俺達で世界を救おう!
俺は夢を見ていた。
これは俺が通っていた幼稚園で仲の良かった女の子との一幕。
「ねぇねぇあいちゃん。」
「なぁに、つよしくん」
「ぼくいつか大きくなったら、あいちゃんとけっこんするんだ!」
「わたしがお嫁さんになるの…?」
「うん!」
「それじゃあ……——」
ここでいつも終わる。“愛ちゃん“はあの時なんて答えたんだろうか。
現世の世界は滅んでしまい、転生した今となっては関係ない話なのかもしれない。
朝が来て目を覚ますと、何やらいい匂いがする。
今俺が居る場所はオッパイノ王国の城町の一軒家。世界を救ったお礼にと、王様が俺に建ててくれた立派な家。
ほとんどの記憶を失ったが、彼女の事だけは“本能“で思い出す事ができた。
その女性はあの時選んだ金の美女だ。
強が目覚めた事に気づくと「おはよう強」と金の美女がニコッと笑顔を見せた。
「おはよう金の美女…さん」
名前を尋ねると、どうやら本当に名前が無いらしく、今も変わらずこの名前で呼んでいた。
エプロン姿で朝食を作る金の美女に、強は勇気を持って提案してみる事にした。
「名前……無いんだよね?」
「はい、私は女神様に召喚され、女神様に支える存在ですので。女神様は私を“金ちゃん“と呼んでいます」
「あの……もし良かったら、『愛』って呼んでも良いかな…?」
「愛…ですか?…構いませんよ、強がそうしたいのであれば」と微笑む。
「うん、ありがとう。これからもよろしくね愛」
朝食を済ませた2人はソファに腰掛け、のんびりと雑談をしていた。
その時——
カランカランッ。
玄関の呼び鐘が鳴り響いた。
2人で顔を見合わせ、強が玄関を開けると、王兵のひとりが息を切らしながら立っていた。
「強様、金の美女様! 王様より緊急要請ですっ! 至急、王宮へ!」
ただならぬ様子に、強と愛は一瞬目を合わせ、無言で頷き合った。
——王宮。
玉座には王様が重々しく腰掛け、その隣には勇者とリリスの姿があった。
強が記憶を失ってから、勇者とリリスは時折家を訪れていた。前の記憶は無いが、互いに顔なじみの関係にはなっていた。
「急に呼び出してしまい、すまない……」と王様が低く声を落とす。
「王様、何かあったのですか?」と愛が問いかけた。
「……勇者殿とリリス殿からの報告によれば、“歓楽街の軍勢およそ10万“が、王国に向けて進軍しているとのことだ」
「10万……っ」強が息を詰める。
「もはや全面戦争となるだろう。……そなた達にも協力してほしい。もちろん強殿には家で休んでいてもらっても構わぬ」
勇者とリリスは、強の方をちらりと見て、どこか気まずそうに俯いた。
「……俺も、戦います」強はきっぱりと言い切った。
「強、あなたは家にいてください。私が行けばすぐに片付きます。……もし万が一、あなたが狙われるようなことがあれば……」と愛は眉を寄せ、不安げに強を見つめる。
だが強は首を振る。
「大丈夫だ。みんなともう一度戦えば……失った記憶を取り戻せる気がするんだ」
勇者はその言葉を聞くと、にっと笑って肩を叩いた。
「安心したぞ。何かあっても命に代えてもお前を守る」
「それは私も同じでありんすよ。世界を救った英雄を死なせるわけには参りませんのでありんす」とリリスも優しく笑んだ。
愛もふっと微笑みを取り戻し、強に向かって頷いた。
「よし……もう一度、俺達で世界を救おう!」
強の言葉は王宮に力強く響き渡った。




