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変装道具とオレ

「ナカバ」

「何さ」

「視界があまり良くないのだが」

「我慢しろ」


 魔王だろうが。

 そう思いつつオレは後ろにいるデュランの方へ振り返り、


「ぶはっ! あっははははは!」

「楽しそうだな」


 楽しいと言うより無茶苦茶面白い。ダメだ、涙滲みそう。

 やばい、似合いすぎだよデュラン。

 その――鼻眼鏡。


 まぁ、何でこんなことになったかと言うと戦略兵器級の被害をもたらすデュランの顔を隠ぺいする為に、さっきL○ftのパーティグッズコーナーで購入したからだ。

 や、だって本当にコイツ迷惑なんだもん。


 だってさー、まずバス停に立ってたらこいつの顔に見とれたらしき車が目の前でガードレールにそのまま突っ込んで事故った。

 ついでにバスのアンちゃんもブレーキ踏むのを忘れてバス停に突っ込んできやがった。危なくシリーズ終了になるところでしたよ。

 ついでに座ったら何故か大して多くも無い乗客全員が同じ側に座り替えて寄ってきて、バスが傾き走行になった。

 ついでにデュランが「外が見たい」とか言うので窓際に座らせておいたら、バイク便のおっさんが並走を始め、挙句の果てにバスの中に向かって「好きです、愛してます、結婚して下さい」と叫び始めた。そして最終的に「僕はしにましぇえん!」とか叫んで踏切の方へバイクごと走って行った。

 あのままバスはルート通りに曲がってしまったのでどうなったか結末は知らないけど……大丈夫かよ?


 まぁそんな調子だったんで本当は駅前まで乗って行く予定だったんだけど、諦めて二つ手前のバス停で降りて駅前まで歩く事にした。心臓に悪すぎる。

 ちなみに「何故か」同じ場所でぞろぞろ他の人達も降りてきたけど……そこはきました。

 ふっ、オレの鍛えられた尾行回避の技術をなめんなよっ!


 でもまぁ、降りてからもデュランの被害はひどかった。

 ティッシュ配りが何故か段ボール一箱にみっちり詰まったティッシュを差し出して来る(いらねぇよ)。

 いちゃついてたカップルが突如としてデュランに告りだし、挙句の果てに左右でデュランを挟んで血みどろの喧嘩を始めそうになる(オレが何とか治めました……)。

 まぁ、他にもいわゆる見惚れてショーウィンドに激突する人(歩く時は前見て歩け)。

 途中で台詞を忘れる選挙演説の人(落選決定だな)。

 くらぁっ、みたいなポーズで失神するうら若き女性の皆さま、あーんど白髪のおばあちゃま(何か汚染物質にでも当てられたのか?)。

 唐突に告白してくる老若男女の皆さま(無差別にも程がある)。

 ちなみに勝手にシャメってる奴らはさらに多い(肖像権ぐらい頭にいれとけ)。

 後ろに出来る行列……オレ達は人気ラーメン店か、カルガモの親ですかっての!

 ま、そんなこんなで何か段々、普通に横に居ても何も感じない(いや、殺意は覚えるけどね?)オレの方がどっか変何じゃないかと悲しくなってきた訳ですよ。

 そんなに良いかぁ? こいつが? ただのアホ魔王だよ?


「どうにかなんないの? これ。まともに歩けないんですけど」


 幸い、隣にいるオレは皆さんの脳には認識されてないらしく、特に絡まれてはいないけど居心地悪いったら。

 やっぱ世間の迷惑さておいて置き去りにするべきだったかなぁ……。


「一応対策はして来ていたのだがな」

「全然効果が見えません」

「あぁ、さっきお前が割ったからな」


 ギクッ。


「……えーっと、やっぱあのサングラス特注の何か変な効果がついてたってこと? 掛けるとアンタが鹿の角生やした謎の坊さんに見えるみたいな」

「いや、こちらで市販しているものだ。別に兜をかぶったネコに見える事も無い」


 なーんだ、つまらん。


「じゃあ、何でグラサンが対策になるのさ」

「目を隠せるからな」


 デュランはオレの方を紫色の目で見下ろす。

 ……いや、色はすごくきれいだし珍しいとは思うけど、その目が何? 車輪眼とか白眼とかのほうがオレは良いなぁ。次点で黒龍の魔眼。サンバルカン。


「取り合えず眼を見せなきゃ良いのか……分かった。しゃがめ。お座り。お手。お周り」

「俺はセシェンか?」


 言いつつ、道の端によって屈むデュラン。相変わらず変なところで素直な奴である。

 オレはそのデュランの頭に、脱いだジージャンを被せて、頭を隠す。

 よし、デュラン被告逮捕の瞬間、みたいな感じになったぞ。ものすごい怪しいが、さっきまでのアレに比べたらマシだろう。


「これでオッケー」

「いや、前が殆ど見えないのだが」

「別に見えなくても良いじゃん。むしろ転べば良いのに……そして縮めば良いのに……」

「縮まないぞ、そんな事では」


 分かってらい。


「とにかく、サングラスっぽい物で眼が隠せればこの状態はどうにかなるんだな?」

「多分な。今のところ効果が確認されている」

「じゃあ買うから来い」


 ってことでデュランを店へ連行してコイツを購入し、話は冒頭に戻る。

 でもさぁ、この鼻眼鏡を思いつくなんてオレってばなかなか冴えてねぇ?

 これなら奴の目が隠れる上に、注目が鼻に集まる。これぞ一石二刀ってやつだね。何で石が刀になるのかはよく知らんけど。

 にしてもここまで鼻眼鏡が似合う奴が今までに存在しただろうか? いや無い、何て反語使っちゃうぐらいの面白ぴったりっぷりだった。


「はー、笑いすぎた」

「お前が時折言っている『絞めて良い?』の意味が分かったような気がするな」

「絞めたら犯罪だかんな?」

「絞めないさ」


 微笑してこっちを見下ろすデュラン。鼻眼鏡状態で。


「……ぶはっ」

「まぁ、吊り下げるがな」

「にぎゃー!!」


 笑わせて油断した所を襲うとは卑怯なり! ブシの風上にも置けない奴めー!


「何しやがる、このヒゲっ!」

「髭は違う」

「ぎゃーすぎゃーすぎゃぁぁーすっ!」

「ふむ、珍妙な鳴き声だな」

「鳴き声言うな!」


 オレを珍獣扱いしおってからにー!!

 しおってからにー、ってのはじいちゃんが偶に言ってた言い回しだ。意味はよく分からんけど響きが良い。しおってからにー。

 って思いだして和んでる場合じゃなくって。


「離せー、離さんかー、あ、でも投げ落とすの禁止……で、離さんかー!!」

「強気なのか、弱気なのか分からんな、お前は……」


 笑ってないで良いから下ろせってば!

 ちなみにこの騒動のせいでオレは結局レンタルショップに寄る時間が無くなり、駅前の待ち合わせ場所まで直行する羽目になったのだった。

 注目されるわ、出費はあるは、予定は潰れるわ……本当に碌な事が無いよ。

 オレはもう疲れたよ、とっても帰りたいんだ……パトラッシュ。


 

【作者後記】

メモに下書きしているとうっかり分量が多くなります。

読み難くて食傷起こしている方がいらっしゃる気がしてます……すみません。


それはさておきご来訪ありがとうございます。

お気に入り登録62人の方に頂きました。ありがとうございます。お陰様であと少しで総合pt200です。

何だか現実味がないのですけど……。

宜しければ今後とも応援、ご指導のほど頂ければ幸いです。



作者拝

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