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敏腕社長とオレ

前回の簡単な種明かしです。

「お騒がせしてすみませんのー」


 デイジーさんが抑えてある部屋とやらに黒服の皆さんに御神輿よろしく担ぎ込まれ、現在、オレ達はちょーんと豪勢な応接セットの片隅に座っております。

 目の前には先程デュランをひん剥きかけた猛者、デイジーさんが小指を立てて上品な仕草でカップのお茶を飲んでいる。

 背景にはさっきのゴツイ黒服さん達ががっちり控えている。

 空間面積に占める容量が大きいの何のって、威圧感満点である。


 うん、まぁこの人の場合しょうがないのかも知んないけどね。


 この自称デュラン専属スタイリストのデイジーさんこと、デイジー・イーニングウッドさん。だいたい想像してたけどデュランの着てる服のブランド、セン……なんちゃらの代表取締役社長さんだった。

 社長だけど、デザインから縫製まで何でもこなす人で、今は経営主体だけどデュランの服だけは必ず自分でデザインから布選びから、最後までやってるんだそうな。

 ちなみに結構な敏腕社長らしい。

 人は見た目によらない……ん? いや、この場合多分ちと違うのか。


「私、昔から仕事の話になると余所の事がパッて頭から飛んじゃいますのー」

「お前のその見境なさが無ければな……」

「ごめんなさいですのー、陛下」

「そう言いながらまた脱がそうとするな……」


 ぐったりテンションでデイジーさんの手を逸らすデュラン。

 めげずにチャレンジしているデイジーさん。その指にキランと光るは幾つもの指輪。

 右手の小指にはでっかい赤い石がついた奴があるし、左の人差し指にはハート型にピンクの石がくっついてるのが嵌ってる。あと薬指には装飾の無い銀色のリング、右の小指には華奢なデザインの金色のリング。

 きっと全部、相当たっかいんだろうなぁ。総額幾らするんだろ?


「もう分かったから、せめて自分で着替えさせてくれ」

「本当に反省なさってますのー?」


 ぷくーと頬を膨らませるデイジーさん。

 とってもキュートな仕草でした。

 恋に落ちるかもしれないや無理だ。


「……まぁ」


 嘘がつけない美形、デュラン。締めて良いかな。

 それにデイジーさんは「むー」と唇を尖らせて、溜息をついた。


「仕方ないですのー。私の大事なマネキンですから特別に許して差し上げますの」


 マネキンってついに言っちゃったよ。


「陛下を更衣室にご案内なさいの」

「ハッ」


 言ってデュランをひょいと神輿担ぎにしようとし、


「……」


 持ちだそうとした黒服さん達を見上げるデュラン。


「「「……」」」


 面白いように固まってる黒服ズ。


「?」

「あぁ、駄目ですわね。陛下、お手数ですけれどご自身で歩いて行って下さいのー」

「ん? それは構わんが彼らは……」

「ただの修行不足ですの。後でみっちり鍛え直しますのー」


 赤だった黒服さん達の顔色が青に変わった。

 歩行者用信号機みてぇだな。


「さて」


 デュランを追い払い、気の毒な黒服さん達を隅に纏めて片付け(どうやって片付けたのかは御想像にお任せしますガクブル)、デイジーさんは笑顔でオレ達の方へ振り向いた。

 あ、ちなみにオレ達と言うのはオレとリムりんとヴィーたんです。

 DDDの皆さんは「これ以上はわが社の機密にもかかわるので立ち入り禁止ですの」とデイジーさんの特大ウィンクを貰って追い出されていた。

 本気で役たたねぇな……どうしたアドルフよ。


「こちらの可愛らしい皆さまは陛下のお連れさんですの?」

「あー……はい、まぁ」

「貴方、さっき陛下が仰ってたナカバちゃんですのね」


 ごぅふ!


「チャンハヤメテクダサイ……」

「あら、どうしてですのー? その方が可愛いですのー」

「ナカちゃんにちゃん付けして良いのは私だけよ!」


 リムりん、熱く語ってる所悪いけど、そんな約束した覚えはねぇよ?


「では、ナカ吉に吉をつける権利は私が頂きます」


 いや、それもおかしいから。

 てか、ヴィーたん居ないとオレ、凶だらけになるっぽくて微妙にその言い回し嫌なんですけど。


「そうでしたのー。ではナカバたんとお呼びしますの」

「止めてください」


 「NO!」という勇気があなたの人生を変えます。


「どうしてですの?」

「いや、むしろオレがそれ聞きたいんですけど、何故に「たん」……」

「その方が萌え要素が増しますの!」


 イイ笑顔で飛んでも無い事を言われた。

 いや何かもう、この飛んでも具合は間違いなくデュランの関係者だな、うん。

 取り合えず丁重にお断りしました。


「で、オレ達が何か」


 一通り自己紹介を終えて、オレはデイジーさんに尋ねる。

 それにデイジーさんはにっこり笑って、


「んー、ちょっと気になりましたの。陛下はこう言う時にお一人で行動なさいますもの」


 と答えた。

 あ、成程ね。ほむ。


「オレが我がまま言ってくっついて来たんです」

「そのナカちゃんに我がまま言って同伴させていただいたの」

「右に同じく」

「ちなみにおもな目的はデュランの財布と観光ですんで」

「んー、ですのー……」


 上品に頬に手を当てて何か考え込むデイジーさん。

 その様子を見ながら、オレは控え目に手を上げる。


「あのー」

「何ですの?」

「オレからも二つほど質問良いですか? 凄く今更なんですけど」

「かまいませんのー。でも、営業秘密の関係はお話しできませんのー」

「あ、多分大丈夫です」

「でしたら結構ですの」


 ばっさばっさと睫毛をしばたたかせて許可してくれたデイジーさんに、オレはずっと気になっていた疑問をまずは一つぶつけてみる。


「あの、デイジーさんって……えーと、男性ですよね?」

「勿論ですのー」


 ……勿論なのか。

 ということで、黒髪を赤いリボンでポニテに結び、つけまつげをてんこ盛りにし、真っ赤な口紅に真っ赤なネイルをして……がっちりむっきりな大胸筋をフリルのついた襟元から惜しげも無く晒すデイジーさんはやっぱり立派な男でございました。

 スーツの上からでも分かるはちきれんばかりの上腕二等筋だとか、いかにも広背筋とか三角筋だとか鍛えてますみたいな逆三角プロポーズ……じゃない、プロポーションだとか。

 きっとあの引き締まりまくったウェストの下には素晴らしい腹直筋が秘められてるんだろう。


 いや、もう男のとかいうレベルじゃねぇですよ。

 どれかっていうとヲトコヒト

 声も渋い感じの素敵なバスです。

 こんな所でソファーに座って服のデザインやってますって言うより、ストファイに出てますっつわれたほうが納得するような、そりゃあ見事な漢っぷりでした。

 ま、あの一八○越えのデュランをやすやすと抑えつけてひん剥くにはこれぐらいは必要だろうけどさ。


 オレがしげしげと大腿四等筋からハムストリング、下腿三等筋へ続くドラマチックな調和ハーモニーを眺めてると、顎に両手をやって頬杖をついてた「うふ」とデイジーさんが笑った。

 仕草は非常に可愛らしかったです。

 思わず惚れそうになりません無理ですさようなら。

 いや、マッチョはきらいじゃねぇけど、惚れるのは無いな。

 それにデイジーさん、微妙に男くさい感じでの美形なんだよな。ダンディズムがそのたくましい僧帽筋から漂ってますよ。

 まぁ、服装のインパクトに負けて霞みがちですが。

 これでタキシードとかスーツとか着たら無茶苦茶似合うだろうに。


「別に女装趣味でもございませんのよ」

「……。そうですか」


 いや、物凄く説得力無いんですけど。

 まさか夏の新作を自分で試着して宣伝とか言わないよね?

 言っちゃ悪いけど確実に売り上げ落ちると思うぞ。


「愛する妻もおりますもの」


 と、どんな巨獣も一撃で蹴り殺せそうなおみ足を足首の所で組み直すデイジーさん。

 実は既婚者でした。

 奥さん、止めないのか旦那を。

 リムりん達も何とも言えない顔をしている。うん、コメントに困ってるんだね。すまん。

 うん、じゃあとりあえず話題転換で……さて、どうやって聞こうかな?


「えーと、じゃあ二つ目の質問ですけど。デイジーさんってもしかして四」

「あ、陛下お帰りなさいのー」


 ちっ、肝心なところで邪魔が入ったか。ずらかるぞ。

 ……いや、ずらからんけどさ。

 オレは舌打ちしながら振り返り、戻ってきたデュランを迎える。

 うん、例によって白かった。終わり。


「お帰り」

「ん? あぁ……ただいま」


 デュランの笑顔でのされた黒服の皆さんが生き返りました。

 医者いらねぇな。


「陛下、ちょっとお待ちくださいのー」


 デイジーさんが立ちあがって、デュランのとこまで行ってチョイチョイ着方を直してる。

 てか、一本一本がカイコですか? ってな太さの指なのにあんなに細かい作業が出来るのは正直びっくりだ。すげぇなプロ。


「結構ですの」


 ようやくOKを出したデイジーさんにほっと一息を吐くデュラン。

 お疲れの様子ですな。


「んー、では今回の分のご相談しましょうの。お連れの方はそうですわね……黒服、お部屋までお送りしなさいの」

「ハッ」


 部外者は退出せよってことらしい。ま、しょうがねぇか。

 復活した黒服ズ(まだちょっと顔色悪い)に促されてオレ達は立ち上がる。

 と、


「ナカバ」

「何だよめんどくさいな美形は死ねば良いのに」

「本心が駄々もれだな」


 あれ? 口に出してた? すまん、本当に面倒なんだ。

 

「少し話がある。残ってくれ」

「えー……」

「でも陛下」


 言いかけたデイジーさんを手の動きで遮って、デュランが俺を見上げる。

 あ、珍しい。ちょっと優越感。


「ナカバ、大体予想は付いているのだろう?」


 予想?

 あー、えーっとつまりアレのことか。

 うーん、この場合何ていうのが無難なのかな。リムりん達居るし。

 オレはちょっと考えてから、多分デュランが期待している答えを出してみる。


「デュランとデイジーさんが同類・・って事か?」


 正解。

 そう言いたげな感じでデュランがにっこり微笑んだ。

 

【作者後記】

回答編。

デイジーさん、れっきとした男性でした。

そして、ついでに言うと人間でも無い……?ようです。その辺の話は次でナカバやデュランが語ってくれるはずです。


今晩は、尋でございます。

久し振りの方、またお目にかかれたことを光栄に思います。

久し振りでもない方、また来て下さってありがとうございます。

初見の方、お初にお目にかかります。お気に召したならば末長いお付き合いを。


この後しばらくインターバルのような部分に入ります。

本筋に……うーん、関係無くは無いんですけど、読まなくてもOKという部分ですね。

世界観だとか、設定だとかの説明になります。

結構ぎっしりなのでどこまで読みやすく書けるか、少し挑戦してみようと思います。


それではまた、いずれかの機会にお会いしましょう。


作者拝

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