これ以上の幸せはない
魔王は宝箱を落としていた。
中を見ると『謎の巻き物』というそれっぽいアイテムを手に入れた。
「謎の……まぁいいか」
と強。ふと思い出したかのように話し出す。
「そういえばこの世界にレベルとかあるんだな?」
金の美女に尋ねる。
「あります。表示されませんが」
「それなら分からないだろ…」
とりあえず歩き出す強一行。
しばらく歩きを進めると、巨大な王国が見えてきた。
王国の前に行くと、槍を持った兵士が2名、門の前に佇んでいた。
さっそく声をかけてみる。
「すみません〜、道に迷ってしまったんですが、中へ入れて頂けませんか?」
兵士の1人が口を開く。
「怪しいものめ!捕えるぞ!」
2人の兵士は強と金の美女の腕を捕らえて王国の中へ連行した。
兵士達が向かったのは王様のいる玉座だった。
「王様、門の前に現れた怪しいものを捕らえました。」
王様が口を開く。
「魔王との決戦前に……不届者共め。牢屋に入れておけ」
「かしこまりました」
兵士達は強と金の美女を牢屋へ収容した。
収容された牢屋は二人部屋となっていて、トイレとシャワー、ベッドは2台設置してあり、そこそこ快適だった。
「ここの連中、魔王がどうとか言ってたけど、何か戦争でも始まる感じなのかな?」
と強。
「いえ。魔王は道中で私が倒しました」
と金の美女。
「え?あれが?それならその事実を伝えたら俺達ヒーローになるんじゃ?」
「それは難しいです。魔王を倒せるような雰囲気じゃないので」
「理由が寂しすぎるだろ」
しばらく沈黙が続いた。強は何度かトイレを利用した。
それを見ていた金の美女が少し苛立ちながら声をかける。
「トイレの利用は極力減らしてください」
「なんで?」
「汚いからです。私も使うんです」
「すみません」
そんなやりとりをしていると、一人の兵士が牢屋の前から声をかけた。
「おい、貴様ら、飯を用意した。これを食べろ」
そう言ってカートに乗せてきた食事を牢屋の下の小さな入り口からそっと中へ入れてくれた。
見たことのない食材だったが、ものすごく食欲が湧く匂いがした。
ついヨダレが出かけたが、金の美女を横目に確認すると、こちらを見て睨みつけていた。
あぶなっ…。
2人は食事をとることにした。
強はこの世界で初めての食事にありつけて幸福を感じていた。
そしてなんだかんだ、隣にこんなに綺麗な美女。
これ以上の幸せはない。