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チート問題児の異世界旅行  作者: 早見壮
第零章:そうだ異世界に行こう
3/26

魔法と問題児

楓のクラスメートが登場です。


名前考えるの難しい・・・

「魔法を使ってみようと思う」


 季節は、春。入学しオカルト研究部を作って間もない頃、俺は部員であり幼馴染み兼兄妹でもある桜たちに言い放った。


「魔法?魔術ではなく?」


 俺の言葉に桜が疑問を口にする。


「そう、その通りだ。魔術では異世界には行けない。そんな気がする」


 つまり勘ということだ。だが、そこに突っ込みを入れる者はここにはいない。なぜなら、俺の勘はよく当たるのである。というより今まで外れたことがない。


「でもどうやって使うんだ?というか、魔法と魔術の違いは何だ?」


 蓮がもっともなことを口にする。珍しいこともあるもんだ。


「・・・・・・これから考える。魔法と魔術の違いは仮説段階だが心当たりがある」


 蓮め。意外と鋭いことを言いやがって。ほら、みんながこれから考えるのかよ!って目で見てるじゃないか。

 だが、どうやら今は俺の仮説を聞く方が先だと考えてくれたようだ。まぁ、聞かれてもうまくごまかしたと思うけど。


 目線でだれが質問をするか話し合った後、椿が代表して質問してきた。


「それで、その仮説ってのは具体的になんなんだ?」


「ああ。俺達は、頭ン中で魔力を意味の持った術式に展開して、それに燃料となる魔力を込めて魔術を使っているよな」


 俺の言葉に俺以外の全員がうなずく。


「たぶん、それはとても高度な作業なんだと思う。他に魔術を使える奴に会ったことないからわからないが、普通は術式を口にして言葉に魔力を込めて魔術を使うんだと思う」


「なるほど。それで魔法は?」


「魔法は、たぶん術式を使わずに魔力そのものを事象化させるものだと考えられる」


 そこで、凪が手を上げて発言する。


「それってどういう違いがあるの?」


「いい質問だな。簡単に説明しよう」


「うん、お願い」


「まず、魔術だけど、強力な魔術はそれだけ術が長くなり、必要な魔力が多くなるよな。そこに、燃料となる魔力をつぎ込むんだから。強力な魔術にはそれだけ多大な魔力が必要になる。対して魔法は、魔力をそのまま変換して事象化するんだから、理論的には二分の一、もしくはそれ以上の魔力を節約できるわけだ。つまり同じ魔力量で同じ現象を引き起こそうとすると、魔法の方が二倍以上威力が大きくなる。計算上はな」


 俺の説明に疑問思った箇所があったらしく、蓮が首を傾げながら聞いてくる。別にかわいくないからやめろ。


「なるほど。それで、魔力をどうやって事象に変換するんだ?」


「わからん!」


「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」


「いやいやいや、なんでそこまでわかってて肝心な部分がわからないんだよ!」


「いやいや、蓮ちゃん。それがわかってたら、仮説なんて立てる前に実証してるって!」


「それにしたって心当たりぐらいあるだろう!」


「まぁ、あるけど」


「「「「「「「あんのかよ!!」」」」」」」


 俺と桜以外の全員が突っ込んできた。桜はいつものようにニコニコしている。良かった怒ってない。

 それにしても、ビックリしたな。急に大声出すなよ。

 つか、さっきまでの下りは何だったのかって顔しないでくれよ!あっ、今ため息ついただろ?顔に俺だからしょうがないかって書いてあるぞ?


「いや、本当にもしかしたら程度なんだよ。それにこんな拍子抜けの方法でいいのか自信ないし」


「はぁ・・・・・・、もういい。それで心当たりって?」


「簡単に言うと、起こそうとする事象を明確にイメージするって感じ」


「・・・・・・それだけ?」


 みんなが呆然とする中で、どうにか桜が声を発した。いや、その気持ちはわかるよ。俺も半信半疑っていうか、いつものあれだし。


「それだけ」


「今までの理論的な説明があってなんで肝心なところがそんなフワッとしてるんだよ」


「いや、漫画やラノベ見てこれかな?って思った」


「つまり、勘か?」


「勘だ」


 もう一度言おう。俺の勘は今まで外れたことがない。さんざん引っ張っといてあまりにも簡単な答えに全員呆けてしまった。もちろん俺も。

 ふぅ、なんだか一気に疲れたな。しばらく、静寂が訪れそして俺たちは―――


「・・・・・・今日はいい天気だな」


「そうだな」


「外でサッカーでもする?」


「葵・・・・・・いい案だなそれ」


「じゃあ、私は倉庫からボール持ってくるわ」


「頼んだ、薫。・・・・・・ん?凪に雫、どこに行くんだ?」


「蓮たちのクラスに人集めに行ってくる」


「・・・・・・そうか」


 揃って現実逃避をしていた。・・・・・・ああ、空が青い。











 ~一時間後~


 クラスメート一同を44対2で圧勝した俺たちは気を取り直して、魔法を使ってみようという話し合いをしていた。それにしてもあいつら、この世の終わりみたいな顔してたけど大丈夫か?


「んじゃ、とりあえず一回やってみっか!」


「了解」


「そうだね。じゃあ凪ちゃんと雫ちゃん、周囲に結界張ってくれるかな?」


「いいけど、どんな結界?」


「魔力結界と事象修復結界、遮音結界かな?」


「桜、そんなんでいいの?」


「うん、魔術との違いも調べたいし・・・あっ!あと、茜ちゃんは幻惑魔術で部室覆って」


「わかりました」


 桜が三人に被害対策をお願いしている間に今回の実験をする俺、蓮、椿の三人組は、魔力を使わずにイメージトレーニングをしていた。いきなり使うのは危ないし、イメージが中途半端だと魔法が失敗する可能性があるからね。

 使う魔法の属性は風、土、水といった比較的安全なもので初級魔術の風球、土球、水球を使うことにした。桜、薫、葵の三人は何かあった時のための待機することになっている。


「こっちは準備できたよ~」


「んじゃ、俺から行くぞ」


 その言葉と同時に俺の手に魔力が集まり、風の塊が出来上がった。俺はそれを躊躇なく発射した。躊躇すると逆に危ないことは経験則で分かっている。

 発射された風球は、厚さ15㎝のコンクリート製の壁にぶつかり壁を崩壊させた。崩壊した壁は数秒後には元に戻っていた。


「・・・・・・できたな」


「威力高すぎだろう!?」


「いや、普段の二分の一しか込めてない」


「マジでか!?普段の五倍の威力はあったぞ」


「・・・・・・蓮、椿、魔力十分の一で」


 これは大分慎重に使わないといけないな。


「「・・・・・・了解」」


 蓮と椿は、俺の提案を素直に聞いて普段の十分の一の魔力で魔法をイメージし発動させた。まぁ、俺の結果を見ていればそうなるよな。

 すると、蓮と椿の突き出した手の前に30㎝ほどの土と水の塊が出現し、壁に向かっていき着弾と同時に、半径10㎝程のクレーターを作り上げた。


「・・・・・・できたな」


「・・・・・・ああ」


「あんだけいろいろ言ってたのにな」


「そうだね」


「一発で出来たわね・・・・・・」


「威力が高い以外、特に問題もないしね」


 準に蓮、椿、俺、桜、薫、葵の言葉である。今まで、さんざん議論してきたのに拍子抜けもいいところである。


「「「「「「「「「はぁ・・・・・・」」」」」」」」」


 溜息が出ても仕方がないだろう。だが、これでようやく目途が立ったな。


「じゃあ、次の段階に進めるな」


「「「「「「「「・・・・・・は?」」」」」」」」


「いやいや、だって異世界にいくためには、時空間魔法を使わなくちゃいけないだろ?時空間魔法って時間魔法と空間魔法の複合魔法だからそれを練習しなくちゃいけないし。さらに異世界に行く魔法は、こっちの空間とあっちの空間を強固に固定するために魔法陣作んなきゃいけないから。それに、異世界につながったかどうか確認するためにもこっちの物送ったり、あっちの物を喚び寄せたりしてみなきゃいけないからやる事いっぱいだよ」


「それを早く言えよ!!」


「・・・・・・楓ちゃん?ちょっとお話ししようか?」


 桜が、いつも以上(・・・・・)にニコニコしながら楓を呼んだ。

 やばい!?やらかした!?

 俺は、その瞬間背中に冷や汗をダラダラ流しながら桜の方へ壊れたロボットのようにぎこちなく歩いていく。


「ハ、ハイ。桜サン、何カゴ用デショウカ?」


 楓が桜に絞られている間に蓮たちは話し合いを続けていた。


「とりあえず、時間魔法と空間魔法ってのをやってみよう」


「でも、他のに比べてわかりにくいから、実証しにくくない?」


 蓮の提案に、葵が最もなことを口にする。


「いや、それほど難しくはないよ。時間魔法は、空のペットボトルを用意して新品同然に戻せばいいと思うよ。空間魔法は、物を移動させるだけでいいと思うし。ちょっとやってみようよ、葵」


「うん、椿がそういうなら。まかせて」


「じゃあ、俺は時間魔法で葵は空間魔法ね」


「了解」


 そういうと椿と葵は、目の前のペットボトルに手をかざす。

 椿と葵と手に魔力が集まっていき、次の瞬間、椿のペットボトルには水が満杯といえるほど入っており、ペットボトルのキャップは未開封状態になっていた。

 対して葵のペットボトルは、目の前から消えて部室の端にある用具入れの上に乗っかっていた。


「・・・・・・どっちも成功だな」


 蓮が二つの魔法の発動が成功したことを確認して他のみんなもそのことを確認していると、いつのまにか桜の説教が終わっていて当の本人たちが声を発した。


「時空間魔法も発動成功だな。いや~、これ結構面白いね」


「たしかに、いろいろ便利そうだね」


 蓮たちが声のした方を見ると、目に前にゆがんだ空間を作り出し、その空間からペットボトルやサッカーボールを入れたり出したりしている楓と桜の姿があった。その光景を見て蓮たちも絶句する。


「勝手に魔法を試すな!つーか、桜。ミイラ取りがミイラになってどうする!」


「蓮、無理よ。二人とも聞いてない。すっかり、夢中になってるわ」


「というか、あの二人相手に常識を持ってくる方がどうかしてるよ」


「そうだよな。ちょっと散歩、とかいってイタリア行ってたくらいだから」


「二人とも、夢中になったら周りが見えなくなるからね。今日の部活は、これで終わりかな・・・・・・」


「はぁ、結局こうなるのか。んじゃあ、各自明日までに時空間魔法やら他の魔法も覚えてきてくれ」


「りょーかーい」


「んじゃ、解散!」


 こうして今日もオカルト研究部は通常運転で一日を終えていくのであった。











 学校から寮までの帰り道、蓮たちは蓮のクラスメートの仲良し四人組に会っていた。

名前は、草壁正義(さかべまさよし)安藤善継(あんどうよしつぐ)大森里香(おおもりりか)笹川麗子(ささがわれいこ)で正義と善継がバスケ部、里香が空手部、麗子が弓道部だ。

 全員が素晴らしい人格者でイケメンに美女揃い。すでに一年のリーダー的存在で四天王と呼ばれている、『残念な九美系』と呼ばれている楓達とは反対の存在である。

そして、なぜか楓たちと仲が良い。ちなみに、先ほどサッカーで地獄を見せた相手でもある。


「よっ、正義たちも今帰り?」


「蓮か・・・・・・」


「どうしたんだ?元気ないな」


「いや、お前たちの部活って本当に文科系なんだよな?」


「そりゃあ、オカルト研だしな」


「本っ当に運動部に入る気はないのか?」


「無いな」


「・・・・・・はぁ」


「本当にどうしたんだ」


「お前たちのせいで自信喪失になるやつが増えて俺のところに相談に来るんだよ!!」


 楓たちは、部活中に気分転換に他の部活(運動部)に顔出してはその部活をぼこぼこにしては帰っていくという部活荒らしもかくやということを入学してから今までゲリラ的に行っており、その数はすでに十を超えるといわれている。

 そのため、各部活の主将はいつ楓たちがやってくるかにビクビクしており半ノイローゼ気味になったのである。そのしわ寄せが楓たちと仲が良い運動部でクラスメートであり、人望が厚い正義のところに相談が殺到したのである。

 その事実を聞いた蓮たち一行の反応は、簡単だった。


「「「「「「「お疲れ様で~す」」」」」」」


「もう、こいつら殺す!!」


「ま、まて正義!気持ちはわかるが、はやまるな!」


「離せ、善継!俺はこいつを殴る!」


「落ち着きなさいって殴っても何も解決しないでしょ?」


「里香の言う通りよ正義。それに肝心の楓さんがいないんだからいくら殴っても同じよ」


「ちょっと待ちなさい、麗子。あんたもいったん落ち着きなさい」


「そういや、楓と桜先輩は?」


「時空間魔法にはまって使いまくってる」


 その言葉を聞いて里香が頭を抱える。


「そういえば、あんた達ってオカルト研だったわね」


「んで、魔法は使えたのかよ?」


 そして、善継がニヤニヤしながら蓮たちを茶化し始めた。いや、茶化そうとした。


「あぁ、拍子抜けするほど簡単だった。なぁ、みんな?」


 話を振られた薫たちはまるで魔法が使えるのが当たり前のように頷き返した。その自然な動作に善継たちは不安になり念のために確認することにした。

 そのおかげでとんでもない藪蛇を踏むことになるが・・・、


「ほ、本当に魔法使えたのか?」


「だから、使えたって言ってんだろ?ほら」


 そういって蓮は、手から炎を出した。それを見て正義たちは軽くパニックを起こす。


「・・・・・・え?・・・は?・・・・・・い、いま、て、てて手から炎が・・・・・・!?」


「え?・・・・・・ちょ、うそっ、本物?」


 その様子を見ていた雫がぼそっと声を発した。


「蓮・・・・・・ばか・・・・・・」


「は?俺?・・・・・・あっ!」


 火山蓮。特性・突っ込み、軽度の天然。

 蓮は、気を取り直して正義たちに話しかけた。


「あー、え~っと、このことは誰にも言わないでくれるとありがたい。あ、あと明日事情説明するから、放課後オカルト研の部室に来て」


「「「「・・・・・・・・・・・・わ、わかった」」」」


 それきり、蓮たちと四人は、一言も話さずに寮まで帰った。

 一方そのころ、部室では、


「あ~蓮ちゃん、いつかはやると思ったけど、今日やったか」


「ねー、楓ちゃん、なんで蓮ちゃんに盗聴器なんて仕掛けてるの?」


「ん?ああ、屋上で昼寝しながら授業聞くためにね~」


「なるほどね。でも、正義君たちでよかったじゃない」


 確かに、見ず知らずの奴に知られたら最悪ネットを通して世界中に広がりかねないしな。

 それにしても、この会話を蓮が聞いたら、全力で突っ込むだろうなぁ~。


「そうだね。説明すればわかってくれるだろうし、なんなら簡単な魔術教えてもいいしね」


「ああ、それいいかもね。四人とも一般人ではありえないくらい魔力持ってるしね」


「もしかしたら、近々異世界に呼ばれるかもよ」


「それはそれで楽しそうだね」


 そんなことを言いながら俺と桜は部室を後にした。











 次の日の早朝。部室には、俺を含めオカルト研究部全員が集まっていた。そこで、ドアがノックされる音が聞こえる。


「失礼するよ」


 入ってきたのは、正義、善継、里香、麗子の四人だ。入ってきた四人に向かって俺はいつもとは違った調子で話しかける。桜たちからもただならぬ雰囲気が漂っている。


「わざわざ呼びつけて悪かったな。とりあえず、かけてくれ」


 雰囲気に呑まれている四人はどうにか頷いて椅子に掛ける。四人が椅子に座ったのを確認して俺は桜に声をかけると桜が静かに立ち上がり、カップを取り出し、四人に紅茶を入れる。


「ど、どうも」


 四人が紅茶を飲み一息ついたところを見届けて俺は口を開く。


「とりあえずこれから話す内容は他言無用で頼む。さて、どこから話したものかな。まずは、俺たちの関係かな?俺たちは、幼馴染みでもあり兄弟でもある」


「えーっと、ちょっと待ってくれ。それってどういう意味だ?」


 俺の言葉に正義が疑問を口にする。それに答えたのは蓮だった。


「俺たちは、同じ孤児院出身なんだよ。だから、俺達九人は家族みたいなもんだ」


「うん。で、ここからが本番なんだけど、俺達には生まれた時から不思議な力があった。それに気づいたのは、3、4歳のころかな?そのとき俺自身重傷を負ってね、それから自分の力をコントロールできるように訓練しだしたんだ。中学を卒業するころには、自分の力の制御や、自分の力を思い通りに操れるようになっていたよ」


 そこで俺は一度言葉を区切り、続きを薫が引き継ぐ


「でもそのころかしらね。自分の力がこの世界の枠組みからはずれていると考えでしたのは・・・・・・」


 ここで、里香が疑問を口にした。


「あの、世界の枠組みから外れているってどういうことなんですか」


「そうね、簡単に言えばこの世界で絶対にできないことができたりすることよ。世界の理を書き換えて世界に干渉するともいうわね」


「それって駄目なことなんですか?」


 麗子の質問には桜が答えた。


「ダメというわけではないよ。理を壊すんじゃなく書き換えるのなら世界に影響を及ぼさないから世界が滅ぶ、なんてことにはならないよ」


「だったら、」


 何も問題ないじゃないですか、といおうとした麗子に桜が優しく言葉をかける。


「一個人が人を生き返らすことができたとしても?」


「「「「っ!?」」」」


 その言葉を聞いて四人が絶句した。人を生き返らす、それがどれほどやってはいけないものなのか実際に体験したわけでは無いだろうが、正義たちは頭で理解することはできたようだ。いや、理解できてしまったといった方が正しいだろう。

 それは、その人の残りの人生に責任を取らなければいけないということだ。他にも数えきれないものを背負わなければならないだろう。そんなものとてもではないが耐えられるはずがない。

 ここで、初めて四人は世界の枠組みから外れているという言葉の意味を理解したようだ。


 あちゃあ~。正義たち一気にお通夜みたいな空気出しちゃってるよ。


「桜、ビビらせすぎ」


「・・・・・・うん。自分でもやりすぎたと思ってる」


「なら許す!」


「はぁ、ホントに桜に甘いなお前は・・・・・・」


「「「「・・・・・・へ?」」」」


 急に今までの真剣な雰囲気が霧散し、ついていけてない様子の正義たちが変な声を上げる。そこに、茜が真相をぶっちゃける。


「すいません、先輩方。こんな茶番につき合わせてしまって」


「茶番?」


「はい。楓兄さんがどうせだからそれっぽい雰囲気でやろうって台本まで書いて持ってきたんですよ」


「えーっと、つまりすべて演技?あの世界の枠組みとかの話も?」


「いえ、内容はすべてその通りですよ。あの重苦しい雰囲気は演技ですけど」


「なーにメンドくさい説明してんだ茜?」


「兄さんが説明不足なので私が説明してたんですよ」


「あっそ。で、正義。残りの説明もしてもいいか?」


「あ、ああ。ってまだあんのかよ?」


「そりゃ、あるさ。今までの話からすると力を使わないって流れだったはずだろ?だったら、オカルト研は必要ないだろ?」


「そういえば、そうだな」


「まぁ、簡単に言うと世界の枠組みから外れているんだったら、枠組みから外れてない、もしくは外れててもこの世界ほど目立たない世界に行こうってことになったんだよ」


「「「「・・・・・・へ?」」」」


 また、呆然としている正義たちに桜が補足をする。


「例えば、私たちは魔術が使えるけど、この世界には魔術を使える人がいない。でも、同じ魔術を使える人がいる世界に行けば今よりは過ごしやすくなるかもしれない。って考えたんだよ」


「な、なるほど。ということは、みんなは異世界に行くつもりなのか?」


「あれ?信じたんだ」


「まぁ、昨日魔術のようなものを実際に見たしな。それで、どうやって異世界に行くつもりなんだ?」


「いま、考え中。つーか、わかってたらもう行ってる」


「そりゃそうか」


 そこで俺は昨日桜と話していたことを思い出した。


「そうだ、正義たちも魔術使ってみるか?」


「えっ、は?ってか、そんな簡単に使えるもんなのか?」


「いや、普通は魔力がなさ過ぎて使えないんだけど、お前ら一般人としてはおかしいくらい魔力持ってるからな」


「そうなのか?」


「ああ。まぁ、俺たちに比べたら天と地ほどの差があるけどな」


 ((((一体、どれだけの魔力持ってるんだ!?))))


 四人とも何か言いたそうな顔してるな~。


「お前らってホントにチートだな」


「いや、そうは言うけどな。いろんな世界を調べてきてるがお前らも相当だと思うぞ」


「でも、なんで急に魔術教えるなんて言い出したんだ?」


「魔術だけじゃなくて、剣術に体術も教えるぞ。まぁ、理由はいくつかあるけどな」


「理由って何なの?一つはなんとなくわかるけど・・・・・・」


「まぁ、大きく分けて二つだ。一つ目は、俺たちのことを秘密にする口止め料とでも思ってくれ。二つ目は、たぶんお前ら四人異世界に召喚されると思うぞ。ただ、そこに俺らがいるとは限らないから今のうちに必要そうなの教えとこうと思ってな」


「・・・・・・・・・・・・」


「ほぼ、絶対に行くと思うぞ。まぁ、いつかはわからないがな」


 そこで、今まで黙って聞いていた蓮が口を挟む。


「楓、そこまで言うってことは勘か?」


 まぁ、蓮がそう思うのも無理はないけど、今回は違う。俺は蓮に首を振って答える。


「いいや、()。昨日、夢に出てきた」


俺はお茶とお菓子を食べながら、真剣な表情で蓮に告げる。・・・・・・いろいろと台無しなのはわかっているが真剣なのは伝わるはずだ。俺が蓮のことを呼び捨てにするのはそういう意味だ。


「なるほど、未来予知の類か・・・・・・」


 そこで、話についていけてない様子の四人が慌てて俺に説明を求める。


「い、いや、ちょっと待ってくれ!異世界に行くのは、楓達なんだよな?俺たちも巻き込まれるっていうのか?」


「いや、俺達とは別に異世界に偶然落っこちるか。異世界の住人に召喚されるかしたらしい。夢で見た感じでは、たぶん前者だ」


「つまり、偶然異世界落ちたっていうのか?」


「さっき、未来予知って言ったわよね。未来を変えることはできないの?」


「未来予知っていうのも二つあってな。変えることのできる未来と変えることのできない未来がある。今回は後者だな」


「そんな・・・・・・。そうだ、楓たちは世界の理ってのを書き換えられるんでしょ。何とかできないの?」


 その言葉を聞いて、桜や薫、女性陣が眉をひそめる。まぁ、そう考えても仕方のないことか。その様子を見ながら蓮が答える。


「できないことはない」


「だったら―――」


「その場合、正義たち以外の誰かが異世界に行くことになる。お前たちのように人類を超越した魔力も持たない人間が魔獣なんかがウヨウヨしている異世界に落とされるんだ。正義たちはそれでもいいのか?」


しれっと正義たちを人外呼ばわりしたが正義たちは気にしていない。いや、気にしている余裕がないって言った方が正しいかな。


「・・・・・・。本当に魔術やら剣術を教えてくれるのか?」


 その言葉を聞いて、楓は笑って答える。


「ああ、まかせとけ。なんなら、サバイバル術も教えてやるよ」


 そこで、正義はしばらく考えた後、里香たちの方に向き直り問いかける。


「俺は、ここで魔術を習おうと思うんだがみんなはどうする?」


「おい正義、それ本気でいってんのか?」


「ホントに正義ってどうしようもないわね」


「さっきの話を聞いて私たちがやらないわけないでしょ」


「ははは。それじゃあ楓、よろしく頼むよ」


 話がまとまり、楓たちの方に改めて体を向けた正義たちは、呆然としていた。


「コール!後一周な」


「た、タイム・・・・・・」


「蓮、あきらめろ。まず、楓にポーカーで勝てるわけがないだろ」


「椿の言うとおりだよ。今まで、一回も勝てたことないじゃない」


「ぐっ・・・・・・」


 かたやポーカーをしており、


「・・・・・・チェック・メイト」


「うわー!また負けたー!雫ちゃん強すぎだよー」


「桜が、弱いだけ」


 かたやチェスをしていた。要するに正義たちがこれからのことを話しあっているときに、楓たちは全力で遊んでいたのだ。


「「「「ちょっと待てやコラ!!」」」」


 ん?どうしんたんだ、そんなに怒って。カルシウムが足りてないんじゃないか?


「あっ!話し合い終わった?じゃあ、続きを話そうか。・・・・・・それで、何話してたっけ?」


「楓、魔術とか教えるって話だろ。・・・・・・なぁ、次ババ抜きにしようぜ」


「ああ、魔術ね。じゃあ、四人とも魔力感じてみようか。体をリラックスさせて心臓の横に心臓と同じように脈動してるのがあるからそれ感じてみな。それと蓮ちゃん、お前ババ抜きでも俺に勝ったことないだろう」


「うっ・・・・・・。きょ、今日こそ勝ってやる!」


「えっ?・・・・・・ちょっ、ちょっと待ってくれ。いきなりやるのか?」


 正義が疑問を口にするが、すでに二人とも聞いてない。楓は、トランプを集めているし、蓮はへこんでいる。その様子に見かねた桜が助け船を出す。


「とりあえず、深呼吸して体から力を抜いてみて」


 桜の言葉にとりあえずいうとおりにしてみる正義たち。


「体の中に意識を向けると左胸のあたりに心臓の音が聞こえるかな?」


「はい、聞こえます」


「じゃあ、右胸の方に意識を向けてみて。少し暖かく感じない?」


 正義と善継はよくわかってないようだが、日本武道を部活にしている里香と麗子には何となく感じることができた。


「うん、感じる。なんか安心する暖かさね」


「うん。心臓みたいに脈動してるね」


「マジかよ。全然わかんねぇわ」


「俺も。二人ともよくわかるな」


 四人の反応を見て桜が声をかける。


「暖かいのは魔力が生命エネルギーそのものだからだね。脈動しているのは血液と同じように体中に回っているからだよ。里香ちゃんと麗子ちゃんは日本武術を習っているからか感覚掴むのが早かったんだよ。正義君たちも運動部なんだし、すぐにわかるようになるよ」


「そういうもんかねぇ・・・・・・」


「あんまり、釈然としないな・・・・・・」


 などといいながらも三十分後にはしっかりとできるようになっているあたり二人とも大概である。普通の人間が魔力を感じられるようになるまで早くても一週間はかかる。

 ちなみにだが、楓たちは普段の生活の中でなんとなく魔力を感じられるようになったため、やはり一番のチートは楓たちである。


「楓ちゃん、みんな魔力感じられるようになったよ」


「おっ、もうできるようになったんか。んじゃ、今日のところはこのくらいにしておこうか。・・・・・・いや、今日のところはこのくらいで勘弁しておいてやる!」


「なんで、捨て台詞っぽく言い直すのよ!?」


 なんとなくだ。


「そうだね。あんまり切り詰めてやらなくてもいいし」


「桜先輩!?なにもなかったかのように続けないでください」


だが、楓たちは里香の突っ込みも意に返さず話を続ける。


「じゃあ、今日はこれで解散するか。じゃあ、四人に宿題な。次来る時までに魔力の流れを感じられるようになって置くこと。やり方は、さっきと同じでそれを体全体に広げる感じだ。んで、蓮たちは昨日魔法陣の話したじゃん?どんな魔法陣がいいか参考に何枚か書いてきてくれ。んじゃ、解散!」


「「「「「「「「りょーかい!」」」」」」」」


 こうして、四人を道連れにしてオカルト研究部は今日の活動を終えた。


「って、まだ五時半なんですけど!?」


「まだ、来てから一時間半しか経ってないんですけど!?」


「なんだか、突っ込んだら負けな気がしてきた」


「違うわよ、善継。負けな気がする、じゃなくて突っ込んだら負けなのよ」


 そこに元凶である楓が声をかける。


「それで、正義たちはこの後予定あるのか?」


「ないわよ。私も正義たちも麗子も今日は部活休んできてたんだから。まったく、あの時の緊張感を返してほしいわよ」


「ああ。あの時は面白いくらいに緊張してたよな」


「もう!ぶり返さないでよ。せっかく忘れてたのに」


「自分で話振ったんじゃん。って、そうじゃなくて。これから俺たちは、それぞれ道場に行くんだけど一緒に来るか?ほら、剣術とかも教えるとか言ったし」


「そういえば、そんな話もあったな」


「んで、俺たちが教えてもいいんだけど、俺たちはもうすぐ異世界行くから中途半端になるんだよな。だから、道場の師範に教えてもらった方がいいかなって思うんだけどどう?」


 どうやら、麗子は先ほどの話に違和感を感じていたらしく、俺に質問してくる。


「ちょっと待って。さっき、それぞれって言ってたけどっみんな同じ道場に行ってるんじゃないの?」


「ああ。俺と桜と茜は体術を組み込んだ剣術の道場、蓮と椿と葵は剣術の道場、薫と凪と雫は弓術と体術の道場に行ってるよ。といっても、みんなもう免許皆伝もらってるけど」


「ってことは、私たちも三つに分かれた方がいいわね」


「それは簡単だろ?里香が体術を組み込んだ剣術、正義と善継が剣術、麗子が弓術と体術の道場に行けばいいんだよ」


「それが一番良さそうね。じゃあ、それで別れましょう」


「そうだな。じゃあ、里香、麗子頑張れよ」


「正義たちこそね」


 意気揚々とそれぞれ桜、蓮、薫のグループに分かれて歩き出そうとした四人には悪いが、言っとかなきゃいけないことがあるな。


「ちなみに、どの道場もかなり厳しいぞ」


「えっ・・・・・・」


「そりゃそうだろう。死と隣り合わせの世界に行くんだから、生半可なところを選んでない。まっ、たぶん死なないからがんばれ」


 ((((たぶんって何!?))))


 まぁ、いろいろと言いたいことはあると思うが頑張ってくれ。って、おーい、背中がすすけてるぞ~。



では、また次回お楽しみに!

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