表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

政治経済エッセイ

【最悪の閣議決定】厚生年金の106万円の壁廃止へ【200万人がワーキングプアへ】

作者: 中将

筆者:

 25年5月16日に石破政権は「106万円の壁」とされてきた加入の年収要件(106万円以上)などを廃止することを閣議決定しました。



質問者:

 筆者さんはこの案について去年の秋から危惧されていましたがそれが実現化しそうという事ですか……。



筆者:

 非常に残念ですがそういうことです。


 「103万円の壁引き上げ」と並ぶと「良いことに思えてしまう」ところが「絶妙なタイミング」だな、とある種思えますね。


 具体的な内容について25年5月16日の読売新聞の記事を参考にしますと、


『関連法案は、短時間労働者の厚生年金加入のための要件を緩和する。年収について、「106万円の壁」と言われる「月額賃金8万8000円(年収換算約106万円)以上」とする要件を関連法の公布から3年以内に撤廃する。対象となる勤め先企業については、「従業員51人以上」としている要件を2027年10月から段階的に広げ、35年10月に撤廃する。


 働く高齢者の増加に対応するため、在職老齢年金も見直す。現行制度では給与と厚生年金の合計額が月51万円を超えると、超過分の半額の厚生年金が支給されないが、26年4月からは月62万円までは満額で受け取れるようにする。』


 とあります。


 「週20時間以上」の要件は残るようなので「週20時間の壁」に引き下がることが予想されます。



質問者:

 閣議決定だとこのまま法律として決定してしまったという事なんですか?



筆者:

 閣議決定の場合、「法律の運用方法の指針」であればこのまま決定ですが、

 法律の改正に関する閣議決定は必ずしもこのまま成立を意味するものでは無いです。


 ただ、法律の改正に関するものでも近年9割以上が成立していることから「まずこれで決まってしまう」ということです。


 このままいくと新たにおよそ200万人が厚生年金の加入対象になると見込まれているために、徐々にではあるものの最終的には200万人の手取りが1割近く減ることになります。


 ちなみに年収100万円ぐらいの方が20年厚生年金に入っても1年間で貰える年金は13万1千円にしかなりません。


 ところが、厚生年金は月9.15%(個人負担のみ)取られますから年間9万円以上取られるんです。 最終的に回収できるのは年金受給から15年以上(企業負担合わせれば倍の期間)かかるので、その分を投資信託した方がマシです。


 そうならないためには野党の皆さんの活躍次第と言うところでしょうね。

 この法律に賛成反対かどうかも次の選挙の投票の指針になるでしょう。



質問者:

 厚生年金を納め始めて35年かけてやっと回収できるってあんまりですね……。

 それなら本当に取らないで欲しいですよね……。



筆者:

 だから「壁を前に働き止め」する人が今でも多いんですよ。

 この点を政治家の方たちはとくと理解してもらいたいです。


 経済心理学にも「損失回避性」と言う考え方があり、「税金や保険料を取られたくない」という思いからそこで働くのを止めてしまうのです。


 しかし、「手取りを増やす」を掲げている国民民主党も「社会保険料は税金ではない」と言う主張を従来から繰り返していることから、賛成する公算が高そうなので非常残念なことですが、多少の内容は変わるかもしれませんが成立する可能性は高いです。



質問者:

 しかも今が好景気ならいいですけど、実際は全くそんなこと無いですよね……。


 

筆者:

 24年10月の厚生労働省の国民生活基礎調査では「苦しい」と答えた方が59.6%と前年比8ポイント増となっています。


 民間会社の調査では「値上げにより生活に影響は出ましたか?」と質問したところ、8割近くの方が『かなり影響が出た(24.1%)』『少し影響が出た(53.6%)』

 

 困窮度合いを示すエンゲル係数は28.3%と1981年以来の悪い水準で実質消費支出は2年連続マイナスという有様です。


 ですが、「大企業の歴史的な賃上げ」「株高」などのワードを並び立てて「今は好景気なんだから貧乏は自己責任」として政治の失敗を国民に擦り付けようとしているんですね。



質問者:

 この間の筆者さんに紹介してもらった記事では大企業でも社会保険料のせいで手取りは増えていないという話がありました……。



筆者:

 それは4月23日の健康保険組合連合会の発表ですね。


 でも、大企業は保険料を払える能力が高いのでマシですよ。 


 2024年度の「公租公課滞納」による倒産は過去最多で

 厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2023年度末時点で14万2119事業所とコロナ以降これぐらいの水準でずっと続いています。


 「106万円の壁廃止」は上記のような「国民側の手取り減少」だけでなく「折半している中小企業側も苦しくなる」ために更にこういった滞納や倒産と言うのは増えていくと思います。



質問者:

 「中小企業支援」とか言いながらこんなことになるだなんて……。



筆者:

 まぁ、口先だけでは何とでも言えますからね。


 そう言った口先の綺麗事に惑わされずに「起きている実情」というのを色々なデータを見ながら分析していくことが大事だと思いますよ。


 大企業としては体力があるのでこういった「中小企業潰し」政策をやってくれることで、「中小企業を吸収」したり「ベンチャー企業の勃興を未然に阻止」したり「市場の寡占」をし易くなるのです。


 これが日本全体にとって良いか? と言えば全く良くないと思いますけどね。


 これをまた報道してくれないのが日本の「闇」と言わざるを得ないんですけどね。



質問者:

 もう一つの


『給与と厚生年金の合計額が月51万円を超えると、超過分の半額の厚生年金が支給されないが、26年4月からは月62万円までは満額で受け取れるようにする』


 ことについてはどうなんでしょうか?



筆者:

 厚生年金の平均受給額は男性が17万、女性が11万円ほどです。

 ここから65歳以上の年齢で35万と40万分それぞれ働くというのは結構大変ですよ。


 再雇用で年収が平均45%下がるそうなので、元から稼いでいる相当な「上級国民」だと思います。


 老後の生活については贅沢をしなければまず心配する水準では無く、これに配慮する必要性は現状ありません。


 そのラインで「働き止め」をしているという話は「106万円の壁」と比べると聞きませんので、「上級国民御用達」のための制度でしょうね。



質問者:

 いっそのことこんな制度廃止した方が良いですよね……。



筆者;

 社会保険料を納める側は支払う事で困窮、受け取る側は生活保護並みという年金制度自体どう見ても機能していないのに、これを存続していこうという姿勢自体が意味不明です。


 これまで納めた方は国債で賄って廃止で良いでしょう。

 社会保険料を納入しない分インフレになるという話があるかもしれませんが、それはそれこそ投資を促進すれば良いので需要が爆発的に増えるとは思えません。


 現状の手取りが無いまま積み立てNISAを推進するよりかは遥かにマシな様相だと思います。



質問者:

 中途半端な自己責任の今が一番良くないですよね……。


 それだけ徴収してお仲間にばら撒きたいんでしょうか……。



筆者:

 そういうことでしょうね。


 現状政治家は全て駄目だと思いますけど、権力者が固定化することは利権の癒着と腐敗が進みますので次々と入れ替えていく必要があると考えています。



◇年金は「自分で作っていく」しかない



質問者:

 はした金とも言える年金とインフレによる物価高でこれからどうなってしまうのでしょうか……。



筆者:

 僕は「インフレ単独」では悪い事とは思わないです。


 30年にもわたるデフレ経済によって「安い日本」と言われて外国人に次々と企業や土地が買われていく有様は見るに堪えないですし、国家防衛上もよろしくないです。


 問題はインフレに対して「適切な政策」を施さない政府です。

 インフレに対応したあらゆる税金に対する控除の引き上げを行わなければ本質的には豊かになっていないのに税金対象者が増える一方になるからです。


 しかし、「財政規律」を理由にそれをする気配はありません。


 また「供給力不足」やコストプッシュを起因とするインフレなのに利上げをする日銀も意味不明です。利息と言う新しいコストが商品に価格転嫁され、更に物価高が進むでしょう。



質問者:

 政府は減税よりも「本当に困っている世帯に給付」をしたいみたいですね……。

 


筆者:

 政府の定義している「本当に困っている世帯」というのは「新しい所得税の壁」の状況を見ると「200万円以下」と言う印象を受けますが、


 先ほど僕が出したデータのように6割が生活に困り、8割近くが物価高に苦しんでいる状況なので、「生活に困っているのは日本国民ほとんど全員」と言っても過言ではありません。



質問者:

 筆者さんのお話をいつも聞いている身としては「財政規律と増税」「利権に分配」「選べる政治家がいない」と言う3点に尽きるような気がしてきたのですが……。



筆者:

 どれについても現状の異常性を訴えて「日本国民側が政治家を正す」と言う気持ちが大事だと思います。


 ただ、それにしたって今の皆さんの生活があると思いますので、

 政治が変わるまでの間、生活を切り詰めて余ったお金は1000円からでも良いのでNISAでS&P500などのインデックス投資をして将来に備えた方が良いです。



質問者:

 月1000円だと流石に少なすぎじゃないでしょうか……。



筆者:

 30年積み立てればS&P500の税引き後の7%だとすれば、30年で元本36万円に対して利息を合わせると116万までになります。

 40年なら元本48万円で247万円になるので若ければ若いほど「月1000円」の価値は高まります。


 低く見積もって年利3%としても30年で57万円、40年で91万円になります。


 この元本との差額分をポンとタダでくれる人は誰もいませんから、

 もうホント月1000円で良いので非課税のNISA枠を活用する必要があると思います。


 どんなに収入が少ない方でも社会人なら月1000円であれば捻出できるはずです。



質問者:

 複利的効果(利息分を再投資することでそう呼ばれます)って凄いんですねぇ……。


 ただ、やっぱり投資は元本より下がることが怖いんですけど……。



筆者:

 投資に元本割れリスクはあるのは間違いないです。


 しかし、日本政府がこのまま緊縮財政、大企業優遇政策が続けば大多数の国民には未来はないので、円安が続くと思いますよ。


 こうした人口減で政治家が失敗を続けている国に住み続けて「投資をしない」ということも逆に「安くなっていく円に投資」していることと同じであることを理解していく必要があると思いますね。


 これも一つの考え方なので強制はしませんが、政治の深刻さを嘆くだけでなく、

皆さん自身も何かを変えていかないと生活は良くなりませんし、将来の生活の保障は見込めないと考えます。


 これからもこういった政治経済や生活の在り方について個人的な意見を述べていこうと思いますのでよろしければご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ふぇ〜〜〜〜。ちゃんとここまでの情報まとめて出してるの凄いな。制度を「良くする」って言いながら、実際には弱い立場の人にツケが回る構図がリアルすぎてゾッとした。手取りが減るのに「将来のため」とか言われて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ