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家出青年とオレ

「おお」


 ばばーん、ででーん、どどーん、じゃじゃーん。

 そんな効果音がつきそうな料理がオレの目の前に!


「ってか、デュランって料理出来たんだ」

「当然だろう」


 へぇー、と眺めてるオレにデュランがエプロンを外しながら苦笑する。

 当然なのか。

 魔王なのに。専用執事セシェン君が居るのに。普段欠食児童なのに。


 とにかく、本日の晩ご飯は冷凍食品の盛り合わせから変更して謎の麺と謎のスープと温野菜のサラダです。


「おい」

「だって名称不明じゃん」

「お前が知らないだけだ」

「え? 何か魔界風謎肉と謎野菜の謎料理みたいな……」

「食材も調味料も道具も、全て元々お前の家にあったものだろうが」

「あ、そっか」

「お前は俺に喧嘩を売っているのか?」

「……ちょっとだけ」

「いい度胸だな、ナカバ……」

「ぎゃー」


 いや、段々吊り上げられるのが楽しくなってきちゃったわけじゃないよ?

 そりゃあオレ高い所好きだし? ふわふわーってな重力の感じが楽しいとか、おー、今視点が高いぜオレ! とか思ってたりとかするけど。

 オレが手足をバタバタさせてると、デュランが何と無く疲れた感じの溜息を吐いて下ろしてくれた。


 仕切り直し。


「なにこれー!」

「……どこの珍百○だ、それは」


 相変わらず無駄にこっちの番組に詳しいデュランはほっとくとして。

 うーん、強いて言うなら……冷たいうどんの上に肉味噌、ササミ、カシューナッツの砕いた奴、もやし、ニンジンやら大根やらキュウリの千切り。あとはレタスやら大葉やらミントやら……えーっと、親が買ってきたっきり放置されてたフライドオニオンとやら何やら色々。うん、これは。


「うどんのごちゃごちゃ乗っけ盛り?」

「……まぁ、そんな所だ」


 ある程度アレンジしているから、その表現が一番適切かもしれんなとデュラン。

 アレンジねぇ。

 そう言えばえらく手際良く作ってたもんな、こいつ。むしろ、手際良すぎて軽ーく退いた。

 だってさぁ。何で魔族がこっちの調理方法とか、調理器具とか、食材とか何でそんなに詳しいんだって話だよ。

 ヒヨコ柄エプロンが似合っちゃう人類の敵ってどうよ?

 ……ちなみに、デュランは最後まで往生際悪く「白いエプロンが良い」とか抜かして探してた。ねぇよ。

 まぁ、出来上がったなら食事です。

 チケットセンターから腹ごなしに歩いて帰って来たんで、今は結構空腹だしね。


 ぐるごぎゅごがー。


「……」

「……」


 何故かデュランが憐れむような目をして、オレの皿にササミを追加してくれた。

 何か釈然としねぇなぁおい。


「でさ、さっきの話だけど」

「ん?」

「あんたの家出の話」


 オレの言葉にデュランが微妙な顔をする。

 そ、家出。

 チケットセンターからの帰り道。そもそも何でオレの家に転がり込んできたのか、渋るデュランを脅して聞きだした結果がそれだった。

 魔王が家出。人類の敵で、ウン千歳の癖に家出。

 何でも本来の宿泊先だと「悪気は無いのだろうが、押し倒されて服を剥がれる」らしくて、それが嫌で逃げ出したんだそうな。で、ホテルにも入れず、行く場がなくてふらふらーっとしてたらオレの所に転がり込んできちゃったらしい。

 ダメなヒモ男みたいな話だった。


「ウチ泊ってって良いよ」


 ジャックジャックと口の中でぶっかけ麺を噛みながらオレは言う。

 それにデュランがきょとんと、スープを掬った姿勢のまま瞬く。


「いや、だってさ。アンタが外で寝ててみろよ。大パニックだろ……昼間のバスの比じゃねぇだろ」

「ん、まぁ……かもしれんな」

「大体、明日同じ車両に乗る奴が風呂入ってないってありえねぇし」


 そこですよ、そこ。

 せっかくの観光旅行だってのに、お隣は野宿してました、風呂も入ってないです着の身着のままです。

 いや、これダメだろ。


「って事で、うちの風呂使っていいから。寝るなら弟の部屋あっちだから向こう行け。俺はリビングで寝る」

「自室で寝ないのか?」

「や、寒いし」


 リビングが特等席なんです。


「……お前の部屋の情報を少し変えておいてやるから、自分の部屋で寝ろ」

「ん?」

「今日一日ぐらいは構わないだろう……宿泊の礼だ」

「ふむ?」


 床暖房でも入れてくれるんだろうか。ま、ぬくぬくな感じで寝られるなら良いけどさ。


「服は自前な。あんたサイズの服なんて此処ないし、どうせ白いのしか着たくないんだろ?」

「そうだな」


 少しは否定しろよ我がまま魔王め。


「あ、宿泊代ってならついでに皿洗いと掃除と風呂の準備とよろしく」

「……」


 がんばれー。


  

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