あれは嘘じゃない。事実だ
気がつくと強一行は複数の盗賊団達に囲まれていた。
「私1人で十分です。あなた達は下がっていてください」
と金の美女が前に出て凛とした態度で盗賊達を見下ろす。
すると後方から1人の盗賊が、強一行を囲んだ盗賊達に指示を出す。
「あの男1人を捕えろ!金の下着は一旦お預けだ!」それを聞いた盗賊達が強に襲いかかる。しかし金の美女がすかさず回転回し蹴りをして複数の盗賊達を薙ぎ払っていく。
その光景に圧倒される強とメイド。そんな油断を見過ごさなかった1人の盗賊が、一瞬の隙をつき強の背後に周り口に催眠薬を仕込んだハンカチを当て強を眠らせた。
「しまった…!」
金の美女がそれに気づく頃には煙幕を巻かれ姿は消えていた。
———
——
—
「ここは……どこだ……?」
強が目を覚ますと、真っ暗な暗闇の中だった。
口は動くが、それ以外の部位が動かせない。
自身がどの体勢なのかも分からない状況だった。
唯一分かった事は、一切の服を着ておらず、フンドシ一枚だという事。
(身動きが取れない……俺は誘拐されたのか……)
記憶が曖昧な強だった。
タン、タン、タン
人がゆっくりと歩いてくる音が聞こえる。そしてローソクの灯りがぼんやりと見える。
「誰だ…」
強が口を開くと、現れたのは黒いローブを着た女性。
「俺がお前達が探している“勇者“だ」
と勇者と名乗る女性が言った。
「勇者は男なはずだ。お前何者なんだ?」
少し黙っていたが、勇者が語り始める。
「良いだろう。俺の正体を少しだけ話してやる」
そう言って勇者は近くの椅子に座り込み、強を見つめながら口を開いた。
灯りの中で強は自身が白いベットに腕と足とお腹をロープで何重にも縛り付けられてる事が分かった。
勇者は自身の経歴について語り始めた。
どうやら強と同じ転生者で、過去に転生を3回繰り返しているという。
転生前の性別は男性で、転生後は女性メインの体でプレイしているという。
それぞれの転生で得た能力は全て引き継いでいて、各能力値は全てMAX。最強と呼ばれる魔法もスキルも全て習得済みという。
まさに化け物級の生き物と化していた。
そんな勇者が唯一恐れた存在、それが『金の美女』の存在だと言う。
彼女の存在に気づいたのはこの街に強一行が入った瞬間だった。
世界を震撼させるほどの禍々しいオーラ。この世のものとは思えない存在に思えたという。
過去に3度転生を行ないチート能力を手に入れた勇者でさえ恐怖するほどの存在。
どうやら勇者以外にはその禍々しいオーラが見えていない事が分かり、仲間達には『金の美女の金の下着を捕獲』というオトリ司令を出し、尾行を悟られないようにしたつもりだが、結局遠距離からの尾行でも、チラチラとこちら見ていて存在に気づかれていたという。
「なるほどな……あんた、とんでもない経歴なんだな」
「それなりに経験はしている」
「ところで……俺はどうなるんだ?」
「殺しはしない。金の美女を倒す手掛かりを探している。その為の人質だからな」
「金の美女が何者か分からないけど、あんたなら勝てるんじゃないのか?」
「無理だ。確実に負けるだろう」
「いやいや、本当に何者なの……あの美女」
「というか、王様からの指示であんたを捕らえる事になったんだが、なんであんなハッタリかましたんだ?」
「魔王の事か?」
「そうだ」
「あれは嘘じゃない。事実だ」