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猛者襲来とオレ

出したかったキャラの一人を追加です。

どんな人かは読んで想像してみて下さい。

「終わったか」

「ぎゃー!」


 どうしてどいつもこいつも不意打ちみたいに話しかけて来るんだ!

 反射的に振り回したオレの手をひょいと例によって軽く避けて、ニヤリと笑ったのは――うん、説明するまでも無い某若づくり様でございました。

 あ、アドルフまでポカンとしてる。

 こいつも気付かなかったとか? まっさかねー。


「ボス……」

「お前達のボスになった覚えは無いのだがな……ナカバ、そろそろチェックインの時間だ。行くぞ」

「あ、うん」


 とりあえず素直に立ち上がるオレ。

 急に加わったオレ達の泊る場所何か当然用意してなかったハズなので、多分デュランが何とか抑えてくれたんだろうってことぐらいは予測つくし。

 屋根の無い所で一晩過ごすとかリムりん達女の子にはさせられんし、オレがやればもれなく風邪をひくこと間違いなしだ。

 セントラルに来てそれはねぇよな。うん。

 ということで大人しくデュランの後ろにくっついてくことにしました。

 当然のようにアドルフもついて来てる。

 リムりん達が何か言いたげな目で奴を見てたけど、オレは手をはたはた振って丸をつくってみせた。

 問題ないからな、ってこと。

 リムりんがツボに入ったのか笑いを堪えてたのはまぁ、うん、割愛で。




 で、




「意外と……うん、いやでも何か高級だ」


 もっと成金趣味のワクテカ……じゃなかった、ピカテカした所に連れてかれたらどうしようかと思ってたが、意外にもデュランの選んだ先はさしてデカくもなく、キンキラでもなく、えーと……古風シックな感じのお宿でした。

 ロビーのふんわかソファーに座って、オレは足をぶらぶらさせる。

 落ちついたオレンジとか茶色とか、象牙色で統一された内装は温かみがあってオレは嫌いじゃない。

 全体的に西大陸様式だな。


「どうぞ」


 おお! メイドさんだ! 生メイド!

 にっこり笑顔が上品で素敵なメイドさんがお茶出してくれました。


「ありがとうございます」


 お礼を言ったらにっこり微笑まれました。

 うん、癒される。可愛いなぁ。綺麗だなぁ。良いなぁ、素敵なメイドさん。

 変にデコしてないメイド服がまた好感度アップですな。

 向こうで空気を読まないデュランが珈琲を頼んでるのをさらっとスルーして、お茶を頂く。

 本当は玄米茶か梅こぶ茶が一番好きですが、紅茶だって美味しいと思う。

 どこかの珈琲しか飲まない偏食家とは違うんです。

 オレがぼけーっとしてる間にリムりんとヴィーたんは何やらパンフを広げてきゃいきゃいしてる。エステのサービスがあるから、それにどうも興味があるらしい。

 こっちも可愛いなぁ。

 と、その時。


「いやぁぁぁぁぁぁっ!」


 絹……いや、何だろうえーと、ダンボールを裂くような悲鳴が上がった。

 何事かと思って声の方向を見たその瞬間、


「っ」


 だーん、とデュランが押し倒された。

 ……えー。

 お前仮にも魔王何だからそりゃ拙いだろ。

 てか護衛どうした。

 いや、それより前に。


「誰?」

「陛下、私の気持ちをこんな風に酷く扱うなんて酷いですのーっ!」


 いやいや、と首を振りながらポカポカと乙女ちっくな仕草でデュランの胸を叩く何処かの誰か。ってかマジで誰だ。

 真っ黒な髪を赤いリボンでポニテに結んで、赤い目に白い肌。

 真っ赤な口紅ルージュ。真っ赤なネイル。

 真っ赤なミニスカのスーツにフリルのついたドレスシャツ、赤いハイヒールに黒の網タイツ。

 それがデュランの上にどーんと馬乗りになっている。

 むっちりな鍛えられた太腿が眩しいっす。


「いや、私は」

「言い訳なんてききたくございませんのー!」


 両手で耳を塞いでいやいやー、と首を振る謎の襲撃者。


「あんなに色々尽くして参りましたのに、酷いですの、あんまりですのー」

「いや、それについては」

「今の私のじゃ満足できませんの? 他のが良いんですの?」


 そんなのあんまりですのぉっ、とデュランの胸の上に泣き伏す誰かさん。

 てか、護衛どうした。

 あ、フリーズしてる。役たたねー。

 てか、


「あのー、どう言う関係ですか?」

「どちらさまですのー?」


 ポリポリとクッキーを齧りながら聞いたオレに、可愛らしい仕草で首を傾げる誰かさん。

 答えを出したのは組み敷かれてぐったりしているデュランだった。


「あちらはナカバ、私の連れだ。こちらはこの服の制作者のデ」

「陛下専属スタイリスト、デイジーですの」


 唇に指を当ててにっこりほほ笑むデイジーさん。

 デュランに跨ったままだけど、非常にプリティーな仕草でございました。

 てか、スタイリストですか。


「居たんだ、そんなの」

「おりますのー。昔から陛下とは浅からぬお付き合いをしておりますの。きゃっ」


 へー。そりゃ苦労してるだろうな。

 ……どっちがとは言わんけど。


「浅からぬ、ですか」

「ですのー。私、一目見た時から陛下の体が忘れられなくて……ポッ」


 デイジーさんの発言に周囲がどよめく。


「あ、ご安心くださいの。私、陛下の体にしか興味ございませんの」


 どよどよっ、と再びざわめくギャラリー。

 それに構わず、デイジーさんはうっとりと両手を組み合わせ、


「陛下のお体の良い所も当然知り尽くしておりますの。もう隠す物のない関係ですの」

「私は少しは隠しておきたいのだが……」

「駄目ですのー! デザイナーとボディーは一心同体の関係じゃなくちゃメッですの!」

「そう言うもんなんですか」

「そう言うもんなんですの。な、の、にっ」

「落ちつけデ」

「陛下ったらひどいんですのー! 私の愛の結晶をこんな風に! こんな風に!」


 言いながらデュランの胸倉を掴んでグラグラ揺さぶるデイジーさん。


「折角新作をご用意していましたのに、前々回の作品を着てるなんて酷いですのー!!」

「……。はぁ?」

「……」


 思わずまの抜けた声をあげてオレはデュランを見る。

 あ、あきらめの表情だ。


「私が色々着せかえするのを楽しみにしておりましたのにー!」

「……私は遠慮すると言ったはずだが」

「なりませんの!」


 力無く反論したデュランの言葉をピシャリと遮って、デイジーさんは胸の前で指を汲んで瞳をきらきらと乙女チックに輝かせる。

 ついでに大盛り、いや特盛り? メガ盛り? ギガ盛り? ごん太盛り? 銀河へ届けカールアップ彗星巻きすじかぶせ滝流しメガシャワー勝負盛りな? な勢いの睫毛をバシバシと音がする勢いで瞬かせる。

 盛りすぎじゃね?


「私が陛下のご衣裳をご用意するのは感謝の気持ちの表れですの! 一片の妥協も許しませんの!」

「私の意志はどうなる」

「聞いてませんの」

「……」

「陛下の素敵なお体に着せつける事を考えて夜も眠らずに働いた私の純情をおかえし下さいの!」

「返せるものならさっさと返済したいのだがな」

「でも、色々想像しながら待つ時間も嫌いじゃございませんの……ぽっ」

「……」


 両手を頬に当てて、デュランに跨ったまま「もぢもぢ、もぢもぢ」と身悶えるデイジーさん。

 未だに硬直状態から戻れないDDDの役立たずども。

 おーい、仕事しろよ。


「この絶妙なバランスの筋肉、滑らかな首のラインから始まる均整のとれた体格線、少し細身の骨格、布の色調を最大限に引き立てるお肌、これを飾ると思うだけで私ご飯三杯は軽くいけますわー!」

「……はぁ、さいですか」

「あーん、もう、頬ずりしちゃいたいですわー!」

「やめてくれ。強度は人並みに設定してあるのだぞ」

「いやですわー、陛下。私だってこんな理想的なマネキ……ゴフゴフッ、くそっ畜生が……大事な陛下のお体を乱暴に扱ったりなんかしませんわー」


 今何か言いかけた。ってか確実に言っていたな。

 おほほほほ、と誤魔化すように高笑いして、デイジーさんはキランと目を光らせる。


「ともかく、このような姿を何時までも陛下させておくわけには参りませんの。ということで、黒服カモンですの!」

「はっ、お呼びですか社長!」


 うわ! どっから現れたメン○ンブラック! 


「新作を持って来なさいですの」

「はっ」

「さー、陛下、覚悟なさってお着替えですのー!」

「くっ」


 おー、デュランが焦ってる焦ってる。良い気味だ。

 ……。

 ん?

 着替え? どこで?

 嫌な予感がして見ると、デュランが抑えつけられたままはがされようとする服を必死で押さえていた。

 てかそれでも身ぐるみはぎ取りそうなデイジーさん強ぇぇ!

 っていやいや、ここは拙いだろ。誰か止めろよ。って誰も止める気配なしですか! そうですか!

 てか何で皆さんそんな熱い目で見てるんですか。

 黒服も何気に足抑えたりとか加勢してるし!

 そこのDDD、生唾飲み込んでる場合じゃねぇよ!

 そこの従業員も何映像記録してんだ!

 皆止めろよ! 公然わいせつ罪まっしぐらの状況だろうが!


 とか思ってても誰も止めそうに無いので、しょうがないから動く事にしました。

 紅茶飲み終わったし、クッキーのお皿もからっぽだし、やることねぇもんな。他に。


「……あのー」


 傍によって、トントンとデイジーさんの肩をつつく。

 あ、ちゃんと手は拭いてからやってますよ?


「なんですのっ?」

「あ、いや……着替えるにしてもここ拙くないですか? ほら、ロビーだし」

「え? あぁ……でしたわね。忘れてましたの」


 忘れないで欲しかったなぁ。それ。

 そして何故か残念そうな溜息を吐く他の皆さん。

 いや、そこ残念違うだろ。安心しろよ。お前ら美形男のストリップショー見て楽しいか?


「ナカバ」

「何だよ」

「助かった」


 胸元を掻き合わせてぐったりした様子で言ったデュランにオレは重々しく頷いた。


 はい、是非恩に着て下さい。

 

【作者後記】

はい、デイジーさん登場でございます。

この人書いてて非常に楽しいです。

以前デュランが言っていた「悪気はないだろうけれど押し倒されて服を剥がれる」という知り合いはこの方です。

さて、一応仕掛けは設置しましたけれど本筋には関係ないので、次の回でさくっと回収しようと思います。


もうそこの貴方はお気づきですね。その通りです。

それでは、また次回お会いしましょう。


作者拝

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