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探検短剣とオレ

相変わらずやりたい放題のナカバ、ですが……。

「暇だー」


 ばたー、っとベッドに仰向けに倒れてオレは唸る。

 何が暇って、オレが暇だ。

 や、それは分かるか。

 いやさ、だって食事から帰ってきてやる事やりつくしちゃったんだもんよ。

 

 ご飯は当然残さずいただきました。

 それから部屋に戻る前に一通りホテルの施設を探検しに行きました。

 スカッシュのコートだとか、室内プールだとか、あとは温泉施設だとか、カジノもあったし、ビリヤードとダーツができるところもあったし、それから当然スパのところもちょこっと入口から覗いたりした。

 特にスパの感じがリムりんとヴィーたんは気に入ったらしくて、今彼女たちはそっちにお出かけ中です。

 オレも危うくにこやかなお姉さんに入らされそうになったけど、オレは出来ないんで丁重にお断りしました。

 あー、温泉行きたかったなー。

 オレサウナ好きなんだよね。サウナ。

 しゅわー、っていう奴。木の匂いとかさ、あとちっちゃな砂時計とか、その後の水風呂に入る時のぐわーって感じとか。すっごい好きなんだよな。

 ……ま、今は入れませんけど。チッ。

 温泉施設にサウナが三種類もあることをうっかりチェックしてしまった自分が恨めしいぜ。

 まぁ、しょうがないんでオレは部屋にくっついてたシャワールームでさくっと済ませましたとも。

 これはこれで楽しかったけど。

 うちの風呂に泡立つ入浴剤とか入れらん無いもん。風呂釜の掃除が大変だから。


 とりあえず寝巻がわりのTシャツ羽織った恰好でベッドに倒れたまま、オレはまだ濡れてる前髪をピチッと指ではじいてみる。

 部屋の探検も一通り終わってしまったし、ベッドの上でジャンプするのは時間的に下の階の人の迷惑になるから出来ないし、やりかけの脱出ゲームもさっきクリアしてしまったし。

 携帯にゲームでもダウンロードすれば良いんだろうけど、オレんちの経済状況を考えるとあんまりそう言う事出来ないもんなー。

 かと言ってカジノとかのああ言う施設は興味無いのもあるけど、そもそもオレ利用できねぇし。

 リムりん達に会いに行くのは却下。

 彼女達は彼女達で楽しんでゆっくりしてるはずだし、そこを邪魔して気を使わせたくない。

 オレにつきあったせいで、あの子達の楽しみが減るってことは本当はあっちゃいけないことだ。

 だから、なるべく邪魔したくない。


「つってもなぁ……暇だなぁ……」


 後何かやることあったかなぁ。

 オレは「よいせっ」と勢いを着けて起きあがり、リュックサックの中身を取り合えず全部ベッドの上にぶちまける。

 おー、やっぱり重いと思ってたけど結構入ってるなぁ。

 ペットボトルの水とか、救急セットとかはまぁ普段から入れてるんだけど、今回中央(セントラル)で買った荷物もプラスされているからなぁ。

 重さが分散するようにリュックの中に詰め直しながら、オレはふとある物を手に取った所で思い出す。

 そう言えばこれ、デュランに渡さないと意味ねぇじゃん。

 ダメじゃん!


 てか、良く考えてみるとあの運びだされて消え去った後、デュランに会って無いんだよな。

 うーん、やること無いしちょっと見に行こうかなぁ。

 デイジーさんがあの後、あの豊かなバスの声で「陛下は少し、あちら(・・・)の体に問題が起こっただけのようですの。御心配無用ですの」と内緒話のポーズで教えてくれたから、ホントは様子見に行く必要ねぇんだろうけどさ。

 でも暇だしなぁ。

 問題ないってんなら遊びに行こうかなぁ。


「よし、決めた」


 そうと決まりゃ準備は急げ。

 ってことでオレはサクサク道具をリュックに詰めて、ベッドからポンと飛び降りうわこけそうになった。

 ふいー、あぶねー。

 よし、行くか。


 ってことで現在、デュランの部屋の前です。

 現場はしんと静まり返って、辺りに人の気配はありません……いや、オレそういうの分からんけどね。

 最上階のスイートルームでも取ってるのかと思いきや、意外にもデュランの部屋は一階下のフロアのシングルルームだった。

 部屋番号から想像はついてたけどさ。

 意外と質素だな。魔王の癖に。美形の癖に。足が二分の一になって某マヨネーズの妖精みたいになれば良いのに。


「デュランー?」


 コンコンとノックしてみるが反応が無い。ただのドアのようだ。

 ……いや、ただのドアじゃなかったら困るんだけどさ。

 うーん、しかしどうやって入るかさっぱり考えて無かったな。どうしよう?

 とか思いつつ、とりあえずそーっとノブを握って引いてみるとあっさりドアは開いた。えー、ロックしろよ不用心な。

 ま、こっちには都合が良いけどさ。

 足音忍ばせてオレは部屋の中に入る。

 声をかけられるかとビクビクしながらだが、ラッキーなことにデュランは何も言ってこなかった。

 いや、そう見せかけて背後から「わっ!」とかやってくる作戦かもしれない。おのれ魔王め。


「とか思ったオレのドキドキを返せ」


 魔王様、御就寝中でございました。

 ベッドの上で仰向けになって、胸の上で手を組んだ姿勢でぐっすり眠っているらしい。

 いびきでもかいてれば爆笑出来たのに、残念ながら寝息一つ聞こえませんよ。

 つまらん男だな。

 まぁ良いや。熟睡中とは都合が良い。


「探検ごっこエピソード3、オレの復讐、っと」


 簡単に言うとデュランの部屋探検、ついでに何か悪戯しちゃえ大作戦である。

 取り合えずさっきデイジーさんにひっぺがされた服を発見したので漁ってみる。うむ、空っぽだ。

 そうすると、主な物はもう今の服の方に移し済みってとこか。

 どれ、ちょっと失礼。ごそごそ。


「あ、やっぱりか」


 しかし本当に持ち物少ないな。

 椅子の背に掛けてあったデュランの上着の内ポケットから財布。

 それからネックストラップにパスと携帯。

 胸ポケットからは万年筆と使い捨てのライター。ちなみに色は当然のようにオールホワイト。

 何処のホワイトプラン……。

 ちなみにリディルは左の袖の内側に隠すように、ベルトで固定されて入ってました。

 お前は暗器使いか……って、あぁ、そう言う事なのか。それで柄の方が下へ向けて装着されてんだな。嫌なもん知っちゃったな。

 オレは溜息をついて、暢気に寝こけているデュランを見る。

 このやせ我慢大魔王。いったいいつまでそのスタイルを貫く気なんだろう。


「緊急避難装置、だっけか」


 十騎士だとか、えーと後何だっけ……何かにしか効果が無い、存在を削り取るナイフの使い道なんて、こいつが持った時点でほぼ決定だろ。こんな装着方法見たら他に想像しようがない。

 ほんと、しょうがねぇなぁこいつ。

 オレは溜息をついてリュックをがさごそと漁る。

 どうすっかなぁ、デュランに渡そうと思ってたもんがあったんだけど。


「……。ま、いっか」


 袖の隠しにナイフを差し込んで、オレはリュックを持ちあげ。


 ガシャラララー。


「ぎゃー!」


 中身全部ぶちまけたー!

 いや、蓋閉めるのさぼったオレが悪いんだけ、けど! あぁ、オレのマシュマロが明後日の方向に!

 待ってー、オレを捨てて行かないでー!


 ……ということで、無事全員が生還するまで十分ほどかかりました。

 いや、結構広範囲に派手に散らかっちゃって。いや、疲れた。

 ……ん?


 オレはそっとデュランの居るベッドの方を振り返ってみる。

 相変わらず胸の上で手を組んで行儀よく横たわっている。

 ……ちょっと行儀良すぎないか? 普通寝返りぐらい打つだろ。それに、これだけ騒いでまだ熟睡しているってちょっとばかり寝付きが良すぎやしないか?

 何かきらびやかすぎる見た目が嫌で近寄らないようにしてたんだけど……オレはリュックを抱えてそっとデュランの傍に寄ってみる。


「おい、デュラン?」


 声をかけるけど反応が無い。

 ベッドに登ってみる。


「デュランー?」


 反応はやっぱりない。

 オレは手を伸ばして、デュランの顔の前で止める。


 嫌な予感は当たった。



「息、してない……」

 


 

【作者後記】

某マヨネーズの精霊、実は苦手です。

たーらこー、たーらこー、たーっぷりたらこー……と。


さて、ご挨拶をば。

今晩は、尋でございます。

初めての方、ようこそおいで下さいました。少しでも貴方の無聊の慰めになったなら幸いです。

再びの方、またお目にかかれた事を嬉しく思います。貴方のお陰で筆を執る気力が養われています。

ありがとうございます。


さて、本当に「ただのしかばねのようだ」となっている魔王ですが……次回はその魔王の為にナカバが頑張ります。

その時またお会いしましょう。


作者拝

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