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胡蝶之夢とオレ(1)

昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。

自喩適志与。不知周也。


 巻貝の内側。

 そんな感じの螺旋階段を登る。

 ここはフットライトを使ってるのか、足元はほんのり明るい。

 壁は透明な樹脂コーティングでもされてるような手触りで、そのコーティングの内側には溝に埋め込まれた何千本ものコードがうねっている。

 あぁ、その為の溝なのか。納得。

 しかし今時こんな大量のコードで繋ぐ必要のあるもんなんてあっただろうか?

 歴史の教科書ぐらいでしか見たこと無いぞ。

 そんなことを思いながら上へ向かって歩いて……どんくらい経ったかな? 気が付いたらオレは真っ黒な扉の前に立っていた。

 何処かで見たようなデザインの黒いつるつるな扉の表面には銀色で何かの模様っぽい物が描いてある。

 しかし取っ手が見当たらないなぁ……どうやって開けんのこれ?

 とりあえず手で押してみたら、あっさりと扉は左右に吸い込まれていった。

 ……何で真っ直ぐ押したのに左右? 接触感知型の自動ドアみたいなもんなのかな。

 ま、良いや。

 さっさと用事を済ませて戻ろう。


「うわ、真っ暗だよ」


 今までそれなりに明るいところに居たのにいきなり暗い所に入ると、なかなか目が順応しないんだよなー。

 勝手に灯りがついてくれるタイプなら良いんだけど。

 リュックをあさって、ちっちゃなペンライトを取り出しながらオレは中に一歩入る。


 ぱしゃり、と音がした。


「ん?」


 足が冷たい。

 何だろうと首を捻った途端、足元から唐突にゴボゴボと水の音が立ち上って、バチンと音を立てて辺りが明るくなった。

 思わず見上げた頭上には巨大な数字のモチーフが浮かんでいた。

 それも一個や二個じゃない。ざっと見た感じ数十個以上。

 ギリギリ、と何処かで音がし始めた。

 さっきから足首まで浸かってる水がさらにざわざわと音を立てて泡立ち始める。


「……何?」


 ギリギリと音がする。何か、嫌な予感がする。

 一歩下がったら、足元でパシャンと水が音を立てた。

 同時にギリギリと言う音が止まって、今まで空中に浮いて静止していた数字の群れがガクンと動いた。

 部屋が鼓動する。

 数字が廻る。

 水が騒ぐ。

 そして、


GutErMoRGen

                           DieSIstDieBibliOthekVOnAsHurBaNiApli

       IchBegrueSSeIhreRuecKkEhrMeIneNFreun

                                       IchBInFrohSieWiederZuTreFFeN



 何?

 いきなり流れてきた訳の分からない音にオレは耳を抑えようとして、



 パチン、


 と、


 はじけ



 た。



 

【作者後記】

わけのわからない音、解読できた方はご一報願います。

そのまま翻訳ソフトにでも放り込めばすぐに分かるような簡単な文章にしたつもりです。

一部分からないのはきっと固有名詞。


本来前書き部分なのですが、あとがきまで含めてやたら長くなったので三分割します。

続きはまた明日。


ではでは。


作者拝

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