ピースサイン
「真実……?どういうことだ」
強が尋ねると、勇者が真剣な目で語り始めた。
どうやら西の最果てに『魔界』と呼ばれる魔族達が生息する領域が存在していて、そこの支配者が『魔王』という存在になる。
魔界の地位は力でのみ証明される仕組みとなっていて、常に“魔王奪還“が勃発していという。
そんな争いの絶えない魔界で、過去2000年魔王の地位を譲らなかったのが、あの『魔王レベル99』だったのだ。
レベル99とは奪還志願者を返り討ちにした数で、魔界の屈強な戦士達を99人も倒した勲章のような数字だという。
その魔王が、オッパイノ王国を自身の支配下にするため、国を滅ぼす計画を立てていた。
その情報を魔界に潜入して命懸けで入手したのが勇者だった。
勇者は魔界に潜む数万の魔族の攻撃を受け、チート能力を解放しても瀕死状態まで追い込まれたという。
命かながら生還を果たし、オッパイノ王国へその情報を渡したのだ。
「そんな化け物を金の美女は一撃で倒してたもんなぁ」
と強が軽快に話すと、勇者は少しうつむきながら答えた。
「あり得ない……俺でさえ一対一での戦闘でも歯が立たなかったからな」
「あんた転生を何度も繰り返して最強の力を手に入れたんじゃないのか?」
「その通りだ。だが魔王レベル99……あれは“力”の象徴だった。およそ全ての攻撃が効かない防御。再生する肉体。空間を切り裂く魔眼。時間さえも歪める呪術――俺が持つすべてのスキルを解放しても、あいつの前では……無力だった」
その言葉に、場の空気が凍りついた。
「ちょっと言いにくいんだが……このロープ外してくれないか?別に逃げないんだが」
と強が言った。
「すまない。それは…できない」
「なんで?」
「近づいているからだ……やつの気配が…!」
盗賊団アジトの天井が巨大な力で破壊された。
そこから飛び降りてきたのは金の美女だった。
「おー金の美女〜。助けに来てくれたのか?」
と強がロープで縛られながら伝える。
「いえ、違います。勇者を捕らえに来ました」
と冷静に答える金の美女。
「ちっ、思ったより早かったか……!」
焦る勇者。
再び煙幕を使おうとするが、一瞬で勇者の目の前に移動し、腕を押さえて地面に叩きつける。
「こ……降参だ。助けてくれ…」
と勇者が諦めると、少しだけ力を緩めた。
強を縛っていたロープを解き、そのロープで勇者の腕を固定した。
しばらくするとメイドが現れる。
「他の盗賊団は全て捕虜として警備隊に引き渡し完了です。……あ、さすが金の美女様!既に勇者を捕らえていたのですね!」
とメイドが答えると、金の美女は嬉しそうにピースサインをした。