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事後処理とオレ

 見た目は某チョコレートでも、アドルフの腕は確かだった。

 てか、初対面なのに何あの共同作業の息の合いっぷり。

 二人揃って廊下に背中合わせに立って、遠くの敵はデュランが銃で撃つ。近寄ってきた奴はアドルフが剣で切り捨てる。んでもって同時に氷像へと姿を変える。

 その二つを掻い潜って突入してきた奴はデュランが無造作に手首を掴んだかと思うと壁に向かって叩きつけるように投げ飛ばし、その横ではアドルフの回転蹴りが腹に決まった奴が吹っ飛ばされる。

 あっという間に死屍累々。


 や、何て言うか……一方的過ぎてこっちはポカーンてなもんですよ。

 

 ま、良いや。

 バトり事はまかせてオレはオレの仕事をしよう……つまり、部屋の隅っこで残った朝飯を胃の中に片付けるってことなんだけどさ。

 うーん冷めるとやっぱ味が微妙だな。


 そうこうしてるうちにだんだん周りが静かになってきて、暫くしてガシャガシャとサイバト○ンみたいな音を立ててどっかから完全武装の若い奴らが集まってきた。

 そして通路の中央の陣取ってるアドルフに向かって声をかける。


「班長! 終わりました」

「あと民間人保護しときました」

「おーう、ご苦労。全員そろってるな?」

「みりゃ分かるでしょ」

「良いんだよ。確認するのが俺の仕事なんだから……で、どうしますボス?」


 いつの間にかデュランの呼び名がボスになってる。

 ぶふっ、似合わねぇ。

 思わず爆笑してしまった。


「……」


 なんだあれは、見たいな目で見られてしまった。

 てか、デュランの苦笑いが一番心理的ダメージ大だった。

 そんなオレから夏場に暫く水を出して無かった外の水道、みたいな温度の視線を逸らしデュランはDDDの皆さんらしき少年少女合唱団の方へ振り返る。


「お疲れ様」


 デュランがにっこりと微笑みを彼らに向ける。DDDの皆さんが動揺した。

 お前の笑顔は毎度そんなリアクションばっかりだな。


「民間人は……あぁ、その二人は大丈夫だ。お疲れ様リミュリシエルさん、ヴィクトリアさん」

「あ、リムりん。ヴィーたん」


 保護された民間人ってのはリムりんとヴィーたんだった。


「おかえり」

「ただいま……ごめん、大丈夫だった?」

「うん、平気平気。割と腹いっぱい」


 両手を上げてヒラヒラさせてみる。いや、自分でも意味分からんぞこのポーズ。

 そう思ったけどリムりんとヴィーたんは疲れた顔からちょっとだけ笑顔になった。うん、なら良いや。

 オレは戦うとか無理だし。

 だから、こうやって出迎えるのがオレの大事な仕事で役目なんだ。良かった。

 左右からぎゅっとリムりんとヴィーたんとハグされる。

 ……ちょ、ちょっと苦しいけどガ、マ、ン。


「おーい、ボース。この捕虜の山どうするんだ?」

「五人ずつの組にして進行方向右手側の各コンパートメントに入れておけ。見張りは各二名で充分だろう。けっして自殺はさせるな。抵抗が激しい者がいるなら私に言え」

「何か対処法でも?」

「麻酔針を打つ」


 うわー、さらっと鬼畜発言。


「へぇ、そんな技術もあるなんて東の研究員ってのはよっぽどのハードワークなんだな」

「容易い仕事なら私がやる必要は無い」


 言って、デュランは振り返ってアドルフに流し眼を送る。


「お前もそう思っているのだろう?」

「う……まぁ……」

「分けたら順に一名ずつ隣のコンパートメントへ連れてこい。洗脳を解く。終わった者から左手側コンパートメントへ移動。眠らせておけ」

「アイアイサー」


 ビシッと敬礼して、アドルフはちらっとオレの方を見る。

 何だよっ、とガン飛ばし返したら笑われた。

 ついでにスッと近寄ってきて、口に手を当ててひそひそと何か言ってくる。


「威勢の良いチビ助だな」

「……これが地なんで」

「そりゃ結構だな。なぁ、ところであの別嬪さんえらくオトコマエすぎねぇ?」

「オトコマエ……どうだろ」

「黙ってりゃ絶世の美女なのによ。ガンスキルは俺ら顔負け、おまけに白兵戦も相当なレベルで麻酔針に洗脳解除だぁ? とんでもねぇ人だな」

「そこで黙って無いからデュランなんじゃないんですか」

「なーる」


 何を納得したんだろう。


「ちょっと、ナカちゃんに何してるの」


 ぐいーっと腕を引っ張ってリムりんがオレを引っ張り込んだ。

 ついでにむにん、とリムりんの胸に後ろ向きに倒れ込んでしまった。

 ……。


「えーっと、ごめん?」


 リムりんの胸を後頭部のクッションにしたまま顔を見上げ、オレは取り合えず謝ってみる。


「ナカちゃんは良いの」


 にっこり笑うリムりん。美少女は心が広かった。


「そっちのケダモノはダメ」


 ……リムりん、男嫌いだもんね。


「ふーん、何だ。こいつはあんたの弟か? それにしちゃ似てないな」

「弟じゃないわ。手出したら許さないから」

「はいはい、過保護なこって」

「他人にとやかく言われる覚えは無いわ」

「俺も同じさ」

「アドルフ、何をしている。来い」


 デュランの声が響いた瞬間、二人の表情が変わる。

 アドルフは仕事の顔に、リムりんは……何だろう。怯えてる? まさかね。


「お、ボスがお呼びだ。はいはい、ただいまー」

「あ、待って。オレも行く」

「あぁっ?」「えぇっ?」


 え? 驚く事か?

 オレは出口のところで扉の枠に寄りかかって腕組みして待ってるデュランを見る。


「良いよな? つーか問答無用で良いって言え」

「ん? 別段構わないが……見てもさして面白くも無いぞ」

「や、別にそう言う意味じゃねぇし」

「なら好きにしろ」

「うぃうぃ」

「……ま、雇い主の意向ならしょうがないか。おい、ボウズ」

「何ですか」

「追加しとく。お前も相当オトコマエだな」

「そりゃどーも。あんたも悪かねぇんじゃねぇの」


 一応誉めてくれたようなので、オレも同じように誉め返しておいた。

 円滑なコミュニケーションってのはこういうのの積み重ねが大事なのだ。



 

【作者後記】

はい、またしてもナカバが用語の間違いをやってのけてます。

見つけた方には金一封差し上げ……る事は出来ませんが、どうも尋です。


戦闘シーンは結局さらっと流しました。

この後またあるし……。


ご来訪ありがとうございます。

拍手感謝です。

いつもいつもありがとうございます。

宜しければ今しばしお付き合いくださいませ。



作者拝


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