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余話夜半とオレ

 何か夜中に急に目が覚めた。

 窓の外まだ真っ暗ですよ。

 とりあえず何時か確認しようと思って枕元に放り投げといた携帯を引っ張り寄せてみたが、その後で電池が切れてることを思い出した。

 うーん……まぁ、いっか。

 携帯使わんし。

 起きててもしょうがないんで、オレは寝がえりを打って布団に包まり直す。

 うーん、爪先冷たい。

 布団の中でもぞもぞとすり合わせる。

 ……。

 ……眠れん。

 何か妙に気持ちが騒いで眠れない。

 なのに頭の中はシーンと冷え切って澄んでて、心の方にはぽかっと大きな穴があいてるみたいな感じ。

 覗き込んでも真っ暗な奴。

 こう言う時は横になってても眠れるもんじゃない。

 オレは向こうのベッドで寝てる二人を起こさないようにそっと起きて、床に降りる。

 あれ、スリッパどこだ。

 うーん……ま、いっか。


 オレは裸足で床に降りる。

 うわ、ひやっこい。

 隣のベッドのヴィーたんは……うん、寝てるな。

 起きるなー、起きるなーと念力を送りながらオレはひたひたと歩いて窓の所まで行ってみる。

 うーん、歩き過ぎたせいか足が軽く筋肉痛ですよ。 

 まぁ今日は……ん? 昨日? は色々あったからね。うん。

 オレ史上最高の夜更かししちゃったし。

 風呂入って温まって、ベッド入ったら三秒でK.O.ってなもんですよ。あんな快適な睡眠導入初めてでした。

 なのになぜこの時間に目が覚める。

 普段寝付きの悪いオレが素晴らしく爽やかに寝ちゃったバツですか?

 いや、まぁ良いけど。


 カーテンの端っこを摘まんで、ソロっと外を伺ってみる。

 学生さんが集団でお泊まりするにはちと高級すぎるこのホテルだが、いわゆる高層ホテルではない。

 オレ達が居る四階が最上階です。

 それでも窓の下には大層立派な庭が広がっててライトアップされて幻想的な感じになってるし、木の向こう側には【内苑】がぼうっと蜃気楼みたいに浮かんでてなかなかの夜景が楽しめる。

 回遊灯とかが遠くの方でぐるぐるーっと動いてたりとかしてさ。

 ホント、今回の旅行楽しかったよなぁ……。


 それらをボケーっと眺めながら思い出に浸ってたら、なんだか急に泣きそうになった。


 訳の分からない不安感で舌がひりつく。


 すーっと腹の辺りから冷えて行くような嫌な感じ。


 掌を力いっぱい窓ガラスに押し付けて、オレは座り込みたくなるのを我慢する。


 今があんまり良いことばっかりだからだろうか。


 幸せすぎるからだろうか。


 なら、何でこんなに寂しいんだろう。


 分かんないや。


 端っこでカーテンに包まってえぐえぐしてたら、起きてきたらしいヴィーたんに肩をたたかれた。


「どうしました?」

「あ、ごめん……起しちゃった?」

「いえ、起きていません。偶々です」


 生真面目に答えるヴィーたん。

 うん、明らかに嘘だけど気遣ってくれてありがとう。


「何かあったのですか?」


 堅苦しい口調に心配が滲んでて、またうっかりボロッときたもんだからヴィーたんを更に慌てさせてしまった。

 いや、マジで何かあった訳じゃないから。

 ヴィーたんのせいでもないから。

 お願いだから冷静な顔で通報しようとしないで下さい。

 ヴィーたんもちつけ。

 本当に、お願いだから落ちついて。

 ヴィーたんってパニックになると、一見冷静な顔でとんでもないボケかますから笑えないんだよ。笑えないから。


 そうやってヴィーたんをクールダウンさせてる間に可笑しくなってきて、さっきまでの悲しい気持ちはどっかに行ってしまった。

 うん、結局ヴィーたんに助けられたですよ。


「ヴィーたん大好き。嫁にしてくれ」

「法律上無理ですね」

「うん、知ってる」


 それから寒いからってことでベッドの所に戻って、ヴィーたんのベッドに並んで腰を下ろしてぽつぽつ話をした。


 夜中に目が覚めたこと。

 眠れなくて外を見てたこと。

 色々思い出してたら急に悲しくなったこと。

 なんだか急に突き放されて、一人ぼっちになったみたいな気分がして寂しかったこと。

 良く分かんないままとりあえず泣き突入。

 で、ヴィーたんに発見されて今に至る。

 そういうことをつっかえつっかえ、順番がぐちゃぐちゃしたりループしながら話した。

 ヴィーたんは黙ってそれを聞いててくれて、途中でうんうんとか頷いてくれて、最後はぎこちない手つきでオレの頭を撫でてくれた。

 調子に乗ってハグしてみたら、意外にもやり返してくれた。

 ちらっと確認したら、夜中でも分かるぐらい真っ赤になってましたけどね。


 その後は昨日食った何が旨かっただとか、明日(てか今日)の朝ご飯は皆で記念に有名なカフェで食おうぜとかそう言う話をして、気持ちも落ちついたからベッドに戻って寝ることになった。




 朝、ヴィーたんと同じベッドにもぐりこんで一緒に寝てた俺を見てリムりんが拗ねたのは余談です。


 


 

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