時のために仕掛けは川から陸に揚げて置いておく。

 そのあと、やる事もやったし帰ろうかと思っていると大事なことを思い出した。


「あっ!石忘れてた!」


 そういってすぐさま転移しようとするが、あることを思い出した。


「そうだ、石の気配がどうなってるか探ってみよう」


 いいながら、すぐに石が発する気配を探ってみる。本当にあらゆる力が均等になってるか確かめるためだ。そしてその結果に俺は驚愕した。


「・・・・・・すげぇ。本当に全部均等に感じることができる。それに、魔力なら周囲の魔力を。呪力なら周囲の呪力もわかる。・・・・・・ん?待てよ。ということは、これを使えば・・・・・・!?」


 そして、俺は気づいた。これを使えば異世界の場所を特定できることに。


「あはははは!やべぇ、笑える。自棄になってできた石で異世界に行く方法が確立できた、なんて笑うしかねぇ!ははっ、あはははは!」


 この石を使えば、どこかにある魔術だけでなく、他の異能が存在する世界を探し出すことができる。この石は、いわばセンサーのような働きをすることによって石に込められた力と同じ周りの力を感知することができるのだ。

 この石を使い、まず、魔力や呪力、霊力などの力が存在する世界を探し、その世界に石を転移する。そこから、魔力だけでなく呪力や霊力などをを扱える人間や生物が存在する世界を探れば、その世界に転移することができる。


「はははっ、こうしちゃいられねぇ。すぐに家に帰ってこの石の改良に取り組まなきゃな。それに、魔法陣も創らなきゃいけないからな。やる事が山ほどある。・・・・・・じゃあ、帰るか。転移!」


 こうして、今回の俺の散歩は終わった。



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