趣味其々とオレ
「何だこの惨状は」
「話すと長いんだけど、まぁぶっちゃけはしゃぎすぎ?」
「お前も当事者だろうがちびっこ」
「ちび言うな」
「やれやれ」
ま、確かに「やれやれ」な状況になってるけどね。
床は赤い液体でびしゃびしゃだし、物は飛び散ってるし、オレのこめかみはグリグリされたし。
ん? 最後のだけ私情が混ざってるって? 気のせい気のせい。
その無残な車内をデュランはぐるっと紫の目で見回して、ふぅと肩を竦め、
「仕方のない……貰うぞ」
「へっ」
ポン、とアドルフの肩に手を置いた。
瞬間。チカッと接触面が白くフラッシュして、混沌としていた室内が一気に元通りに戻った。
アドルフのシャツもついでにトマト色から元の白に戻っていた。
ちっ、余計な真似を。
「今一気に半分持って行かれた……」
「この程度平気だろう。先刻確かめたからな……プロならば仕事中はあまり枷を外すな。これはそのペナルティだ。分かるな」
「はい、ボス」
デュランの言葉に神妙な顔になるアドルフ。
「今の魔法は一体……」
「詠唱破棄、でしたよね」
何かヴィーたんとリムりんが凍ってる。
何? 何かあったのか?
……うん、分からんからほっとこう。
そんな二人が冷凍パスタになってる間にデュランはアドルフの方に指示を出しているようだった。
「向こうは終わったからな。後は纏めてそちらで引き払ってくれ」
「了解」
「追加報酬は今日中にDDDを経由して振り込んでおく。御苦労」
「毎度」
「ん? あいつらの仕事ってこれで終わり?」
「そうだな……」
戻ってきて向かいの席にスッと座るデュラン。
ついでに足を組むのはもうオプションだろう……そんなに足が長いのが自慢か。そうか。
「少々長引いたが、もう少しで終点だ。契約は車内での護衛……到着すればそこで終わりだ」
「ふーん……あ、って事はついに駅に着くのか?」
「他のところに着いたのならば、それはりっぱな事故だな」
「うっさい」
でも、駅楽しみだなー。
ふんふふーん。
あ、写メの準備しねぇとな。
「何か楽しそうだなちみっ子」
「何だまだ居たのかアポロ。後ちみっ子言うな」
「アドルフ。そろそろ覚えろよ」
「や、覚えても無駄な物は頭に入れない主義なんだ、オレ」
「……」
「覚えなければならない事も頭に入らない奴だがな」
「デュランうっさい。てかうざい」
DDD(どっかの、ダメな、誰か)のアポロチョ○より今は駅の時代ですよ。
「駅ー、駅ー。生足、生駅、生なまごー」
「どんな早口言葉だそりゃ……」
「私としては『なまご』の原型が気になる所だな」
「黙れ。ちょっと噛んだだけだろうが」
「そんな良いか、あの駅? お前駅マニアなのかちみっ子」
「駅マニアじゃねぇよアポロ。あれがJハウスだってのが大事なんだ」
「……Jハウスって何だ?」
「……え?」
「だから、Jハウスって何だ?」
「はぁっ?!」
思わず耳に手を当てて聞き返してしまった。
「アンタ、Jハウスも知らんのか! Jハウスというのは……、Jハウスと言うのは……っ!」
D和ハウスの賃貸住宅の事じゃろうが!
……と言う訳では決してない。
ジャン・ジャック・ミレイ設計の建築群の名称である。
「誰だそれ。聞いた事も無いぞ。もしかしてすっごいマイナーな奴じゃないのか?」
「みぎゃー!!」
げーし!!
「どわっ!」
「分かった、喧嘩だな。むしろ戦争だな。よーし、買ってやろうじゃねぇか」
レッドスネーク・カモーン、とファイティングポーズを取ったオレの首根っこを誰かがひょいっと摘まんだ。
こんな事をやる奴は世界広しと言ってもこの世界には多分存在しない。
異世界には一匹居るが。
「大人しく座って居ろ」
「だってアイツ!」
「また倒れるぞ。観光中、常にこの状態で巡りたいのならばそれも吝かではないが……」
ぷらーん、ぶらーん。
珍獣モード。
「……席に戻る」
「宜しい」
ぺいっと座席に落とされた。
くそぅ……。
オレはこそっと振り返って、アドルフに向かって親指で首を掻っ切るジェスチャーをやっておく。
何故か苦笑いされた。うぅー。
ま、確かにジャン・ジャック・ミレイはマイナーだけどさ……うん、それは認めよう。
現実を認める。
これ、先へ進む為の大事な一歩だ。
人類にとっては小さな一歩かもしれないが、一人の人間には大きな一歩だってな感じ。
でもさー、ミレイはすっげーカッコ良い建物作ってんだよ。
中央のただ一つの駅の設計者に選ばれてるぐらいだし、実力だって世間にそれなりに認められてたはずなんだぜ?
セントラルステーションだって、設計されてこの方一度も改装を必要とされてないんだぞ。すごくね?
……ま、それはセントラルの天候が完全制御の元にあるせいもあるんだけど。
世界樹自体が世界全体の天候制御を兼ねてるんだから、お膝元なら当たり前だよな。
うん……オレは好きなんだけどな、ミレイ式建築。
マイナーすぎて話が合う人が居ないのがちょっとさみしい。
「……ナカバの相手をしなくて良いのか?」
オレがかるーくブチブチ言いながら(ついでにアドルフに向かってありったけのガンを飛ばしながら)座席に座って足をぶらぶらさせてると、デュランがちらっとまだ凍っているヴィーたんとリムりんに目を向けて笑む。
それに二人して凍ってる状態が解ける。
レンジでチーン、解凍。ってな感じだ。
「そうですね」
「貴方に言われるまでも無いわ」
お、駅見えた!!
くるっと方向転換したオレの上をリムりんのだきゅ攻撃がヒュッと通過してった。
……あれ? 今オレ回避しちゃった?
【作者後記】
マイナーどころを好きになってしまう人間と、マイナーだから好きになる人間。
同じ対象を好きと言ってるにも関わらず大分差があるような気がするのは何故でしょう……。
どうも、とりあえずマイナーであるかどうかすら良く分かってない好みの持ち主尋です。
ご来訪ありがとうございます。
拍手ありがとうございます。
メッセージ感謝です。
お気に入り登録サバ読んでゴメンナサイ(嗚呼)……いや、普通に記憶領域が狭い上にボロいんで……。
と言う事で83人目の登録者様いらっしゃいませ。
どうぞずずずいーっと奥まで……ささ、遠慮せずに。ああ、逃げないで!(嗚呼)
とか馬鹿やってますが、本当に皆様ありがとうございます。
やっとこさで主要舞台に到着いたしました。
こっから先にまたあのえらく書き難い奴が出て来るので腹くくって行こうと思います。
まだまだ続きますので、宜しければお付き合いくださいませ。
作者拝




