傭兵登場とオレ
「どーも、まいどDDDっす」
「どっから、でてきた、ドミノ(ピー)ザ?」
「や、そのDじゃないからな」
はたはたと手を振ったそいつは窓枠に乗っかっていた。
えーと、多分人間だよな。うん。オレらと年齢そんなに変わらん気がする。
腰に水色の剣差してるし、あの腕章からするとDDDの社員か。
ぼさっとしたかんじの苺ピンクの髪、茶色い肌。どっかで見たような外見だな。
えーと、これは……そう、アポロチョ○だ。
そんな事を考えてたオレ達が何時までもノーリアクションで居たので、向こうは暫くして気まり悪げに、
「……あれ? 部屋間違えたか?」
「いや、あっている」
言ってオレの傍に膝を着いていたデュランが立ちあがり、振り返る。
その顔を見てアポ○チョコ(仮名)が目を思いっきり見開いて呻く。
「うぉ、超ド級の美人」
あ、デュランの笑みが微妙にひきつった。
「何? アンタが今回の依頼主か? うっわー、噂にゃ聞いてたがすごい美人だな」
「誰がそんな事を……」
小声でぼそっと呟くデュラン。
オレが続くセリフをアテレコしてやろう。『言った奴、後でコロス』。
「で、隣のはその弟……」
オレを見て暫く黙るアポ○チョコ。
「じゃないな、貧相だし」
「うっせぇ」
何見比べてんだよ。
てか兄弟じゃねぇよ。ありえねぇから。世界が終わるから。
「てか今の魔力暴走、そっちのお姉様の仕業か?」
「お姉様じゃねぇし……男だし」
「何っ?!」
目を剥いたア○ロチョコに苦笑いするデュラン。
「なんてこった……もろ好みの直球ど真ん中に炸裂する炎の魔球だと思ってたのに」
「消える魔球の方だった、と」
「うるせぇ!」
窓枠で頭を抱えていた姿勢からガバッと顔を上げて叫ぶアポ○チョコ。
「だって詐欺だろ! あの顔で、あの色気で男なんて!」
あ、詐欺呼ばわりされてデュランがちょっとイラっとしてる。
くどいようだが、デュランはあんな姿形しといて自分の容姿の事でほめられたりするのが大嫌いという偏屈者だ。
魔界に居た時は「美しい」とか叫んで飛びついてくるストーカーを半殺し……や、九割がた死亡状態に追い込んでたしな。うん。
「それで、仕事をしに来たのではないのか? それとも解雇されに来たのかな?」
にっこりと。冷気を纏って微笑む氷の女王様――ならぬ魔王様。
それに嘆いていたアホがビシッと姿勢を正し、表情をカチッと切り替える。器用だなこいつ。
「お待たせしました、DDD第二一八班の班長アドルフ、ご注文に従い参上しました」
「遅い」
「ありゃ……」
「遅れた分、働いてもらうぞ」
クスと笑って声をかけたデュランに○ロルチョコ改めアドルフは一瞬ポカンとし、それから顔を赤くして「はいっ!」とか敬礼をとっていた。
おーい、大丈夫かー?
うん、まぁ気持ちは分からんでも無いけど……デュラン滅多に仕事期待してるぞ、っぽいこと言わんもん。
ああ言うのを上に立つ貫禄っつーんだろうか。
あんな風に言われて働くなら気分良いだろうなぁ……オレにはありえませんが。
「で、パトロンさん。話仕切り直すがさっきの魔力暴走はあんたか?」
「そうだ」
淡々と答えたデュランにヒュゥと口笛を吹くアドルフ。
「すごい度胸だな」
「あいにく度胸だけは持っているのでな」
「……クール過ぎだろ、マジ惚れる」
男だぞ。くどいようだが。
「仕事の中身は分かってるな」
「全員生かして捕獲」
「宜しい。では来い……さっさと終わらせるぞ」
ふわりと白衣を翻したデュランにアドルフが「一生ついて行く」とか何とかほざきやがった。
重症だな、うん。
【作者後記】
意味のない伏字が好きです。(ピー)ザハット、とか。
どうも、人生の無駄に力を注ぐ尋です。
さて、DDD登場です。
アポロチョコのアドルフ君。
アドルフとは高貴な狼という意味だそうで、軽くセシェン君(前作参照、デュランの執事兼弄られ役)にひっかけている部分もあります。ただし脇役。
何せ当初の予定に無い奴なので……。
まぁ、人間同士の問題に介入するのを嫌うデュランが居る時点でこうなる事はある程度約束されてたとも言えますけどね。
さて、最後になりましたがご来訪の皆様へ感謝を。
拍手をして下さる皆様へ親愛を。
まだ続きますので宜しければお付き合いくださいませ……ってかまだ目的地着いてないのかorz
作者拝