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再開再会とオレ

懐かしの某車もの……。

「だって反則じゃん!」


 大事なことなので力いっぱい主張しておきます。


「何で靴に鉄板仕込んでるんだよアイツ! おかげで無茶苦茶痛かったし!」

「鉄板では無い……が、あれは戦闘用の靴だから当然だ。壁を蹴っただけで穴が開く代物だぞ。仕込み刃が作動する前に回避して貰ったことを感謝するのだな」

「うーわー、何か納得いかねー!」


 ぎにゃーと唸ったら問答無用で首根っこを掴まれて持ち上げられました。

 プラーン。


「……落ちついたか?」

「……うん」


 落ちついたところで観光旅行の再開です。


 良くネットの質問サイトで見かける質問に「天壇とゼロ地区って何が違うんですか?」ってのがある。

 せっかくなのでオレが説明しよう。

 天壇とは!


「簡単に言えば番地と建物の名称の違いのようなものだ。ゼロ地区はあくまで番地。そこにある時計塔を含めた施設全体を示す名称が天壇だ」


 ……だ、そうです。


 天壇は周囲の庭園とその庭園の奥にそびえ立つ時計塔の二つで構成されている。

 まぁ、今更オレが説明する必要はねぇと思うけど、時計塔は永久時計がある場所で、ゴージャス美女の双神子様の住んでる場所でもある。ま、管理人だから当然だけど。

 お湯が沸くのも、列車が走るのも、フライパンでオムレツが焼けるのも、スーパーに商品が並ぶのも、全部ここの永久時計をちゃんと双神子様達が管理してくれてるお陰だ。

 世界のエネルギーのほぼ十割を生産しているロストテクノロジーの最終形態ハイエンド。それが時計塔の中に管理されている自立式動力装置【永久時計】だ。

 まぁ、当然そいつを狙った勢力があったとか、ここをめぐって国同士が対立したとか、その手の話は歴史の教科書の中にゴロゴロ転がってるが、今のところ成功したって例は無い。大抵中央十騎士と、それからDDDによって撃退されてるからだ。中には双神子様自身が立ち上がって戦ったなんて眉唾な話も混ざってるけど、うーん、これはまぁ一般的には認められてない説だ。

 でも戦う美女って素敵なので、オレとしてはそういう事実が一回くらいあっても良いと思う。


 あ、ちなみに美女美女とオレは双神子様のことを言ってるが実際にその姿は知りません。

 てかオレじゃなくても大抵の人は知らんだろう。

 何せ公式な場所にほっとんど姿を現さないからなー。神子様。全然マスコミに顔見せることもないし、公式発表でも遠くから映されるだけで顔見えないし、肖像画みたいなのも出てない。

 そもそも顔を合わせることがまず出来ない。

 だって時計塔に居るんだもん。

 生まれてから死ぬまで、ずっとそこで世界の為に祈りながら永久時計の管理を続けていくんだそうな。

 ちょっぴりエメ○ード姫みたいだな、とか思ったのは内緒。

 お陰でオレの中の双神子様のイメージは金髪の儚げな美少女だ。

 そんな話は置いといて……。

 まぁ居るんだか居ないんだか実証が無い双神子様は、そんなんだから「実は居ない」とかいう話が出てきてもおかしくなさそうなんだけど……何故だかそう言う話は無い。

 オレも特に根拠は無いけど、何だか居る気がしてる。

 いや、普通に考えたら「何で存在してると思える訳?」って感じなんだけどこればっかはなぁ……うん、でもなんか居る方が普通って気がするんだよ。うん。何となく。

 でも時計塔は一般人立ち入り禁止、つーか中央十騎士のトップスリーぐらいしか入れない場所なんで知りようがないんですが……デュランは今回そこに堂々と侵入する気らしい。

 さすが魔王だな。

 そんでもって、双神子様を誘拐して……あれ? お前もしかしてザガ○トって名前じゃね?


「何だ?」


 オレが後ろからじーっと睨んでたら不思議そうな顔をしてザガー……じゃなかった、デュランが振り返った。


「うんにゃ、別に。後頭部禿げれば良いのにとか思ってませんから」

「何だそれは……とりあえず許可が下りるまで十五分ぐらいかかるからな。少し待つとしよう」


 言ってデュランは入口の壁に寄り掛かって腕を組む。

 てか、許可下りるってもう決まってるみたいな態度だな。幾らこいつの偽造パスが上手く出来てても、果たして中央セントラルの中でも最高機密の天壇に入れるものなんだろうか?

 オレはつつつっ、と近寄ってデュランの袖をぐいぐいと引っ張る。


「どうした?」


 閉じてたサングラスの奥の紫の目が開いて、デュランがオレを見下ろす。


「ホントに大丈夫か? 十五分後に牢屋に直行とかオレごめんだからな」

「ん? あぁ……問題ない」


 本当かよ。

 ここで死ぬさだめでは無い、なんて現実世界じゃ言って貰えないぞ?


「あのパス自体は正式な手続きを経て発行された物だ。まずあれに異議を唱えられる者は居ない……ここならば尚更だ」

「どゆこと?」

「後で教えてやる」


 相変わらずの上から目線ですか、そうですか。


 しょうがないんでオレはデュラン越しに柵の向こう側を見やる。

 今オレ達が居るのが外苑と内縁の境目だ。

 オレが立ってる側が外苑で、こっち側は一般公開されている。恩寵公園とも言われてて、ここに来るだけで不治の病が治っただとか、精神的な問題で口が利けなかった子が喋り出しただとか、冴えない画家がここの景色に天啓を受けて、以来有名な巨匠になっただとかいう眉唾もんの噂もある。

 で、デュランの居る側が内苑。

 正式には内苑に入る手前の緩衝地帯みたいな場所で、基本は非公開だけど特別な日に一部のVIPだけを招いて公開されることもあるらしい。

 その更に内側が内苑で、ここは関係者以外立ち入り禁止の非公開区域。ちなみに、ごく稀に神子様が散歩することもあるらしい。

 で、デュランの話によれば、ミレイが作った庭は内苑にあるんだそうな。

 つまり、こんな機会でも無い限り一生拝めないってことだ。

 デュランでも役に立つ日が来るなんて……これはある意味奇跡かもしれない。


「何と無く馬鹿にされている気がするのだが」

「何を言うか。この感謝にあふれた目を見ろ……あ、やっぱ見るな。だから見るなって、顔が美形すぎて鳥肌立つからこっち見んな!」

「……」


 デュランの視線が生温いのは気のせい……じゃ、ないよな。やっぱり。


「いや、その顔はあんまり好きじゃないっていうか……」

「そうか……では、この手は?」

「うわー、指先まで美形だ。死ねばいいのに」

「何だそれは……」


 美形美形と連呼するな、とデュランが麗しく顔を顰める。

 この野郎。

 変顔してもこいつの場合絵になるんだからしょうがない。

 いつかみたいに、またこいつの口に指突っ込んでぐいぐいーっとやってやろう。うん、今決めた。

 オレが決意に深く頷いてるとデュランが軽く退いた。

 ニヤリと笑うと苦笑いが返って来る。


「お前は本当に飽きないな」

「は? オレそんなに飽きっぽく見えるか?」

「いや……だが、興味の無いことには薄情なようだな」

「そりゃお前だろ」

「ふふ……かもしれんな。まぁ安心しろ。俺はお前への興味もきちんと持っている」

「何がどう安心なのか二秒以内に説明してみろ」


 一、二。はい、しゅーりょー。


「早過ぎないか?」

「お前が遅いんだよ。ほら、ちゃっちゃと答える」

「俺がお前達に無関心になったら大変だろう?」

「知るか」

「やれやれ、つれないな」

「はいはい」

「はい、は一度だけ……だろう?」


 甘やかにデュランが笑んで、普段オレが口にしてる台詞を真似する。

 それにどう返そうか考えてたら、ガチャリという音がデュランの背中側で聞こえた。


「訪問者。いと高き者、黒の君の許しにより閉ざされし門は開いた。主守りし剣たる我ら十騎士が一振り、ファリドが案内申し上げる、いざ来たれ」


 ……えーと、半分くらいしか聞き取れなかったんですけど。

 何やら妙に仰々しいセリフにはてなマークを飛ばすオレとは対照的に、デュランはニヤリと魔王スマイルを浮かべて振り返り、境界の向こう側からきたロマンスグレーのおっちゃん……多分ファリドって名前っぽい人に片目を瞑って見せた。


「今回はきちんとつっかえずに言えたようだな、ファリド」

「……デュラン、様? そんな、まさか……」

「さて、許可が下りたようだ。行こうか」

「あ、うん」

「ほら、ファリド。何をポカンとしている。また置いて行かれるつもりか?」

「は、いや、貴方様は……」


 クスクス笑うデュランに目を白黒させていたファリドさんの顔がちょっと面白かったとか……本人には言わないで置いてあげよう。

 


【作者後記】

一人増えましたがチョイ役です。

中央十騎士の一人ファリドさんです。ロマンスグレーのおじい様……ならぬおじ様です。

十騎士はもう一人出てくる予定ですが、今しばらくお待ち下さい。


さて、今晩は皆様。改名を考えている尋でございます。

再度ご来場下さった貴方、またお目にかかれて光栄です。

初めてお越し下さった貴方、こんな場所ですがよろしければ足を休めて行って下さい。


観光旅行三日目はナカバとデュランと……のターンです。

何処に何が潜んでいるのか、どうぞ気を緩めず、心を許さず……「そんなのしんどい」って方は適当に。

ナカバ達の旅行にお付き合いください。


作者拝

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