第二王子ルクレ
「ぶはっ!」
この茶番に堪えきれなくなったのか、わたくしの後ろから吹き出しひーひーと笑う声が聞こえます。この国の第一王子の発言に笑っている方を周りの方々は困惑するだけで誰も窘めるようとしません。普通は不敬罪になりますがこの方は大丈夫です。
「あー笑った笑った」
目尻に涙をたたえ銀盆を携えた侍従を伴いわたくしの隣に立ったのは第二王子のルクレ様。ライノール様とは数ヶ月違いで誕生なされた同い年のお方です。
「ルクレ・・・・・・!」
先ほどの婚約破棄とは違い嫌悪と警戒心をあらわにしているレオノール様。
同い年ともあって比べられる事が多いお二人。勉強や剣術などあらゆる事柄に優秀で皆様に平等に接するお優しいルクレ様と違い、自分は第一王子で将来国王になるのだからと怠けていたレオノール様は成績がふるわず、自業自得なのにルクレ様を逆恨みしております。
それに金に近いとはいえ茶髪茶目のレオノール様は金髪碧眼のThe王子様という見た目のルクレ様にずっと嫉妬をしており、ほぼ一方的にレオノール様がルクレ様を毛嫌いしています。
それ以外にも理由はありますが、幼少の頃よりお二人は仲は良くありません。なので急に出て来たルクレ様に警戒しているのだと思います。
「お前何しに来た⁉」
「やだなぁ。そんなに警戒しないでよ」
「いいや、お前のその胡散臭い笑顔を見せる時は何かある時だ!」
あらやだ。貴族の笑みは王族及び貴族にとって嗜みであり考えを悟らせない鎧でもあります。それなのに胡散臭いとはきちんと教育を受けられたのでしょうか。こんな完璧なアルカイックスマイルはそうそうお目にかかれませんわよ。
「酷いなぁ。僕はただ婚約破棄を祝ってあげようと思っただけなのに」
「は?」
「兄さんは愛する人と一緒になる為に《《覚悟を持って》》婚約破棄したんでしょ?違うの?」
「あ・・・いや、そうだけど・・・・・・」
一転キョトンとした表情のルクレ様に動揺するライノール様。嫌味を言われると思っていたのに祝福され、想像していたのと違うと頭が追いつかないのでしょうか。
「じゃあ問題無いよね?婚約破棄書を用意しているからここでサインして」
「は?」
「あと兄さんとマリア嬢の《《婚姻》》届けと他の書類にもサインしてね。既に国王陛下にはサインを貰っているから二人共晴れて結ばれるよ」
「そ・・・・・・そうかっ」
既に国王陛下から許可が取れているという事と結ばれるという言葉にパッと明るい表情になりサインをする二人。
「イリスリアも婚約破棄書とこの二つの書類にサインしてね」
「はい」
わたくしはライノール様とマリア様はサインし終え、晴れて結ばれたと抱き合い喜んでいるのを横目に内容を確認しサインをしていきますが、最後の書類には手が震えて書くのに時間がかかってしまいました。そんなわたくしをルクレ様は優しい顔で見守ってくださいました。
「よし、これを陛下に届けてくれ」
「承知しました」
恭しく礼をし護衛二人を伴い下がっていく侍従を確認し、ルクレ様がよく通る声で宣言する。
「皆よく聞け。只今の書類をもって第一王子レオノールとイリスリア=マーベン公爵令嬢の婚約はレオノール有責で破棄となった!そして第一王子レオノールを廃嫡、平民となりマリア=ズッコ男爵令嬢と婚姻を結び、その籍に入る事となった。二人で働きマーベン公爵令嬢に慰謝料を払うように!」
「なっ!」
「そして・・・・・・第二王子ルクレ=シャンパーニュは本日をもって王太子となりイリスリア=マーベンを婚約者とする事をここに宣言する!」




