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事故反省とオレ

今回は息抜きの回。


 ドアを開けて入って来たのはリムりんとヴィーたん、そしてデイジーさんでした。

 帰って来たらオレが部屋に居ないうえに何時までも戻ってこないんで心配して探しに来てくれたそうだ。

 いや、それはありがたいんだけど……良くなかったのはその後で。

 部屋をフロントで借りたスペアキーで開いて(あれ、実は鍵かかってたんだけど、オレみたいな魔力ゼロの奴には無意味だったんだそうな。)、まずデイジーさんがデュランの服装(ほら、オレが救急処置の時にざくっと切ったアレだ)に野太い悲鳴を上げ、次にやっぱりム○クの叫びみたいな顔で叫んだリムりんがデュランの上からオレを引っぺがし。

 後はこんこんとお説教です。

 曰く、年頃の(一応これでも十四だほっとけ)可愛い(わけねぇ)女の子(一応生物学上の問題で)が夜中にそんな恰好(Tシャツに短パンに素足……だってあの後そのまんま寝るつもりだったんだもん)で男(デュランのことです)の部屋に行くもんじゃない、と。

 いや、まぁ確かにデュランは男だけどさ。そういうのは心配ないって。デュランだし。

 と言ってみたけど逆にもっと叱られてしまいました。

 何でだ。


「良いですか、ナカ吉。貴方はそう思っていても世間がどう見るかは違うのですよ」


 ヴィーたんにまでこんこんと諭されてしまった。


「そして、間違っても相手を押し倒して跨るなど、するべきではありません」


 うん、確かに良く考えるとあの体勢は拙かったかもしれない。

 仰向けに寝てる(てか、倒れてた)デュランの腰の上に乗っかってたオレを見た時のリムりんの反応ときたら……いや、本当にもう。

 リムりんが壊れたと思ったね。

 デュランに掴みかかってたし。

 叫んだ後半の言葉とかもう、意味不明だったし。

 まぁ、何か誤解してたらしくて、落ちついた後は「ごめんね、そうよね、ナカちゃんがあんな男相手にするはずないものね」と何故かオレに向けて謝ってた。

 ちなみにデュランは放置されて、そのままデイジーさんに部屋の隅に連行されていった。

 今も何か話し合い中。


「ナカ吉、聞いていますか?」

「あ、うん。聞いてる、気を付ける」

「本当に反省していますか?」


 ヴィーたんの顔が真剣で怖い。


「戻った時に貴方が居ないと知って、私達がどれだけ心配したか……」

「……ごめん」


 それは本当に申し訳ない。

 うなだれたオレにヴィーたんとリムりんが顔を合わせ、溜息をつく。


「しょうがないですね。次から気をつけてください」

「本当に、もうやめてね」

「うん、ゴメン」


 ギュッ、ギュッとヴィーたんとリムりんとに交互にハグを交わして、オレはふいーと息を吐く。

 うん、二人とも心配かけてごめん。


「ナカバ」

「あ、デュラン。お前も説教終わったのか?」

「……まぁな」


 部屋の隅っこに連行されてたデュランが、裂けたシャツの前を手で押さえながら戻って来た。

 お前、そうやってると無駄にえろいよなー。本当に無駄だ。

 ペッペッ。


「では、お騒がせしました。私達はこれで」

「待て」

「まだ、何か」


 あ、ヴィーたんから怖いオーラが。


「ナカバを置いてゆけ」

「は?」


 何故にと思ってデュランを見ると、奴はオレを見たまま緩く首を横に振って、オレの胸を指した。

 あー、そっか。

 さっき分かった事なのだが、どうやらオレは何故か知らんが死にかけたらしい。

 さっぱりちっとも覚えが無いんだが、デュランはふざけてはいても、こう言う事で冗談言う奴ではない。つまりガチでDEATHする五秒前だったって事だ。

 で、どうやらそれを妙にデュランは気に病んでるっぽくて……つまり心配だからまだここに残れ、と。

 いや、でもさぁ……オレも寝ないとだし。

 うーん。


「まだ、何かお話しがあるのですか」


 あ、ヴィーたんがちょっと怒ってる。ヴィーたんはこういう静かな怒り方をするのでちょっと分かりにくいのだが、実は表に出ないだけで彼女が多分オレらの中で一番短気だ。

 うーん、拙いな。


「ある」


 デュランが端的に答える。


「明日にして下さい。私達はもう休みます」

「待って。ヴィーたん、オレ、残る」

「ですがナカ吉」

「きっちり話つけねぇとオレも気がすまねぇし」


 オレは言って、笑ってヴィーたんの背中をポンポンとする。


「もう心配させるような無茶はしねぇからさ。ちゃんと帰る。だから待っててくれよ」

「ナカ吉……」

「任せましょう」


 意外にもそんな風に言ったのはリムりんだった。

 そして、デュランの方を見てキュッと唇を結ぶ。

 美少女は何しても絵になるなぁ。


「ナカちゃんを、貸してあげるわ。でも必ずちゃんと無事に返して」

「約しよう」

「ですが、リミュリシエル」

「良いのよ……ナカちゃんそうしたいんでしょう?」

「うん」

「じゃあ、気をつけてね」


 ちゅ、とデコチューされました。

 ……うん、ちょっと照れた。ふふん、羨ましいだろ。

 そんなオレとリムりんにヴィーたんはまだ何か言いたそうにしていたけれど、諦めてくれたのかオレの頭をちょっと撫でて「分かりました」と頷いた。

 うん、ありがと。

 オレは二人から視線を外して、黙って待ってるデュランの方へ目を向ける。

 そんなオレにデュランはちょっと苦笑して、デイジーさんへ「お前ももう下がれ」と命じる。


「でも陛下」

「お前には聞かせられん。分かるな」

「よろしいんですの?」

「……問題ない。いつもと同じだ」

「そう、ですの……」

「あぁ」


 ……大人の会話って良く分からん。

 けどデイジーさんとデュランの間では何やら結論が出たらしい。

 熊にだって負けないたくましい腕をがっちりした腰にやって、デイジーさんが溜息を吐く。


「陛下がそう仰るのでしたら止めませんのー。でも、その前にやるべき事がございますの」


 やるべきこと、って……あ、何か先の展開が見えたぞ。

 デュランは分からないのか小さく首を傾げているが、オレはそろーっとデュランから距離を取る。ついでにリムりん達も退避させる。

 と、キラーンとデイジーさんの目が光った。

 来たっ!


「お着替えですのー!」

「ま、待て今はそんな事をしている場」


 ラガーマンも真っ青の見事なタックルを食らったデュランの体が浮く。

 そこをすかさず片腕でひょいっと確保して、デイジーさんはそのまま嵐のように通り抜けた。

 遅れてバターンと閉まるドア。

 あっけにとられるリムりんとヴィーたんの前でオレは静かに手を合わせた。


 うん、成仏しろよ。 

 

 

【作者後記】

ということで、ナカバ説教されるの回でした。

ちょっと今回は話の内容的には息抜きの回ですね。

久し振りにリミュリシエル達も登場しましたし……またデュランがかっさらわれてますし。

今回の魔王様は大分パワーダウンしてますから、意外とあっさり確保できます。それ以前にデイジーさん系のテンションの相手をあしらうのが下手なのかもしれませんが。


お久しぶりでございます、尋でございます。

初めての方はいらっしゃいませ。

再度ご来訪下さった方には深い感謝を。


次回からいきなり設定説明がずらずらーっと続きます。

ラスボスであるデュランが話しているので、相当核心に近く……そして、長いです。(ぁ)

読み難さが増すと思います、すみません。

特に初回の方はとっつき難いと思うので、よろしければ暇つぶし辺りで何となくここの雰囲気を掴んで頂ければ、と。

世界観が分かり難いとの話があったので足した話であって、本筋には気持ち程度しか関わりませんので、飛ばして頂いても結構です。


では、また次の話でお会いしましょう。

感謝をこめて。


作者拝

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