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煌々笑顔とオレ

魔王、降☆臨。みたいな

こういう表現を自分で書くのは若干抵抗があるのですが、内容にはぴったりだと思います。



 ビシッと背筋まで凍りついたオレの首根っこをむんずっと捕まえる手の感覚。

 ああ、懐かしいですね。

 懐かし過ぎて涙で目の前が見えないんだトオサン。

 涙の川の向こうにお花畑が見えるんだよトオサン。

 アハハ、ウフフ、アハハ。


「何か言っておきたいことはあるか?」

「ごめんにゃさいでしゃー!!」





 うわーん! しかも噛んだー!






 さて、ここで四文字熟語の勉強。


 孤立無援。

 戦々恐々。

 絶体絶命。

 魔王怖い。

 魔王怖い。

 魔王怖い。


「……どうやら、私が何を言ったのか忘れていたようだな?」


 てか、美形って何で怒ってるとキラキラ度合いが増すんですか?

 や、一部例外も居るけどさ。うちのストーカーキモイ先輩とか。

 とかそんな事でも考えてないとやってられねぇんだよこんちくしょう!

 もう何か本体に近いレベルの美形っぷりを発揮しながら、きらきらオーラを纏い、にっこりしてるデュランの目の前に腕一本で吊るされてぶらぶらしながらオレはカタカタと震える。


 怖いです。

 マジで怖いです。

 もう勘弁して下さい!

 美形トラウマが悪化しそうです!!


「あの、デュランさんさすがに……」


 ああ、居たんだファリドじいちゃん!

 良いぞ頑張れダンディ! オレの救世主! 年はとっても心は現役!


「……何か?」

「……ナンデモゴザイマセン」


 弱っ! 頑張れよオイ! デュランに媚売って権力の階段駆け上がるつもりじゃねぇのかよ!

 このヘタレ! ろくでなし! 男の屑っ! 禿げちらかせっ!


「おや、話の最中によそ見とは……余裕だな」

「ひゃいっ! よよよよよ余裕なんてめっそうもにゃいっ!」


 もう恐怖の涙で前が見えません。

 なのにどうして神々しいまでにお美しくていらっしゃるデュランの魔王スマイルだけはしっかり見えるんでしょうか。

 オレはダラダラ涙を流しながらプルプルと震える。


 ……オレ、今日ここで死ぬかもしれない。

 さようなら皆さん。今まで御支援ありがとうございました。

 完。


「勝手に完結しないでもらおうか」


 ピルピルしてるオレにデュランが甘い声で容赦なく囁く。

 色気満載過ぎの声に血の気がざーっと音を立てて退きました。いや、本当に音が聞こえたんですよ。ざーって。

 多分今ならデュランの肌と比べてもタメ張れるぐらい真っ白になってるオレに、魔王様は容赦なくにっこり笑ったままお尋ねになられる。


「約束は覚えているか?」

「ひゃい……」

「私は、ファリドに案内して貰えと言ったな?」

「ひゃい……ううぅ」

「何故離した」


 離してません、離してません。

 そう言う思いを込めてブンブン首を振ったら、魔王様の笑みが深くなった。

 心なしか周囲の空気の温度まで下がったと気がする。

 遠くの方で隠れてる役立たずなファリドさん死ねばいいのにまでプルプル蒼くなって縮こまって震えてる。

 ああ、あっちに行きたい。


「……またよそ見とは余程お前は」

「しゅみませんでしたぁっ!」

「……。あぁ、ちなみにお前がそそのかしてファリドを追い払ったのは分かっているからな」


 そう言ってにっこりと微笑むデュラン。

 纏うきらきらオーラが二倍になりました!

 そして、しつこいようですが目が笑ってません! 

 てか、あっさりばれてるし! ファリドじいちゃんちくったな!

 オレが八つ当たり気味に睨みつけると、ファリドさんは意図を悟ったのか手で大きくバツ印を作ってガタガタ震えた。

 裏切り者! 裏切り者!


「ファリドから聞かずとも分かる。私を誰だと思っている?」


 お美しい声ですね、恐怖の魔王様。


「そしてまたよそ見か……そうか、よほどファリドが気に入ったようだな? ん?」

「ちちちちちがいます」

「ならきちんと私の目を見ろ」


 分かりました! 精神的拷問ですね!

 とか思ってる間に頭をもう一つの手で掴まれて、ぐいっとデュランと向かい合うように変えられる。


 うう。

 きらきらしてて怖いよ。

 美形すぎて本気で怖いよ。

 目が笑ってないせいで怖さ突き抜けだよ。


「もう一つの言いつけまで破ってないだろうな?」

「やぶってましぇんっ!」


 ぷらぷらぶら下がりながら、ぴるぴる震えつつオレは敬礼ポーズで報告する。


上官まおう様の命令は絶対でありマス!」

「もう一つの方はあっさり破ったようだがな」


 すみませんでしたぁぁああっ!

 ガタガタ震えてるオレに、デュランは笑顔のまま笑っていない目を細める。


「今すぐ、あの娘たちと共に元の場所へ帰るか」

「ごめんなさい本気でごめんなさいマジでごめんなさいもう本気で勘弁して下さいごめんなさい私はドジでのろまなカメなんですすみません本当にもう無理です無理ですいっぱいいっぱいなんです反省してるんです身に染みてるんですむしろ骨身にまでじっくりことこと煮込まれたぐらいのレベルで染みましたっていうか軽く魂抜けて昇天しそうなぐらい怖いんでもう止めてくださいお願いします土下座しても良いっていうかひざまずいて足をおなめとか怪物○女みたいな感じでもやりますから三回まわってワンって言っても良いんでもう勘弁して下さい泣きたいですってか泣いてますからー!」

「……お前は一体どういう目で俺を見ているのかな?」


 もう、プライドとか言ってられる状況でも無く、恥も外聞もなく恐怖で号泣したオレにデュランは溜息をついて、一端視線を外す。


「何故離れた」

「うぅぅ……」

「理由を聞こう……俺も先にお前を怯えさせすぎた……」


 「すまない」と何処か疲れた様子で呟くデュランに、オレはぐしゅぐしゅと鼻を慣らして奴の方を見る。

 相変わらず目に猛毒な顔だけど、デュランはもうさっきみたいな魔王スマイルじゃなかった。

 苦笑のような、笑顔。

 紫色の目は何処か疲れてるような、諦めてるような、暗い色をしていた。

 それに、オレはなんだか胸が痛む。

 そうだ。

 デュランが何で怒ってるのかぐらいさっさと気付いて当然だったのに……いや、笑顔のお怒りな魔王様があまりに怖すぎて、正直ちびりそうなぐらい怖かったんで頭が動かなかったんですけどね。

 あ、ちびってないですよ。

 オレの名誉の為に言っておくけど本当にそんなことはなっておりません。

 なぜなら、怖すぎて全身ガチガチに凍りついてたのでそんなことしたくでも出来ませんでしたから。


 うん、でも今は違う。

 泣いて頭も冷えた。

 それに、デュランは何だか、笑ってるのに、笑っているように見えなくて。

 ……。


 怒られてた間、かたく握りしめてた手から、強張ってた体からゆっくり緊張が抜け落ちてゆく。


「デュラン……」

「何だ……」


 オレの方を見る紫色の目。

 それを見て、ふっと体の緊張がほどけるのを感じながら、オレは今の気持ちを口に出すべきかどうか、迷う。

 でも、今伝えなかったらきっと後悔する。

 ……うん。

 絶対、後悔する。


「デュラン、あのさ、オレ。その……さ」

「あぁ」


 言いかけて、またちょっと躊躇ったオレにデュランが怪訝そうに首を傾げる。

 あー、くそ。

 今オレの顔赤いだろうなー。

 すっげーもじもじしてるだろうな。

 そりゃあ不審な目でみられてもしょうがねぇよな。

 なんて他人事のように思ってみたり。


「どうした」


 アルトの声に促されて、オレは決心する。

 ナカバ、ここはひとつキッパリ言ってやれ。

 覚悟を決めて、腹をくくれ。


 オレはデュランの綺麗すぎる顔を正面から見て、告げる。


「便所行きたい」 

「分かった」



 幸いセーフでした。


 

【作者後記】

最後の辺りの下りに何か期待されていたそこの貴方……、「計画通り」(ニヤリッ/某ノートの人っぽく)


ちなみにデュランの方の台詞はどう受け取って頂いても結構です。



さて皆様今晩は、尋でございます。

昨日に引き続いていらっしゃって下さった貴方、ありがとうございます。

初めておいでの方、ようこそ。気に入ったのならゆっくりしていって下さいね。

久し振りの方、またお目にかかれたことを嬉しく思います。


今回は大分自分の楽しみに走ってしまいました。

読んで下さった貴方も楽しんで下さったならそれが一番です。


さて、今回魔王様降臨の回となりました。やっと合流です。

少し話を引き締めて行こうと思います。


それでは、またの機会にお目にかかれる事を願って。


作者拝




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