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不倶戴天とオレ

 暇な時間は店内をぶらぶらして見て回って時間を潰した。

 オレはヴィーたんみたいに刃物に詳しかねぇが、それでもこう言うのが嫌いってわけでもない。

 別にナイフみたいに尖って、触る連中を傷つける程ギザギザでもねぇが、心にナイフをちょいと忍ばせておくのが少年ってもんだ。カッコ良いしな、アレ。

 オレだって子供の頃は戦隊物の何とかソードとかにあこがれたもんだ。

 マジでビームが出るもんだと思って買ったあの頃のオレは、その時CMと現実の差を学習したんだっけか。

 懐かしいなぁ。


 まぁ、そんな古い話は置いとくにしたって結構面白かったのはマジな話だ。

 あ、これドラマで見た感じのだ、とかあいつが持ってる奴そっくりじゃねぇかとか、他にも有名どころの武器とか。

 中には嘘か本当かエクスカ○パーまで置いてあった。

 その前で合掌して「頑張れギルギル」と唱えておいた。

 アイツ良いよな。

 「この扉の裏でずっと待っていたぞ! 来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ!」だぜ? 可愛すぎる。

 でもあの剣で一以上のダメージ出せるって意外と最強フラグ……?


「ナカ吉? あの、何故剣を拝んでいるのですか?」

「あ、ヴィーたんお帰り。どうだった? 買い取りOKっぽい?」

「問題なく終わりましたよ。他に何かありますか?」

「ん、まだちょっと。ヴィーたんは?」

「私は調整の完了待ちです。料金は既に支払っていますからそう時間はかかりませんよ、恐らく」

「そっか、了解」


 オレは頷いて、ついでにさっき見てた剣をお土産代わりに買って帰ることにした。

 まだヴィーたんは時間がかかりそうなので先にカウンターで会計を済ませておく。

 それからまた店の中を一周すると、そのころにはヴィーたんの方も終わったらしくて、奥の工房の方から出てきたおっちゃんにナイフを受け取っていた。満足そうだ。


「こんなもん?」

「そうですね……時間も良い頃合いです。行きましょうか」

「うぃうぃー」


 って事でオレとヴィーたんはちょっと早いがベルディアン寺院の前まで移動した。

 ちょっと早かったせいか、リムりんとそのおまけはまだ来てないっぽい。

 ヴィーたんが携帯を確認して「少し遅れるようですね」と呟いた。


「うーん、じゃあオレちょっとその辺見て来る」

「気を付けてくださいね」

「平気平気」


 オレ言っとくけど十四だからな?

 手を振ってヴィーたんと別れ、寺院の横の道に入る。

 や、だって中に入ると有料だしさ……なんで、外からぐるっと回って眺めてみる事にしようと思って。

 寺院らしくでっかい窓とかあって、昔ここに感染症の患者を隔離してたってのは本当なんだなーとオレはぼんやり思う。

 オレみたいなマナレスもこの手の寺院に入れられてた時代があるんだそうな。

 回復魔法が効かねぇ奴が戦時中にうろちょろされたら邪魔だからしゃあねぇわな。うん。

 あ、あそこの石像、うちの教師に似てる。

 あやうく吹きかけたじゃねぇか、おのれドスコイめ……あ、ドスコイっつーのは綽名あだなだからな?


「?」


 ぼけーっと上の方を首が痛くなるまで見上げてたオレの内臓に悪寒が走ったのはその時だった。

 ぎゅっとネイルアート満載の手で胃をぐわしっとされたような感じ。

 気道がぎゅっと極細ダイエット成功になった感覚。

 普段意識しない心臓が急に激しく自己主張を初めて非常にウザイ。

 ウザイけど……これは危険信号だ。

 オレの毛の生えた蚤の心臓なんか目じゃないぐらいウザイ奴が、居る気がする。

 オレはなるべく表情を変えないようにしながら顔の角度を元に戻して、なるべく自然にさっさと立ち去れるように足の向きを変える。

 けど、遅かった。

 この世で一番、デュラン以上に見たくない、気色悪さ二万倍の顔がそこに存在してた。


「マサキさん」


 ……。

 うわー、うぜー……。

 その猫撫で声どうにかならんのかよ貴様は。

 てかその笑顔もキモイです。近寄らないで下さい。生理的に無理です。何ていうか気色悪くて気持ち悪い。

 仮にオレが炎をによりて世界を更新するなら、コイツが理由になるだろう。

 まぁ、更新した所でコイツに対する耐性がつくかっつわれたら絶対無理ですが。


 ……なんて、この馬鹿に言えれば良いんだがそれも出来ないんで、オレは「はー」と顔を逸らして溜息をつき、横を向いたままぼそぼそと言う。


「こんにちは先輩。じゃあ失礼します」

「照れなくて良いよ、マサキさん」


 照れてねぇよ、このド低能が。パープルヘイ○発動すっぞコラ。


「まさか君が僕を追いかけてここまで来るなんて思わなかったよ」


 チガイマス。

 てか貴様が居るなら来なかったし。


「それに比べてうちのクラスの連中ときたら……」


 はーい、以下聞き苦しいのでカットー! CM入りまーす。

 てかさぁ、貴様このセントラルに来て、それで話す内容がまた他人の悪口ですか……そーですか、最悪ですね。

 オレはそっぽを向いて話を聞き流す。


 相槌もこの相手の場合うっかり打てやしねぇんだよな。

 挨拶すれば自分の事が好きだからだと舞い上がるし、挨拶しなけりゃ自分に気があるから照れてると都合よく解釈する。

 ダメだ……こいつ早く何とかしないと……。

 いや、実際関わりになりたくないんで何もしねぇけどさ。混ざるな危険。

 あんましオレ、他人を嫌うとかは苦手だからやりたくねぇんだけどな……。

 先輩は未だにべらべらと何か喋ってる。

 ま、どうせ自分サイコーか、自分否定する奴は皆クズみたいな事しか言ってねぇだろう。

 本当にどうしようもなく、みっともなくて、見苦しくて、情けない。

 こいつのお陰でオレは美形アレルギーにかかって、お陰さまでデュランのキラッキラした見た目とか見る度に思わず手が出る足が出る体質になったんだが……こうしてるとはっきり分かる。

 デュランは美形過ぎてむかつく。

 こいつは、ただキモチワルイ。



 キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ、ウスキミワルイ、キショクワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ――



「……っ」


 足が竦む。

 体が震えそうになる。

 嫌だ、意地でもそんな事は見せねぇ。見せてたまるか。

 こんなきっしょいヤツの為に、オレがどうしてそんな状態にならなきゃならないんだ。

 こんな奴なんか無視すりゃ良い。

 オレの世界から消えたと思えばいい。居ないと思えば良い。存在しない。存在しない。存在なんかしない。










                                ――だけど、×××。

                                        ×××から、×ないで。









「そこで何やってる」



 後ろから声がした。


 

【作者後記】

お久しゅうございます。

暑い中皆様いかがお過ごしでしょうか。未だにクーラーが動かない尋です、どうも。


ご来訪ありがとうございます。

拍手ありがとうございます。

ご感想ありがとうございます。

お気に入り登録91、92、93、94番目の方いらっしゃいませ。


今回は「敵」を目の前にピンチなナカバです。これぞ王道ヒロイン……まぁ、本人はあんまりヒロイン、ヒロインしない子ですが。

ナカバの美形アレルギーの元凶も出てきました。

ピンチに現れたヒーロー(?)は次回明らかになります。まぁ、多分「予測の範囲内」でしょうけど。


余談ですが、×××に入る言葉は決まってますが、ご想像にお任せします。

「分かった!」てな方は拍手で呟いてみると、正解かどうかだけちらっとお返しします。

ヒントとしては、一番目と二番目の×××は同じもの、最後の×だけ別ですね。

×の数はイコール音の数(平仮名一文字、と考えれば良いです。「あ」「か」=1音)。

漢字にすると×××は漢字1+送り仮名1。×はそのまま漢字一文字です。

相手は年上、権力的にも上、面と向かって文句も言えない相手で、おまけにストーカーと言う辺りが最大のヒントかもですね。


では、また明日。


作者拝

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