買物難民とオレ
セントラルステーションで悲劇の(駅との)別れを経験したオレは、リムりん達と一緒にセントラルへと出た。
こっから先は当初の予定通り、オレあんどヴィータンの組、それとリムりんとついでにデュランの組の二手に分かれて行動だ。
待ち合わせは三時間後。
集合場所はセントラルのランドマークの一つ、「ベルディアン寺院」前。
それまでは自由行動だ。
って事で。
「レッツゴー、武器屋ー」
ヴィーたんと一緒に刃物デートに出発です。
ヴィーたんは三度の飯より刃物が好き、な素敵な女の子なので、さっきから目がキラキラしてる。
可愛いなー。
この輝きっぷりは、前にオレがゲーセンのクレーンキャッチャーで入手した「ねねねこたん」ぬいぐるみに、ガムテで「凶悪な切れ味」「一撃必殺」が売り文句のナイトーの果物ナイフを手にくっつけた奴を誕生日プレゼントにあげた時以来かもしれない。
ちなみに、ヴィーたんはああいう予算不足で手作りになっちゃいましたー的物体は受け取った事が無いらしく、半分以上社交辞令だとしても、それでも妙に喜んでくれた。
逆に何か申し訳なかった。
ごめんよ、ヴィーたん。もうちょっと裁縫練習するよ。
ま、そんな昔の話は置いといて。
武器店やっぱ多いなーここ。噂にゃ聞いてたけどよ。
「中央って武力を持たないって言ってるわりに何か物騒だな」
「固有軍隊を保有していないから、ですよ」
「んー? よぅ分からん」
「セントラルは文字通り世界の中枢です。永世中立でなければならないセントラルだからこそ、どこよりも強大な軍事力が必要なのです」
わりと有名メーカーのはずの店の前で立ち止まって、ヴィーたんがオレに説明してくれる。
「どこの国にも属さず、どこの国からも侵略されない為の軍事力が」
「自分で軍隊作れば良いじゃん」
「それはセントラルを攻める口実になってしまいますからね」
「んー? でも実際DDDが専属契約結んでるんだろ? だからこうゆう「そこの兄ちゃん、良い武器そろってまっせー」的な店がずらーっと」
ずらーっと、とオレは奥の方まで指し示すように手を振る。
マジで武器関係の店しかねぇし。
オーダーメイドから既製品、修理、パーツ、材料系。
ここ乗っ取ったらちょっとした戦争できるんじゃなかろうか。
「DDDがあくまで無国籍企業であることが大事なのですよ」
「うーん? あぁ、言い訳が効くのか」
「それと、所属国家の利益によって裏切る心配がありません」
「ふむー、利用するには都合が良いのか」
「そして、残念なことに彼らの実力は各大陸の軍事力に匹敵します」
ちょっと悔しそうなヴィーたん。
うーん、まぁヴィーたんもリムりんもそういう教育受けてっからな。
正義とか、常識なんてそんなもんだ。
世界がすり変えられたらあっさり変わる。デュラン達魔族の正義が、オレ達の正義じゃないのと一緒。
どっちが正しいとか良いとか優れてるとかの問題じゃねぇし。
「ま、いいや。何かあっても結論として勝ちゃ良いんだし」
「いえ、ですから」
「武力だけで決まんなら魔王が世界征服してるだろうし」
「……」
「ヴィーたん達は別にDDDと戦う為に公務員になる訳じゃねぇんだろ? なら良いんじゃね?」
今の魔王はデュランだし。
あの腑抜けが即座に攻め込んでくる事はないだろう。
……いや、案外「コーヒー農園が欲しい」とか言って攻めて来るかもしれねぇな。あのアホ。
いや、でもそうすると仕事さぼって遊びに行く先が無くなるからねぇか。
うむ、平和だ。
「ナカ吉?」
「あー、うん。でどこ入る?」
「そうですね。では、ここから見て行きましょうか」
「うぃ、了解」
カツッと格好よく、颯爽と踵を返したヴィーたんの後をオレは小走りに追っかけた。
……歩幅が違うんだよ、ほっとけや。
って事で。
「ここにする?」
がっちりした、いかにも「老舗でございます。文句あっかコラ」という構えの店の前でオレは立ち止り、ヴィータンの方を振り返った。
確かここで既に六件目。
今までダメ、ダメ、ダメ、無い、ダメと来てそろそろオレの体力も限界。
足が棒のようになって来てるっつーか、そろそろ擦り減り……いや減ったらだめだ。
ただでさえ低い身長がさらに悲しい事になったらオレ立ち直れないかもしれないし。
や、別にヴィーたんが意地悪してる訳じゃねぇぞ?
ただちょっとヴィーたんの武器が特殊なだけでさ。
ヴィーたんの武器はえーと……あれだ、なんちゃらナイフの二刀流。
その辺じゃ売ってないマイナー武器で、しかも手入れが大変で、扱いも難いってなマゾい武器。
ヴィーたんによれば玄人好みの武器らしい。
お陰で扱ってる店も少なくって、専門店を探して三千里状態。
戦争難民じゃなくて武器屋難民になってます。
そろそろ安住の地なり、約束の地にたどりついても良いと思うんだよセフィ○ス。
「そうですね」
ショーケースに並んだ武器を見て、ヴィーたんがやっとOK出した時は正直ホッとした。
そうと決まれば善は急げ。
早くイスのある場所……じゃなかった、武器のある場所へ!
「おじゃましまーす」
「いらっしゃいませ」
「……お邪魔します、ではないのではありませんか?」
「じゃあ、たのもー! とか?」
「いえ、それも何か違うと思いますよ」
「うーん」
挨拶って難しい。
店の中はピッカピカってな感じじゃなかったが、薄暗い照明の下に鞘におさめられた物とか剥き出しの柄も無い刃とかが順々に陳列されてて、なかなか期待出来そうな感じだった。
ふむ、ここならセントラルに来た目的の一つも果たせそうか……。
よし。
オレは隠し持っていた刃を引き抜く。
「ナカ吉?」
ヴィーたんが戸惑いの声を上げるのを無視してオレはカウンターに歩み寄る。
そして、人が良さそうなおっちゃんの顔の前にそれをぐいっと付きつけた。
それから言う。
「おっちゃん。オレ、金が欲しいんだけど」
【作者後記】
ご無沙汰しております、尋です。
こんだけの場面を何度書きなおしたか……
猛烈に眠いです……冬眠期だろうか。皆さん大丈夫ですか?
それはさておき、ご来訪ありがとうございます。
お気に入り登録89名の皆様、恐れ入ります。
拍手ぽちぽちどうもです。




