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不法侵入とオレ

 えーと、まぁ事情知らん人が大半だと思うので先に言っとく。

 オレは実はついこの間まで異世界トリップと言うヤツをやってた。


 そこのお前、失笑するな。

 オレだって、自分で言っててすっごい恥ずかしいんだからな。

 分かってる分かってる。その気持ちはよおぉぉく分かりますとも。

 オレだって「自分、この前まで異世界行っててさー」とか言う奴が居たら、お前の頭が異世界だろ、とか思う。

 思うけど、この頭が可哀そうな感じのイタイ発言、さらに痛々しい事に事実だったりする。

 んで、そんな痛々しい話をオレにさせる原因になったのがさっきからそこでオレのノートパソコンをせっせと解体しやがってる駄々っ子魔王様ことデュランだ。


 正式名称、ディアヴォロス・デュラン。

 見た目はさらつやストレートな黒髪に紫の目、女顔で吐き気がするほどの美形なにーちゃんだが、中身は好き嫌い言いたい放題の五歳児。

 あっちにいた苦労性のワンコ執事セシェン君の証言によれば実は何気に凄い奴らしいのだが、コーヒー中毒だわマゾだわ年齢詐欺するわ、挙句の果てに暇つぶしの為だけにオレの事を魔界に呼び出すわ……ぶっちゃけ何が凄いのかさっぱり分からん。

 感動とか尊敬、畏敬よりもむしろ重い殺意を覚えました。軽くないよ? 重い殺意です。

 ま一つだけ認めるってなら、ある意味凄い根性してるとは思うけどね?


 てかさぁ、暇つぶしだけで異世界に呼び込むとかするなよな。オレはピザ屋の出前か。

 オレは元々険しい目つきをさらに悪くして、パソを黙々と分解してるデュランを睨ん――


「って何やってんだ貴様ぁっ!」

「ん? あぁ……静かにしろ。今良いところだ」

「何が今良いところ、だ。ドラマ見てるみたいに言うな!」


 何か物体の最小単位みたいな勢いでバラバラ死体にされてるオレのパソコンを見下ろし、オレは目頭を押さえる。


「あぁ、可哀そうなオレのパソ子。こんな姿になってしまって……」

「一体誰がこんな酷い事を……」

「犯人はお前だ!」


 一瞬で終わる謎解きだった。

 てか、高かったんだぞ!


「まぁ、落ちつけ」

「上から目線で喋るな」


 取り合えず蹴飛ばしておいた。

 相変わらず涼しい顔で笑われた……ちくしょう。


「で、コレ本気でどうする気さ? 賠償してくれるんだろうなぁ当然」

「元通りに組み立てるくらいは造作も無いがな、賠償か」


 思案するように唇に手を添えるデュラン。

 例によって無駄に色気満載だな……いいよ、もうだいぶ慣れたから我慢する。


「使いやすいように調整しておこうか?」

「いや、良い。あんまりハイテクにされても機械オレ苦手だし、使い難くなるし」

「ふむ?」


 首を捻るデュラン。


「使い難くなるようでは、それはハイテクとは呼べないのではないか?」


 ごもっとも。

 だが現実はそう上手くは行かない。世界は優しくない。故に美しいとまでは言わないけど。


「まぁ、では適当に作っておこう」

「どうあっても改造する気なんだな、お前は」

「あまりに無駄が多い」


 気に入らん、と眉をひそめる我がままっこ。


「強度も足りないな……物質構成に問題がある」

「いや、ちょ……ちょっと待って。普通のパソコンで良いからね? ふつーのだよ? ふつー」

「そうだな。最低水準すら達していないこの状態は問題がある。」


 普通を強調してみたが、意味が無かったようだ。

 てか、あんたの最低基準ってどこよ?

 オレは溜息を吐きつつ諦めて自分の椅子に座ろうとし……何か勝手に置いてある(多分)デュランの私物を発見する。


 あのー……ここ、オレの部屋なんですけど。

 相変わらず白が好きなのか、今勝手にオレのベッドに座ってるデュランの姿も上から下まで白ずくめ。

 さらにアレの上にこの白いトレンチコートを羽織って来たらしい。

 嫌みなぐらいに似合いそうだ。

 どうせならポケットの中に小銭とか入ってないかなー。がさがさ。


「何だ、これだけか……」


 胸ポケットに白いライターとグラサンが一個ずつ入ってるだけだった。

 てか、お前は一万マイナス一な名前のあの人ですか。グラサンかけてないと美しさのあまりに他の人が失神する、こうですね。分かりません。

 あ、しかもさりげなくこれブランド物だ……ちくしょう、相変わらず金持ちだな。魔王の癖に。


「ナカバ」

「はいはい何でございましょーか」

「お手」


 差し出された手をぴしゃりと叩き落としてやった。


「良し」

「今の何処が良しなんだ」

「今のでお前の力は大体把握した」

「スカウター?!」

「戦闘能力四〇〇〇と言ったところだな」

「オレ一人で軍隊せん滅可能っ?!」


 何処の菜っ葉ですか、オレは。

 人を勝手にそんなバケモノにしないで欲しい。農耕民族ですから。


「まぁ、要は手の力を測ってみただけだ。軽過ぎても重すぎても使い難いからな」


 本来は全てこうして個人の規格に合わせて作るべきだ、とのたまうデュラン。

 指先はさっきから忙しなく動いて、どうやらうちのパソ子を蘇生させている最中のようだった。

 あぁ、そう言えばこの人日曜大工、もとい自分でも何でも作っちゃう人だっけか。魔王よりも技術やで研究者なのが本分だとか何とか……。

 オレはグラサンを置いて、デュランの作業を見に近くに寄ってみる。


「って、妙に薄くなって無い?」

「スペースの無駄を省いただけだ……まったく、何を考えての設計だったのやら、理解し難いな」

「オレにはアンタが理解し難いよ」

「試しに少し動かしてみてくれ」

「えー……今から? てかさ、オレそもそも着替えに来たんだけど」

「そうなのか?」

「そーです。なんでさっさと出てって下さい」


 さすがにオレもやろーの前で着替える勇気は無いぞ。

 一応これでも女だし。花は恥じらわないけど十四歳ですし。


「てかさー、本当にお前どっから入ったんだか……何か馴染んでるけど犯罪だかんね?」


 ぶちぶち言いつつオレは椅子を引っ張り寄せて、腰を下ろして、


 バリン。


 ……あり?

 今何かいやーな音がケツの下でしたような。


 そーっと立ち上がってみると、オレが座った座席の上で何か黒っぽい物が砕けてひしゃげて歪んでねじれてた。

 ……そう言えば、オレあの時デュランのグラサン何処においたっけ。あれー?


「……」

「……えーっと。ぐしゃーってか、クラッシャーな感じかも?」




 これも蘇生……出来ないよね。うん、ゴメン。


 

【作者後記】

暫く説明調になりますがご了承ください、こんばんは尋です。

ご来訪ありがとうございます。


留守の間にもお気に入りに入れて下さった方々がいらっしゃるようで……すみません、こんな形になってしまっていて。

そしてありがとうございます、此方にいらして気に入っていただけて。


前作ヒマ潰しを読んでなくてもキャラクターが見えるようにしてみてますけれど、大丈夫でしょうか?

分かり難いぞこら、とかあればなるべくフォローしますので遠慮なく拍手で呟いてみて下さい。

匿名でも結構ですので感想ご指摘等お待ちしてます。


作者拝

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