愚痕
真っ青な水に、頭から飛び込む
息を溜めないで、こぼれる泡を見送る
海に呑まれて、波に洗われて
沈みながら、もがきながら
真っ青の一部に変わり続ける心地良さに
心は奪われ、呼吸も奪われる
愚かしい最期を笑ってほしい
誰か一人でも認めてくれたらそれでいい
青はどこまでも深く
孤独はどこまでも潔い
たった今 消えていく自分の命が
たった今 薄れていく意識が
なんて 解放的なんだろう
呼吸は透明の包みを作って、青を飾る
泡がこんなに美しいとは
何をしても 叶わなかった
何を求めても すり抜けていた
何に本気になっても
心を抱きとめられることはなく
深い水の青に染まる
染まりながら気づくんだ
どうしてこれを知らなかったのかと
水は青くなくて 暗くもなく
海底へ向かう体を包むのは 藍色じゃない
僕は愚かさを選んで 正解だったのかもしれない
これが最後の分岐点
不器用に まっすぐ過ぎて
多くに従い過ぎた
理解を深めて自分を失い
他を尊重して
自分を下げたから
この青は 青じゃないと気づけなかった
青の透明
違う それは僕の求めだ
意識が消える手前で気づく
飛び込んで 包まれた 無条件の海に気づかされる
呼吸は吹き返す
泡は肺にある全てを掴み
体が青以外の
常に自分を守り包んでいた世界へ帰ろうともがいた
ありったけの力を振り絞って
愚かさに謝りながら水面だけを求め
壊れかける身体を水面に届けた後
目に映る全てが この目で追いつかない躍動に満ちていると知る
愚かな痕は記憶に残り
僕を生かす
憧れた遠い青が
自分自身だったことに気づいた、痕跡となって